キメラングとの激闘から数日が経過する。その間は特にカバトンやキメラングの襲来やその他トラブルなく平和な日常が続いていた。そんなある日、虹ヶ丘家ではましろがある計画を考えていた。
「歓迎パーティーですか?」
「突然どうしたのよ?」
「うん、新しくプリキュアになったツバサ君とこれから一緒に頑張っていこうというパーティーをしたいと思って」
ツバサがキュアウィングになり正式に4人目の仲間となった記念としてパーティーをしないかと提案するましろ。
尚、らんこは今日虹ヶ丘家に遊びに来ており、ソラと共にソファーに座ってましろの話を聞いていた。
「そうね……良いと思うわ。この前の一件があった事だし良い気分転換になると思うわ」
「そういえばらんこさんあの後は色々と大変でしたね……」
そう言うと3人の脳裏にはキメラングとの戦いを終えた後の出来事が蘇る。戦いを終えて気絶したらんこは虹ヶ丘家で治療をして復活したが、その後にらんこの両親が虹ヶ丘家へ駆け込んできた事だ。
どうしてそうなったかと言うとらんこが学校から帰ってきたら鞄を家に置いて直ぐに街へ向かった後にランボーグが街で暴れ、らんこの母がらんこの安否を確認しようと連絡を取るが全く取れず。もしかしたらランボーグの被害にあったのではと心配し、仕事をしていたらんこの父にその事を伝えると、仕事を投げ出して合流して、もしかしたら友達であるましろの家に居るのではと考えやって来たのだ。
「ええ、ほんとね……また、心配かけちゃったわ」
実際に巻き込まれて大怪我を負ったが、らんこは両親に心配させまいとソラ達に口合わせをしてもらい虹ヶ丘家で映画を見ていて、電話に気付かなかったと言ってなんとか誤魔化して事なきを得た。両親を安心させるとはいえ騙すのは心苦しかった。
「でも、心配してくれる家族が側にいるのは良い事ですよ」
「そうだよ、らんこちゃんのお父さんの場合は仕事を切り上げて普段は家に居ないかららんこちゃんが羨ましいな」
「ソラ…ましろ……ありがとう」
2人のフォローを聞いてらんこは先程まであった罪悪感が消え、心が軽くなりパーティーの話に戻ろうとする。するとらんこの脳裏にまた謎の声が鳴り響く。今回は紫のロングヘアを赤いリボンでツーサイドアップにしたお嬢様の声だった。
『お父様〜!』
誰だコイツ?
また謎の声に遮られて調子が狂ったと考えたらんこは気を取り直すと改めてパーティーの話に戻る。
「ところで話は戻すけど、歓迎会をやるのは良いとしてそれってツバサ本人の前に堂々と言って良かったの?」
「え?」
らんこの発言にましろは呆気に取られ、今いるリビングを見渡すが何処にもツバサの姿は見当たらない。しかし、らんこが自身の膝の方に視線を移しているのに気付きましろもその視線を追うとそこには彼女の両手で身体を揉まれている鳥の姿のツバサがいた。
「ツ、ツバサ君其処にいたの!?…っていうからんこちゃんはさっきからツバサ君に何やっているの!?」
らんこの手の中にいたツバサに驚きつつも何故らんこの手の中にいるのか疑問をぶつける。
「何って……調査よ」
「へ、調査?」
らんこの発言にましろは首を傾げる。先日彼女はツバサの事を悪人と思い込んでいたが彼が行動でらんこの信頼を勝ち取り善人と認定されたが、まだ彼に何か疑うところがあるのかと思い込む。
「ツバサはこの世界の鳥と違って人に変身出来る鳥よ。哺乳類から鳥類になるなんてアニメや漫画の様なフィクションかと思っていたから実際に目の当たりにして興味が沸いたから触って調べているの」
「らんこさん勉強熱心ですね…私もスカイランドの人間として私達の世界にある物に興味を抱いて頂くと嬉しい限りです」
「ふふ、ありがとねソラ」
──嘘である。
本当は先日のツバサ(鳥の姿)を見て以来抱きしめたいと思い、身体を調べるなんて口実を作って合法的に触れようと考えていたのである。
先日のあげはの様に思いっきり抱きしめて頬擦りをしてみたいがそうしてしまうとツバサが警戒してしまう為、まず初めは両手だけを使ってツバサの身体を堪能していたのだ。
