「良いじゃないですかプリンセス一つ貸してあげても」
「そうですよ。その子だって一緒に遊びたがっているんですから」
「やぁーら!」
砂場にはソラとツバサがエルに対して何やら諭そうとしているが、エルは2人の言う事を聞かずに嫌だと強く拒否。その側には小さな男の子が何やら物欲しそうな目をエルに向けていた。
「なんだか騒がしいけどなにがあったのよ?」
「ソラちゃんツバサ君一体どうしたの?」
「あ、ましろさんらんこさん」
「実はそこの男の子がプリンセスと一緒に遊びたがっているんですが、プリンセスが道具を貸そうとしなくて…」
どうやらエルは買ったばかりの遊び道具を他の人に貸したくないようだ。ツバサの言うことも拒否してしまっており、完全に取り付く島もない。
そんなエルを見てらんこは額に手を当てて口を開ける。
「あー、とうとう来ちゃったのね第二回のわがまま期が」
「「「わがまま期?」」」
彼女の言葉にソラ達は聞き返す様にオウム返しをする。
「忘れたの?前にファーストシューズを買う時も似たような事があったでしょ」
"ファーストシューズ"と聞いてソラ達は思い出す。かつてエルの靴を買う為に一同は靴屋へ訪れて各々エルが好きそうな靴を探すもどれもお気に召さず。最終的には関西弁を話す優しいおばさんが買った靴を譲ってもらったが、色々と苦労したのだ。
「全く…あの時注意したのに反省を生かしてないなんて呆れるわよツバサ」
「ええっ!?僕ですか!?」
今回のエルの我儘もツバサの甘やかし過ぎによるものだとらんこは考えたが、何やらツバサの反応がおかしい。
「だって、あんたでしょ?またエルが我儘になった原因って」
「そ、それは違いますよ!僕はあれから反省して甘やかし過ぎない様に気をつけてますって!」
「じゃあ、あんたじゃなかったら誰g「なんだ?私が買い出しに行っている間に何か揉め事があったのか?」あっ、ベリィベリー実は…んん?」
するとそこへジュースを買いに行ってたベリィベリーがジュースの入った袋を片手に戻ってきて、彼女にも事情を説明しようとしたがらんこは彼女もまた虹ヶ丘家に住んでいることを思い出す。
「…ねぇ、ベリィベリー聞きたい事があるんだけど。あんたはましろの家でエルの世話をするときはどんな風にしているの?」
「突然なんだ?プリンセスの世話だと?ふふっ、愚問だな。私は青の護衛隊としてプリンセス達王家には忠誠を誓っているんだ。勿論プリンセスの為を思ってちゃんとお世話をしているぞ」
「ふーん…随分自信があり気ね。因みにそのお世話の内容は?」
一応ベリィベリーにそのお世話の内容について問うと余裕ある笑みは絶やさずに語り始める。
「それは勿論プリンセスは未来のスカイランドを担う物としてプリンセスが嫌いな食べ物があったら除外したり、お菓子のお代わりを要求があったら新しいお菓子をあげたりとプリンセスの為を思ってのお世話をしてd「犯人はお前かーいっ!?」え、うおわああああっ!?」
犯人がベリィベリーであると分かるとらんこは目にも止まらぬ速さで彼女の胸ぐらを掴み、ベリィベリーも突然胸ぐらを掴まれた事に声を上げる。
「こんのおバカ‼︎あんたのお陰でエルが2回目の我儘を起こしちゃったじゃない!」
「な、何を言うか!プリンセスはスカイランドの姫だぞ!多少の贅沢は許される筈だ」
そこまで自分は悪い事はしてないと言い張るベリィベリー、しかしらんこはその事が原因でエルが再び我儘を発動してしまった事に強く非難する。そして、そんな2人のやり取りにソラ達は止めようと間に入ろうかと考えた。しかし、このベリィベリーの行動を止められなかった事が原因で自分達もらんこから何か言われそうになると考えた3人は黙って2人のやり取りが終わるまでただ見守るのであった。
