楽しい歓迎パーティーを終えて数日が経過する。
今日は学校の無い休日、そんな休日の朝の風波家のらんこの部屋では先程から鳴り響く目覚まし時計のアラームの音のうるささに悩まされながらも手を伸ばして目覚まし時計を止める。
「ふぁ〜……ねっむ……」
寝ていた事により固まった体を解し、カーテンを開けて日差しの光を浴びて眠気をある程度まで覚めるもまだ完全に眠気が無くなった訳でなくまだ瞼が重く感じるも部屋の外から食パンの焼ける匂いがしてきた為、朝ごはんは出来上がっていると思った彼女は重い足取りで一階のリビングへ向かう。
「ふわぁ〜、おは「おっはよ〜う!」フガッ⁉︎」
朝ごはんを作っている自身の母に挨拶をしようとしたらんこだったがその瞬間、何かに抱きしめられ視界も見えなくなり段々と呼吸が出来なくなってもがき苦しんでいた。
「ああ、ごめんね。大丈夫?」
「いきなり、何をするのよかあ……ん?」
いつも以上にスキンシップが激しい自身の母にらんこは注意しようとするが、よくよく見たら目の前にいるのは母では無い事に気がつく。先程まで眠気で目が霞んでいたが、今は段々と目がはっきりと見え、其処に立っているのは自身が姉の様に慕っている女性、あげはの姿だった。
「あ、あげは姉さん!?」
「グッモーニングらんこちゃん!」
あげはは機嫌良く2度目の挨拶をする。対してらんこは驚いたままだ。
何故、彼女がここにいるんだろう、まさか自分はまだ夢でも見ているのかと思っていると、
「あ、らんこさんおはようございます!」
「らんこちゃんおはよう。朝ごはん頂いているよ」
「ど、どうも…」
「え〜るぅ〜!」
「え?」
更に複数の聞き覚えのある声に思わずそちらへ顔を向けると、其処にはリビングのテーブルで朝ごはんを頂いているソラ達の姿があった。
「………夢?」
「夢じゃないよ。ほら、朝ごはん出来ているから座って」
これも夢かと思い込んでいるらんこをあげはは彼女をテーブルにある席に誘導し席に座せる。
対してらんこは恐る恐る自身の頬を抓りだし、頬から痛みを感じた。
「……え、どゆこと?」
これが現実であることはわかったが、何故あげはと虹ヶ丘家の一同と自分の家で朝ごはんを食べている事には理解出来なかった。
そんな彼女にソラが話しかける。
「らんこさん私が代わりにパンにジャムを塗っておきましたから」
「あ、ありがと……って、私はりんごジャム派なんだけど」
トーストにブルーベリーのジャムを塗りまくるソラにジト目を向けるらんこだったが塗ってしまった物は仕方ないと思いソラからトーストを貰って食べるのだった。
───────────
朝食を食べ終えて一息ついた一同は改まってリビングで話を始めるが、そんな中らんこはジト目でソラ達を見つめる。
「全く、いきなりアポ無しで来ないでよね」
「ごめんごめんって、でも朝ごはん美味しかったよ」
「誤魔化さないでよ……」
らんこ自身は偶にソラとましろにエルを家に招き入れて遊んだりするがツバサやあげはを加え、こんな朝っぱらからしかも一緒に朝食をするなんてしたことがない為困惑しているのだ。
因みにらんこの母は自身の娘が友達と仲良く朝食を食べる姿に感激のあまり涙を流していた模様。
「それじゃあ朝ごはんを頂いた事だし登山へ行こう」
「へ、登山?……何それ、私聞いていないんだけど」
「えっとね、実は……」
らんこはましろに説明を求めると彼女もこれまでの経緯について話す。
この前新たにプリキュアとなったツバサを含めみんなと親交を深めようと考えたあげはが早朝に虹ヶ丘家へやってきて、山へ行こうと提案して一同(ツバサは除く)は乗り気で、らんこも誘おうとここへやってきて模様。
因みに風波家へ向かう前にあげはが事前にらんこの母に連絡してい為、朝食は人数分用意してあった様だ。
(と言うか…あげは姉さんいつの間に母さんと連絡先を交換する仲になったのよ?)