(ああ〜、なにこれぇ〜感触がプニプニしている。それでいて毛並みも良い……本当にこの世にこんな柔らかい生き物がいるのかしら?近所に住む野良猫よりいいわ〜)
心の中ではすっかりツバサの魅力に引き込まれ虜となり癒されていた。気が少しでも緩めば今の心の声が表に出て、一同に見せている己のキリッとした表情も崩れて気が抜けた顔になってしまう。そうならない様になんとからんこは保ち続けていた。
「そ、そうなんだ……と言うかツバサ君よく協力してくれたね……」
ましろはチラッとツバサの顔を見るがあまり快くらんこの頼みを引き受けた様では無く複雑そうな顔を浮かべている。
「最初は僕も断ったんですけど、その時のらんこさんが物凄く落ち込んでいたんで仕方なく引き受けたんです」
ツバサはそう言って軽くため息を吐く。プニバード族はその見た目からスカイランドの子供からも好かれており、撫でられたり、抱きしめられたりする事は多かった。ツバサも少なからず経験があり、最近はエルとも遊んだりしている。だけど、らんこもそうだがソラやましろの様な歳の近い女の子に触られるのは思春期を迎えるツバサにとって気不味い為、最初はらんこの頼みを拒否するもその時の彼女の顔がまるで某電気鼠の様にしわしわ顔で落ち込む姿になったのを見て困惑。更に先日の一件でツバサはらんこに対して多大な恩がある事を思い出し、渋々と彼女の頼みを引き受ける事になり身体を良い様にされていたのだ。
「ところでらんこさん……いつまで触っているんですか?かれこれ30分は続いているんですけど……」
30分も飽きずに触り続けるらんこにツバサもそろそろ精神が限界に近くいい加減やめて欲しかった。らんこに身体を触るのをのをやめる様に頼むが、
「待って、後5分……いや、1時間だけ」
「いや、長過ぎるよ!?」
延長を求めるらんこだったが、あまりにも要求する時間が長い事に見ていたましろは思わず声を出す。そして、ツバサは触るのをやめる気がないらんこにいい加減痺れを切らして彼女の手の中から抜けると人間の姿に変わる。
「あ……」
「あの、何も其処まで残念な顔を浮かべなくてもいいじゃ無いですか……」
元に戻ったツバサを見てらんこは落ち込み、それを見たツバサも少なからず罪悪感が湧いてくる。
「いや、ごめん……なんて言うかプニプニバードだったかしら、その名の通り結構プニプニした感触でなんか癖になるのよね」
「プニバード族!…って言うからんこさん調査なんて言って本当は僕の身体を触りたかっただけですよね?」
調査なんて全くの嘘であると見抜いたツバサはらんこの本来の目的について勘付き指摘をするが、
「……チガウヨ」
「なんですか…その棒読み感が強い台詞とその顔は?」
眼が泳ぎつつも感情が全く籠っていないその台詞に呆れた表情を見せる。そんな2人のやり取りを見てソラとましろは苦笑いを浮かべるのであった。
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「それで、僕の歓迎パーティーでしたね。そんなに気を遣わなくて良いですよ……」
話は脱線したがなんとか話題をパーティーに戻した一同だが、ツバサ自身はパーティーを遠慮したいと言うが、
「気を遣ってなんていません。私はやりたいです。歓迎パーティー!」
「えるぅ!」
ソラとエルはパーティーをやりたい様子だ。
「良いじゃない。私がプリキュアになった時も3人揃った記念でパーティーをしたから」
「うん、あれは楽しかったよね」
らんことましろは以前行ったパーティーの思い出に浸かりつつその時の様な楽しいパーティーをしてみたいと考えていた。
「ツバサ君……駄目かな?」
「いえ…駄目って訳じゃ無いです。寧ろお願いします」
ツバサも最初は遠慮しようと思っていたが彼女達がパーティーをやりたい姿(特にエル)を見てツバサも自身の中にあった遠慮の二文字はすっかり無くなりパーティーをやりたくなったのだ。
「それj『よーし、それじゃあ、みんなでツバサ君のパーティーをやろう!けって〜い!』……」
誰だコイツ?
