アニマルタウンにやってきて紆余曲折あって3組に分かれたソラ達はそれぞれ街の中を歩きそこにいる住人に聞き込みを行っていた。
「すいませーん此処らへんで大きな鷲さんを見かけませんでしたか?」
「何でも良いので情報を教えてくださーい」
ワシオーンの絵(ましろ作)道ゆく人に見せながら尋ねるソラとましろだが中々情報は集まらない様子だ。
「目撃情報がいまだに出ませんね」
「やっぱり私の絵がいけないのかな?」
「そんな事ありません!ましろさんの絵はとっても上手ですよ!」
情報が集まらないのは自分の絵が原因ではと思い込むましろにソラは擁護する。実際ましろの絵は本物のワシオーンと比べたらデフォルメチックで絵本に出そうなデザインをしている。それでも保育園児達の絵に混じり友達である鳥の絵を描こうとしてう◯こを描く何処ぞの画伯と比べればちゃんと特徴を捉えている為大多数の人間に聞けば鷲であると返事をしてくれるだろう。
だがそれでも道ゆく人に聞いても情報が全く入ってこないと言う事は軽井沢の情報はデマだった可能性が高くなる。
2人は此処にワシオーンは居ないのではと思い始める。
「ちょっと良いかな?」
「「ん?」」
直ぐ近くから声が聞こえてソラ達は振り向くと其処には左右のもみあげが特徴的な朱色のセミロングヘアの女の子とその隣には恐らく彼女のペットなのだろうパピヨン犬がいた。
「さっきから此処で何をやっているの?」
「あっ、ごめんなさい。私たちは怪しい物じゃないよ」
「ちょっと聞き込みをしていまして」
「聞き込み?」
「ワフ?」
話しかけてきた少女はソラ達の返事をしてキョトンとしつつも何の聞き込みをしているのか問おうとした時、ソラが何か思い出した様な顔を浮かべて先に口を開く。
「あっ、申し遅れました。私はソラ・ハレワタール。こちらは友達のましろさんです」
「虹ヶ丘ましろだよ。よろしくね」
ソラ達は少女に向かって自己紹介をする。対してその少女は2人の名前を聞いて笑みを浮かべる。
「ソラちゃんにましろちゃんか…良い名前だね。私は犬飼いろは、こっちはこむぎだよ」
「ワンッ!」
名乗られたのならこちらも返さなければ無作法と言わんばかりに翔…いろはも続いて自己紹介を行い自身の愛犬であるこむぎを紹介する。
「いろはさんにこむぎさんですね。いい名前ですね」
「こむぎちゃんも可愛いね。いろはちゃんこの子を撫でても良いかな?」
「良いよ。ねっ、こむぎ」
「ワーン!」
いろはから許可を貰ったましろはしゃがみ込むとこむぎの頭に手を伸ばして優しく撫でる。
「ワフ〜」
「ふふっ、可愛いね」
「そうですね。あっ、ましろさん見てください。こむぎさんの頭の後ろにハートの模様がありますよ」
そう言ってソラは好奇心でこむぎの後頭部にあるハートマークの模様に触れる。
「ワンッ!?ワフゥ〜ン♡」
「ええっ!?こ、こむぎちゃん!?」
「だ、大丈夫ですか!?」
ぐったりするこむぎにソラ達はひょっとして触ってはダメな場所だったのではと心配しているといろはが話しかける。
「大丈夫だよ。其処を撫でると一番気持ち良く感じる所だからこむぎはリラックスしているんだ。ほら、こむぎの顔を見て」
「本当だ。随分気持ちよさそうだね」
「良かった〜、それならもっと撫でていきますね」
「ワフゥ〜、気持ち良いワン」
「ふふっ、気持ちそうでなによりだよ……え?」
思わず聞き流しそうになったが今何処からともなく聞いたことの無い声が聞こえてきた事にましろは固まる。
対してソラはキョトンとしながらもこむぎを見て口を開く。
「今…こむぎさん喋りませんでしたか」
「えっ?今のこむぎちゃん?」
「あっ!?」
「ワンッ!?」
ソラの一言にましろはまさかと言わんばかりに半信半疑な様子。一方でいろはは悪戯がバレた子供の様な顔を浮かべてこむぎも固まってしまう。それを見てソラ達はこむぎを怪しみじっと見つめているといろはが慌てて口を開ける。
「え、えーと、き、気持ちいワンッ!な、なんてね。こむぎの気持ちを代弁してみたよ!」
