ひろプリに野良猫系キャラを入れてみた   作:獅子河馬ブウ

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第121話 貴女の本当の名前

「お、お婆ちゃん!?」

 

『ヨヨさん!?』

 

プリズムを筆頭とした一同は思わず驚きの声を上げる。何故なら目の前には戦う力を持たないヨヨがおり、この場に現れたのだ。

 

「な、なんでヨヨさんが!?」

 

自分達とキメラングとの戦いが始まってからヨヨは安全な所にエルと共に避難していた筈。だと言うのに何故危険な場所に首を突っ込んだのかこの場にいる人間は誰も理解出来なかった。だが、幸いな事にヨヨがキメラングに話しかけた事でフィナーレの危機を脱する事はできた。しかし、代わりにヨヨがキメラングから意識を向けられてしまい下手にキメラングを刺激すればヨヨの身が危ない状態となってしまった。

 

「お婆ちゃん逃げて!」

 

そんなヨヨの危機にプリズムは助けに行きたかったが、先程のキメラングの攻撃にその場から立ち上がる力が残っておらず。ヨヨに逃げる様に声を掛けるしかなかった。

 

「バタフライ!ミックスパレットを!」

 

「ブラペあんた前に回復の力を使ってたわよね!それを使って!」

 

一刻も早くヨヨを助けようとスカイはバタフライ、ツイスターはブラペにそれぞれ話しかけて回復の力を使う様に促す。

 

「ごめん!私も使いたくても体が言う事を聞いてくれない…!」

 

「俺も身体が痺れて…!」

 

だが、どちらともキメラングとの戦闘により身体を動かせず。他の者を回復させる事は出来なかった。一体どうすればヨヨを助けられるのかと誰もが疑問に思っているとそこに遠くから誰かの走る足音が聞こえてくる。

 

「ヨヨ殿!其処にいては危険だ!下がってください!」

 

「ばーばっ!」

 

「べ、ベリィベリー!」

 

其処に現れたのはエルを抱えたベリィベリーだ。どうやらヨヨの無茶な行動を止めようとやって来てくれたようだ。一同はベリィベリーにヨヨを連れて逃げる様に指示を出そうとするが、その前にヨヨが手を出して止める。

 

「ベリィベリーさん心配してくれてありがとう。でも私は大丈夫よ」

 

「い、いや!大丈夫な訳ありませんよ!ヨヨ殿は詳しく知らないみたいですが、そこにいるキメラングは例え力を持たない者に対しても容赦はしない危険な奴なんです!」

 

「ばーば!あぶない!」

 

逃げようとしないヨヨに対してキメラングの危険性を必死で訴えるベリィベリーとエル。だが、それでもヨヨはその場から下がろうとしなかった。

 

「お願い。少しだけこの子とお話をさせて」

 

「よ、ヨヨ殿…」

 

説得に応じず何やらキメラングと対話を望むヨヨにベリィベリーは何も言えなかった。対してヨヨは数歩歩きキメラングに近づく。

 

「おばあちゃん危ないよ!」

 

「そ、そうですヨヨさんそいつから離れて!」

 

ベリィベリーに続いて一同はこの場から離れるように言うが全く動こうとせずキメラングを見つめている。一方でキメラングはヨヨを見た直後にヘルメットにスパークと共に頭痛が起き辛そうな顔を浮かべ、頭を抑える。

 

「ぐっ!また君か…。何故君を見ると頭がこんなに痛むんだ…!」

 

あまりにも強い頭痛に思わず得物であるツインミラージュを落としてしまうキメラング。彼女は頭痛を引き起こす原因であろうヨヨを親の仇かと言わんばかりに強く睨みつける。対してヨヨはそんなキメラングに動じず、それどころか心配そうな表情を浮かべる。

 

「もうやめて…貴女が辛そうな顔をしていると私も胸が苦しいの」

 

「胸が苦しい…だと?私は君の姿と声を聞くだけで激しい頭痛が起きているんだ!苦しいのはこっちだ!被害者面するな!」

 