「では、開催決定ですね!」
「える!」
「うん!らんこちゃんも良いよね?」
「へ?…そ、そうね」
またしても頭の中から聞こえた謎の声に今度は台詞を先に言われた事に一瞬思考が固まるらんこだが、ましろに話しかけられた事に正気を取り戻して返事をした。
「あ、ちょっと待って」
「どうしましたからんこさん?」
しかし、開催を決定した矢先"待った"と声を掛けるらんこにソラは気になって声を掛ける。
「あげは姉さんは誘わないの?」
「あ、そう言えば……」
一同は今日遊びに来ていないあげはの存在を思い出す。プリキュアや特殊な力を持たないあげはであるが、それぞれ自分達を励ましたり悩み事に相談してくれたりと色々とやってくれて今では自分達にとって頼れる保護者ポジションの彼女。
こういうイベント事に一番好きそうなあげはを誘えばパーティーは間違いなく盛り上がると思いましろに相談するが、
「うーん、実は今日来れないか誘いたかったんだけど。あげはちゃんは今日学校でこっち来れないみたいなんだよね」
「そうなの……なら仕方ないわね」
「あげはさんを誘えないのは残念ですが、あげはさんの分楽しみましょうか」
あげはが参加出来無いと知るとらんこは寂しさを覚えるが、無理矢理誘って成績に響いたら嫌だから此処は我慢しつつ今度何か埋め合わせをしようと考えるのだった。
「それでは気を取り直して私達はパーティーの準備をしましょうか」
「うん」
「そうね」
「える!」
ソラ達は早速パーティーの準備をしよう動き出すとそこにツバサが声をかける。
「僕も手伝います」
「「「え?」」」
「え、駄目…ですか?」
ツバサの発言に3人は驚きの声を上げる。ツバサも彼女達の反応を見て手伝っては駄目なのかと不安そうな顔を浮かべる。
「別に駄目って訳じゃありませんがツバサ君の歓迎パーティーですからツバサ君はドーンと構えて下さい」
「でも、何だかジッとしてられないと言うか……申し訳なくて」
ソラはツバサに自分達に任せてと欲しいと言うが、ツバサ自身も自分だけ見ているだけってのは我慢出来ない様子だ。そんな彼を見てソラはどうしたら良いかと悩んでいると、
「ソラちゃん私は良いと思うよ。最初はサプライズパーティーをするつもりだったけど、ツバサ君が知った以上はこの際だから手伝って貰おうよ。らんこちゃんはどうかな?」
「私もましろの意見に賛成よ。それに変に私達だけで準備して自分達好みのパーティーになって
「そう言われると……そうですね、わかりました。ツバサ君も協力お願いします」
「はい、もちろんです。こちらこそよろしくお願いします」
2人の話を聞いてソラは納得するとツバサに協力を呼びかけると元気よく応じて、パーティーの準備が始まった。
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それから4人はパーティーの飾り付けについて相談している。最もこれはツバサの歓迎会である為、主にツバサ自身の意見を聞いてそれをもとに飾りを作るという流れになっている。
そして、ツバサは飛行機や鳥と言った自身の好きな物を要望する。3人は勿論彼の要望を採用すると早速飾り作りを始める。一部の飾りはツバサの部屋に置いてある模型で代用するとしてそれ以外の飾りはツバサを含めた4人が一から作る事になる。それぞれ手慣れないところはあるものの、其処は互いにカバーして解決していく。エルの場合は赤ん坊である為、飾り作りは難しくヨヨと共に4人の姿を眺めていた。
そして、パーティーに必要な飾りを作り終えた4人は椅子に座って休む。
「ふぅー、飾り作りはこれぐらいで……」
「後は料理ですね!」
「ツバサは何か食べたい物がある?料理の予算はこっちが負担してあげるから遠慮なく好きな物を言って良いわよ」
今度はパーティーで食べる料理を決めようとツバサに希望を聞く。らんこは自身の財布を取り出してアピールする。
「好きな物ですか?…それならパーティーと言えばヤーキターイですね」
「そっか、ヤーキターイかぁ……え、ヤーキターイ?」
ツバサの口から出た"ヤーキターイ"という料理に納得しかけるが、全く聞いたことの無い料理に思わず聞き返すましろの隣でらんこは"ヤーキターイ"の単語を反芻する。
「ヤーキターイ……ヤキタイ……焼き鯛……金目鯛を食べたいって事?」
「ああ、そういう事!」
らんこの発言にましろは納得の声を上げる。確かにお祝い事には鯛の料理はもう渋ない。結構な値段はするが折角自分達の次に誕生したプリキュア…言わばキュアウィングは後輩だ。此処は先輩らしくいい所を見せようと考えたらんことましろは早速買い出しに行こうとその場を立ち上がる。
