ひろプリに野良猫系キャラを入れてみた   作:獅子河馬ブウ

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第122話 次に向けて

それから数十分の時間が経ち、一同の体力がある程度回復した。ただ、コメコメ達エナジー妖精達の体力消費は激しくそれぞれのハートキュアウォッチの中で休んでいる。

ローズマリーがデリシャスフィールドを解除し、一同は元の畑へと戻ってくるがやはり全員の顔は浮かない様子だ。

 

「…今回私達は完全に負けてましたね」

 

「うん、最初はみんなで戦えば何とかなるって楽観的な考えを持っていたけど…キメラングは圧倒的だった」

 

「私達も万全な状態だったら状況は違かったかもしれなかった」

 

皆がいれば勝てる。そう信じていた一同だが、現実はそう甘く無かった。キメラングは1人にも関わらず、自分達全員を一度に相手して完全勝利してしまったのだ。これまで何度も強敵と戦い勝利してきた彼女達にとって今回の敗北は相当効いていた。ゆい達もソラ達と同様にショックを受けている。

 

(もし、次にキメラングと戦ったらまた負けるかもしれない…)

 

この先もキメラングとの戦いをすればまた今回の様に負けるかもしれないと一同は不安を抱き始めだす。その中で特にましろは思い悩んだ。

 

(もう一度、あの力が使えれば…)

 

ましろはヨヨが斬られそうになった時の土壇場に放った金色の光弾。それはキメラングを気絶させる程の力があり、あの力を再び放てればまだ次の戦いに希望はあると彼女は考えた。ただ、あの後何度かやってみたものの結局金色の光弾には辿り着けず。いつもの光弾しか出せなかったので落ち込んでしまう。

 

「皆、そんな不安な顔をいつまでもしてちゃダメよ!」

 

「そうだよ!こう言う時こそ気分をアゲアゲにして…」

 

場の雰囲気を変えようとローズマリーとあげはが年上として皆んなを引っ張って行こうとするも何とかしようとするも上手いフォローの仕方が思い浮かばなかった。

一体どうすれば皆んなの不安を和らげる事が出来るか2人は頭を悩ませているとらんこが口を開ける。

 

「あんた達、そんな落ち込んでいたってしょうがないでしょ」

 

「そうは言ってもらんこさん。僕たちは今回キメラングに勝てなかったんですよ。しかも、手も足も出ない程に。これで落ち込むなって言うのは無理な相談ですよ」

 

らんこの言葉にツバサが反論する。らんこは彼女なりにフォローしたつもりだった。だが、やはり今回の敗北はとても重く。反応を返したツバサも落ち込んでおり、他の面々もやはり同様の反応を見せる。それを見たらんこは軽くため息を吐く。

 

「だったらこれを見ても落ち込んでいるのかしら?」

 

「らんこさんそれってどう言う事ですか?」

 

するとらんこはポケットから何かを取り出しまるでコインコントロールをするかの様に指で巧みに扱う姿を一同に見せつける。一同はそれをみて少しの間膠着していたが、改めてその物を見て驚きの表情を露わにする。

 

「そ、それって!」

 

「キメラングが使ってたスカイトーン!」

 

「いや、ツイントーンって言ってなかった?」

 

らんこの持っている物は先程までキメラングがアーマーを纏う際に欠かせない鍵であるツイントーンだ。それを見たソラを筆頭とする一同は立ち上がってらんこの前に群がる。

 

「そんな事よりもらんこさんそれをどうやって手に入れたんだ?」

 

「そうだよ!らんらん達は動けなかった筈なのにどうやって!?」

 

ひかるとらんの言う通りキメラングとの戦いで全員が身体を動かせなくなるくらい疲労しており、同じく疲労していたらんこに手に入れる事なんてほぼ不可能な筈なのだ。そんな状態からどうやって手に入れたのか問い詰めるとらんこは「フフフッ」と怪しい笑みを浮かべる。

 

「実は私って中々手癖が悪いみたいで隙を見て…ね♪」

 

『!?』

 

手癖が悪いと言ってツイントーンを弄るらんこの姿に一同は察してしまう。らんこは盗んだのだと。

 

『全宇宙を股にかける宇宙怪盗ブルーキャット!』

 

誰だこいつ?

