尚、今回はコラボの後の話なので予めBURNINGさんの作品を読んでおく事を推奨します。
それでは今年初めてのエピソードをどうぞ。
春休みが終わり今日から新学期、中学二年生の生活が始まる。
らんこはいつものフード付きパーカーは着ておらず、全体的に青が特徴な学生服に着替え、洗面台に立ち髪を櫛で解かし終えると鏡に映る己の姿を見つめる。
「これが今の私ね……」
鏡の中に映るフードを被らないボブカットを晒した自身の姿を見つめながら彼女はこの前起きた出来事を振り返る。
プリキュアになったらんこはソラ達と共にカバトン達を撃退後、自身のスカイトーンが起こした謎の現象により単身並行世界に飛ばされ、其処で自分の事を知らないソラ達とその世界にいる自身の知らないプリキュアのアサヒとユキの2人組に邂逅した。
最初は自分が存在しない異世界と己を知らないソラ達の存在に自暴自棄になり、ユキにあたってしまう。しかし、自分と同じく過去に虐めを受けた経験のある彼女とキメラングにランボーグの素体にされていた少年。ひかるの影響にらんこの心は大きく成長する事が出来た。
キメラング達を撃退後は再びスカイトーンの導きにより、並行世界の友達と別れを惜しみつつも彼女は元の世界へ帰ってくる事ができた。
ただ、その際一悶着があった。
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「……此処は?」
異次元の穴を通って出た先は先程までいた並行世界のソラシド市と全く同じ景色が広がっていたが先程までいたソラシド市と異なり、辺りは暗く街から流れる風が自身のよく知る物と感じて此処は自分の世界のソラシド市であると確信した。
普通は風だけで判断は出来ない物であるが、風の力を司るプリキュアになった影響か彼女自身の感覚に変化が起きて風の違いをわかる様になったのだ。
「私の世界……っ!それよりも今日は何日⁉︎」
慌ててスマホを取り出すらんこ。元の世界に帰ってきたのは良いが、もしかしたら並行世界とこちらの世界は時間の流れは異なってあっちの1時間はこっちでは数日みたいな感じに時間の差が激しかったらと想像した。しかし、その予想は外れスマホの画面には今日が並行世界へと飛ばされた日で今の時間は夕方6時近くになっていた。
「良かった……」
それ程時間が経っていない事に安堵の息を吐く。もしも元の世界に帰ってきていたら数日経過していたなんて事になっていたら今頃彼女の両親は警察にこの事を連絡して大きな事件になっていただろう。ただでさえらんこは過去に虐めにあっていた事もあり、これ以上両親に心労をかけさせたく無かった。
だが、両親は今の所は問題ないとして一つ気掛かりな事がある。
(そう言えば……私ってソラとましろの目の前で消えたんだから心配しているわよね)
思い返すとソラとましろとエルの目の前で姿が消えたんだ。確実に心配しているに違いない。特にタイミングがタイミングだ。友達としての親交が深める事が出来た矢先に起きた事だから、彼女達は戦闘による疲労があるにも関わらず彼女の事をを草の根を分けてでも探しているに違いない。
「早く会って私の無事を報告しないと…」
あれから時間は結構経っている。一刻も早く2人に無事を伝えようと彼女はましろに電話を掛けようとすると……。
「「らんこさん(ちゃん)!」」
「えるるっ!」
「っ!」
背後から聞こえた声に振り返ると其処には必死で街中を走り回って自分を探していたのであろう肩で息をしているソラとましろにエルの姿があった。
「み、みんな……た、ただいま」
一瞬なんて声を掛けたらよいのか分からず咄嗟に返事を返したが、我ながら行方不明になっていたのに呑気にただいまの挨拶をするのは些かどうかと思う。
下手すると3人は怒るかと思い、恐る恐る彼女達の顔を覗くと。
「良かった…ヒッグ、よがっだでずっ!らんござんがご無事で……!」
「わたし…わだじ!らんごぢゃんの身になにがあっだらどゔじよゔど思っで……!」
