それから時間を掛けてらんこは何とかソラ達の誤解を解く事に成功する。その後は人参を収穫して他の野菜も収穫するとバラバラになっていたましろ達と合流する。
「いだっ!ちょ、らんこさんやめっ、いででででっ!」
その時、合流したらんこは真っ先にひかるの元へ行くと無言でひかるの背中をポカポカと殴っていた。この行為は先程のやり取りを見て自分という彼女がいるにも関わらず、ベリィベリーと良い感じの雰囲気を見せたひかるへと嫉妬心を抱き八つ当たりをしていたのだ。
「らんこ、その辺にしといてやれ。雷田ひかるも反省し、あだっ!?まっ、待て!なんで私もいだっ!お、おい、なんだか私だけ殴るのが強くないか、あだだだだだだっ!」
今度は矛先をベリィベリーに変えたらんこは同様に彼女の事も殴り始めた。というかひかると比べてボコボコと音が鈍い為、先程よりも力強く殴っている事が窺える。しかもらんこはそれだけでは止まらず、更にベリィベリーの上に馬乗りした上で殴ろうとしたので流石にソラ達が全力で止めに入った。
──────────
それかららんこが落ち着いた後一同は各々が収穫した野菜を見せ合っていた。
「ここねの採ったピーマンは艶が良いパム!」
「それなら私も大きさじゃ負けてないよ!」
「ぱ、パムパム恥ずかしいから…!」
「2人とも張りあわないでくださいよ」
ピーマンを収穫したあげはとパムパムは互いに自分達の採ったピーマンこそが1番だと子供の様な張り合いをを見せ、そのやり取りにパートナーであるここねとツバサは苦笑いを浮かべる。
「見てこのモサモサのトウモロコシの髭でらんらん仙人だよ」
「立派な髭メン」
「ははっ、らんちゃん似合っているよ」
「エルもエルも!」
「あら、エルちゃんも真似をしたいの?」
トウモロコシを収穫したましろ達は大量に生えた髭の毛量を見てそれを鼻の下に乗せて遊んでいて和んでたり。
「見ろらんこ。私の(胡瓜)は太くてデカいぞ」
「俺だって(胡瓜)の長さは負けてねえぞ!」
「わあ!2人とも随分ご立派(な胡瓜)ですね!」
「あんた達胡瓜で張り合うんじゃないの。あと胡瓜って言わないだけでなんか卑猥に聞こえてくるから本当にやめて」
胡瓜を収穫したひかるとベリィベリー自分の物こそはとそれぞれ収穫した胡瓜を自慢する。だが肝心の胡瓜という言葉が抜けている所為でらんこの耳には話の内容が卑猥に聞こえてしまっていた。そのため、真面目なソラとは対照的に少し顔を赤くして恥ずかしそうにする反応を見せるらんこであった。
「全く折角のチャンスを棒に振るとは呆れたものだぞ品田」
「そうよ。運良くゆいと一緒のくじを引いたのに全然進展が無かったじゃない」
「だ、だから俺は別にゆいとはそんな感情は抱いてねぇーよっ!!!」
一方であまね達はゆい達に自分達の成果の報告…では無く、拓海に対して色々と指摘していた。今回のペア行動の時間で遠くから拓海の様子を見ていたあまねとローズマリー。だが、当の拓海は折角ゆいとの距離を縮めるチャンスだったのにそれを活かせなかった。なので、二人は拓海のヘタレっぷりを問い詰めているのである。対して拓海はゆいに対して恋愛感情はないと否定するが、それは嘘であるとわかっているあまね達は拓海に対して呆れた眼差しを向ける。
「拓海?マリちゃん達となんの話をしているの?」
「コメ〜?」
そんな中事情を知らないゆいはコメコメと共にこてんと首を傾げていると空腹を知らせる音がゆいとコメコメの腹から響き渡る。
「野菜の収穫をしていたらはらぺこった〜」
「コメコメもコメ〜」
「お前は相変わらず…と言いたいが今は丁度昼だからな。腹減るのも仕方ないよな」
拓海はスマホを取り出して時間を確認すると丁度昼の12時…ランチタイムを示しており、他の皆も今の時間を認識すると何人か腹を押さえる。
「は、恥ずかしながら私もお腹が空いてきました」