らんこの脳裏には宇宙に名が轟くアイドルをしていながらもその裏では青い衣装を身に包んだ怪盗少女の姿が過ったのだ。

 

「ら、らんこちゃん盗んだの!?」

 

「あの土壇場で!?」

 

一方でソラ達はらんこがツイントーンを盗んだ事に驚きつつ話を聞こうとする。正直キメラングとの距離は比較的近かったらんこではあったものの、至近距離に近づいて盗む様な動作は全く見られなかった…筈だ。だが、現にらんこの手の中にツイントーンがあるという事からそう言う事なんだろう。ただ、やっぱり殆どの人間は彼女の言葉を信じられなかった。

 

「ええ、私自身も内心驚いているわ。あっ、丁度将来の夢が無かったからこっちで食べていくって言うのも悪くないかもね」

 

『!!??』

 

さらっとらんこが盗む事にやり甲斐を感じ初めている事に戦慄が走った。らんこはかつては不良であったが、万引きや他人から物を盗むなんて事はしなかった。ただ、そんな彼女が盗みと言う犯罪行為を行ったら人生に汚点が付くだろう。更に伝説の戦士と言われているプリキュアである事から尚更アウトである。

 

「ダメだよらんこちゃん泥棒なんか!」

 

「そうよダメなんだから!」

 

「そーだよ!らんこちゃんは賢そうだからもっと良い夢を持てるよ!」

 

「3人の言う通りだ。盗みを働く事は多くの人を悲しませる事になるんだぞ。感心せぬ行いだ」

 

ゆい達はらんこの発言にその方向に行かないように慌てて止めに入る。特にあまねに至っては洗脳されてたとはいえ一時期ジェントルーとして料理の味を盗むことをしていた為、その説得力は強かった。

 

「そうだぞらんこ!もしお前が泥棒になってみろ!そうなったら私はお前を捕まえなければならない!捕まえたらお前を尋問し吐かなかったら肉体的な尋問を…何なら今すぐ予行練習しよう。グヘヘ」

 

「ベリィベリーさん、あんたらんこさんに何如何わしい事をしようとしやがるんだ!」

 

涎を流して卑猥な妄想を浮かべたベリィベリーはどこから取り出したのか縄を片手にらんこに近づこうとする。一方でひかるはらんこの身の危険を察してベリィベリーを止めに入る。

 

「ら、らんこさん今すぐ考え直して下さい!」

 

「そ、そうだよ!らんこちゃんスペック高いから真っ当な夢を持てる筈だよ!うん、絶対にね!」

 

「ましろさん達の言う通りです!らんこさんは賢く運動も出来ますから盗みよりも素晴らしい夢を持てる筈ですよ!」

 

「にゃんこめっ!」

 

ひかるがベリィベリーを止めている隙にソラ達がらんこを説得する。尚、ソラは相変わらずベリィベリーの下心に気が付かず。そのため純粋にらんこの為を思って言っている。

一方でそんなやり取りをあげはとローズマリーが眺めている。

 

「らんこちゃんが泥棒…いや、怪盗少女か……なんかそれって浪漫があって良いと思うから私は賛成側かな」

 

「う〜ん、私としては前にクッキングダムからレシピ本が盗まれたりブンドル団がレシピッピを盗んでたりしてたからあまり良い感情は抱けないけど、義賊としてなら賛成よ」

 

「「「ちょっとあげはさん(ちゃん)‼︎」」」

 

「「「「マリちゃん(マリッペ)!」」」」

 