「えるるぅ!!!」
彼女達は怒っておらず逆にらんこが無事な事に安心して涙を流していた。
「みんな……ごめん……ごめんね!心配かけちゃって……!」
らんこは3人に近付くと自身の事を心配していた彼女達に謝りながら身体を抱き締める。対して抱きしめられた彼女達も涙を流しながら抱きしめ返す。
エルもその小さな体を使ってらんこの頭を抱きしめるのだった。
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「……これで終わればどれだけ良かったのか……」
そう呟きながら自身の頭と脇腹を摩る。
この後の出来事をあまり思い出したく無いが一度記憶の蓋を開けてしまった以上、簡単に中断は出来ずこの後自身に起きた出来事を思い返す。
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「ら゛ん゛ござぁぁぁぁあ゛ん゛!!!!ぶじでよがっだぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「ぼん゛どぅに゛じんばいじだんだがらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「え゛るるう゛っ!!!」
「うん、心配してくれるのは嬉しいんだけど抱きしめる力が強すぎていだだだだっ!!!!後、声うるさっ!!!!」
泣きながららんこの身体を抱き締めるソラとましろの力が感情の上乗せもあり、物凄く痛かったのだ。
あのまま長時間締め付けられていたら全身の骨が折れてしまうのでは無いかと想像し、同時に某プロセス漫画に登場する力士超人が全身バネで出来たらスプリング超人に締め付けられる様な気持ちが共感できたのであった。
因みにエルに至っては赤ん坊なので力はそれ程無かったが、その分らんこの頭を抱きしめた状態で泣いている為に2人と比べて泣き声がダイレクトに頭に響き渡った。
更にこの後に並行世界の戦いの疲労がどっと現れて気絶する羽目になり余計に心配を掛ける羽目になった。だがそれは仕方ない事だ。らんこは今日初変身したにも関わらず戦いを終え、並行世界に飛ばされそのまま連戦し休憩を挟むもキメラング達の猛攻やサンライズやスノーと出した合体技による疲労で彼女は限界をとっくに越えていた。
そして、気絶した後は虹ヶ丘家に運ばれ目が覚めた途端に全身筋肉痛に襲われる始末に見舞われた。
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「……はぁ、なんか私って色んな意味でついていないわね」
自分を心配してくれるのは嬉しいが、あんな事をされるのはもう勘弁願いたい。
まだましろは耐えられる方だ。だが、ソラは素手で大岩を砕く程の実力を持っている為、本気の抱きつく力が尋常じゃないくらいに強い。そのため本当に身体がバラバラになるかと思った。エルに関しては頭に抱きついての泣き声だから鼓膜が破れるかと思い、今でもエルの泣き声が耳鳴りとして残るくらいだ。
三人共自身の事を心配して起きた不慮の事故みたいな物の為、怒る事が出来ずとても複雑な気持ちを抱いた。
「らんこ〜!早くしないと学校遅れるわよ〜!」
「え、嘘っ⁉︎もうそんな時間なの⁉︎」
そんな時、リビングから聞こえる母の声にらんこは壁に掛けてある時計の時刻を見て慌てる。
「ほんと、新学期早々遅刻になるなんてシャレになんないわよ!」
そう言って洗面台の傍に置いてあった2つのヘアピンとリストバンドを付けると、鞄を持って学校へ向かうのであった。
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一方で此処は私立ソラシド学園、らんことましろの通う中学校である。春休みが終わり、今日から始まる新学期に多くの生徒達が登校している。その中には勿論ましろの姿もあるがその隣には何故かソラもおり、校門にて女教師に止められていた。