「いえ、魚料理ではありません。ヤーキターイはお菓子なんです」
「え、お菓子なの?……一応聞くけどらんこちゃん聞いたことある?」
「いや、聞いたことないわよ。そんなお菓子……」
ツバサの訂正を聞いて、鯛や魚料理では無いと分かるとらんこに相談するがやはりヤーキターイというお菓子など存じていなかった。
「それなら私聞いたことあります。詳しくは存じませんがヤーキターイというのはプニバード族に伝わるお祝い事に食べる物だとかで」
「つまりスカイランドに存在する料理って事……気になるわね」
以前のスカイジュエルもそうだったが、異世界との文化交流にらんこは興味津々であった。
「はい、ヤーキターイは外がフワフワ中はしっとり甘くて凄く美味しいんですよ。最後に食べたのはここに来る少し前だったんだなぁ」
ツバサが脳裏に思い出すのはまだ彼がスカイランドにいた頃、自身の描いた絵がコンクールに入選して彼の両親が大変喜んだ。そして、入選したお祝いとして両親とともに食べたヤーキターイの味だった。
「へぇ、思い出の味ってやつね。是非とも食べてみたいわね」
最後に食べたヤーキターイの美味しさを思い出すツバサを見て益々そのお菓子について興味が湧いてきた。
「なら作ってみようよヤーキターイを!」
「あ、でもどうやって?僕も作り方わからないし」
ましろがヤーキターイを作って見ようと提案するがこの中で一番ヤーキターイを知っているツバサですらレシピを知らない事から作る事は出来ない。しかし、折角のツバサの歓迎会だからどうにかして要望に応えたい。どうすれば良いのかと頭を悩ませていると、そこにヨヨが来た。
「ヤーキターイの作り方ならミラーパッドで調べる事ができるわ」
「「「「えっ!?」」」」
ヨヨの発言に4人は驚きの声を上げる。対してヨヨはミラーパッドを暫く触れていると、ヤーキターイのレシピを見つける。
「あったわ。これがヤーキターイよ」
そう言ってヨヨはミラーパッドを4人に見せる。其処には魚の形をしたお菓子が映っていた。
「そう!これがヤーキターイです!」
「へぇ、魚の形をしてるんですね!」
「まぁ、スカイランドでもプニバード族に伝わる特別な料理ですから!」
誇らしげに話すツバサを他所にましろとらんこは互いに目配らせをして確認すると恐る恐る口を開く。
「これ…私達の世界の……」
「…たい焼きね」
「「……え?」」
ミラーパッドに映るヤーキターイはやや見た目が異なるが自分達の良く知るたい焼きであると伝えるとソラとツバサはキョトンとなる。
「そうね。確かにヤーキターイはたい焼きに見た目は似てるけど、材料はスカイランドの物を使うからたい焼きとは味が少し違うと思うわ」
ヨヨ曰く、ヤーキターイは生地にプニ麦粉。あんはプニの実を使う。そのためたい焼きとは味が異なるのだ。
「そうなんだ…」
「因みにヨヨさんその材料は今この家にあるかしら?」
もしあるのならそれを使ってヤーキターイを作ろうと思ったらんこ。
「残念だけどこの家には置いていないわね」
「そうですか……まぁ、だけどヤーキターイが何なのかだけでも知れただけでも良いわね」
プニ麦粉とプニの実が無いと知ると少々残念そうな表情を浮かべるもすぐに割り切る。
「じゃあ、試しにこっちの材料でたい焼きを作ってみるからツバサ君、食べてみて!」
「はい、こちらの世界のヤーキターイ…ではなくたい焼き?と言うのを堪能させて頂きます」
ましろは対してツバサはヤーキターイでは無いがそれに似たたい焼きを食べる事が分かるとどんな味なのか楽しみにするのだった。
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それから4人は家にあった小麦粉やその他材料で生地を作り、中に入れる餡子を用意すると家にあったたい焼きメーカーに生地と餡子を入れて焼き上がるのを待っていた。ソラとツバサはまだまだかとたい焼きメーカーをじっと見つめる。対してらんこは先程から何やら背後にある物を気にしており恐る恐るましろに話しかける。
「それにしてもましろの家ってほんと色々な物があるわよね……」
「あ、あはは……」
そう言って彼女はチラッと背後に視線を向けると、其処にはたこ焼きメーカーだったりワッフルメーカーにポップコーンメーカーなどその他、色んなお菓子を作る調理器具が置いてあった。
「ヨヨさん……こんなに持っているけど、通販サイトとか頻繁に利用しているのかしら?」
「ど、どうだろう……」
あまりパソコンに向き合っているヨヨの姿は見た事無いが、目の前にある沢山の調理器具を見て強く否定は出来ない。ひょっとしたら他にも何かあるのではと考えてしまう。
