アニマルタウンにワシオーンを探しにやってきたらんこ達はそれぞれ何組かに別れて聞き込みをしていたのだが、その中でらんこはそこで出会った二人組の少女達と喧嘩になり精神的に耐えられなくなったらんこはその場から逃げ出したのだ。
「らんこさん待ってくれよ!」
「来ないでよ!」
そんならんこをひかるは追い掛けるのだがらんこの足は学校の中で一二を争う程の実力を持っているその為中々距離が縮まれずにいた。
「くっ、負けるか!俺だって最近は皆んなとランニングして足とか鍛えてんだ‼︎うおおおおおおおおっ!!!」
だが、ひかるも負けじと日々鍛えてきた脚力を発揮していき段々と距離を詰めていき何とからんこの腕に手を伸ばして捕まえる。
「っ!離して!」
「落ち着けらんこさん!」
必死に腕を振り払うとするらんこをひかるは逃がさない様に身体を抱きしめて取り押さえる。最初は激しく抵抗するらんこだが徐々に抵抗は弱くなり最終的には動きを止める。そして何やらぼそっと呟きだす。
「なによ彼奴…ひかるに酷い事をしてそれを忘れて被害者面するなんて…!」
「らんこさん…ひょっとして…俺の為に怒ってくれたのか?」
今にも泣きそうならんこの発言に彼女が己よりも自分の為に怒った事に気づいたひかるは驚きと共に少し照れた顔を浮かべる。そんなひかるはらんこの頭を撫で始める。
「ひ、ひかる…!?」
「ありがとうらんこさん。俺の為に怒ってくれて…」
先程のらんこの行動はユキとまゆの2人を泣かせるに至る程やり過ぎな所がある。まゆから非難の声を浴びせられるのも仕方ないだろう。だが、ひかるからしてみれば彼女の行動は自分の為にした行動だから嬉しかった。そんな彼はらんこにお礼を言いながら猫や犬の様に頭を撫でていくとらんこは気持ち良いのか表情は次第に穏やかになっていく。
「…っ!か、勘違いしないで!私が怒ったのはあいつがこの前の事をすっかり忘れて友達と仲良くしていた事に腹を立てていただけよ!あと、いつまで抱きしめているのよ!」
「ああっ、ごめんごめん」
撫でられて心地良かったが我に返ったらんこは顔を真っ赤にしながら慌てて離れる。対してひかるも自分の彼女とはいえ今は関係が良くない状態で無闇に体を抱きしめたのは無神経であったと反省する。
一方でらんこはそんな彼を見てゆっくりと口を開ける。
「…ありがとう」
「ん?なんか言ったか?」
「ううん、何も言ってないわ。それより話は変わるけどここまで聞き込み調査をしてきたけど成果はゼロよね」
「ああ、そうだよな。これはひょっとしたらワシオーンはこの街にいない事を半分くらい頭に入れたほうがいいかもしれないな」
ここまで色んな人から聞き込みをしてきたが全く情報が入ってこなかった事にひかるは半端諦めている感を出し始める。
「なら探し方を変えるわよ」
そう言うとらんこは首の装置に触れてダークツイスターに変身する。
「ら、らんこさん!?急に変身して一体何をするつもりだ!?」
突然らんこがダークツイスターに変身した事にひかるは怯えた表情を浮かべて後退りする。
「ちょっと、何もそう怯えなくていいでしょ。別に取って食うつもりじゃないんだから」
ただダークツイスターに変身しただけなのにここまでの怯えっぷりにらんこは内心傷付く。後、彼女は気が付かなかったが周りにいた動物達は一斉に唸ったり吠えたりと警戒行動を見せていた。