自身の知らない内に母とあげはが連絡先を交換する中になっていた事にらんこは内心驚いていた。
「と言うわけでらんこちゃんも山n「行かないわよ」……ん?」
「「「え?」」」
「える?」
気の所為だろうか、先程らんこはあげはの誘いを断った様な気がすると思ったソラ達であったが、あげはは恐らく聞き間違いだろうと思い軽く咳払いをすると先程と同じ台詞を言う。
「と、と言うわけでらんこt「行かないわよ」山にって、えええっ!?」
やはり聞き間違いではなかった。しかも山に誘う前に自身の名前の所でやや食い気味で拒否した。
「らんこちゃんなんであげはちゃんの誘いを断るの?」
「いやいや、行くわけないでしょ山なんかに」
「山なんかに!?」
いつもあげはを姉の様に慕うらんこが彼女の誘いを拒否した事に驚愕の表情を浮かべる。
「らんこさん山へ行きましょう!山はいい所ですよ。自然があって空気が美味しく、そして毎朝のランニングで鍛えた己のスタミナと足腰を試す絶好の機会でもありますよ!」
「いや、私は基本的にインドア派だからそう言うの興味ないの。そもそも朝のランニングなんて参加していないからそれ私関係無いじゃない」
続いてソラが誘おうとするもらんこはまたもや拒否する。
「ら、らんこちゃんなんでそんなに行きたくないの?何か前に嫌な事でもあったの」
あげはに続いてソラの誘いも断る事に何か過去に虐めと同様に山に嫌な思い出でもあるのかと思ったましろは詳しく聞こうとする。
「だって山登りなんて疲れるし筋肉痛になるし、この時期って花粉症になりやすいから……あと面倒くさい事ね」
「ねぇ、今小声で面倒くさいって言った?…というか前にもこんなやり取りがあったような……」
山へ行きたく無い理由がしょうもない事にましろは呆れた表情を浮かべつつ、今のやり取りにデジャヴを覚える。
「らんこさんは今日は外せない用事とかあるんですか?」
幾ら山が嫌いとはいえあげはの誘いを頑なに断ろうとする様子にツバサは今日は予定が埋まっているのかと聞くと、何処から取り出したのかCDの入ったケースを見せる。
「予定ならあるわ……昨日手に入れたばかりの新曲を聴くことね、それが終わったら溜まっている聴いていないアニソンを聴く事よ」
「いや、それって今日やらなくて良いんじゃ?」
明らかに今日必ずやらないといけないという予定では無い事にツバサはジト目でらんこを見つめる。
「何言ってんのよ?こういう休みの日を利用して日々溜まっているストレスを好きな事をして発散する物でしょ。ただでさえ最近ゴタゴタ続きでストレスが溜まりに溜まっているのよ」
「そう言われると……そうですね「「ツバサ君‼︎」」うわぁっ⁉︎す、すいません!」
確かにらんこの言う事には一理ある。ツバサはらんこの意見に納得しかけるもソラとましろに注意される。
「そう言うわけだから私の事は気にせずみんな山登りを楽しんで来るといいわ」
そう言って早速CDを聞こうと自身の部屋へ戻ろうとするが、あげはがらんこの歩く先へ回り込む。
「そ、そんな事言わずにさぁ、CDなら車でも聞けるから一緒に行こうよ。ねっ?」
「えぇ〜……」
あげはは粘る。折角全員が揃っているのだから何かイベントをやりたい彼女はなんとしてもらんこを山登りに参加させようとしつこく誘う。
「そもそもあげは姉さんの車って運転席を含めて最大5人乗りでしょ?そうなったら1人乗れないでしょ?」
「た、確かに……」
「そういえばそうだったね」
ソラとましろもらんこの話に納得の表情を浮かべる。彼女達は以前あげはの車に乗った事はあるがシートは確かに5人分だった。これでは1人は確実に乗れない。それなら余った1人はトランクに乗る手もあるがあまりお勧めはしない、シートと比べて揺れは激しく起こり車酔いを起こしたり転倒して怪我をしてしまうかもしれないからだ。これは諦めるしか無いと思ったあげはだったがある事を思いつく。
「そうだ!それなら少年は鳥になってもらって、らんこちゃんの膝上に乗って貰えばぎりぎりなんとか全員乗れるよ」