「全く。なにを言ってんだあんたらは…」

 

意外と乗り気なあげはとローズマリーにソラ達とゆい達は2人を注意し、先程から黙って見ていた拓海は呆れた表情を浮かべる。

そんな漫才みたいなやり取りにらんこは思わず笑みを溢す。

 

「冗談よ。皆真に受け過ぎだから。それで、本当の事を言うとこれはマッドサイエンティストから直接盗んだんじゃないわよ」

 

「え、そうなのか?」

 

らんこが怪盗をすると言うのは冗談と聞いて一同は安心して胸を撫で下ろす。そんな中でベリィベリーは「尋問プレイがぁ…」と呟きながら心底残念そうにしていた。

 

「だが、実際のところどうやって手に入れたんだ?」

 

「その事に関してだけど、あのポンコツがマッドサイエンティストを連れていく際に慌てていたからこれを落とした事に気付かなかったみたいで。……だから拾っただけよ」

 

どうやらターボマンが撤収の際にツイントーンの存在に気付かず、回収しなかったらしい。そのため完全に放棄された所、らんこが拾ったというわけだ。そのため、それを聞いて一同は納得の表情を浮かべる。

らんこへの誤解が晴れた所で暫くはまたあの強大な強さを持つキメラングと戦わずに済むというわけで一同は安心する。ただ、あまねはらんこに話しかける。

 

「それでどうする?今は此処にそのツイントーンがあるが再び奴の手に渡ってしまったら厄介だぞ」

 

そうなってしまうと再び先程みたいに一方的にやられてしまう可能性がある。そうならない為には此処で破壊した方が今後の戦いで不利にならずに済むかもしれない。

 

「確かにあまねさんの言う通りです。此処は壊した方が良いかもしれません」

 

「うん、また私たちが負けるかもしれないからね。私もソラちゃんの意見に賛成だよ」

 

「ええ、僕も賛成です」

 

ソラとましろを筆頭にツイントーンを壊すことに賛成の声が次々と上がっていく。そんな中らんこだけは何か考えている様子だ。

 

「何だ?らんこさん何か気になる事でもあるのか?」

 

「ええ…皆んながコレを壊す事に賛成しているけど私はあまりお勧めはしないわ」

 

「えっ、どうしてなの?」

 

ゆいの言葉に皆は同じ意見だ。此処で壊しておけばキメラング側の戦力は下がって有利に戦えるのだ。それなのに反対とはどう言う事なのだろうか。

 

「確かに皆んなの意見は正しいわ。でも、此処で破壊しても彼奴はまた同じ物を作る…いや、それ以上の物を作るに決まっているわ。そうなるとコレを破壊してもただ私たちが有利に戦える時間が少し増えるだけ。そしてその時間が終われば今度こそ私たちはお終いよ」

 

お終い…それを聞いて一同は不安な顔を浮かべる。確かにキメラングの科学力を持ってすれば数日あれば同じ物を作れると確信があった。そうなったららんこの言う通り今度こそ完全に敗北してしまうのだ。

 

「そうならない為にも私たちは次の戦いで彼奴のヘルメットをかち割るわよ」

 

「か、かち割る?」

 

「どう言う事?」

 

ヘルメットをかち割ると聞いてゆい達は首を傾げる。ヘルメットをかち割る事が何を意味するのか彼女達は理解出来ずにいた。

 

「そうか、そう言うことか!」

 

「成る程、わかったよ!」

 

「理解出来ました!」

 

「えっ、ソラ達は今ので何を理解したの?」

 

未だにキメラングのヘルメットを壊す事に何があるのかわからない自分達に対してソラ達は理解を示している事に思わずローズマリーは疑問を投げる。

 

「皆も今日の戦い…厳密に言えば戦いの終盤ね。マッドサイエンティストがヨヨさんの事を攻撃出来なかったり物凄く取り乱していたりしたでしょ。そして最後には人が変わったかのようにヨヨさんを斬りかかろうとした」