「全く…あんたも国に遣える騎士ならちゃんとスカイランドとエルの未来を考えるのなら見極めてから行動して!」
「す、すまなかった。今度から気をつける…」
「分かればよろしい」
そしてベリィベリーの説教を終えるとらんこは胸ぐらから手を離し、ベリィベリーはらんこに説教されたのが効いたのか涙目になって反省する。そんな様子を見て取り敢えずソラとましろはこの場を軌道修正しようと先程の説教シーンを見て唖然となっているエルに再び説得を試みようとする。
「ゴホン…エルちゃん。そんな心の狭い事でどうするんですか。仲良くしなきゃダメですよ」
「私もエルちゃんが大好きなおもちゃで他のお友達と一緒に遊べたらきっともっと楽しいと思うなぁ」
「ううぅ…やーらぁ!」
「そんな…お2人の説得にも応じてくれないなんて…」
「こう言うのはあげは姉さんの得意分野なのに…仕方ないわね」
やれやれと言わんばかりの表情を浮かべるとエルに近づき彼女と出来るだけ目線を合わせようと腰を下ろして話しかける。
「エr「やああああらああああっ!!!」…まだ何も言ってないんだけど…」
先程ベリィベリーを涙目にするまで説教する姿を見た所為かエルはらんこに話しかけられた途端に嫌がる。対してらんこはエルにここまで拒絶された事に心が傷つき内心泣きそうになる。これは取りつく島も無いと判断し説得を諦めようとした瞬間だ。
「らんこさん危ない!」
「背後からボールが飛んでくるぞ!」
「っ!」
「えるっ!?」
ツバサとベリィベリーの声に咄嗟に背後を振り返ると何処からともなくサッカーボールが勢いよく飛んできたのだ。らんこは飛んでくるサッカーボールをすかさず胸でブロックし、ボールを地面に落とすと逃さんとばかりに足で強く踏む様に固定する。
「らんこさん!エルちゃん大丈夫ですか!?」
「怪我はない!?」
「私は大丈夫よ。エルも怪我してないわ」
自分とエルは何処も怪我をしてないとらんこはアピールをするが、先程のエルの説得に失敗しただけでなく危うくエルが怪我をするかもしれなかった事に内心不機嫌になる。そのため、らんこはサッカーボールの持ち主に鬱憤晴らしを兼ねてどんな罵詈雑言を放とうかと考えていると慌しい足音が近づいてくる。
「ごめんなさい!怪我はしてませんか!?」
「全く何処に目を付けてボールを蹴って…って、あんたは!?」
サッカーボールの持ち主らしき人物を見てらんこは表情が一変する。何故なら声をかけてきた人物はらんこにとって一番大事な存在と言っても過言ではない少年であった。
「ひかる!ひかるじゃないの!」
「あっ、お姉さん!」
そこにいたのは並行世界に住むらんこの彼氏であるひかる…ではなくこちらの世界に存在する保育園児の雷田ひかるであったのだ。
「なんであんたが此処にいるのよ?」
「なんでって、最近友達になった子達とサッカーしてたらそれで…」
「友達?それって誰の事?」
友達と一緒に遊びに来ていると聞いてその友達について聞こうとしたらんこだが遠くより誰かがこちらに向かって話掛けてくる。
「おーい、ひかる何やってんだよ」
「何かあったの?」
「ん?…なんか聞き覚えのある声が…って、ええええっ!?」
遠くから近づく聞き覚えのある声にらんこは振り向くと先程よりも衝撃を受けた顔を見せる。そこにやってきたのは赤茶色のショートヘアで瞳が薄い赤の少年と水色寄りの白のセミロングに水色の瞳を宿した少女であった。
「あ、あさひにゆき」
「ひかるその人は誰だ?」