「なーんだ。さっきのは声はいろはちゃんだったんだ」
「そうですか?私には先程聞こえた声が違う様に聞こえた気がしますが」
納得しているましろとは対を成すようにソラは先程の声はこむぎでは無いのかと未だに怪しんでいる様だ。そんな眼差しに苦手意識を覚えるいろはは再び口を開く。
「そ、それよりもソラちゃん達って聞き込みをしていたって言ったけど何の聞き込み?良かったら私も手伝うよ」
「あ、良いんですか。実は私達とある鳥を探してまして」
「鳥?」
「うん、こんな感じのなんだけど」
そう言うとましろは持っていたワシオーンの絵をいろはに見せる。
「どれとれ……いっ!?」
「どうしましたかいろはさん?」
「ひょっとして何か知っているの!?」
絵を見て顔を歪めるいろはにソラ達はもしかしてワシオーンについてなんらかの情報を持っているのではと思い追求する。
「あっ!え、えっと…そ、そうだ!私急用を思い出しちゃったからこれで失礼するね!バイバイソラちゃんましろちゃん!」
そう言っていろははこむぎを抱き抱えると足早にその場から逃げる様に去っていく。
「あっ、いろはさん!」
「待って、って足はや!?」
呼び止めようとしたが一瞬でもう遠くまで走っていくいろはの姿にソラ達は呆然となり暫く固まる。
「急にどうしたのでしょうかいろはさんは?」
「さぁ…でも、さっきの姿はまるで嘘を誤魔化そうとするソラちゃんにそっくりだったよ」
「えっ!?私ってあの様な感じなんですか!?」
ましろから自分は嘘をつくと先程のいろはみたいになると言われてソラは驚きの声をあげる。
一方、ソラ達から離れたいろははソラ達が自分の後をついて来てないことを確認すると胸を撫で下ろす。そんないろはに抱きかかえられているこむぎはいろはを見つめて口を開く。
「いろは、ソラ達にあの子の事を教えなくていいワン?」
「うーん、教えても良いんだけど、この前悟君からあんな事を言われたらちょっと言いづらいかな」
ソラ達の探しているワシオーンについての情報を持っているいろはだが数日前あったある出来事で言うか言わないかで迷いが生じる。
─────────
遡る事数日前。アニマルタウンにある山の中にいろはとこむぎ、そして彼女達の前には灰色がった茶髪を生やした眼鏡を掛けた少年と彼の足元には大きな垂れ耳に左耳の先が三つに別れて白色の毛で覆われ体の一部には灰色のぶち模様のロップイヤーラビットがいた。
そして少年はいろは達の後ろにいる傷だらけの鷲の姿を見て驚きの表情を浮かべている。
「い、犬飼さん!?この鳥、いやこの大きな鷲…は一体…?」
「急にごめんね。実は悟君にこの子について相談しようと思って」
いろは目の前の少年…悟に説明を始める。今より数十分前に街で散歩していたいろは達はこむぎが鷲の匂いを辿って見つけたのだが、ご覧の通り怪我をしている。最初は動物病院を営んでいる母に頼ろうとしたが流石にこの規格外の大きさをした鷲を人前に連れて行ったら大騒ぎになると思ったいろはは動物の知識が豊富な悟に頼ろうと彼をここに呼んだのだ。
呼び出された悟は目の前の大きな鷲を眺める。
「見た感じ鷲っぽいけど…僕の知る限りこんな大きさにこの見た目は僕も初めて見るよ。となるとニコガーデンに住む動物じゃないのかな?」
動物に対する知識が豊富な悟でも目の前の鷲は初めて見る。それ故に彼はニコガーデンと呼ばれる場所から来たのではと推測する。
「私もそう思って少し前にメエメエも呼んだよ。それで…」
何やら言いづらそうな表情を浮かべるいろはに代わってこむぎが怒った表情を浮かべて吠える様に喋り出す。
「メエメエはケチワン!この子をニコガーデンに連れて行ってとお願いしたんだけど"こんな怪しい輩をニコガーデンに連れていくのはダッメエエエエエエエッ!!!!"なんて言うんだよ!」
「まあまあ、こむぎ」
プンスカと頬を膨らませて怒るこむぎを宥めようといろはがこむぎの頭を撫でて落ち着かせようとするが其処に新たな声が響き渡る。
「わたくしはケチではございません‼︎」