「わ、私も…」
ゆいに続く様にソラは少し恥ずかしそうに空腹を訴え、らんこも同様の反応を見せる。そんなわけで野菜収穫はそろそろ中断してお昼の準備に取り掛かろうと一同は意識を切り替える。
「それなら皆んなで採った野菜を使って何か作りましょうかね」
「良いのお婆ちゃん?」
「ええ、もちろん」
『やったー!!!』
ましろの問いにヨヨは肯定する。それを聞いた一同は採れたて野菜を味わう事が出来ると大喜びする。
「それじゃあどんな料理を作ろうかな」
「出来たら私はガッツリとした物がいいわね」
「でも、そんなお腹に溜まるような物が作れるかしら?」
生野菜をそのまま食べるのも良いが、ここに居る何人かは大食漢である為出来るだけ腹に溜まりやすい物が良いだろう。しかし、そうなるとどんな料理を作るべきか…というかそれ以前にそんな本格的な料理を作れる調味料や調理器具なんかこの場に持ってきていない。そのため作れるレパートリーは少なく何を作れば良いかと悩み出す。すると何やらあげはが意味深な笑みを浮かべる。
「フフフッ、こんな事もあろうかと私はこれを持ってきたよ。ジャジャーン!」
『そ、それは…!』
あげはがポケットから取り出した物を見て一同は思わず目を輝かせる。あげはが取り出した物とは子供から大人まで大好きな定番料理カレーに欠かせない材料…カレールウであった。
「やるじゃないあげは!それなら私も米を持ってきたわよ!」
「流石マリちゃん準備が良い!」
すると今度はローズマリー何処からとも無く5キロの米が入った袋を取り出したのだ。これなら美味しいカレーが作れると確信した一同はこれから作って食べられるだろうカレーライスを想像する。
「じゃあ早速皆さんで力を合わせて美味しいカレーを作りましょう」
「うん、それでマリちゃん鍋と炊飯器は?」
「え?私は持ってきてないけど、あげははもってきた?」
「いや、私はカレールウしか持ってきてないよ」
『え?』
2人の発言に思わず一同は声を漏らした。この2人はカレーに必要な材料は持ってきたのにも関わらず肝心の作る為の調理器具を持って来なかったようだ。
「あげはさん…それにマリちゃんもなんでルウと米を持ってきて調理器具を持ってこなかったんですか」
「いやぁ、めんごめんご」
「ごめんなさい。私もうっかり忘れていたわ」
食材を持ってきて調理器具を忘れた2人に一瞬ツバサは呆れてしまう。ただ、よくよく考えたら自分達も食材や調理器具を持って来なかった為其処まで強くは二人の事を言えずにいた。
「お婆ちゃん、鍋とか無いかな?」
「ごめんなさい。私も用意するのを忘れてしまいました」
「え、ヨヨさんも!?」
しかも今回はいつも何かと準備がよろしかったあのヨヨですら用意しておらず、らんこは戦慄が走りそうになる。このままでは折角カレー気分だったのにモチベーションが低い状態でメニューを変えてしまう事になってしまう。一同はどうしたら良いかと悩んでいるとらんこが「あっ」と何かを思いついた様な声を上げる。
「ねぇ、もしかしたら何とかなるかもしれないわよ」
「え、何か手立てはあるの?」
するとらんこはその場から離れると少しして何やら大きな荷物を持ち帰ってきた。
「あれ?それって」
「俺がもってきたリュックじゃないか!」
らんこが持ってきた物とはひかるがこちらの世界にやってきた時に勘違いでキャンプ道具をこれでもかと詰めたリュックであった。
「そうよ。確かひかるはこのリュックに飯盒を入れてきたとか言ってたから多分他にも調理器具があるはずよ」
ひかるから許可を得てリュックの中身を漁りだすと相応の量の道具やゲーム機などが大量に出てきてそれらをリュックの隣に置いて再び中身を漁ると飯盒と鍋が出てきたのだが…。
『いやデカッ!?』