「ひかる君の知り合い?」
そこに居たのはらんこが並行世界に飛ばされた際共に戦ってくれた虹ヶ丘アサヒとユキ・ハレワタールの2人であったのだ。しかし、2人はらんこの知る2人と異なり同年代ではなくこちらの世界のひかると同様に幼児として存在していたのだ。
「あの2人…アサヒとユキって言いましたか?」
「それってらんこちゃんが言ってた友達だよね」
「まさかひかるさんと同様に幼児としてこちら側にもいたとは…」
「おい、お前達だけで話を進めるんじゃない。私だけまた置いてきぼりを食らってるじゃないか!」
一方でソラ達はアサヒとユキについてらんこから名前と話を聞いただけでそれ以外全く知らない為、どう話しかければ良いのかわからず。そのため、一先ず事情を知らないベリィベリーに説明をしつつらんこ達のやり取りを見守ろうとする。
「紹介するよあさひ、このお姉さんはキュアツ「ゴホンッ!ゲホゲホッ!」え?」
あさひ達にらんこの事をキュアツイスターとして紹介しようとしたひかるだったが、それを遮るかの様に態とらしい咳払いをしたらんこに視線を向けると彼女は自身の唇に人差し指を当てる。その姿にひかるは一瞬ドキッとするも彼女から自身の正体は秘密にする様にという考えを察した。
「ひかる急にどうした?」
「さっきそのお姉さんの事を何か言い掛けたみたいだけど…」
中途半端にらんこの紹介を中断した事でひかるは2人から訝しまれてしまう。
「ち、違う!そうじゃなくて…え、えっと…こ、この人は…キュ、キュアツイスター大好きお姉さんなんだ!」
(いや、誤魔化し方が下手でしょ‼︎)
らんこがキュアツイスターだと見破られそうになるのを避けようとしたひかるはなんとか強引に誤魔化すも内容があまりにも強引過ぎるため、らんこは内心でツッコミを入れてしまう。というかもし本当にキュアツイスター大好きお姉さんだとしたらツイスターである己が大好きなナルシストという感じになってしまうのだ。
「ま、まぁ、そんな感じよ…因みに私はツイスターが好きというよりもうららとまこぴーが好きよ。あ、あと私の名前は風波らんこよ。2人はひかるの友達…で良いのよね」
「あー…なんかよくわからねえけど、まぁ良いや。俺はあさひ。こっちは隣の家に住むゆきって言うんだ」
「ゆきです。よろしくお願いします」
我ながら強引な誤魔化し方であったがなんとかなんとか押し通す事が出来2人もらんこに自己紹介をする。
「あさひとゆきね…2人はこの町に住んでいるので良いかしら?」
「まぁな。俺とゆきは最近こっちに来たばかりでひかると同じ保育園に行っているんだ」
あさひ曰くしばらく前までは二人共別の街に住んでいたのだが、最近引っ越して来たばかりの様だ。しかし、流石は別世界ではひかるとは友達であった子達。こちらでも無事に友達になった様だ。
「あれ、でも2人は同じ時期でこっちに引っ越してきたみたいな事を行ったけど、もしかして前いた町でも友達だったの?」
「ううん、私とあさひ君は別々の町から来たの。だから偶然にも同じ日に引っ越してお隣さん同士になったからそれで仲良くなっているの」
てっきり2人は元いた町でも友達同士かと思いきや引っ越した日に知り合ったと聞いてらんこは思わず口元を緩める。どうやら別の世界でも2人は出会う事が運命で決められているのだと思っているとゆきが不思議そうな顔を浮かべる。
「らんこさん…どうしたの急に笑って」
「ううん、なんでもないわ。それよりもこのサッカーボールはあなた達のよね。私がこのボールを受け止めなかったらエルが怪我をする所だったわ」
「「「ごめんなさい」」」