「ええっ⁉︎学校には入れないんですか⁉︎」
「当然です。此処は学校の関係者以外は立ち入り禁止ですよ」
今日ましろが学校の登校日にも関わらずいつもの様に一緒にいようとして雑談をしながら学校までの道を歩き、そのまま学校にも入ろうとしたが生徒でないソラは入れないと知り彼女は衝撃を受けていた。
「学校は誰でも入れるってスカイランドでは常s「うわああ‼︎」ムガッ⁉︎」
ついスカイランドについて発言しようとしたソラにましろは咄嗟に彼女の口を手で押さえる。
「だ、駄目だよソラちゃん!スカイランドの事は言っちゃ!」
「ンンッ!そうでした…危うく言う所でした……」
「虹ヶ丘さん…春休み中に漫才にでもハマったのかしら?」
そんな2人の漫才の様な掛け合いに女教師も思わずましろの趣味等が変わったのかと疑問を抱いていると。
「ソラ?……何であんたが学校にいるの?」
「その声はらんこさん……ん?」
「あ、おはよう。らんこちゃ……ん?」
2人は背後かららんこの声が聞こえて振り返る。
確かにらんこの姿があったが、普段の彼女と違って服装はフード付きパーカーでは無くましろと同じ制服を着ておりフードを被っていない為、彼女は顔と緑色のボブカットを晒している。そして、髪には赤と白の髪留めを付けており、右手首には黄色のリストバンドが巻かれていた。
更によく見ると腰にはパーカーが巻かれている。
「らんこさん……で良いんですよね?」
思わずその姿にソラは目を細めながら彼女を頭の上から足先まで眺めて確認する。この前までのフードを被っていた姿が見慣れていた所為で一瞬ソラは本人と確信を持てず恐る恐る彼女に確認を取る。
「ええ、この前の一件からあげは姉さんに学校でも大丈夫なオシャレを教えて貰ったの……折角の新学期だから私も心機一転して、少し変えようと思って……」
「そ、そうなんですか……」
この前の一件、つまりらんこがプリキュアになった日の事を言っているのだろう。その日らんこはプリキュアになってソラとましろの絆を深めた矢先に並行世界へ飛ばされる出来事があったりと濃密すぎる1日を過ごしたお陰で彼女自身の覆っていた殻を破る事が出来、それまでの自身から新たな自分へと変えようと思ったらんこは先ず己の格好を変えてみようと考えたのだ。
そして、今に至る訳であるが先程からソラとましろに全身を見られていてらんこは恥ずかしさを覚える。
「その……そんなに見られると恥ずかしいんだけど……」
「あ、す、すいません!あまりにも…なんか今までのらんこさんと違っていた物ですからつい……」
その事を聞いて少し落ち込んだ様子を見せるらんこ。
「やっぱり変よね……」
ソラの発言にらんこ自身納得する。今までの自分のイメージもある所為かいざ変えてみると我ながら感じる違和感は凄く、これじゃ無い感を感じた。協力してくれたあげはには申し訳ないが新学期の新しい自分のデビューは早速失敗したかと思ったが、
「ううん、全然変じゃ無いよ!」
「……え?」
ましろの変ではないと言う発言にらんこは耳を疑う。更に其処へ追い討ちを掛けるようにソラも口を開く。
「はい、ましろさんの言う通りです!らんこさんは凄く可愛いですよ!」
「か、かわっ⁉︎」
「うん、らんこちゃんとっても可愛くなったよ!」
「な、何いきなり恥ずかしい事を言っているのよあんた達は⁉︎」
赤面にして2人から堂々と可愛いと言われたらんこは思わず顔を赤くする
「と、兎に角、お世辞は嬉しいけどこれ以上は言わなくて良いから……」
「お世辞?とんでもありません!私はお世辞で言ったつもりはありませんよ!」
「え、ちょ!」
らんこに先程までの事はお世辞だと言われたソラは否定すると、彼女の肩を掴み顔を近づける。