 

らんこの説明を聞いてゆい達はキメラングの変化を思い出す。キメラングとの関わり合いは少ない彼女達だがヨヨとの会話で苦しむ姿と赤から青に変化した瞳、極め付けは紫色の瞳をしてヨヨを切り捨てようとする姿が過ぎると同時にゆい達はあまねに視線を向ける。

 

「やはりそう言う事なのか?」

 

「ええ、あんたや此処にいる皆んながもう察している通りよ。マッドサイエンティストは洗脳されているわ。あのヘルメットによって」

 

そう説明するらんこの脳裏にはヘルメットが外れた事によって本来の性格と姿が露わになったキメラングの姿が過ぎる。あの時も再びヘルメットが自分の意思でキメラングの頭部に強制的に装着された事で自分達のよく知るマッドサイエンティストの性格に戻っていた。

 

「やはりか…だが、洗脳されていたとはいえキメラングが今まで君達や他のみんなを傷つけてきたのは事実だ。それでも君達は助けると言うのか?」

 

幾ら洗脳されているといえキメラングは自分達だけでなく関係のない街の住人にも手を出そうとしてきた事がある。そんなキメラングを助ける事に抵抗は無いかと指摘するとらんこ達は互いに顔を合わせると口を開く。

 

「まあ、私としてはそう簡単に許すつもりは無いわ。でも少し前だけど彼奴は一時的だけど洗脳が解けて再び洗脳される間際に私達に助けを求めていた。悲しい事に私はお人好しみたいで今でもあの顔が頭に過ちゃって放って置けないみたいなのよね」

 

「私も同意見です。キメラングは今まで沢山の悪事を働いてきましたがヒーローとして助けを求めている人を見過ごせません」

 

「私も今でも信じられないけど、キメラングがお婆ちゃんの友達なら絶対に助けてあげたいの」

 

らんことソラ、そしてましろの意見を聞いたあまねは笑みを浮かべると側にいるツバサ達の顔を見るとらんこ達と同意見のようで強く頷く。

 

「そうか…なら私も協力しよう。もし今回の様に手強い戦いを強いられる事があれば私を呼んでくれ。力になろう」

 

「ううん。あまねちゃんだけじゃない…私達もだよ」

 

「良いんですか?」

 

あまねが力を貸すと言うと続いてゆい達も手を貸すと言い出した。

 

「ああ、私もかつて洗脳されてブンドル団のジェントルーとして操られていた事があるからな。キメラングの事を他人事とは言えないからな。洗脳されているのであれば私はキメラングを助けたい」

 

「私もヨヨさんと接している時のキメラングを見てあれが本当の姿なら今も洗脳で苦しんでいるかもしれないから一刻も助けてあげたい」

 

「「私(らんらん)も同じよ(だよ)」」

 

ゆい達…特にあまねは今回のキメラングに過去の自身の姿を重ねていた。そのため一刻も早く洗脳から解放し助けたいという気持ちが強かった。

 

「皆さん…ありがとうございます」

 

「ゆいちゃん達が協力してくれるなら百人力だよ!」

 

「是非とも力をお貸しさせてください!」

 

ゆい達が協力してくれると聞いてソラ達はとても嬉しそうに感謝する。そんなやり取りにらんこはやれやれと言わんばかりの表情を浮かべる。

 

「全く、揃いも揃ってお人好しね」

 

「そう言ってらんこさん本当は嬉しい癖に」

 

「肝心な所で素直に成れない…それがらんこちゃんのツンデレっていう可愛い個性だからね」

 

「にゃんこちゅんでれー」

 

「つ、ツンデレじゃないって!」

 

ひかる達から素直になれない事(ツンデレ)を指摘された事にらんこは赤面になって慌てて否定する。

兎に角これでゆい達デパプリ組との協力を得られた事でキメラングとの戦いに有利に回れると確信したらんこ。それから彼女はましろを連れて自分達から離れた場所に夕陽を寂しそうに眺めているヨヨに近づく。