「お婆ちゃん逃げて!」

 

キメラングは頭痛によって苦しむ己をヨヨが馬鹿にしているのかと思い込み、落としたツインミラージュを拾い上げてヨヨに刀身を向ける。それを見たプリズムはヨヨに離れるように言うが、ヨヨはその場から一歩も下がろうとせず会話を続ける。

 

「…貴女が私の前から消えて長い年月が経ち、まさか私の孫達と戦っている事が今でも信じられなかった」

 

「な、何を言っている…?」

 

突然話を始めるキメラングは思わず呆然となる。対してヨヨはキメラングを懐かしむ様に見つめる。

 

「でも、髪と瞳の色は変わっても貴女の姿はあの時のまま…まるで貴女だけがあの頃のまま時間が止まっているようだわ」

 

「君は…お前はさっきから何を訳の分からん事を言っているんだ!?」

 

まるで自分の事を何でも知っているかの様なヨヨの言動。それに普段から狂気的な言動や思考を持つキメラングは目の前に立つヨヨが気味悪く思えた。

 

「お願い。もう戦うのはやめて、まだ貴女は罪を償えるはずよ」

 

「罪を償えだって…ハッ、馬鹿な事を!君は歳をとって耄碌した。いや、歳をとっても相変わらず甘い事を…っ!?」

 

思わず口を抑えるキメラング。彼女の表情はこれまでに無い動揺と大量の汗が浮かび上がる。

 

(どう言うことだ……私はこの老婆を知らない…全く知らない筈なのに何故?何故っ!?)

 

自分は目の前の老婆(ヨヨ)については全く知らない筈。なのに何故相変わらずなど知っている様な事を言ったのかとキメラングの頭の中にはそんな疑問で埋め尽くされる。

一方でヨヨはキメラングを見て思わず笑みを溢す。

 

「ふふっ、どうやら私の事を覚えているようね」

 

「お前…私に何をした?言え!私に何かしただろう!言わなければお前を斬るぞ!」

 

これは冗談では無いと言わんばかりに剣をヨヨに突き付けるが、ヨヨは全く動じずヤンチャな子供を見る母親の様な眼差しをキメラングに向ける。

 

「貴女が私を斬って満足して皆んなに手を出さなければ私はそれを受け入れるわ」

 

『なっ!?』

 

思わずヨヨの発言に一同は驚きの声を上げる。今のキメラングは元の性格からまともでは無かったが、今の状態はそれよりも悪い。そんな彼女に自分を斬れなんて言えばキメラングは本当に斬る可能性が高かったのだ。

一方でキメラングはヨヨの発言に面食らったのか身体が固まるものの、数秒してハッとなり口を開く。

 

「ちょ、挑発のつもりか…オーケーだ。それなら望み通りバッサリと斬ってあげるよ‼︎」

 

『ヨヨさん(殿)‼︎』

 

「お婆ちゃん‼︎いやああああああああっ!!!」

 

ツインミラージュを振り上げたキメラングはヨヨに斬りかかろうとし、それを見たプリズム達は声を上げヨヨを助けに行こうとしたかった。しかしプリズム達は身体を動かす事が出来ない為、そのままキメラングの持つツインミラージュがヨヨの首に向かって振り下ろされる。そのままキメラングはヨヨの首を撥ね飛ばそうとする───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──かと思いきや何故か刀身がヨヨの首からほんの数センチ前でピタリと止まったのだ。

 

「ど、どうして私はお前の首を斬れないんだ…!」

 

何故ヨヨの首を切り落とせないのかキメラング自身分からなかった。彼女にとってヨヨは己を苦しめ、更には訳の分からない事の言う気味の悪い存在にしか見えなかった。その為、加えてヨヨはプリキュアでも何でもない一般人。だからキメラングはヨヨを情け容赦無く簡単に亡き者にする事が出来る…筈なのだが。

 

「何故…私は……お、お前を傷つけようとすると胸が張り裂けるくらいに痛むんだ…!」

 