「ましろさんの制服姿もそうでしたが、らんこさんの今の制服姿はとても可愛いですよ。普段パーカーを被っていた所為であまり見られなかったらんこさんの綺麗なお顔「き、綺麗なお顔⁉︎」が見れて、とても新鮮さを感じ更には頭に付けている髪飾りと手首に巻いているアクセサリーに加え、普段着ているパーカーを腰に巻いてオシャレ感があって、あげはさんの様に見ているだけで気分がアガりそうです!」
「そ、ソラちゃん其処までにしてあげて……それ以上言うとらんこちゃんが……」
「へ、らんこさんがどうかされましたか?」
ましろの指摘にソラは再びらんこの顔を見ると彼女は顔を真っ赤にしており、目はぐるぐると漫画の様に回り、頭から湯気が出ていた。
先程からソラの言動にらんこのキャパシティはオーバーしかけていた。
「だ、大丈夫ですからんこさん⁉︎まさか、風邪ですか⁉︎」
「ああ!ソラちゃん無闇に今のらんこちゃんに触れると…!」
ましろの呼び止める声も虚しく、ソラは彼女の額に手を当てて熱が無いか確認しようとすると……
「う……うわぁぁぁぁぁああ!!!!」
彼女は恥ずかしさのあまり背中には噴火する火山の様な幻が見えそのままソラの手を振り払うと大声を上げながら彼女から逃げる様に校舎の中へ入っていった。
「ま、待ってくださいよらんこさん!」
「だから此処は学校の関係者以外立ち入り禁止ですって!」
「クペッ⁉︎」
「え、先生早っ⁉︎」
どさくさに紛れてらんこの後を追って校舎へ入ろうとしたソラであったが、それを見た女教師が一瞬でソラの前に回り込み、当て身をして彼女を捕まえる。
変身しなくても素の身体能力なら其処ら辺の一般人にまず負ける事ないソラをあっさりと取り押さえた女教師の存在にましろは戦慄を覚えるのであった。
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それからソラは解放後、ましろにお別れを言うと虹ヶ丘家へ帰って行った。対してましろは先に校舎に入ったらんこの後を追う様に校舎へ入り廊下を歩くと其処には教室の出入り口の前でソワソワと歩き回り落ち着きの無い様子のらんこを見つける。
「あ、らんこちゃんも私と同じクラスみたいだね」
「そ、そう見たいね……良かった」
ましろが同じクラスだと分かるとらんこは胸に手を当て安堵の息を吐く。仮に同じクラスでは無かったららんこは心細く感じていただろう。
「ま、ましろ…良かったら……一緒に教室入らない?」
「うん、良いよ」
本当は1人じゃ恥ずかしくて入りづらいのだが、そんな事を言えず彼女はましろを誘うとましろも彼女の意見に賛同し共に教室へと入る。
すると、そこには2人の見知ったクラスメイト達の姿があった。
「あ、ましろん久しぶり」
「おはよう虹ヶ丘さん」
「今年も同じクラスよろしくね」
教室へ入ってきたましろの姿に気づいた三人の男女、1人は黒髪のボブカットの女子、仲田つむぎ。茶髪のポニーテールの女子、吉井るい。最後は眼鏡をかけた男子の軽井沢あさひ。その3人が彼女に話しかける。
「うん、また皆んなと同じクラスで私も嬉しいよ」
ましろもらんこだけで無く一年の時の同じクラスの友達が今年も同じである事に嬉しく思った。
「ところでましろん。さっきから気になっているけど、後ろに居るのは誰?」
すると仲田はましろの背後に隠れるらんこの姿に気付き指摘すると、それに続いて吉井と軽井沢も気づく。
「軽井沢知ってる?」
「いや、俺も知らない」
クラスの殆どはフード姿のらんこしか見ていなかったの今の彼女の姿を見て誰も風波らんこと判別出来ていなかった。そして、次第に彼女達の話が気になったのか他のクラスメイト達も見慣れないらんこの姿に視線を集中させる。
「ねぇ、ましろんこの子は誰?」
「春休み前までは何処のクラスにもこんな子居なかったけど……」
「もしかして転校生とか?」
3人はらんこの顔をじーっと見つめるが全然ピンと来ておらず、新学期にやってきた転校生と推測する。
「ううん、違うよ…と言うか皆んな知っていると思うよ」
