ひろプリに野良猫系キャラを入れてみた   作:獅子河馬ブウ

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第28話 山彦と信頼

あげは達と別れてから暫く経ち、ソラ、ましろ、らんこの3人は険しい山の道を歩き続けていた。

 

「ふんふふふ〜ん♪」

 

「ふぅ、ふぅ…ま、待ちなさいよ…!」

 

ソラは未だに息切れを起こしておらず鼻歌を歌いながらどんどん進んでいく中、らんこは少しずつ息が荒くなって額に出てくる汗を拭き取りながらもソラの後を追いかけていく。

 

「全く、あの体力お化け…!少しは私達の事を考えなさいよ。ましろ、あんたは大丈夫?」

 

悪態を吐きながららんこは自身の後ろを歩くましろを見ると彼女はらんこより距離が離れており、体力切れを起こしてぜぇぜぇと息を切らせて全身から大量の汗を流して今にも倒れそうなくらい疲れていた。

 

「ぜぇ…ぜぇ……そ、そろそろ…限ガフッ!?」

 

「ま、ましろおおおおおおっ!?」

 

「え、らんこさんどうし…っ!?ま、ましろさあああああああんっ!?」

 

らんこの叫びに気づいたソラは振り返ると道に倒れているましろの存在に気付き、慌ててましろへ駆け寄るとらんこと共に彼女を抱えると近くのベンチまで運ぶ。それから山へ登る前に自販機で購入したジュースを飲んで休憩する。

 

「ぷはぁー、生き返るぅー!」

 

ましろは持っていたドリンクを飲み干すと深く息を吐き出す。先程まで死にかけていた表情から一変し、元気が溢れている様子だ。

 

「……なんか既視感覚えるわね……あっ」

 

ましろが復活する姿を見てらんこは何処と無く既視感を覚える。脳裏にはある出来事が蘇る。それはかつて、スカイジュエルを取りに行く為、ソラに虹ヶ丘家へ呼び出されて体力が無くなるまで走り、到着した途端にぶっ倒れ、その後今のましろの様に復活したのだ。

そんな事を思い出しているらんこを他所にソラがましろに頭を下げて謝罪する。

 

「ごめんなさいましろさん!私が山登りに夢中になっていてましろさん達の事をすっかり忘れていました」

 

「ううん、大丈夫だから気にしないで」

 

対してましろは特に怒っておらずソラを許すようだ。

 

「全く、私達を無理矢理こっちの道に引き摺り込んだんだから少しはこっちの配慮くらいしなさいよ」

 

「ほ、本当に返す言葉もありません……」

 

「ら、らんこちゃん許してあげなよ」

 

だがらんこはまだ怒っている。ソラは自分達を険しい山道の方へ無理矢理連れて行き、尚且つ自分達の体力とペースを全く考えずに突っ走った。そのお陰でましろが倒れたのだから怒るのも無理は無い。

ソラもその事に対して本当に申し訳なく思っており落ち込んでしまっている。

 

「……普段のあんたなら私が拒否したら引き下がる筈なのにどうして今日はあんな強引なやり方をしたのよ?」

 

「そ、それは……」

 

何やら言いづらそうな顔を浮かべる。そんなソラの顔にらんこは思わず首を傾げる。

すると、ましろは何かに気付く。

 

「もしかして、私達と一緒に山登りを楽しみたかったの?」

 

「え、楽しみたかった?」

 

ましろの発言の意味が理解出来ないらんこは首を傾げる。

 

「……はい、ましろさんの言う通りです」

 

一方でソラはましろの言う事に肯定する。

 

「以前ましろさんの家の裏山で3人一緒にスカイジュエルをを探しに行った様に楽しみたかったんです」

 

ソラの脳裏にはスカイジュエルを手に入れようと裏山で探検をした事を思い出す。

 

「あの時も初めての友達との探検で色んな発見や面白い事が体験したのであの時みたいに今回の山登りを3人で楽しみたいと思ってやったんです…」

 

「あんた…だから私とましろを無理矢理誘おうとしたのね」

 

らんこも漸く理解する。元々ソラはスカイランドでも修行の為に1人で山を登っていたりしたのだろう。だけど、この世界に来てからは1人より友達と共にいた方が楽しいと気付いて今回の様に自分達と山登りを楽しみたいと考え行動したのだろう。

 