出てきたのは確かに飯盒と鍋なのだがキャンプ道具にしては大き過ぎるのだ。らんこは元々ひかるが用意した荷物は自分と2人っきりを想定していたと聞いていた。それを考慮し、彼女小さい調理器具が入っていると予想していたのだが…まさかのこの場にいる人数を賄える程の大きさの調理器具が出てきた事にらんこはジト目でひかるを見つめる。そして彼女にジト目を慌ててひかるは口を開く。
「い、言っておくけど誤解だから!実は家にあったのがそれくらいのサイズしか無かったから仕方なくそれを持ってきただけで、らんこさんが結構食べるからと思って持ってきた訳じゃないから!」
「ふーん…まぁ良いわ。幸いにも何とかこれでカレー作りは何とかなりそうだし大目に見てあげる。さぁ皆、トラブルはあったけどこれでカレーを作るわよ」
『おおーっ!』
ひかるの言う事が本当か嘘か定かではないが取り敢えず人数分のカレーが出来る為、追求はしない事にしたらんこ。これにより、彼女はソラ達と協力してカレー作りに専念するのであった。
そしてカレー作りを手伝おうとしたひかるにベリィベリーが近づく。
「実際の所あの大きさしかなかったのか?」
「ぶっちゃけるとらんこさんが結構食べると思って用意しました」
結局の所ひかるはらんこが大食漢である事を見越してあのサイズを用意したらしい。ただ、素直にその事を言うとらんこは怒ると思ったひかるは黙っていた様だ。
「…まぁ良い。お互いらんこに殴られた仲だ。今のはらんこに黙っt「ありがとうございます!」…食い気味でお礼を言うな」
真実を黙っている事にしたベリィベリーへとひかるは即座にお礼を言いうと彼女は呆れた表情を浮かべる。…尚もしも真実を伝えた場合はまたひかるは殴られる事となり、それを伝えたベリィベリーも巻き添えを喰らう事となるため彼女は懸命な判断をしたと言える。
────────
それから一同の動きは早かった。それぞれ収穫した野菜を分担して切ったり、飯盒で米を炊いたりと全員が一丸となってカレー作りを行うとそれは数十分の時間をかけて出来上がった。それからレジャーシートを広げ、そこに野菜がたっぷり入った野菜カレーと炊き立てのごはんをよそった皿を人数分並べる。
『お、おいしそう…!』
出来上がったカレーは肉は一切使ってない野菜カレーにも関わらず、カレーのスパイシーな香りが鼻腔を擽ると一同の空腹となった腹に刺激を与える。
更に作ったのはカレーだけでない。その近くには先程収穫した野菜を使ったサラダも置かれてあった。このサラダは新鮮さ溢れる生の野菜で構成されているため、その美味しさも堪能できるのだ。
「ねぇねぇ早く食べようよ」
「カレー早く食べたいコメ」
「わかっているわよ。でも食べる前にお約束のアレをしないとね」
「あ、アレだね!それじゃあ皆んな手を合わせて」
出来立てのカレーを早く食べたいとソワソワするらんやコメコメ。彼女達に対してマリちゃんが"アレ"を言う必要があると言い出す。それを聞き、ゆいもその言葉がどう言う意味か察すると全員に手を合わせる様にと伝えた。そのため一同は一斉に両手を合わせ始める。
『いただきま〜す』
その直後にこの世の食材に感謝を込めた言葉を言った一同。それから早速カレーを食べ始める。
「うーん、デリシャスマイル〜!」
「美味しい!野菜だけでここまで美味しいカレーが出来るなんて」
「肉が無いから不安になってたけど、肉が無くても良い味が出ているな」
「付け合わせのサラダも中々いけるね」
ゆいを筆頭に各々はカレーの出来栄えに舌を唸らせる。通常、カレーは野菜以外に肉などを主に使用する。ただ、今回のカレーには肉を使っておらず。その分野菜を多めに入れる事で野菜の旨みが凝縮できた様だ。更にはカレーの辛さを調和する為に用意したサラダも採れたての野菜を使っている為、新鮮で瑞々しい味を感じられる。