ましろの発言にクラスの全員は首を傾げる。ましろが慣れた様子で接しており更に彼女の発言から殆どのクラスメイトは彼女の事を存じていると言うが、クラス全員にはましろの後ろに隠れる彼女の顔を見て全然ピンと来ておらず誰なのか全く分からなかった。
「ほら、
「で、でも…まだ心の準備が……」
何時までも隠れていると埒が開かないとましろはらんこにみんなの前に出る様に言うが、彼女はましろの背中に隠れたまま出ようとしない。だが、そんな2人の会話を聞いて3人は己の耳を疑った。
「え、今……らんこって……」
「まさか、風波さん?」
「一年の頃からフードを被って素顔を中々見せてくれなかったあの風波さん?」
ましろが背後に隠れるらんこの名前を呼ぶと周りにいた生徒がざわつき出す。一方で隠れていたらんこは恐る恐るましろの背中から顔を見せると口を開く。
「……ハイ、ソウデス。ワタシハカザナミランコデス……」
『………』
らんこの感情の無い発言を聞いてクラスの全員は思考が停止するが、それから数秒経つと。
『え、ええええええええええっ!!?』
クラス全員が驚愕の声を上げた。そして、彼女達の近くに居た3人がらんこに話しかける。
「ほ、本当に風波さん⁉︎」
「いつも体育の授業をサボっていた風波さん⁉︎」
「全然別人じゃん!一体どうしたの⁉︎」
「うん、らんこちゃん新学期になってイメチェンしたんだよ」
「う……うん」
よく夏休み明けに登校してきた時に海で日焼けしてイメチェンしたとアピールする生徒がいるが、それには比にならないくらいの変化を遂げていた。
春休み前までのらんこは入学してから常にフードを被っており、体育の時間や水泳に関してはフードを被ってはいけないという決まりがある為、其処は仮病をして徹底的に人前では顔を見せない様にしていた為、教師から何度もフードを外すように言われたが一向に外す様子は無くクラスの中でも浮いており不良のレッテルが貼られていた。
しかし、春休みが明けると彼女は今までとは打って変わり、陰キャラ兼不良オーラを出していたらんこが陽キャラ兼ギャル擬きみたいな格好で登校して、素顔を見せる様になってからはクラスの皆んなから注目をされつつあった。
「や、やっぱり変よね……フード被ろうかしら?」
周りからの視線に耐えきれない彼女は腰のパーカーを外すといつもの様着込んでフードを被ろうとするが、
「そんな事無いよ。らんこちゃんとっても可愛くなったから、皆んなが驚いているだけだよ」
「ましろ…可愛いだなんてやめて……恥ずかしさのあまり死にそうだから……」
まるで自分のことかの様にらんこを褒めるましろに彼女は顔を赤くしながら止める様に懇願する。その2人のやりとりを見てクラスの殆どは一斉に口走る。
「「「「「可愛い……」」」」」
と全員同じ言葉を言って彼女達の姿を眺めるのだった。
一方で仲田と吉井と軽井沢の3人は他のクラスメイト達とは違って固まっていた。
「あの風波さんが……」
「更生した……」
「しかも可愛くなっている……」
3人は一年前ましろと同じクラス、つまり必然的にその時のらんこの事も知っている。不良オーラ全開な彼女に出来るだけ避けていた3人は自分から進んで近づくましろを止めようとする事があったが、その時彼女はこう言っていた。
『らんこちゃんはとっても良い子だからみんなも仲良くなれるよ』
と、ましろは笑顔で言っていたがらんこの本心を知らない3人にとってはらんこが彼女の弱味を握って脅して連れ回していたのかと思い込んでいた。しかし、目の前の光景を見る限りましろの言っていた事は本当であったと理解した3人は過去の自分達を殴ってやりたい気分だった。
人を見た目や偏見で判断してはいけない事は道徳の授業で習った事だ。それなのに自分達はそんな事をすっかり忘れてらんこを見た目と偏見だけで不良と判断してしまったのだ。
3人は自分達の態度に恥ずかしく思い、らんこの前へ立つと。
「「「風波さん……ごめん!」」」
「……え?」
「さ、3人共急にどうしたの?」
突然の謝罪にらんこは困惑を覚え、ましろは3人に謝罪をする理由を聞く。