ひかる達3人は誤ってエルに怪我をさせてしまう所だった事に謝罪するとエルは特に怒る事なく許し、らんこも3人が反省していると分かるとボールを返すとゆきはらんこに一つ質問する。
「所でらんこお姉さんってサッカーは結構できるの?」
「え?…まぁ、それなりに出来るけど」
「だったら俺たちとサッカーしようぜ」
「うん、一緒にやろう」
3人からサッカーをしないかと誘われたらんこだが、今はエルの我儘をなんとかしないといけない為、悪く思いつつ断ろうとするがエルの側にいる男の子の存在を思い出すとある考えが思いつく。
「仕方ないわね。それなら付き合ってあげるわ」
「え、本当n「でも、一つお願いを聞いてくれるかしら」…え?」
一緒にサッカーをしてくれるらんこだが何やら条件がある事にひかるは声を漏らす。一方でらんこは視線を例の男の子に向けて口を開く。
「あの子も一緒に混ぜてくれるかしら?」
「え、僕?」
らんこから突然指名された事に男の子は驚きの表情を見せる。続いてらんこはエルに近づき再び腰を下ろして話しかける。
「エルも今はまだそれで遊びたいのよね?なら、エルが満足するまで私たちと遊びましょ。それで良いかしら」
「う…うん」
「皆んなも良いかしら?」
念の為ひかる達にも自分以外にもサッカーで遊んで良いかと確認すると3人は特に断る事なく男の子を受け入れる。
「俺は別に良いよ。皆んなも良いよな?」
「ああ、サッカーは皆んなでやれば楽しいしな」
「私も大歓迎だよ」
「あ、ありがとう」
男の子は自分を受け入れたひかる達にお礼を言うとらんこを含めて一緒にサッカーを始める。らんこは運動神経が良い為、ひかる達4人を相手に有利に動くも4人の実力に合わせて時折ボールを取らせたりしている。
「らんこさん…あの子の為にひかる君達を誘うとは…」
「そのお陰であの子も楽しそうにしているね」
妥協案として砂遊びの代わりに皆んなとサッカーを始めた事が上手く行った様だ。先程まで浮かない顔をしてた男の子もらんこ達とサッカーを始めた事で楽しそうにしている。
「でも、肝心のプリンセスの我儘はまだ解決してませんよ」
男の子の件が何とかなったが結局エルの方は解決はしてないとツバサは指摘する。我儘が解決しない限りまた次回遊ぶ時も道具を独占してしまう可能性があり、何とかして解決出来ないかと4人は考えようとする。ただ、その中でベリィベリーが何かに気付くと口を開く。
「いや、案外そうでもなさそうだぞ」
「「「え?」」」
見てみろと言わんばかりにベリィベリーが砂場へ遊んでいるエルに指を差すとエルは引き続き砂遊びをしているが、楽しそうにサッカーをするらんこ達を見て手を止めている。そして、ある程度キリがついた所でエルがらんこ達に恐る恐る近づく。
「に…にゃんこ…」
「どうしたのエル?」
話しかけられたらんこはエルの方向に振り返ると返事をして彼女の話を聞く姿勢を見せる。
「え……える」
一方でエルは先程らんこや男の子に冷たく当たった事を思い出し悲しそうな表情を見せ、もしかしてらんこは怒っているのではと不安に駆られる。そんなエルの気持ちを察したらんこは彼女に近寄るとしゃがんで頭を優しく撫でる。
「さっきの事を気にしている様だけど、私は怒ってないから安心して。だから自分の好きなタイミングで言いたい事があったら言って良いのよ」
「える……にゃんこ……いっ、いっちょに……あしょんで…」
「「「っ!?」」」
ソラ達はエルの言葉に驚いた。先程までエルは1人で遊んでいる事を楽しんでいたのにそれが一変し、らんこ達と遊ぶ意思を見せたのだ。
そしてらんこエルの頼みに笑みを浮かべる。