そして、それから数分が経過するとたい焼きが出来上がる。
「出来たよ。これがたい焼きだよ!」
「見た目はヤーキターイと全く同じです」
「美味しそうですね……甘い匂いもして何というか…食欲をそそりますね。早速味見してみます」
そう言ってソラは皿の上に置かれたたい焼きに手を伸ばそうとするが、その手をらんこが掴む。
「こら、先ずはツバサが先に味を確かめるんでしょ?ソラの分は後で作るから先にツバサに渡しなさい」
「あっ、そうでした。すいません…と言うわけでツバサ君味見をお願いします」
らんこの指摘にソラは思い出すとツバサにたい焼きを渡した。
たい焼きを受け取ったツバサは早速食べようとするが、ソラとましろの視線に気づく。
「「ジィーーッ…」」
「うっ……」
先程から凝視するソラとましろにツバサはたい焼きを食べづらく困惑の表情を浮かべる。それに気づいたらんこはソラとましろに話しかける。
「2人とも…そんな見つめているとツバサも食べづらいわよ」
「あ、ご、ごめんねツバサ君!」
「どうか私達の事は気にせず食べて下さい!」
「いや、気になるから食べづらいんでしょうが!」
ソラの発言にらんこは思わずツッコミを入れるのだった。そんなやりとりを見てツバサはくすりと笑うと先程まであった緊張感が無くなる。
「じゃあ、改めて……頂きます」
そう言うとツバサはたい焼きを一口頬張ると暫く咀嚼して飲み込む。
「……美味しいです!」
3人はツバサが美味しいと言った事に喜びの声を上げる。
「と言う事は……」
「ヤーキターイと同じ味かな?」
「え…そ、それは……」
ソラとましろの発言を聞いてツバサは何やら言葉に詰まる。その様子からしてヤーキターイの味と異なるのは明白だ。
「そっか……」
「やっぱり違いましたか」
「まぁ、材料が違うから味も異なるわよね」
3人は作ったたい焼きの味がヤーキターイの味に再現出来ていないと分かると少し残念そうな表情を浮かべる。そんな彼女達の表情を見てツバサは声をかける。
「でも、美味しかったですし…充分ですよ。ですからこのたい焼きをパーティーの料理n「いや、まだよ」…え?」
この作ったたい焼きをパーティーの料理として出そうとツバサは言おうとしたが、それを遮る様にらんこが口を挟む。続いてましろも口を開く。
「うん、此処からがスタートだよ。このたい焼きの味と違う所をツバサ君から教えて貰えばヤーキターイが作れると思うんだ」
「ああ、成る程!」
ソラはましろの説明を理解する。今のたい焼きをベースにツバサの記憶にあるヤーキターイの味と比較しながら段々と近づけていけばヤーキターイを再現出来ると考えた様だ。そんな中で本日三度目の脳内への謎の声が響く。今度は茶髪を三つ編みにしつつ身長がかなり低い中学生であった。
『スイーツは科学!分量を守り、正しい工程で作れば決して裏切りません!』
誰だコイツ?
らんこは先程から何度も起きるこの現象に困惑しつつツバサへと質問する。
「それでツバサ、今食べたたい焼きとあんたがよく知るヤーキターイと何処が違ってたかしら?」
「あっ、えっと……生地の味は同じ何ですけど、中の餡が違う様な……」
らんこの質問に対してツバサは餡がヤーキターイと異なると答えると、それを聞いたらんこは顎に手を当て考える仕草を見せる。
「生地は良いとして問題は餡の方ね……たい焼きの餡って小豆の餡だけじゃ無くカスタードクリームや白あんにその他色んな物があるから結構骨が折れそうね」
自身の中でもたい焼きは中身の餡のバリエーションが多い事からその中でヤーキターイの味に近い物を探す事に面倒くさいと思ったらんこ。
「でも、これは折角のツバサ君のパーティーの料理だから出来るだけ味を再現してみよう」
「そうです。一度やると心に決めた事は絶対に諦めない、それがヒーローですから」
対してソラとましろは面倒くさそうな姿勢を見せず、逆に前向きに捉えている様子を見てらんこは先程まで自身の中にあった"面倒くさい"という言葉は薄れる。
「はぁ、しょうがないわね。あんた達がやるなら私も付き合うしか無いわね。勿論だけどツバサにも手伝って貰うわよ」
「はい、もちろんです!」
溜息を吐き敢えて面倒くさがりつつも実際は協力する気のらんこだった。そして、ツバサは彼女の呼びかけに元気よく返事をする。
「よーし、皆さんでたい焼きの餡作りをしましょう!」
「「おおー!」」
「ふふっ……」
ソラの掛け声と共にましろとツバサは拳を伸ばして返事をするのに対して、らんこは薄らと笑みを浮かべた。
こうして、一同はヤーキターイの味を再現する為各々がたい焼きに入れる餡の材料を用意するのだった。