「私はただ空から探そうとこの姿になったのよ」
「ああっ、なんだそう言う事か」
納得したと言わんばかりに手を叩くひかるにらんこは軽くため息を吐く。
「じゃあちょっと飛んでくるわね」
「あっ、待ってくれ!俺もキュアトールに成れば空を飛べるから俺も行くぜ」
空を飛び立とうとするダークツイスターに続いて変身しようとミラージュペンを取り出す。
「悪いけどちょっと1人にさせて…まださっきの事があって少し1人になりたいの」
「えっ、そうか…わかったよ」
先程まであった出来事がダークツイスターの中ではまだ完全に整理しきれてない様だ。ひかるは彼女の意思を尊重して1人で空を飛んでいく姿を眺める。
(らんこさん…少し気が晴れるといいけど)
1人空を飛び回るらんこにひかるはただ見守る。下手に付き纏っていけば彼女の機嫌は悪くなる。そうならない為にも今は彼女の好きな様にさせようと考える。
「まぁ、此処でただ1人でいるより俺もらんこさんみたいに飛んで探すか」
自身もダークツイスターとは別の方向で空から探し出そうとキュアトールに変身しようとした時だ。
「ひ、ひかる…」
「おっ、その声はベリィベリーさん。随分と遅かったけど、どう…し……えっ!?」
背後から聞こえてきたベリィベリーの声を聞いてひかるは振り返ると思わず驚愕の表情を浮かべてしまう。何故なら今のベリィベリーは顔にら無数の引っ掻き傷があったのだ。一体その傷はどうしたのかと問おうとした時だ。
「にゃおん」
「あっ、ライ…まさかお前がベリィベリーさんの顔を引っ掻いたのか!?」
ベリィベリーの足元にいるライの姿を見てベリィベリーの顔の傷はライによるものだと確信する。何故ライがその様な事をしたのかひかるはわからないが先ずは飼い主としてベリィベリーを傷つけた事を咎めようとする。
「ライ!お前何やって「ま、待ってくれ、その毛玉は悪くない!」え?どういうこと?」
叱ろうとした直前に被害者であるベリィベリーが止めに入った事にひかるはキョトンとする。ベリィベリーは以前からライの事を嫌いであったにも関わらず今回ライを庇ったのはひかるにとって不思議で仕方なかった。
そんなひかるにベリィベリーはある事を告白する。
「じ、実はひかる…お前とらんこに隠していた事があったんだ」
「俺とらんこさんに隠し事?それっていったい?」
「その…それは…だな……」
その隠し事についてベリィベリーは伝えようとするが何やら人見知りの様に内容を伝えようとする事に物凄く躊躇だている様だ。そんなベリィベリーを見てライは自身の爪で彼女の足を引っ掻く。
「いだっ!?お、おい!何をす…いや、わかった。わかったからその爪は引っ込めてくれ。ちゃんと説明するから…!」
「ベリィベリーさん!?俺たちのそばに居なかった時ライと一体何があったんだよ!?」
完全にライに屈しているベリィベリーにひかるは思わず聞きざる得なかった。先程までベリィベリーはライに対してライバルと言わんばかりの眼差しを向けられていたがそれが鏡石で別れた僅か数分間ライと一体どんなやり取りをして今の状況になったのか気になって仕方なかった。
(い、言うんだ…先ずはらんこよりハードルが低いこいつにこの前の乱入した件を言わなければ…!)