狂気に満ちた赤い瞳からは大量の液体…そう、血も涙もないマッドサイエンティストとである筈の彼女の瞳からは涙が溢れ、頬を伝って流れていたのだ。

 

「嘘…!?」

 

「キメラングが…!」

 

「な、涙を…」

 

「流した…!」

 

ツイスター達は目の前の光景に自分達の目を疑う。これまでキメラングとの激しい戦いを繰り返し彼女の性根が腐っていると思い込んでいた。…だが、今のキメラングの姿を見てどうだろうか。ヨヨを傷つけようと躊躇い涙を流すその姿はツイスターから普段マッドサイエンティストと呼ばれていたとは思えない姿だ。

そしてヨヨはそんなキメラングの身体を優しく抱き締める。

 

「な、なにを「大丈夫…もう貴女を1人にしないわ」…え?」

 

ヨヨはまるで泣いている子供をあやすかの様にヘルメット越しから頭を撫でる。一方でキメラングは最初抱き締めるヨヨを突き飛ばそうと考えたが何故かそうしなかった…否、出来なかった。

 

「貴女は私の前から消えてからいろんな事をやっていたのでしょう。それもとても人には言えない悪い事を…でも、私はそんな貴女を見捨てたりはしないわ」

 

「な、何を言って…私は君の事は知らない…知らない筈なのにどうしてこんなに心地良く…懐かしいんだ…」

 

次第にキメラングは表情は段々と和らいでいき先程まであった頭痛は無くなっていく。更に手からはツインミラージュを手放し、地面に落とすとその衝撃でツイントーンが外れ纏っていたアーマーが消えて元の白衣姿に戻る。

 

「貴女が覚えていなくても私は貴女のことを今でもちゃんと覚えているわ。だって友達だもの」

 

「友達…私に友達が……?」

 

普段から他人の事は自身の実験のモルモットとして見てきたキメラング。更に自身の所属するアンダーグ帝国の住人達さえモルモットとして扱う事が多々あり、キメラングにとって"友達"という言葉は無縁のものだと思っていた。だが、今自身の身体を抱きしめているヨヨが自分の友達だと言われた時は何故だかしっくりときていた。

 

「そして貴女の本当の名前を知っている」

 

「本当の…名前?」

 

本当の名前、そんな物はヨヨの戯言であるとキメラングは聞き流そうと考えた。何故ならそうしないと己のアイデンティティが崩壊しそうだからだ。だが同時にこれから言う本当の名前に興味があり聞けば昔失った何かを取り戻せそうだと言う真逆の考えが存在する。

結果としてどっちにするかは好奇心が旺盛なキメラングにとっては後者を選んだ。

 

「よく聞いてね。貴女の本当の名前は

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

グランよ」

 

グランそれが本当の……名前……!」

 

するとキメラングの瞳の色はまるで信号機が点滅するかの様に赤と青と交互に変わっていく。

 

「き、キメラングの目の色が…」

 

「交互に変わっていく…」

 

「あまねんの時の様に…」

 

一方でキメラングの瞳の変化にプレシャス達は既視感を覚える。それはかつてフィナーレことあまねがブンドル団に洗脳され怪盗ジェントルーとして活動し、何度もレシピッピを求めてデリパ組とぶつかり合う中で彼女の洗脳が解け掛けた時と今のキメラングの状況が重なって見えたのだ。

 

「キメラング…やはり君は…!」

 

そしてフィナーレもキメラングの姿を見て彼女が自分と同じ様に洗脳されているのだと確信する。

そしてキメラングは瞳の色が次第に赤が抑えられて段々と青に保たれていく。

 

わ、私は私は

 

 

 

 

 

 

 

 

くだらん。こんな茶番など不要だ

 

「えっ、ああっ‼︎」

 

「お婆ちゃん!?」

 

しかし、その瞬間突然瞳の色が紫へと変化。そのままキメラングはヨヨを突き飛ばし、プリズムは突き飛ばされたヨヨを心配する。

 