するとその怒声は鷲の方から聞こえてきていろは達は鷲の方を見るとその巨体の陰から怒声の持ち主の姿を露わにする。其処にいたのモフモフな柔らかい毛を全身に生やし、頭にはツノを生やし眼鏡と赤い蝶ネクタイを身に付けたアニメや漫画にいそうなコメディチックなビジュアルをした2本の足で立っている羊がいた。
「こむぎ様!確かにわたくしはこの方をニコガーデンに連れて行くのはダッ、メエエエエエエエエエエッ!!!!とお申し上げましたが代わりにこうしてニコガーデンにある特別な薬草で調合した薬を持って来て治療しているじゃないですか!それなのに人を血も涙もない鬼みたいな印象を親友の悟君に植え付けようとしないでください!」
「わかっているよメエメエ、だから君も落ち着いて」
こむぎの悪口に対して怒っている羊…メエメエを悟は宥めていると何か気になっていた事があったのかメエメエに話しかける。
「ところでメエメエ、この鷲の事を怪しい輩って言っていたけどこの子はニコガーデンの動物じゃないの?」
「ええ、わたしくも執事としてニコガーデンに住む動物達の顔は全て頭の中に記憶していますがこの方は初めてみました」
どうやらメエメエも目の前の鷲について初めて見る存在らしくそれ故か先程からチラチラと見て警戒している様子だ。
「でも、この鷲はなぜこんなに怪我しているかは知らないけどニコガーデンに連れて行けばすぐに治るんじゃないかな」
「うぅ…悟君の頼みには応えたいのですが、先日最後のキラリンアニマルであるキラリンスワンさんが帰ってきた今、ニコ様を迎える準備の真っ只中でそんな時に身元不明のそのお方を連れて行くのは他の方々が不安になるかもしれませんので…」
申し訳なさそうな顔を浮かべて悟に説明するメエメエ。彼も意地悪で言っているのではない。実はニコガーデンと呼ばれる場所は今から半年程前にとある事件が起きて其処に住むメエメエを含む動物達はこちらの世界に迷い込む事態が起きてしまったのだ。まだ全員がニコガーデンに戻れた訳ではないがいろは達のお陰で半数は戻れてひと段落着いたが其処にこちらの世界でもニコガーデンに住む動物ではない存在を連れてくる事はまた何かトラブルの種になりそうだとメエメエは考えて此処で治療を行なっているのだ。
「そっか…ごめんね。メエメエ達の事情も考えずに無理な事を言っちゃって」
「さ、悟君が謝る必要はありませんよ!それよりもわたくしはこの方をニコガーデンへ連れて行けない分治療に必要な薬や食料を出来る限り準備させて頂きます。それとこの方が何処に住んでいる動物か調べて参ります」
そう言うとメエメエは掌サイズのピンク色のトランク鞄を取り出すとそれを地面に置いた瞬間大きくなりトランクが開くとその中へ入って行く。
「さて、メエメエが調べている間は僕達はどうしようか」
「勿論この子について色んな人に聞き込みをしよう。それでもしこの子がどこの誰かに飼われていたとしたら飼い主が見つかるかもしれないからね」
「こむぎも手伝うワン!」
いろは達は街に行って情報集めをすると意気込んでいるが何やら悟は彼女達とは逆の事を考えているのか眉をひそめている。
「いや、僕は寧ろ暫くこの子の存在はあまり大ぴらにしないほうが良いと思う」
「えっ、どうして?」
「なんでワン?」
自分達とは反対意見を出す悟に疑問をぶつける。もし飼い主が居たらきっと心配しているに違いない。そう思っているいろはだが悟は何か違う事を考えている様だ。
「さっきも言ったけどこの鷲は僕も初めて見る。それにこのサイズ、日本で最大の鷲のオオワシは全長が約84cmから95cm程。稀に1mを越す事はあるけどこの子の場合はそれを遥かに上回る大きさ…しかもニコガーデンの動物じゃないとしたらただ事じゃないよ」
「確かにそうだけど…」
悟の説明にいろはは納得の声を上げる。改めて見ると自分達の常識を破る様なこの大きさにその姿、まるで昨今流行っている異世界アニメや漫画といった所から直接やって来たのなら説明つく。だが、ニコガーデンの存在を認知する悟としては幾ら何でもそれはないだろうと思い込む。