 

「ヨヨさん少し良いですか?」

 

「ええ、どうしましたか?」

 

らんこに話しかけられたヨヨは普段通りの様子で対応するが何処と無くいつもと違う様に見えた。

 

「実は貴女にコレを預かって欲しいんです」

 

「これは…」

 

らんこがヨヨに渡した物とはキメラングのツイントーンである。ヨヨは渡されたツイントーンを見て目を見開く。

 

「最初はそれを使って私達もパワーアップするなんて事を考えたけど下手に使ったら何か良からぬ事が起きるかもしれないからヨヨさんに調べて欲しいの」

 

ツイントーンは元はキメラングがスカイトーンのデータを元に真似て作った事からスカイミラージュとの互換性機能はあると考えた。ただ、キメラングの事だから自分達が使えば何かしらのトラブルを引き起こすかもしれない。なのでらんこは先にヨヨに調べて欲しいと頼んだ。その時、隣でましろはくすくすと笑いだす。

 

「そう言ってらんこちゃん本当はお婆ちゃんの事が心配だから託したんでしょ」

 

「べ、別にそういう訳じゃ…まぁ、それよりもヨヨさんは大丈夫なの?」

 

「何がかしら?」

 

突然心配してくるらんこにヨヨは何を心配しているのか聞き返す。

 

「だってそのマッド…キメラングとは……友達なんでしょ」

 

「……ええ、私の大切な友達よ…ともだち……だったのよ…!」

 

らんこの問いにヨヨの脳裏にはキメラングとのやり取りを思い出す。短いやり取りではあったもののヨヨにとっては久しく会うキメラングとの再会は内心嬉しかったが。洗脳されていたが自身に敵意を剥き出して非難し斬りかかってきたのは内心では少なからずショックであった。

 

「お婆ちゃん…」

 

「……」

 

それを察したのかましろは普段穏やかなヨヨが辛そうにする姿を見て心配そうに見つめる。らんこもまたそんなヨヨを無言で見つめると目を閉じて息を吐く。

 

「仕方ないわね。なら、今度あいつに会った時はヨヨさんの前に連れ出してあげるわ」

 

「え?」

 

「らんこちゃん?」

 

らんこの言葉にヨヨはキョトンとなりましろもらんこを見つめる。

 

「マッドサイエンティストの奴はヨヨさんを斬ろうとした。だから彼奴の首根っこを掴み引き摺ってヨヨさんの前に連れてきて土下座させてやるわ。だからヨヨさんもいつまでもそんな顔をしないでよ」

 

「らんこさん……ありがとうございます」

 

言っている事は兎も角らんこがヨヨの元にキメラングを連れてくる事を約束。その事にヨヨは嬉しそうな顔を浮かべて受け取ったツイントーンを大事に握るのだった。そんなヨヨの様子にましろも釣られて笑みを浮かべる。

 

「らんこちゃん…お婆ちゃんを元気付けさせてくれてありがとうね」

 

「別に…私はただあのまま浮かない顔を続けたらこっちも気分が悪くなると思っただけ。…だから仕方なくやったのよ。それよりも戦ってお腹空いたからもう一回カレーを作って食べましょう」

 

そう言うと照れ隠しするかの様にらんこは早歩きでソラ達の元に戻り、ましろもらんこの後を追いかける様に走って行った。

その後、一同はカレーを再度作って空腹になった腹を満たしたり楽しい会話をしたりして久しぶりに再会したゆい達との交流会を楽しんだのであった。

 

────────

 

一方その頃ターボマンはキメラングとバッタモンダーを連れてラボに帰ってきた。ただ、其処で信じられないものを目にする。

 

「な、なんじゃこりゃあああああああああああっ!?」

 