「うーん…口の中にカレーのスパイシーな香りが鼻を通って…更には新鮮な野菜達の旨みとカレーの刺激ある味が絡み合って新たな美味しさと感動が生まれる…まさにここはカレーの国インドだよ〜!」
「ここ日本よ。後それ日本のカレールウと日本の食材使っているから日本式カレーよ」
「悲報、此処はカレーの国インドじゃなく日本であった」
『ハハハッ』
カレーを食べたらんが以前もやった一癖も二癖もある食レポを披露し、それを聞いたらんこがツッコミを入れるとそこからひかるがボケを言い、同時に周りから笑いが広がる。
一方でソラとベリィベリーは何やらカレーを見て不思議そうな顔を浮かべている。
「ところでこのカレー…普段ましろさんの家で食べる出来立てならもう少しシャバシャバしているのにドロドロしていて、ルウが野菜にもしっかりと味がついていますよね」
「そういえばそうだな」
ましろの家でもカレーを食べるソラとベリィベリーは普段食べるカレーと今回作った出来立てカレーが別物と言うくらい味が異なっている事に何か特別な材料でも入れたのかと考える。するとその話を聞いたらんこが疑問に答えた。
「それは無水カレーだからよ。通常のカレー作りには鍋いっぱいの水を入れるけど、今回は大量の野菜を使う事で必要な水を野菜の中にある水分で補ったの。そうする事で野菜本来の旨みを十二分に引き出した上で、ルウが具材とよく馴染み味わい深い味になるわ」
「成る程、通りd『ピピピーッ♪』あっ、レシピッピ!」
ソラ達がらんこの解説を聞いて納得しかけた時、一同の目の前にはカレーとサラダのレシピッピが現れる。
「わあ!カレーとサラダのレシピッピだ!」
「ヤッバ!こんな所にも現れるなんてね」
あげはとらんはそれぞれミラーパッドとハートキュアウォッチを使ってレシピッピを写真で収める。
「な、なんだこの妖精達は!?もしかしてこれが前に言ってたレシピッピか!?」
「これはあの時の妖精とよく似ている…」
一方でひかるは以前おいしーなタウンでレシピッピを認識出来ていなかった為、今回初めてその目で見て驚きの声を上げていた。それに対してベリィベリーはスカイランドでバッタモンダーに捕まってたボールドーナツのレシピッピと似ている事に驚く。
「ベリィベリー、この子達はレシピッピと言ってらん達が言うには料理の妖精で料理の事を強く思っていると見える様になるって」
「料理の妖精だと?成る程、通りで我々が食べているカレーとサラダと似ている訳か」
ベリィベリーは前に見た際は遠目な上に一瞬しかレシピッピを見なかったので知識が無かったが、今回らんこからレシピッピについて改めて聞くとその生体に関して理解した様子だ。
「こんな所でレシピッピにお目にかかれるなんてね」
「ますますカレーがおいしく食べれちゃうよ」
「ゆいは相変わらずだな」
おいしーなタウンなどではよく見かけるレシピッピだが、こんな山奥で見れるのはのは珍しい事である為一同はレシピッピを見ながらカレーを食べるのであった。
「あっ」
「ん?どうしたのツバサ君?」
カレーを食べていると突然声を上げたツバサにましろは気になって話しかける。
「皆さん、これから雨が降りそうなんで屋根のある所へ避難しましょう」
「え?こんな晴れているのに雨なんて──」
降りそうにないとあげはが言いかけた時、彼女の鼻先に何か水滴の様な物が当たる。すると、先程まで晴れていた空に次第に濁った雲が段々と広がっていくとそれに比例してポツポツと雨粒が降ってくる。
「うわっ!本当に降ってきた!」
「皆んなツバサ君の指示に従って屋根のある所に避難するわよ!」
ずぶ濡れになる前に一同は食事を中断して慌ててブルーシートや食べている途中のカレーやサラダ。更に中身がまだ入っている鍋と飯盒を回収して屋根のある所…東屋へと避難する。
全員が避難すると次第に雨の降る量は多くなっていき、どうにかずぶ濡れにならずに済んだのだ。