一方でベリィベリーは内心まるで親の大事な物を壊した子供が親に謝罪をする様な緊張感に襲われていた。何故彼女はこんな気持ちを抱いていたのかは少し前まで遡る。
──────────
それは鏡石の前でまゆとユキの2人と険悪な関係になり逃げ出したらんこをひかるとベリィベリーが追いかけていた時だ。
「らんこ!待ってく「ふしゃーっ‼︎」って、ぐきゃあっ!?」
ひかるの数m後ろに走っていたベリィベリーはライの強烈なすてみタックルを背中で受けてしまい地面に倒れる。尚、ひかるはベリィベリーに気づかずらんこを追いかけて行ってその場から離れてしまう。
「いだだっ、おい毛玉何を「にゃん!」いだっ!?」
突然攻撃してきたライにベリィベリーは文句を言おうとするがその前にライは強烈な猫パンチをお見舞いしてベリィベリーを黙らせた。
「にゃあ、にゃにゃん!」
「ま、まさかお前…この前私がらんこ達の前に変装してやった事を伝えていない事に怒っているのか?」
「にゃん」
ベリィベリーの問いにそうだと言わんばかりに返事をするライ。そもそも今回らんこがユキ達と揉め事を起こすきっかけとなったのはベリィベリーがデートの時に変装した事を未だに黙っていた事が原因だ。
ライは今日までベリィベリーがらんこ達に明かさなかった事で今回の事が起きた事に物凄く怒っている様だ。
「ま、待ってくれ!確かに変装した事を明かさなかったのは私が悪かった。でもな、普通私の変装した姿と瓜二つな人間が存在するなんて誰も予想出来ないだろう!」
己にも非はあるとベリィベリーは認めるが、決して真似た訳でもないのにアニマルタウンでまさかそっくりなユキの存在は確かに誰も予想はできなかっただろう。
「にゃあ…」
これに関してもライも同感と言わんばかりだ。だが、それはそれとしてベリィベリーが変装をその日にらんこ達に明かしていれば関係ないユキ達に嫌な思いをせずに済んだのである。
「にゃーお」
「え、まさかお前…私にあの時現れた女の正体をらんこ達に言えと言っているのか?いや、でもそれは…」
ライの提案に思わず躊躇するベリィベリー。本来なら探し方を此処は責任を持ってベリィベリーがケジメをもといらんこ達に正体を言うのが正しいのだが、この女はもしバラしたららんこに嫌われると自分勝手な事を考えていた。
「ふしゃーっ!」
「いだーっ!?な、何をするんだ貴様!」
そんなベリィベリーに我慢出来なくなったのかライは爪を出すとベリィベリーの顔を容赦無く引っ掻く。
「にゃあ!にゃにゃん!」
「お前が何を言っているかは分からないが察するにその爪で私を脅そうと言うのだろう。ハッ!残念だが、私はそーいう脅しには屈しな!…え?ま、待て。二刀流って、それは反則だろう。わ、私に近寄るんじゃない!例え小動物でも私に危害をなすのなら電撃を容赦無くって、うぎゃああああああああああああああっ!!!」
こうして痺れを切らしたライはベリィベリーの顔面に乱れ引っ掻きを繰り出した事でベリィベリーを屈服させる事に成功するのであった。
──────────
(くっ、毛玉めぇ…容赦無く引っ掻いてくれたな……!)
今も顔の引っ掻き傷が風で染みるベリィベリーは足元にいるライを恨めしそうに見つめるが、それに対してライは知らん顔をする。それを見てベリィベリーは思わず拳を強く握り締め歯軋りをする。
「べ、ベリィベリーさん、さっきからどうしたんだ?」
「な、なんでもない。ただ最近虫歯が出来てな…あ、ははは」
若干苦しい誤魔化し方をするベリィベリー。そんな彼女にライは"はよいえ"と言わんばかりに爪を見せつける。そんなライにベリィベリーは顔を引き攣らせながらも腹を括る。
「ひかる!実はお前に伝えないといけない事があるんだ」
「伝えないといけない……まさか!?」
いつにも増して真剣な顔を浮かべるベリィベリーにひかるは何かを察した表情を浮かべる。
「ああ、そうだ。実は私は「ごめん!俺はベリィベリーさんの気持ちに応えられない!」…は?」