「ちょ、何を勝手n「山登りに行くわ!」ちょ、えええええっ!?」
あげはの提案を聞いてツバサは文句を言おうとしたがそれを遮る様にらんこが先程まで拒否とは打って変わり、山登りに同行する強い意思を見せる。
「ら、らんこさん!貴女はさっきまで行かないって言っていたじゃ無いですか!?」
「偶には適度の運動をしないと…健康に悪いから」
そう言って彼女はちょっと早い山登りの準備の為のストレッチをやりながら答える。
「……そう言って本当はこの前のように僕に触りたいってだけなんじゃ無いんですか?」
「……チガウヨ」
「だからなんで片言なんですか?あと、こっち見てから言ってください」
ツバサに背を向けながら片言で答えるらんこにツバサは彼女の背中をジト目で見つめる。
「取り敢えず色々あったけど、らんこちゃんの参加も決まった事だからテンションアゲアゲで山登りに行くよ!」
「「おおー!」」
「えるぅ〜!」
何はともあれらんこも登山へ参加する事が決まり全員で山へ行く事になった。
「えぇ……結局僕の意思は無視ですか……」
自分が鳥の姿になって座席の数問題を解決するのは良いが、らんこを参加させる生け贄扱いに不満を言うツバサ。そんな彼にらんこが話しかける。
「安心してツバサ、怪我しないように私があんたの体を抱きしめていくから大船に乗ったつもりでいなさい」
「いや、だからそれが安心出来ないんですよ」
らんこの発言に明らかに下心が含まれていると見抜いたツバサは深くため息を吐くのだった。
───────────
それから一同はあげはの愛車に乗り込むと山に向かって走り出す。あげはは運転中らんこが用意したCDの曲に合わせて歌い出したり、らんこも曲を聴きながら膝の上に乗るツバサ(鳥の姿)の体を触って幸せそうな表情を浮かべていた。
「一体なんて速さですか!?木や建物がビュンビュンです!」
「えるぅ!?」
以前街の中を移動する際にあげはの車に乗せてもらった事のあるソラとエルだがその時よりも速く走り次々と変わる窓の外の景色に興奮している様子だ。
「驚いた?」
「はい、もう驚きです!スカイランドでは鳥さんに乗って移動していましたが、あげはさんの車はそれ以上の速さです!」
スカイランドの交通手段は基本的に鳥に乗って移動しているが、この世界の車の出す速さは普通の鳥が出す速さを上回っているのだ。
「鳥さんも良いけど、私のピヨちゃんもビュンビュンできゃわわ〜でしょ!」
「ん、"ピヨちゃん"?」
先程までツバサの身体に触っていたらんこだったが、あげはの言うピヨちゃんという言葉に思わず反応する。
「そう、この
「ピヨちゃんって……名前の割には随分厳つく無い?」
自身の愛車(ハマー)をピヨちゃんと呼ぶあげはに思わずツッコミを入れるらんこに後ろから聞いていたましろは苦笑いを浮かべるのであった。
「あ、そうだ。らんこちゃん少年の身体はモチモチできゃわわだから抱きしめたり頬擦りした方がもっと気持ちいいよ」
「ちょ!?何要らない情報を伝えているんですか!?」
あげはの入れ知恵に思わずツバサは声をあげる。すると先程まで自身の体を触れていたらんこの手がピタッと止まり、そのまま持ち上げられると無言で目を合わせる。
「………」
「あの、らんこさん……黙って僕を見つめるのはやめて貰えますか!?何だか物凄く怖いんですけど!」
「あはは……」
らんことツバサのやり取りにましろは再び苦笑いを浮かべる。
「あ、見えてきたよー!」
そして、運転していたあげはの声に一同はつられてフロントガラスの外に視線を集中させるとそこには今回自分達が登る山、らそ山の姿が確認出来た。
それかららそ山に到着した一同は車から降りて辺りを見渡す。
「へぇ〜、結構賑わっているね」
「どうやら人気のスポットみたいで休日は客が賑わっているようね」
周りに沢山の人たちが休日を利用して山登りをしにくる家族連れが多かった。
「える?…えるぅ〜!える、えるぅ!」