「そして何よりもこの怪我…木や岩にぶつかった程度では出来ない。何かに攻撃された様な」
「何かに攻撃…って?」
「誰かに虐められたって事?」
悟の指摘にいろは達は改めて鷲の怪我を見る。それはまるで何かに焼かれた様な火傷や切り傷など明らかに普通の怪我ではなかったのだ。
「ひょっとしたらこの鷲の珍しさを狙って何者かが襲いかかって来たのかもしれない」
「それって…下手にこの子の情報を広めたらこの子を狙ってくる人もやって来るって事?」
「あくまで可能性だけどね」
そう言って悟は自身の見解は確信もない仮説の話だと説明する。だがいろはにとってはそれが当たっているかもしれないと考えた。いろははこの大きさの鷲は一体どこから来て何者かはわからないが初めて会った時は今よりも傷が酷く自分達が見つけなければ息絶えていた。
(もし、悟君のいう通り聞き込みしてその情報から悪い人たちがこの子を狙って来たりしたら……)
あくまで自分の想像ではあるが動物好きのいろはにとって目の前で苦しんでいる動物に危険なリスクを背負わせたくなかった。
「わかったよ悟君、取り敢えずこの子は傷が完治するまでこの子の事は秘密にしておくよ」
「こむぎも秘密にするワン!」
「ありがとう。それと後で猫屋敷さん達も伝えとこう」
一同は鷲について秘密にする事を決めたと同時にこの場にはいないもう一組の友達の存在を思い浮かべたいろは達はスマホを取り出して謎の鷲の存在について猫屋敷と呼ばれる存在に連絡をするのであった。
────────
そんなやり取りを思い出したいろはは腕の中にいるこむぎに声をかける。
「とまぁ、悟君とあの鷲君について秘密にすることになったけど、こむぎから見てソラちゃん達の事はどう思う?」
「とっても気持ち良かったワン」
「いや、感想を聞いているんじゃないよ」
先程撫でられた時の感触の事が気に入ったのかとても良い笑顔で答えるこむぎにいろはは苦笑いを浮かべるが、先程こむぎ達と接するソラ達の顔が頭の中をよぎる。
「……そうだよね。こむぎを優しく撫でている時のあの子達はいい子に違いないよね」
こむぎといった動物に優しくするあの姿は悪人ではないだろうといろはは判断する。
「取り敢えず悟君に鷲君を探している人がやって来たって伝えとこう」
ソラ達は悪人ではないものの鷲とはどの様な関係か未だにわからない為、取り敢えず自分の友達である悟に連絡しようとする。
「それとまゆとユキにも連絡するワン」
「うん、勿論」
悟の他に自分の友達である2人の少女の姿を思い浮かべつつ彼女にも連絡を入れようとスマホを取り出すのであった。
「ん?」
「どうしたのこむぎ?」
だが、その時こむぎは突然いろはの腕から抜け出し地面に着地するととある方向を凝視する。
「何かわからないけど、あっちの方から嫌な感じがするワン」
「嫌な感じ?それにあっちは確か…」
こむぎが向いた方向に何か思い当たる節があるのかいろはもその方向をじっと見つめる。
一方いろは達が視線を向けた方向にある数km先にある場所…そこには大きな岩盤の様なものが存在しておりそのすぐそばで一触即発の雰囲気が漂っている。
「何でアンタが此処にいるのよ…!」
「あなた…いきなり何なの?」
其処にいたのはひかる達と行動しているらんこが目の前にいる人物と互いに睨み合っていたのだ。そんな彼女の視線の先にいたのは以前ひかるとのデートにてベリィベリーが変装した金髪碧眼の女性がいたのだ。
当時の事を知っている人物からすればベリィベリーの変装と思うが生憎その女性はベリィベリーではなかったのだ。
「なっ…こ、こんな…こんな馬鹿な…!?」
「にゃんと…!?」
何故ならその直ぐ側にはベリィベリー本人がおり金髪碧眼女性を見て物凄く驚いている。そして彼女の足元にいるライも驚きを隠せないでいた。
「ら、らんこさん……」
「ゆ、ユキ……」
更にその隣にはひかると焦茶色のサイドテールの少女が2人を不安そうに見つめていた。
何故こうなってしまったのは数十分前まで遡るのであった。