「ええ、私は良いわよ。皆んなも良いかしら?」
「「「「もちろん」」」」
どうやら全員エルが混ざる事に反対の意思はなく歓迎してくれるそうだ。それをみたエルの表情は明るくなる。それからエルは男の子にも謝ると仲良くサッカーをしたり砂遊びをする。そんな光景にソラ達は驚嘆の声を上げる。
「すごい…エルちゃんが仲直りして皆んなと遊んでますよ」
「さっきまで1人で遊んでたエルちゃんが自分から混ざりたいって言うなんて…」
「でも何故でしょう?プリンセスは先程まで道具を貸し与えようとしなかったのに今は他の子達にも渡したんでしょうか…」
ツバサの疑問は最もだ。最初は自分達だけでなくらんこの言葉すら一切耳を貸そうとせず、道具を独占していたエルが今になって皆んなに貸し与えて遊んでいるのか分からず仕舞いだった。そんな中ベリィベリーは1人得意気な笑みを浮かべる。
「わからないか?あれは同調行動を利用したんだ」
「「「同調行動?」」」
ベリィベリーの口から放たれた聞きなれない言葉にソラ達は聞き返す。同調行動とは自分以外の周りの人間の行動を見て"自分だけ浮くのは怖い"という心理から自身も周りに合わせて行動したくなる事だ。
「あーやって他の子供達が楽しんでいる姿を実際に見せてプリンセスも1人より複数人で遊んでいた方がより楽しめると意識を変化させたんだ」
「すごい…まさかそんな事を考えるなんて…!」
「だからプリンセスが自分から遊びたいって言ったのか…」
ベリィベリーの解説を聞いてましろとツバサはらんこの行動によってエルが動いた理由を理解し、納得の声を上げる。そんな中ソラは地面に俯く。
「未熟です…私は言葉だけでエルちゃんを説得しようとしたのに対してらんこさんは行動する事でエルちゃんの心を動かしました……私もらんこさんの様な発想が出来ていれば…!」
自身がやったのはエルを叱って彼女に無理矢理他の子に道具を貸す様に促すのに対して、らんこの場合は逆にエルを説得しようとせずエルから一緒に遊ばせようと意識を変化させたのだ。そんならんこの行動にソラは敗北感を味わっているとそのらんこから声がかかる。
「ソラ、それにましろ達もそんな所に突っ立ってないでこっちに来なさいよ」
「「「え?」」」
「わ、私たちも一緒に遊んで良いんですか?」
エル達と遊んでいたらんこがソラ達を遊びに誘ったのだ。対してソラは先程まで傍観に徹していてらんこの様にエル達と深く関わろうとしなかった自分達が今更一緒になっていたのかと不安な思いをしつつ恐る恐る聞き返す。
「当たり前でしょ。私1人だけじゃこの子達を相手しきれないわよ。それにエルも皆んなと遊びたがっているのよ」
「しょら、ましお、ちゅばしゃ、びりぃびりぃ、あそぼ!」
エルからの希望とあれば尚更断る事は出来なかった。ソラはましろ達に視線を向けると彼女達も笑顔を浮かべる。
「ええ、皆んなで遊びましょう!」
先程の失敗を挽回するのも兼ねてソラは強く応えるとましろ達を引き連れてエル達と遊び始めるのであった。
そしてその中でましろは遊びながら今のこの状況を改めて考える。
(年とか関係なく皆んなで遊ぶこの状況…とても良いな)
こういう歳の差とかを考えると少し恥ずかしい気持ちなどが生まれるが周りの笑顔見るとそんな気持ちを吹っ飛ばしてくれる。恥ずかしさよりも楽しい気持ちが上回っているとらんことエルの会話が耳に入る。
「エル、皆んなで遊ぶのも悪くないでしょ」
「うん、みんな、なかよち」
(皆んな仲良し…楽しい…あっ!)
2人の会話を聞いてましろは何かを思いついたのか天啓を得た顔になる。
(これだ…私の描く絵本のテーマは!)