大声で叫びだすターボマンの視界にはメチャクチャに荒らされた我が家…もといラボの悲惨な光景が広がっていたのだ。

 

「い、一体…何があったんだ?」

 

ラボを出る前までは発明品や何かの資料などが少し散らばっていた程度だった筈だ。それなのにまるで空き巣に入られたぐらいの荒れ具合だ。しかも留守に残したドローンも全て破壊されており、此処で何が起きたのか気ターボマンは気になった。

 

「ああ……うるさいなぁ。なんだいさっきから」

 

「んだよぉ…さっきまでプリキュアを全員倒した夢を見ていたのに大声をあげやがって…」

 

「おおっ!ドクター目を覚ましたか!あ、後バッタモンダーも」

 

すると先程のターボマンの叫び声にターボマンにバッタモンダーと共に担がれていたキメラングが目を覚ました。そのため、ターボマンはキメラングとバッタモンダーを肩から下ろした。

 

「ドクター起きて早々悪いが周りを見てくれないか?」

 

「んん?いきなり何を言って…って、なんじゃこりゃあああああああああああっ!?」

 

ターボマンに言われてキメラングは変わり果てた自身のラボを見ると先程のターボマンと全く同じリアクションを見せた。

 

「うわっ、随分と荒らされているな」

 

続いてバッタモンダーもラボの荒れ具合にキメラングと違い顔を顰める程度のリアクションを取り、近くにあったペットボトルの入ったドリンクを飲みながら足元に散乱した資料や何かの発明品などに気をつけて辺りを調べる。

一方でキメラングも散乱した発明品を一つ一つ何処が故障してないか調べる。

 

「全く、私たちが留守にしている間何が起こったんだか…ん?」

 

発明品の観察を続けているキメラングだが床のあちこちに大きな鳥の羽が落ちている事と更にはほぼ全てのドローンがまるで剣で切られた様な痕がある事に気がつく。

 

「これは…まさか!」

 

何かを察したキメラングはある場所に視線を向ける。其処にシャララと相棒のワシオーンが捕えられている檻があるのだが、その中には誰も居らずもぬけの殻となっていた。

 

「逃げたのか…だが、どうやって?」

 

檻は基本的に鍵をしてあり出る事は出来なかった筈。それならどうやって出たのかとキメラングは考えているとターボマンがやってきた。

 

「ドクター比較的に損傷が少ないドローンがあったぜ」

 

「よこしたまえ」

 

キメラングはターボマンからドローンを受け取ると持っていたダークパットに接続してドローンの中にあるカメラが録画した映像を映し出す。

 

──────────

 

キメラング達がラボを出て数分後、留守を任された複数のドローンはラボの中を見回りしていた。その中の一機がシャララが入っている檻に近づいていくと。

 

「ガアッ!?…ァァ…!」

 

檻の中ではシャララは喉を抑えて口からは血を流し床に倒れ悶え苦しむ姿があった。突然の事態に近くにいたドローンはすぐにシャララへと近づく。これは捕らえているシャララとワシオーンがキメラングから大切なモルモットであるとプログラミングされており、彼女達に何か異常があった時に対応する様に元々出来ていたからだ。そのためドローンはシャララの身体を調べようと檻を開けて中に入り、シャララの身体を調べるべくケーブルを伸ばした瞬間。ドローンは自身が展開したケーブルをシャララに掴まれてしまう。

 

「ご苦労様だ」

 

そう言うとシャララはドローンを殴り地面に叩き落とすと檻から出る。どうやら先程までの姿は檻を出る為に自身の舌を噛み口から血を流し苦しんでいるのを装った演技だったらしい。

シャララが檻から出ると他のドローン達はシャララの存在に気付き、一斉にレーザーを放つ。しかし、シャララは周囲の発明品やテーブルなどを盾にして避けていくと自身の剣を回収。後は流れるように次々とドローンを切断していく。

 