意を決して変装の件を明かそうとしたベリィベリーだがそれを遮る様に何か断る様な言動をするひかるに思わず固まってしまう。
「確かにベリィベリーさんは大人っぽくて何事にも自分に正直な所は俺も好きだ。でも、俺にはらんこさんと言う心に決めた人がいて二股なんて事はできないんだ!」
「なっ、なっ、何を言っているんだ貴様はぁーっ!?」
全く見当違いな事を言い放つベリィベリーは思わず怒鳴り声を上げる。せっかく覚悟を決めて己のやらかした事を明かそうとしたのにひかるはそれを愛の告白と勘違いした事にベリィベリーは怒らずにえなかった。
もう我慢ならない。やはり1発ぶん殴ろうとベリィベリーはひかるに向かって拳を振ろうとした瞬間だ。
「ん?なんだアレは?」
「え?」
ベリィベリーは拳を止めて空を見つめる。それに釣られてひかるもベリィベリーと同じ空に視線を向けるとそこには謎の光の玉が飛んでいるのが確認した。
「アレは一体?」
「ひょっとしてウル◯ラマンか?」
謎の光の玉を見て怪獣の脅威から地球を守りにきた光の星からの戦士なのではと、そんな事を考えているひかる達だがその光の玉の進行先を見て表情は一変する。
「なっ!?らんこさん!危ない‼︎」
「なんだって!?」
なんと光の玉は真っ直ぐと空から街を見下ろしていたダークツイスターに向かって突っ込んでいく。対してダークツイスターは迫り来る光の玉の存在に気付かずにいて、そして…。
「えっ、きゃああああああああっ!!!」
「「らんこ(さん)‼︎」」
「にゃん!」
光の玉はダークツイスターに衝突すると爆発し彼女は吹き飛ばされて近くの山へと落下する。
それを見たひかるはすぐにキュアトールに変身するとベリィベリーとライを抱えてダークツイスターが落ちた山へと向かった。
──────────
一方、アニマルタウンのビル街にある比較的高いビルの屋上にてダークツイスターが落下する姿を目撃する黒い存在がいた。
「デスボール着弾確認。標的、ダークツイスター撃墜完了」
そう呟くのはかつてダークツイスターによって破壊されたハイマックスであった。そんな彼の元にターボマンが現れる。
「ご苦労さん。あんたは確かダークツイスターにやられたんだっけ?なら少しはスカッとしたか?」
「私は任務の障害となるダークツイスターを排除しただけだ」
ターボマンの問いに対して黙々と答えるハイマックスはダークツイスターが落下した山を見つめるとその場から動き出そうとする。
「あん、どこに行くんだ?」
「私のレーダーにダークツイスターの反応が確認出来た。これから完全排除の為、あの山へと向かう」
「成る程。じゃあ、俺も行くとするか。ダークツイスターだけでなく他の奴らもこの街に来ているのは確認出来たからな。今頃落ちたダークツイスターの下に集まっていくだろうしな」
そう言うとターボマンはハイマックスと共にダークツイスターが落ちたと思われる山の方へと向かうのであった。
「いろは!あの山に何か落ちていったわん!」
「いけない…あの山にはあの子がいる。悟君とまゆちゃん達に連絡を入れなきゃ」
ハイマックス達がいたビルの側にはいろは達が偶然いて、彼女達もダークツイスターが落下するのを確認したらしく電話をした後山へと走っていくのであった。
─おまけ─
此処はアニマルタウンの一角にあるおおくま牧場。其処には若い娘とその両親とスタッフ達が丹精込めて豚や牛、羊その他動物達のお世話をしている。
そんな牧場に最近新しいスタッフがやってきたのだ。
「おーい新入り。次はこっちの方も頼むぞ〜」
「はい!こちらが終わったら行きます」
彼は動物を世話した経験がない様で他のスタッフと比べて存在が浮いてしまう。だけど他の先輩スタッフの話や動物に対する接し方を見て聞いて学び少しずつ上達して行っている立派な好青年だ…外見はね。
(チッ、何で俺が家畜どもの住処を掃除して糞の後始末をしなきゃなんねえんだよ!これも全てプリキュアの所為だ!)