皆んなと楽しく遊ぶこの状況にましろは絵本のテーマを思いつき、この閃きを忘れない内に急いでスケッチブックに書こうと思いその場から立ち上がろうとする。
「お姉ちゃんも作ってみて」
「え?あっ、私はちょっと…ううん、わかったよ」
しかしゆきに止められてしまうとましろはどうにかして断ろうとしたが、彼女の純粋な笑みをみてましろは少し悩んだ後腰を下ろして道具を受け取り砂を盛る。今はこの楽しい時間を過ごして絵本作りは終わった後にやろうと考え直すのであった。
─おまけ─
暫く遊んだ後、男の子の母親が迎えに来た。更にはひかるも家の用事を思い出して2人ともそれぞれ帰ってしまうと残された一同はベリィベリーが買ってきたジュースを仲良く飲んでいる。尚、エルは遊び疲れて寝ている。
「そう言えば2人はプリキュアを知っているか?」
ジュースを飲んでいたベリィベリーはあさひとゆきにプリキュアについて聞こうとする。ソラ達の聞いた話では並行世界のあさひとゆきは並行世界のひかると同様にプリキュアになっており、目の前の2人はプリキュアではないもののプリキュアの方が好きなのか気になり質問を投げたのだ。
「知ってる!特に俺とゆきはプリキュアのファンなんだ」
「うん!」
どうやら2人ともプリキュアのファンらしくそれを知ったらんこ達は少し照れた表情を浮かべる。知らないとは言え2人から堂々と自分達のファンなんて言われたら嬉しいだろう。
「そうか、因みにプリキュアでは誰が好きなんだ?」
「「「「っ!」」」」
その質問に4人は一斉に耳を傾ける。先ほど帰ったひかるがツイスターを好きな様にあさひ達も4人の中で1番誰が好きであろう。その1番好きな者は誰なのか物凄く気になっていた。
「私が先に答えて良い?」
「ああ、構わない。それで改めて聞くがゆきは誰が好きなんだ?」
「私が好きなのはね
キュアズキューンだよ」
「「「「……え?」」」」
「そうか、キュアズ…なんて?」
聞き慣れない名前にらんこ達は目が点になりベリィベリーは思わず聞き返した。
「知らないの!?キュアズキューンだよ!アイドルプリキュアのライブ配信に現れた謎の二人組ズキューンキッスのキュアズキューンだよ!」
「お、落ち着けって、キュアズキューンもそうだがアイドルプリキュアって何だ?それにズキューンキッスも…」
幼いながらにして物凄い圧を掛けてくるゆきにベリィベリーは冷や汗を流しつつ彼女を冷静にさせようと宥めようとする。一方でらんこ達はベリィベリー達から少し距離を取り小声で話し合う。
「ねぇ、ズキューンキッスとアイドルプリキュアって何?」
「い、いや、私に聞かれても全く分かりませんよ…」
「ひょっとして、他の街にいるプリキュアじゃないでしょうか?」
少なくともこのソラシド市では聞き慣れない名前にかつて出会ったデリシャスパーティ♡プリキュアの様に他の街で活動するプリキュアだと推測。そんな中でましろは何やらスマホを弄っていると「あっ!」と驚いた声を上げる。
「きっとアイドルプリキュアってこの子達だよ!」
そう言ってましろは3人に自身のスマホを見せる。そこにはステージに立つボリュームある金髪に派手なピンク色の衣装を纏って歌う少女の姿に続いて青と紫の少女が歌う映像も流れ、最後にはそれぞれ白と黒の衣装を身に纏った2人の女性がデュエットで歌う映像が流れる。
「こ、これがアイドルプリキュア…!そして、この2人がズキューンキッスなんですか?」
「いや、アイドルって…そのまんまなの!?」
「まさか歌って踊るプリキュアがいるとは…」
てっきり何かしらの比喩とかそういうものかと思ってたアイドルプリキュアという名前は本当にアイドルとして活躍している事に驚きを隠せなかった。
一方でベリィベリーはゆきからキュアズキューンという存在の良い所を語る姿にやや引いていた。
「でね、キュアズキューンとキュアキッスは大人っぽくてかっこいいしキラキラしてて歌も上手なんだよ!そんでもってその中でキュアズキューンは大人っぽい見た目とは裏腹に時々可愛い仕草があったりしてこう、ギャップ萌え…かな?兎に角相手のハートをロックオンして、君とズキューン!って撃ち抜いて私のハートもキュアズキューンにズキューンされてズキューンになったプリ〜ッ!」
「そ、そうか、というか後半ほぼズキューンという単語で埋め尽くされているし、あとなんか語尾がおかしくないか?」