「ワシオーン!此処から出るぞ!」

 

「オオオーンッ‼︎」

 

ドローンのレーザーを掻い潜りながらシャララはワシオーンがいる檻の鉄格子を剣で切るとワシオーンは檻から出てシャララと共にラボ内を暴れ回っていく。

それから暫く暴れ回るとラボ内に配置したドローンや他のカメラが破壊されたのか映像が止まる。

 

──────────

 

「へぇ…流石腐っても青の護衛隊の隊長とそのペットか…」

 

暫く檻に捕らえられてシャララはまともに身体が動かせず、数ヶ月のブランクがあった筈だ。それなのにも関わらず、ラボの中での暴れっぷりにキメラングは感心する。

 

「それで奴等はどうやって此処から抜け出したんだ?特にあのデカい鳥ヤロウがラボから抜け出すためにはそれこそ壁におっきな穴を作らなきゃ抜け出せねえ筈だ」

 

「ふむ、そうだね…」

 

あれだけ暴れておいてシャララ達はラボの出入り口をこじ開けたりターボマンの言う様に壁を破壊してラボから抜け出した痕跡は一切ない。ならどうやって此処から脱出したのかと考えているとバッタモンダーが破壊されたドローンを持ってきてキメラング達の前に落とす。

 

「取り敢えず其処ら辺に壊れていたドローンを一通り集めてきたよ」

 

バッタモンダーはラボを軽く一周して壊れたドローンをかき集めてきた様だ。キメラングはバッタモンダーが持ってきたドローンを暫く眺めていると何かに気づいたのか口を開く。

 

「あと、一機見当たらない様だけど…見つかんなかったのかい?」

 

「いや、僕が見た限りこれで全部だよ」

 

此処にあるドローンが全てだと言い張るバッタモンダーにキメラングは暫く顎に手を当てて考え事をしていると口角が上がる。

 

「成る程…あくまで推測だけど隊長サマとそのペットはどうやらドローンとの戦闘の中で偶然にもドローンに内蔵された転移機能が誤作動を起こしてそれに巻き込まれる様に此処から脱出した様だね」

 

「どうするドクター?奴等がプリキュアと合流するのは俺たちにとっては特に不都合じゃないがラボを此処まで荒らされているんだ。それなりの仕返しをしないといけないんじゃないのか?」

 

このままシャララがソラ達と合流したとしてキメラング達にとっては特に不都合な事と言うわけではないが、ターボマンの言う通り留守中に荒らされていたラボを見て思う所が無いわけがなかった。

 

「確かにそうだね…でも、これはある意味私にとって美味しい展開になるかもしれないね」

 

「「美味しい展開?」」

 

どうやらキメラングは何か妙案がある様だ。ターボマンとバッタモンダーはそれは一体なんなのか気になり追求しようとする。

 

「まぁ、その事については後々説明するさ。だがその前に君の腕を修理してあげないとね」

 

「そう言ってくれると信じていたぜ‼︎」

 

正直キメラングが目を覚ますまでターボマンはキメラングにスクラップにされるのではと不安を抱いていたが、捕まりそうになった所を助けた事が評価点となったのだと内心そう思った。

 

「何か勘違いしている様だから予め言っておくけど修理を終えた後、次回の戦いで私の役に立たなかったら今度こそスクラップにするつもりだから肝に銘じておきたまえよ」

 

「そ、そんなドクター!俺腕が片方にも関わらずプリキュアの集団に捕まりそうになったあんたを助けたってのにそれは無いんじゃないのか!」

 

キメラングの発言にショックを受けるターボマン。彼としては捕まる所を助けてスクラップを取り消しにしてもらうつもりだった。しかし、実際はそうならず寿命が少し伸びた程度だった。

 

「そういえば私が目を覚ました時にツインミラージュはあるのにツイントーンが無いんだけどこれは一体どう言う事なんだろうねぇ?」

 