「全く…あんた本当に不器用ね」

 

「でも、ソラちゃんがあんな行動をしたのはらんこちゃんの所為でもあると思うよ」

 

「え、どう言う事よ?」

 

らんこはソラに対して呆れた表情を浮かべるがましろからこうなった経緯の責任の一端は彼女にもあると言う発言を聞いて聞き返す。

 

「だって、最初あげはちゃんとソラちゃんが山登りを誘ったのをらんこちゃんは断ったじゃん」

 

「あっ……」

 

ましろの話を聞いてらんこは思い出す。自身の家であげはとソラは山登りに誘ったが面倒くさいのを理由に断ったのだ。

らんこ自身は疲れる事はあまりやりたく無い為、その後もあげはがツバサをダシにするまで粘っても折れてくれなかったのだ。そうなるとソラが強引な行動をしたのも仕方ない話だ。

 

「あー……その、うん……こっちも……悪かったわ」

 

「い、いえ、私の方が悪いです。嫌がる2人を無理矢理誘うから……」

 

らんこは自分にも非があると謝罪するがソラは自分の方に非があると伝え、表情が曇っていく。

そんな彼女を見てらんこは罪悪感をものすごく感じた。

 

「…ああ、もう!こうなったらとことん楽しむわよ山登り!」

 

「え、良いんですか!?」

 

らんこの発言に先程まで曇っていた顔が一変し、目を見開きながらソラはらんこを見つめる。

 

「勿論、だけど今後まどろっこしい事はやめて言いたい事ははっきりと言いなさい」

 

「っ!あ、ありがとうございます‼︎」

 

「じゃあ、今度は一緒に行こうか」

 

それから3人は休憩を終えると再び山を登り始め、今度はソラだけが突っ走る事無く互いのペースを合わせて歩いていく。

歩けば歩く程道は険しくなっていき、3人の足腰に負担が掛かり、体力の消耗が激しくなる。

そんな中、3人の中で体力が一番少ないましろは再び息が上がってくる。

 

「ましろさん大丈夫ですか?」

 

「キツかったらすぐに言うのよ」

 

「ううん、まだ大丈夫だよ」

 

心配する2人に対してまだ余裕はあると言って心配させない様に返事をすると、チラッとましろはらんこに視線を向ける。

 

「らんこちゃんってまだ余裕がありそうだね」

 

「まぁ、一応私スポーツテストは平均二位だったからソラ程では無いけどある程度の運動は出来るから」

 

「そ、そう言えばそうだったね……」

 

今思い出せばらんこはソラの前では霞んでしまうが、元々は学年の中では中々の身体能力を持っている。だけど面倒くさがる癖がある為、普段はあまり己の身体能力は人前に見せないのだ。

 

「はぁ、なんだか自信無くすな……」

 

朝のランニングでそれなりにの体力が付いたと思っていたましろだったが、まだ半分も歩いていない山道にもうバテてしまった事にショックを受けると同時にらんこはまだ自身よりも体力がある事を気にする。

 

「そんな事ありませんよ。ましろさんはランニングを始めた頃と比べて大分体力が増えていますよ」

 

「え、そうかな?」

 

ソラの発言にましろは信じられなかった。だが、ソラは何時も彼女の走っている姿を間近で見ている為、日に日に体力が増えている事は一番理解していた。

 

「そうね……一年前のスポーツテストでは総合順位で下から数えたらすぐ見つかる程の体力の無さだったましろが気絶せずに此処まで来れているから十分成長している証拠よ」

 

「あっ!馬鹿にしてるでしょ!?」

 

らんこの軽口に頬を膨らませるましろ、そんな様子にソラはクスリと笑みを浮かべる。

それから3人は再び歩き続けると広い場所へと辿り着く、其処は休憩所になっているのかベンチがあり更には見晴らしが良い景色が広がっている。

 

「うわぁ〜!良い景色!」

 

「まさに絶景ですね!」

 

「本当にそうね…記念に写真でも撮っておきましょうか」

 

ソラとましろは目の前に自然溢れる山々と辺りに生える花畑を見て心を奪われる。らんこも2人と同様の気持ちでスマホを取り出すと何枚か写真を撮っていく。

 

「そうだ。折角山に来たから山彦をしていこうよ」

 

「それは良いですね!山登りの定番ですからね!らんこさんもどうですか?」

 

美しい自然が広がる山に向かってソラとましろは山彦をしようとし、らんこも誘おうとする。

 

「……私はパスで」

 

「「ええー?」」

 

だけど、らんこは山彦をするのを断った。幾ら人があまりこの道を通っていないからといって万が一にも大きな声を上げている所を人に見られたら恥ずかしく感じる。その為、彼女は山彦をするのを断った。

 

「そっか…仕方ないか、じゃあ私達だけでやろうか」

 

「そうですね。じゃあ、最初は私から行かせてもらいます!