「ふぅ…ツバサ君がいち早く気づかなかったら私たちずぶ濡れになってたよ」
「本当そうだね。でも、少年はなんで雨が降るってわかったの?」
一同は何故ツバサが先程いち早く雨が降り出す事に気付いたのか気になり、彼に視線を向けると少々恥ずかしそうにしながらも口を開く。
「雲を見たんですよ。あの雲は朝の時は小さかったんですが雨を降らせる大きな雲に成長していたんです」
「へぇ…え?まさか朝の雲の状態も確認していたの!?」
今の雲が朝とは全く違うと気づいた事は朝から天気を常に気にしていた事となる。ここねはその事をツバサに確認してみると「はい」と返事をする。
「あ、後ついでに言うとこの雨はそんなに長く降りませんから大丈夫ですよ」
「へぇ、この雨がすぐ止むまでわかっちゃうなんてすごいわね」
「もしかして天気予報士になる勉強でもしていたのか?」
「いえ、天気予報士じゃなくて僕は空を飛ぶ勉強をしていて…あっ」
ローズマリーとあまねとの会話の中でツバサはある事に気がつく。それはかつて空を飛ぶ事を夢に見て今まで飛ぶ事に関連した勉強をしてきたが、飛べるようになってからは学んだ知識はあまり使う事は無かった。そのため学んだ知識が無駄になったと思っていたツバサ。しかし、今その知識がこうやって皆を助ける事になるとは思いもよらず。まさに目から鱗というものだ。
「知りたいという気持ちは繋がって広がる… 空を飛ぶために勉強していたことがみんなを雨から守ってくれたわね」
「え?」
すると突然ヨヨが何やら語り出し、思わずツバサはそれに聞き入ってしまう。
「私ね、何かを学ぶことと畑は似ていると思うの。学んだ事は肥料となってあなた達の夢の種を育ててくれる。けれどその種はいつ芽吹くか分からないから学んだ事は全部無駄だったんじゃないかって不安になるのよね」
(無駄…ね…)
ヨヨの話を聞いていたらんこも大掃除の時に空を飛ぶ事を夢に見たツバサが今まで沢山飛ぶ事について色々と勉強したものの、それが無駄になったのではと不安になっていた事を思い出す。
「でも、大丈夫。それは明日かもずっと先の未来かもしれないけれど必ず花開く時が来るわ。しかも思いもよらない花が咲くこともあるのよ。例えば勉強の為に作った鳥の模型が畑を守ったりするみたいにね」
そう言ってヨヨは視線を畑の方に向けるとそこには野菜を守る為に設置されてあった鳥の模型があった。それを見たツバサは驚いた様に目を見開いた。
「あ、よく見たらあれは僕が作った模型だ」
「え、あれツバサ君が作ったの!?」
「畑の所に点々と吊るされてあったあの鳥ってツバサ君が作った物なんだ」
どうやら野菜を害獣から守る為に案山子の役割としてこの畑にはツバサが作った鳥の模型が配置されている様だった。
「ええ、元々ツバサさんが空を飛ぶ為の勉強として作った物だけど譲って貰って。それをこうやって野菜を守る為に置いているのよ」
「すっごいじゃん少年!少年の作った模型が役に立ってて!」
「本当に凄いよ!このカレーとサラダを食べられるのはツバサ君のお陰って事じゃん!」
「ぼ、僕はそんなつもりで作ったんじゃ」
あげはとゆいに褒められた事にツバサは慣れないのか恥ずかしそうに謙遜した態度を見せる。とはいえ、内心では結構嬉しかったツバサであった。先程ヨヨが言ってた思いもよらない花が咲くという言葉。それを示すかのように役に立った鳥の模型の事や突然の雨を事前に気付けた事。それら自身の学んだ知識が別の事で役立った事にツバサは嬉しく思えたのだった。
「おやおや、漸く辿り着いたかと思ったら君たちは優雅にランチタイムか」
『っ!?』
その時、その場にいる全員は聞き覚えのある声が聞こえた事に反射的に振り向く。其処には図鑑を抱えるバッタモンダーと大きめのパラソルを開いた状態で手に持つターボマン。そしてそのパラソルの下で雨に濡れずにいるキメラングの姿があった。