「えっ!?」

 

キメラングの発言にターボマンは言葉が詰まる。キメラングを回収するにあたってツインミラージュはキメラングが気絶してもしっかりと握っており、ターボマンはそれを確認してから安心して退散した。ただ、その際にツイントーンはツインミラージュから外れて地面に落ちていた。ターボマンはそれに気が付かなかったのである。

ターボマンは自分がとんでもないミスをしてしまった事に気付き、動揺のあまりマフラーからはものすごい量の排気ガスが漏れ出す。

 

「え、わ、忘れるだなんて…そ、そんな訳無いっすよ。あっ、このラボが荒れているから落としちゃって発明品や物とかに紛れ込んだに違いない!俺修理する前に整理整頓してラボを綺麗にしてきまーすっ‼︎」

 

回収し忘れた事を誤魔化し、床に散らばった物を慌てて整理整頓を始めるターボマンを見てバッタモンダーは呆れつつキメラングに話しかける。

 

「あーやって掃除させる口実を作るの上手いね。その例の…ツインなんちゃらって奴も本当は落としたって嘘なんだろう」

 

掃除するのが面倒くさい為キメラングは嘘を言ってターボマンを脅して掃除させたんだろうと思っているとキメラングは肩をすくめる。

 

「いいや、半分は当っているよ。何せツイントーンが無いのは事実だからね」

 

「はあっ!?おいおいおい、あれって話によれば前のアーマーよりも無茶苦茶強いって奴だろ!それを無くすのってこれからのプリキュアとの戦いは不味いんじゃ」

 

ツイントーンが無いと聞かされたバッタモンダーは動揺を見せるがキメラングは「チッチッチッ」と舌を鳴らして余裕の表情を見せる。

 

「問題無い。彼女達を纏めて相手にした上、一方的な戦いだったんだ。これからはあちら側の士気も下がっていて少しばかり有利に戦えるかもしれないさ」

 

「士気が下がるって…え、一方的な戦い!?じゃあなんで気絶してたんだよ?」

 

「さぁね。私もプリキュア達に勝ってはいたんだけど、全員倒した所で気を失ってその後の記憶が全く無いんだよなぁ」

 

どうやらキメラングはプリキュア達との戦いは覚えているがその後のヨヨとの会話からの記憶は全く無い様だ。

 

「まぁ、アーマーが無くても私にはこの頭脳があるからね問題無いさ」

 

「そんな楽観的な方法で上手く行くとは思えないな」

 

アーマーが使えない事への強がりなのではと内心バッタモンダーはほくそ笑む。

 

「いいや出来るよ。この私の頭脳があれば計画通り進む。貴様は何も心配する事は必要ない

 

「!?」

 

突然キメラングから放たれる圧にバッタモンダーは押し潰されそうになると思わず床に這いつくばり、顔色はより青ざめてしまうと全身からは汗が滝の様に流れ過呼吸を起こす。

 

「…んん?どうしたんだいバッタモンダー君。急に倒れて?」

 

「な、なんでもねぇ…」

 

すると先程まで放たれていた圧が消え、普段と同じ雰囲気を出している事でバッタモンダーは気が楽になるも先程のキメラングに恐怖を抱く。キメラングは偶に自身の発明を貶せるとキレる事があるが先程のはそれとは比べ物にならないくらいの圧を放っていたのだ。それ故にバッタモンダーは下手に追求しない事にした。

 

「そうかい。それよりもターボマンの修理をこれからするからちょっと作業台を片付けてきてくれるかい?私は必要な道具を取ってくるから」

 

「はぁ?なんで俺…いえ喜んで片付けてきます!」

 

一瞬キメラングの手伝いを断ろうとしたバッタモンダーであったが先程の事を思い出し、彼は慌てて作業台の片付けを始め出す。そんな姿にキメラングは不思議に思いつつも修理に必要な工具を取りに行くのであった。

 

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