「私達一年前まで風波さんの事を見た目と雰囲気で怖いと思っていた……」
「ましろんも風波さんに脅されていたんじゃ無いかって思い込んじゃって」
「でも、さっきまでの2人のやりとりを見て実際はそうじゃ無いと確信したんだ」
学校へ入学した当初から生徒にあまり顔を見せず基本的フードを被って人と群れず一匹狼の様な生活をするらんこの存在に3人と他のクラスメイト達からは彼女の事は不良と思い込んでいたが、実際そんな事はなかった。自分達の偏見で本当の彼女の姿を何時までも認識しようとせず、不良生徒だと決めつけてしまった事に3人はらんこに謝罪する。側でそのやり取りを見ていたましろはどうやって場を収めようかと慌てる様子を見せるが、
「別に……謝らなくて良い」
「「「え?」」」
「らんこちゃん?」
3人の謝罪をきっぱり拒否するらんこに3人は思わず顔を上げ、ましろも声を上げる。
「一年前までの私は自分から進んで他人との交流を避けてきたからそれで勘違いするのは仕方ない事よ」
「じゃ、じゃあ、なんで今更…?」
人との接触を避けていたのならどうしてその姿勢を変えようとしたのか、3人を代表して軽井沢が彼女に問うと、
「……まぁ、大した話じゃないわよ。ただ、1人でいるよりも他の人と一緒にいた方が楽しいって気づいたから……だから私は今の自分を変えて更に友達と仲良くなろうと思ったの」
そう言ってらんこは視線をましろへと向け、更に脳裏に思い浮かぶのはソラにエルとあげは、そして並行世界で自分と友達になってくれた彼女達の姿が思い浮かんだ。
「まぁ、我ながら今までの事もある所為で、いきなりこの服装は流石にハードルが高過ぎたわね」
「そんな事ないよ。さっきも言ったけど今のらんこちゃんの格好はとっても良くて可愛いから」
「だ、だからその可愛いはやめてって言ってるでしょ!」
再び可愛いと呼ばれた事に対してらんこもやめる様に言うが、ましろは笑って誤魔化す。そのやり取りを見ていた3人は互いに目配らせすると、らんこに話しかける。
「ねぇ、風波さん私達と友達になってくれる?」
「え?」
「俺らって、風波さんの事を全然知ろうとしないでいたから風波さんの趣味とか苦手な事がわからないんだ」
「だからさ友達になってこれから風波さんの事を私達に教えてくれない?」
「……別に構わないわよ」
らんこはぶっきらぼうに答えるもうっすらと口元が緩んでいる事から彼女も3人が友達になる事が嬉しそうな様子だ。
すると、早速仲田が彼女に声をかける。
「じゃあさ、これから風波さんの事を"らんらん"って呼んで良い?」
「えっ……好きに呼べば……」
友達になったばかりでいきなり渾名で呼ぶ仲田に一瞬呆気に取られるが直ぐに冷静に答えると、それに続いて吉井と軽井沢も声を掛ける。
「ねぇ、風波さんって好きな事はなに?あ、やっぱり音楽⁉︎」
「…ま、まぁ、音楽は好きよ。最近はロックに嵌っているわね」
「それじゃあさ、アニメとか見る⁉︎」
「アニメは面白ければジャンル問わず見ているわ」
次々来る質問に対してらんこは答えていくが、次第に3人だけではなく他のクラスメイト達からも質問攻めをされていく事にらんこは段々と慌てふためいていき、その様子をましろは嬉しそうに見ていた。
「良かった。らんこちゃん皆んなと仲良くなれて」
クラスメイト達が進んでらんこに話しかけていく光景にましろも彼女の友達として嬉しく思ってた。
「ソラちゃんもらんこちゃんが皆んなと仲良くなって良かったよね……あっ」
いつもの様にソラに話しかけようとするましろであったが、ソラは此処にいない事を思い出すと彼女の心には寂しさを覚える。
ソラは元々スカイランドからやってきた人間、この世界の学校に通う事は出来ないと理解していた筈だが、それでも彼女がいない事に違和感を覚えるのだった。
尚、余談だがらんこが渾名の"らんらん"と呼ばれた際に同時刻、遠くにある世界中の美味しい料理が集う街に住むラーメン屋の娘がクシャミをしたとか…。