キュアズキューンの良い所を語る度に一歩一歩前進してくるゆきにベリィベリーは苦手意識を覚える。それと何故か興奮のあまり変な語尾が付いている始末だ。
「兎に角落ち着いてくれ。興奮し過ぎて全くと言って良いほど話が理解出来ん」
「なら、このエンタメブンブン最新号を見ればキュアズキューンについて載っているから是非見て虜になるプリ〜!」
「お、おい!情報量が多過ぎだ。あと次から次に私の知らないものを押し付けようとするな!あー頭がショートするわ!」
ゆきの推しへの愛を押し付けられるベリィベリーは思わずその場から逃げ、ゆきも「待つプリ〜!」と言いながら雑誌を右手に左手には白く光るハート型のペンライトを装備して彼女を追いかける。
そんな鬼ごっこをらんこは黙って見ていると恐る恐るましろが話しかけてくる。
「ねぇ、らんこちゃん。らんこちゃんが前に会ったユキちゃんってあーいう性格してたの?」
「い、いや…私の知るユキはあの子よりもかなりおとなしめだったわ」
目の前にいるゆきと記憶の中にあるユキを比較して性格に激しい差があることで名前がただ同じなだけの別人と思えてきた。しかしよく考えてみれば世界が違うと同じ人物でも性格が異なるのはアニメや漫画とかでは有りがちな事である為そう思えば割り切れる……筈。
(というかあの子、なんで幼児なのにあそこまでオタクみたいに流暢に熱く語れるの?それに何あの語尾は?」
「ゆきはあんな風に好きな人の話になるとすっげえ早口になるんだ。ただ、あの口癖に関してはわからないけど」
「へぇそうなんだ……って、あさひ!?あんた何で私の考えている事がわかったの!?」
「いや、らんこさん口から出してたぞ」
どうやら心の声で喋ってたつもりが口から漏れていたようだ。まぁ別人とはいえ友達の性格が大きく違う事を目の当たりにして心に来るものがあったのだろう。
「ち、因みに聞くけどあんたゆきと初めて会った時はどんな感じだったの?」
「どうって…まぁ、最初はなんか大人しかったけど、俺がズキューンキッスのキュアキッスが好きって分かるとあーやって無茶苦茶話しかけられたんだ。あっ、普段は本当に大人しいんだ!…本当に…でも、あーやって好きな人に対して熱く語るのもゆきの良いところで…!」
「ふーん、そうなの…」
どうやらあさひもゆきの推しを語る姿と普段の大人しい性格の差に困惑している…かと思いきや幼児ながらゆきの見せるギャップの差が好ましく思える姿にどの世界でもあさひはゆきの事が好きになるのだと納得した。
(まだ、恋心としての自覚は無さそうだけどいずれは自覚しそうね)
どちらともまだ幼児である事から精神的に幼く恋心なんてわからないがあさひは先ほどの様にキュアズキューンに対して熱く語るゆきの姿に自身のハートを撃ち抜かれたのだろう。後、数年も経てばきっとそれが恋だと理解するだろう。無論、ゆきの方はまだあさひに対して異性としての好きだとは自覚は無さそうだがこれから長く付き合っていけばいつかは彼女もハートをあさひにズキューンと撃ち抜かれるに違いない。
『ハートをプリッとロックオン!君とズッキューン、キュアズキューン!』
誰だこいつ?
「ハッ!今ズキューンっぽい声が頭の中に……いや、これゆきかしら?」
何やららんこの頭の中から相変わらず謎の幻聴が聞こえてきたもののそれがゆきの熱く語るキュアズキューンっぽいが、その声がどうもゆきの声に似ている事から断定出来なかった。
「ところであさひ君はこの街に住むプリキュアの5人は知ってますか?」
「うーん…噂では知っているけど、特にテレビとか出てないし歌もないからあまり興味無いな」
「「「「えっ!?」」」」
ソラからの質問にあさひはバッサリと興味無いと答える。どうやらアイドルプリキュアやズキューンキッスの様にテレビやSNSなどのメディアにがっつりと出演してない自分達は比較したら人気は天と地ほどの差があるだろう。
尚、これをきっかけに彼女達は自分達の持ち歌を作ろうかと真面目に悩んだというのは秘密だ。
という事で今回はBURNINGさんの書く小説のキャラであるアサヒとユキを先に登場したひかると同様にこちら側の世界では幼児としてゲスト出演させていただきました。
元ネタのBURNINGさんの小説のURLを貼っておきますね。
https://syosetu.org/novel/330971/
次回も楽しみにしていてくださいね。