 

そして、ソラとましろはそれ以上らんこにしつこく誘おうとはせず2人だけで山彦をする。反対側へ飛ばした自分達の声が反響している事に楽しんでいる2人を見てらんこは笑みを浮かべる。

 

「…やっぱりらんこちゃんも山彦をやろうよ」

 

「そうですよ。山彦は声が大きければ大きい程胸がスッキリしますから」

 

2人は再度らんこに山彦をする様に誘う。

 

「だから私は山彦なんて…」

 

やらないと答えようとした時、ましろが何かを思い出す様な仕草をして口を開く。

 

「でも、らんこちゃんさっき山登りをとことん楽しむって言ってたよね?なら、山彦はやらないと」

 

「え、あー……」

 

先程らんこ自身が言った台詞を指摘された事に痛い所を突かれたと言わんばかりの表情を浮かべ、ガシガシと頭を掻きながら彼女は少し考えると、軽くため息を吐きながらベンチから立ち上がる。

 

「もう、しょうがないわね……」

 

らんこは周りに人が居ないか確認すると反対側の山に向かって大きく息を吸って、一気に声を出す。

 

「すぅー……やっ、ほぉー!」

 

らんこの声が反対側の山へと響いていき、彼女は耳を山の方へと向けると

 

 

 

 

 

 

「トロピカってるぅ〜!」

 

「「「っ!?」」」

 

何故か全く別の言葉が返ってきた。

 

「え、なんで!?なんで別の言葉が返ってくるの!?」

 

自身の発した言葉とは全く違う言葉が山彦として返ってきた事に困惑の表情を浮かべるらんこ、更には先程の声と台詞が以前より頭の中に響く声と全く一緒な事に余計取り乱す。

 

「こ、この世界の山彦は別の言葉が返って来るんですか?」

 

「いや、違うよ!そんな事無いから!」

 

一方でソラは自分の知る山彦はこの世界と異なると思い込むが、ましろが訂正する。

 

「ね、ねぇ、ソラ!あんたもう一度山彦をしてみて」

 

「は、はい!……やっほー!」

 

きっと何かの間違いだと思ったらんこは言われ再びソラは反対側の山に向かって自分の声を発すると、

 

やっほー!

 

ちゃんと同じ言葉が返ってきたが、気の所為か返ってきた声がソラの声とは異なる様な気がする。

 

「じゃあ、次ましろ」

 

「う、うん……や、やっほー!」

 

今度はましろが山彦を行い、3人は恐る恐る耳を澄ませると、

 

や、やっほー!

 

ソラと同様にましろも同じ言葉が返ってきた。ただしこちらも微妙に声が違う気がする。

 

「うーん、普通に返ってきたね……きっと、さっきの聞き間違いだよ」

 

「そ、そうよね」

 

3人同時に山彦を聞き間違えるのはどうなのかと言うツッコミは置き、先程の変な山彦は自分達の聞き間違いなのだろうと己に言い聞かせると、らんこは再び山彦を行う。

 

「改めて……やっほぉぉぉぉぉぉっ!!!」

 

先程よりも大きな声で反対側の山に向かって山彦を行ったらんこはその山に向かって耳を澄ませると、

 

 

 

 

 

 

 

 

「トロピカってるぅぅぅっ!!!」

 

「なんでよぉぉぉぉぉぉぉっ!?」

 

結局自分だけ山彦がおかしい事にらんこは癇癪を起こして叫んでしまい、丁度やって来た登山客達にその様子を見られてしまう。ソラとましろはそんな彼女を宥めながら再び頂上に向かって歩き出した。

因みに余談だが、らそ山の反対側に存在するれど山には丁度とある街の変わった部活が野外活動しに来ており山彦をしていたのだが、3人はそれを知る由がない。

 

───────────

 