「全く、危うく私の計画が頓挫する所だったな。まさかこんな老婆が計画の妨げになるとは驚きであったが」

 

「あ、あなたは…一体…?」

 

先程までのキメラングとは違い豹変した姿にヨヨは思わず問いかける。

 

「それを貴様が知る必要は無い。何故ならこの場で消せば計画は元通りになるからな」

 

そう言うとキメラングは落としたツインミラージュを手に取ると紫色の刀身を生やしてヨヨに向かって振り翳し、今度は容赦無くそのまま振り下ろした。

 

「いかんヨヨ殿‼︎」

 

「ばーばっ‼︎」

 

『ヨヨさん‼︎』

 

ヨヨのピンチにベリィベリーはエルをその場に置きヨヨを助けようと走り出す。だが今から走った所では間に合わないだろう。バタフライやスパイシーはバリアを扱えるが彼女達もバリアを生成する力が残っておらず。ただ見ているしかなかった。

 

「お婆ちゃん……だ、だめえええええっ!!!

 

目の前でヨヨが斬られそうな光景を見たプリズム。彼女は祖母の窮地を何とかしようと自身に残された最後の力を振り絞り、手にビー玉サイズの小さな光弾を作り出す。今更そんなちっぽけな光弾でキメラングを止められないことはわかっている。だからと言って何も出来ず大事な祖母を目の前で失いたく無いプリズムは自身の残りの力で作った金色の光弾をキメラングに放ったのだ。

 

「な、何だ!?この光はあああああああああああっ!?」

 

横から飛んで来た金色に輝く光弾をその身で受けたキメラングは頭を抱えて苦しそうな悲鳴を上げると手からツインミラージュを落とし、そして電源が切れた人形みたいに腕が地面に向かって垂れる。そのまま身体が地面に倒れ込むと意識を失った。

 

「え…なに?」

 

「プリズム、今の何なの?」

 

「キメラングが意識を…失った様だけど」

 

一同は突然の出来事に半分は理解に追い付かず、何名かはプリズムに一体どうやってキメラングを止めたのか尋ねる。

 

「わ、私も、お婆ちゃんの身が危なかったから咄嗟やったんだけど何をしたのかさっぱりで…」

 

プリズム自身はキメラングを止めようと必死であり自分が何をしたのか分からない様子だ。

 

「と、兎に角だ。奴が気を失っている今拘束を!」

 

ベリィベリーはキメラングが気を失っているこの好機を見逃さず彼女を捕まえようと近づいたその時、激しいエンジン音が辺りに響き渡る。

 

「おっと、そうはさせないぜ‼︎」

 

「なっ!?貴様は‼︎」

 

ベリィベリーの目の前に現れたのは先程まで戦いを傍観していたターボマンであった。ターボマンはキメラングがピンチと判断し、急いでこの場に駆けつけてきた様だ。

 

「悪いがドクターを連れていかれると俺の腕の修理が出来ないからな。今回は引き分けって事にしておいてやるぜ。じゃあな!」

 

「ま、待って!」

 

キメラングが連れていかれるのを見てヨヨは止まる様に声を出すが、ターボマンは勿論聞かず。彼はマフラーから排気ガスを排出し、煙幕代わりに使うと一同の視界を妨げる。そして排気ガスが消える頃にはターボマン達の姿は無かった。

 

「帰ったの?」

 

「ああ、そうみたいだな…」

 

目の前からターボマン達の姿がない事に恐る恐るツイスターは側に倒れているトールに話しかけるとトールはターボマン達が撤退した事を伝えた。それを聞いてツイスターは安心し、一気に身体から力が抜ける。

何はともあれ戦いが終わったとわかった一同は各々変身を解いていくのであった。

そんな中ヨヨは先程までキメラングが立っていた所に手を伸ばしている。

 

「グランさん……」

 

「お婆ちゃん……」

 

その姿はまるで大事にしていた娘が目の前で攫われた母親の様だった。そんなヨヨの姿を見てましろは悲しい顔を浮かべるのであった。

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