「どうしましたエルちゃん?」
「あ、見てアレ」
突然興奮し出すエルの姿にソラは不思議に思っているとあげはが何かを見つけ、一同はそちらへ行くと其処には案内板らしき物を見つける。
「らそ山クエスト?」
「ソラ五郎の出す謎を解きながら、山登りに挑戦しよう…だって」
「謎を解きながら山登りですか、なんだか面白そうです!」
登るだけじゃなく謎解きも楽しめる事にソラは目を輝かせる。
「ふーん…全ての謎を解いたらソラ吾郎の非売品グッズをプレゼントか……少し興味があるわね」
らそ山に到着してからはあまり気分が上がらなかったらんこも非売品グッズが貰えると聞いて少し登る意欲を見せる。
そして先程から看板に載っているソラ吾郎のイラストにエルは夢中の様だ。
「エルちゃん、ソラ吾郎好きなんですか?」
「えるー!」
「なんだか少年に似ているね」
「似ていませんよ!フンッ!」
あげはに看板のキャラクターが己と似てると言われ揶揄われたと思ったのかそっぽを向くツバサであったが、
「でも、エルはソラ吾郎に夢中の様ね」
「むっ…」
らんこの指摘にエルの方を見ると鼻息を荒くしてソラ吾郎に夢中になっている姿を見て頬を膨らませる。
「…僕の方がカッコいいのに」
「案内板のキャラクターに嫉妬するんじゃないわよ」
ソラ吾郎に嫉妬するツバサにらんこは呆れた表情を見せる。対してエルは更にソラ吾郎に夢中になっている。
「それじゃあ、皆でエルちゃんのために謎解きしちゃいますか!」
「「「「おー!」」」」
ソラ吾郎のグッズを手に入れようと一同はあげはの音頭に手を上げる。
それから一同は道を歩くと左右に分かれた道の前にやってくる。
「えっと、1つは歩きやすくてゆったり楽々のんびりコース」
そう言って左側の道に視線を移すと其処には色鮮やかな花畑が広がるなんとも楽しそうな歩きやすそうな道だ。
「もう1つは…」
対して右の方は序盤は花畑が広がるが奥につれて本格的な険しい登山の道が広がっていた。
「とっても登り甲斐のありそうな道…!」
ソラは右のコースに目を輝かせる一方で他の4人は嫌そうな顔を浮かべる。
「ソラちゃん、エルちゃんは私が見てるから行きたい方に行きなよ」
「わぁ、ありがとうございます!」
ソラはあげはにお礼を言うとエルが入ったスリングを渡した。
「ではエルちゃん行ってきますね」
「えるぅ」
ソラはエルに挨拶をするとましろの手を掴む。
「ましろさん行きますよ!」
「えっ、私もそっちなの!?」
「ドンマイましろ」
ソラに強制的に連れていかれ右の険しい道へ向かおうとするましろにらんこは励ましの言葉を送る。
「それじゃあ、私はこっちの楽な方で…」
らんこはそう言ってさっさと左のらくらくコースへ歩こうとする。
「じゃあ、らんこさんも一緒に行きましょう」
「え…なんで!?」
ソラがましろの腕を掴んでいないもう片方の手でらんこの腕を掴む。
「だって、らんこさん。さっき言っていたじゃないですか!偶には適度な運動をしないと健康に悪いからって」
「え、いや…あれは別に本当に山に登る意味で言ったんj「兎に角らんこさんも行きますよ!」って、人の話を聞きなって、力強っ!?」
なんとかソラを止めようとするらんこだが、彼女の力を圧倒的に上回るソラの力の前では止める事は出来ずズルズルと引きずられていく。
「ちょ、やめて!助けてあげは姉さんツバサ!」
あげは達に助けを求めるらんこであったが、そんな彼女の期待とは裏腹にその返事は絶望的な物だった。
「ごめん、ちょっと無理かな…」
「お力になれなくてごめんなさい」
「ちょ、ええええっ!?」
あげはとツバサに見捨てられた事にらんこはショックを受ける。
「さぁ、行きますよ2人とも!」
「いやぁ!また筋肉痛になるのは嫌よ!」
「らんこちゃん……一緒にがんばろうか」
自分よりも身体能力があるにも関わらず物凄く嫌がるらんこの姿を見てましろは哀れんだ目を彼女に向け、共に険しい道を登っていく事になるのだった。