内心毒吐く彼の名はバッタモンダー。知っての通りアンダーグ帝国からやってきたプリキュアの敵だ。先日プリズムとブラペとの戦い敗北した彼は自身の操るバッタの大爆発により吹き飛ばされて行方が不明となっていた筈なのだが。
「(幸いにも吹き飛ばされた先がこの牧場にあったでっけえ牧草ロールがクッション代わりになってくれたお陰で怪我はなかった。だが、任務が失敗した事で俺はアンダーグ帝国に帰れず仕方なくこんな見知らぬ土地で一般人に化けて住み込みバイトをする羽目になったんだ…)これも全てプリキュアの所為だ…!」
何と言う悪運の良さだろう。バッタモンダーは潔く負けを認めずプリキュアへの復讐を誓っておりいずれはソラシド市に戻ってリベンジをする気満々の様子だ。
そんな復讐心を抱きながら牛達の世話をバッタモンダーだがそこへカウガール服を身に纏った少女がやってくる。
「紋田さーん!調子はどう」
「あっ、みつ子ちゃんこんにちは。まぁ、ぼちぼちって所かな」
バッタモンダーはみつ子と呼ぶ少女の存在に気付くと挨拶をする。彼女はこのおおくま牧場の大熊みつ子。この牧場経営をする夫婦の一人娘であり彼女も両親とスタッフ達と共に動物の世話をしている。
ちなみに彼女が呼んだ紋田と言う名前はバッタモンダーの偽名である。
そんな彼女は持っていた牛乳が入った瓶をバッタモンダーに渡す。
「そんな紋田さんにプレゼントだよ。はい、牛乳をどうぞ」
「おっ、ありがとう。でも、何でこんな素性の知らない僕に世話を焼いてくれるんだい?」
みつ子から牛乳瓶を受け取りつつバッタモンダーは彼女に疑問を投げる。実は此処へ住み込む経緯については牧場を見回っていたみつ子が牧草ロールの上で気を失っているバッタモンダーを見つけその後彼女と彼女の両親の介抱により回復して此処で住み込みバイトをする様になったのだ。尚、バッタモンダーは当初一般人に変身しておらず顔は青紫色のデフォルトであった為病人であると勘違いされていた。その後、隙を見て額の宝石と触覚を消し肌の色も青紫から一般人と同じ肌色に変化させている。
「まぁ、紋田さんが何処から来たのかわからないけど、動物を真剣にお世話をしたり牧場に来るお客さんを対応したりと仕事熱心な姿を見ているからね。少なくとも私には悪い人には見えないんだよね」
「みつ子ちゃん……!」
キラキラしたまるで動物の様な無垢な眼差しを向けてくる大熊にバッタモンダーの悪に染まった心は漂白される。彼は今までアンダーグ帝国の住人としてキメラング(グラン)達と共にらんこ達の前に何度も立ち塞がり悪事を働いてきた。そんな彼が他人からそんな眼差しを向けられた事は目の前のみつ子が初めてでまるで石像の様に固まる。
「おっと、じゃあ私この後他の子達のお世話をするから此処の子達を任せたよー」
「は、はい…へ、へへ…」
走り去っていく大熊の後ろ姿を見てバッタモンダーは嬉しそうな笑みを浮かべるとそばに居た牛が「モオ〜」と鳴くと我に帰る。
「ハッ……フッ、僕とした男はなんて罪な男なんだ。年頃の女の子を誑かしてしまうなんて…ああ!僕はなんて罪深いんだ!」
何言ってんだこいつ?
何やらナルシストな台詞をほざいている事に近くにいた牛はバッタモンダーに呆れた眼差しを向ける。
兎に角今日の仕事をこなそうとバッタモンダーは辺りに落ちている糞の片付け牛の誘導をしたり餌の用意といった重労働をこなす。全てはプリキュアへの復讐のため…あとついでに自分に優しくする大熊みつ子の為と言う下心を抱く。
そんな復讐心を胸に動物達の糞を片付けていると誰かが彼の元へやってくる。
「すいませーんちょっと良いですか?」
「尋ねたいことがあるんです」
「はーい、なんです…がっ!?」
糞を片付け終えたバッタモンダーは恐らく牧場に来た客だろうと振り返り対応しようとしたがそこにいた人物達を見て表情が固まる。
何故ならそこに居たのはワシオーンを探す為におおくま牧場にやって来たあげはとツバサにエルの3人組であったのだ。
「あの…どうしましたか?顔色が悪いですけど」
「べ、別に何でもねえ…じゃなかったなんでもありません」
「そうですか?疲れているなら休んだ方がいいと思いますけど」
「やしゅむ!」
まさかの敵であるあげは達の登場に一瞬バッタモンダーの変装が解けかけるもなんとか誤魔化す其処にいたのは先日まで自分と戦っていたツバサ達一行だった。
(何でこいつらが此処にいるんだ!?まさか、俺を探しに来たのか!?わざわざこんなソラシド市から離れた街まで!?)