それから度々休憩を挟みながら頂上近くへやってきた3人は目の前から見覚えのある人物の存在に気づく。

 

「ん、あれって」

 

「ツバサ君?」

 

「あれ、皆さん?」

 

目の前の道を歩いていたツバサと合流したが、3人はツバサと一緒にいる筈のあげはとエルがいない事に気がつく。

 

「ねぇ、あげは姉さんとエルはどうしたの?」

 

「確かツバサ君と一緒にいたよね?」

 

「そ、それは……」

 

あげはの事を指摘するとツバサは表情を曇らせる。そんな彼を見てソラは恐る恐る聞いてみる。

 

「……何かあったんですか?」

 

「……実は」

 

それからツバサは話した。3人と別れた後、あげはと共にコースを歩いていたが謎解きはツバサが時間を掛けて解いたと思いきや、あげはは既に謎解きの答えに気付いたり、やらなくても良いアスレチックを半端強引にされたりと色々大変な思いをしたそうだ。

そして最後はもう1つの謎解きを放置して自分たちの歩くコースを外れてロープウェイに乗ろうとしたりと自由過ぎるあげはの行動に我慢出来なくなり彼女達を置いてツバサは1人コースを進んで今に至るわけだ。

 

「そうだったんですか…」

 

「僕…ああいう強引な人は苦手です」

 

人の話を聞かず強引に自分のしたい様にするあげはに対してツバサはすっかり嫌いな感情を向けていた。

 

「あげはちゃん……分かってくれると思ったんじゃないかな?この前、エルちゃんを守った時にカバトンに凄く怒ってたよね?」

 

「あれは……あいつがプリンセスをバカにしたから…」

 

「あげはちゃんも凄く怒ってたよ」

 

「あげはさん、そんなツバサ君なら言葉にしなくても気づいてくれるって信頼していると思いますよ」

 

「あっ」

 

信頼と聞いてツバサが思い出したのはカバトンの操るランボーグを浄化した後に現れたキメラングの攻撃にツバサはあげはを抱えて高層ビルから飛んで避難した時だ。あの時は高いビルから飛んで逃げる事は誰だって不安や恐怖を覚えたりするが、その時ツバサに身を預けていたあげはは不安な顔を浮かべておらずツバサを信頼している様だった。

 

「そうよ。あげは姉さんは強引な所はあるけど、それはちゃんと意味のある事だと思うわよ」

 

「意味のある事……っ!もしかして、山を登った先に何かあるのかも…僕、山頂に向かいます!」

 

ツバサは置いた荷物を抱えると山頂に目指して走っていき、3人はそんな彼の後ろ姿を眺めるのであった。

すると、らんこは何かに気付いたのか「あっ」と声を上げる。

 

「……そういえばツバサってエルのナイトって自称しているけど、そのエルをあげは姉さんごと放っておくってどう思う?」

 

「「あっ」」

 

らんこの指摘に2人は思わず声を上げる。プリキュアになってからはツバサは己の事をエルのナイトと自称し始めて、よりエルに対して敬意を払ったり丁重に接しているが、今回はそんなエルをあげはと共に置いていくのはナイトとして如何だろうかと彼女は疑問を浮かべる。

 

「ま、まぁ、ツバサくんも焦っていたから仕方ないのでは……」

 

「う、うん、そうだよ。きっとそう」

 

「う〜ん、そうかしら?」

 

ツバサをフォローするソラとましろだがイマイチらんこは納得出来ない表情を浮かべる。

 

「そ、それよりも私達もツバサ君の後を追いましょうか」

 

「そ、そうだね、きっとあげはちゃん達は山頂で待っているから私達も早く行こうか」

 

2人は話題を逸らしてらんこがツバサに対して悪意を向けない様にする。

 

「……それもそうね。じゃあ、行き…っ!?」

 

3人が再び歩こうとした時、周囲の空間に異変が起こる。空がまるで塗り絵で描かれた様な景色へと変化する。

 

「これはランボーグの…!」

 

「という事はアイツらね!」

 

ましろとらんこはこの異変の原因がランボーグを操るカバトン達の仕業であると直ぐに見抜く。

 

「2人とも…ツバサ君達の事が心配です。私達も急いで向かいましょう!」

 

「「うん(ええ)!」」

 

ソラに返事を返すと3人はツバサ達のいる山の頂上に向かって走り出すのであった。

 

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