それほどまで自分を恨んでいるのかとバッタモンダーは考えていたがそれは見当違いだ。彼等はワシオーンを探しにきており決してバッタモンダーの事など考えていない。
そんなバッタモンダーの気持ちを知らずあげははワシオーンの絵をバッタモンダーに見せる。
「仕事中にすいません。ここら辺で大きな鷲を見た事ないですか?」
「さ、さあ、見た事ないな…」
「そうなんだ…」
「てっきり牧場だから色々と動物がいるから此処に紛れてたりしていると思いましたが考えが外れてしまいましたね」
あげはの問いにバッタモンダーは若干緊張しながらも素直に答える。対してあげはも特に追求せず引き下がる…かと思ったら何やらじっとバッタモンダーの顔を見つめる。
「あの…なにか?」
「いや、なんだか貴方の顔って何処かで見た事ある様な…」
「い゛っ!?」
あげはの指摘にバッタモンダーは動揺を見せる。まさか、自分の完璧と言える変装を見破られてしまったのかと不安を抱き出す。
「そう言われると確かに見たことある様な…」
「何処だっけな……ああっ!?」
(バレたか!?)
驚きの声を上げるあげはにバッタモンダーは己の正体を見破られたのかとショックを受け、身構えようとする。
だが、あげははバッタモンダーではなくその上を見上げてはしゃぎ出した。
「見て見て!こんな真っ昼間に流れ星だよ」
「「え?」」
「ながれぼし♪」
あげはの指摘にバッタモンダー達はつられて空を見上げると上空に謎の光の玉が飛んでいるのを確認した。
「こんな真っ昼間に流れ星って、おかしくないですか?」
「何言っているの少年。確かにおかしな事はあるけど取り敢えず願い事を言おうよ」
「いおー!」
空に浮かぶ流れ星?にあげは達は呑気に願い事を言おうとするのに対してツバサはそんなあげは達に呆れつつも再び流れ星に視線を向けた瞬間表情が一変する。
「えっ…まさかアレはらんこさん!?」
「える?」
「らんこちゃんって、何を言っているの…って、ああっ!?」
ツバサに続いてあげはも気がつく。流れ星と思わしき光の玉の進行先にはダークツイスターに変身したらんこの姿があり彼女は光の玉に気付かずそのまま衝突して爆発が起きる。そして爆発によりダークツイスターは近くの山へと墜落していくのをあげは達は確認する。
「た、大変!らんこちゃんが!?」
「お、落ち着いて下さい!兎に角らんこさんが落ちた山へと向かいましょう!」
「はやくはやく!」
3人は兎に角らんこの安否を確認しようと急いでその場から離れて彼女が落ちた山の方へ向かう。そしてその場に残されたバッタモンダーは10秒経ってハッとなる。
「何がどうなっている?あいつらよくわかんねえけど随分慌てていた様子だな」
どうやらただ事ではない事が起きているのは理解したバッタモンダー。あの焦り具合からしてこのまま後をつけて行って隙を見せた所に不意打ちを仕掛ければ彼女達を倒す事ができると思い込んだ瞬間だ。
『プリズムスライサー!!!』
「……」
脳裏には己の切り札であったバッタをあっさりと真っ二つにしたプリズムの姿が過ぎった。恐らくプリズムもこの街に来ているのだと考えると下手にちょっかいを掛けたらふわりひろがる優しい光と言う名のバイオレンスが襲い掛かってくるだろう。
そう思ったバッタモンダーが出した答えは…。
「……命拾いしたね。僕は牧場の仕事で忙しいから今回は見逃してあげるよ」
強がりを言って不意打ちをするのをやめたバッタモンダーは若干顔色を青くしながらもそそくさと仕事を再開するのであった。