おいしーなタウンにやってきたらんこ達は現在3組に別れてそれぞれのエリアを見て回っていた。
まず最初は中華エリアへ向かったらんことひかる組の様子を見てみよう。
「此処が中華エリアか。やっぱり中華がメインなだけあって美味そう匂いが辺りから漂っているな」
「ええ、どれも本格的な物が結構並んでいるわね」
2人は中華エリアへやって来ると目の前に広がる中華料理店の数々と其処から漂う食欲を唆る匂いに興奮していた。
「中華料理は油を使う物が多いから最初からそればかり食べると胃もたれをするし、先ずはあまり油が少ない料理にするのはどうかな?」
「良いと思うわ。それで何か候補はあるの?」
「そうだな…」
ひかるは先ず初めにどれから食べようかと辺りを見渡していると中華まん屋が視界に入る。
「お、美味そうな中華まんだ。俺ちょっと買ってくるよ」
そう言ってひかるは中華まんを買いに行こうと列に並ぼうとするが、
「待ちなさいひかる」
「え、どうしたんだらんこさん?」
らんこが呼び止めた事にひかるは足を止めて彼女の方へ向く。
「あそこの中華まんよりも私は少し離れた場所にあるあの中華まん屋をオススメするわ」
らんこの示した場所には確かに中華まん屋が存在していた。しかし、その店は先程並ぼうとした店と比べて古く、並んでいる人も自分達と歳が近い少女が1人しか居なかった。
「ええ…本当にあそこかで良いのか?この後も他の料理を食べるんだし、此処はより美味しそうな其処の店にするべきだと思うんだけど」
すぐ近くの店は人はそれなりに並んでいて店の外見も綺麗だからこちらの方が美味しい中華まんが食べられるとひかるは考えている。
「確かに店の外見や並び具合として其処の中華まんも美味しいかもしれない……だけど、注目する所は其処じゃ無いわ」
そう言ってらんこは店のすぐ前に置かれている物に指をさした。それは小皿に乗せられた盛られた塩である。
「あれは、盛り塩か?」
「そうよ。そしてあっちの方にも置かれているけど違いはわかるかしら?」
らんこの言う盛り塩の違いにひかるは首を傾げるも、それぞれの店の盛り塩を観察していくと「あっ」と何かに気づいた声を上げる。
「俺が選んだ店は埃がかぶっているのに対してらんこさんの選んだ店は埃が無い」
「ええ、そうよ。恐らくあっちはテレビか雑誌に取り上げられた事により人が多くやってきて忙しくなり、塩を交換する暇も無いわ。対してあちらは塩は常に交換している様で並んでいるのは少人数だけど、塩をこまめに入れ換える丁寧さが見られる」
「これはあくまで私の勘だけど、恐らくあんたの選んだ方は忙し過ぎて作り置きしたやつを出していると思う。対して私の方は一つ一つを蒸した物を直ぐに客に提供出来るように予約制よ。ほら、見て!」
そう言うと2人は再びらんこが選んだ中華まんの店に視線を移すと、店員が少女に中華まんが入った紙袋を渡している。
「はい、時間通り出来立てだよ!」
「おお、蒸し立ての中華まん!…うーん!食欲ましまし〜!」
中華まんが入った紙袋を受け取った少女は紙袋を開けて中にある匂いを嗅いで幸せそうな表情を浮かべていた。
「ねっ、私の言った通りでしょ」
そのやり取りを見てらんこの予想は見事に的中する。
「凄いならんこさん…よく観察してその店の特徴をしっかり判別出来るなんて」
「べ、別に大した事じゃ無いわ…こんなのじっくり見ればわかる事だから」
ひかるに褒められたがらんこは謙遜な態度を取るも薄らと頬が赤くなる。
「それよりも私達も予約して中華まんを食べるわよ」
「そうだな」
らんこの提案にひかるも賛成すると2人は中華まん屋へ行こうと動くがその際らんこが背負っているリュックの中から何かが地面に落ちる。
「あれ、らんこさん何か落としたぞ」
「ん?…あ、それは!?」
らんこが落とした物、それはノートだ。見た感じそのノートは特にこれと言った特徴が無い普通のノートである。ひかるはそれを拾うとらんこに返そうするが突然風が吹き、ノートのページが捲られひかるの目にノートの内容が入ってしまう。そこにはおいしーなタウンの情報が書かれており、一軒一軒細かく記載され、中に有名なインフルエンサーが一押しする料理について書かれていた。
「か、勝手に見るんじゃ無いわよ!」
らんこはひかるからノートを取り上げると顔を赤くしながら睨む。対してひかるは不可抗力とは言えらんこに申し訳ない表情を浮かべる。
「ご、ごめん、らんこさん。…それにしても物凄い情報量だったけど、そんなに今回の旅行を楽しみにしていたのか?」
「ち、違うから‼︎は、初めてくる街だから迷子にならない様にする為に情報を纏めただけだから!べ、別にこれっぽちも楽しみにしていた訳じゃ無いから!」
苦し紛れの言い訳だ。だが、ひかるの視線に耐えられなくなった彼女は逃げる様に目的の中華まん屋に走り込もうとする。
「はにゃ!?」
「きゃあ!?」
それと同時に先程中華まんを買った少女が振り返りそのままらんこと正面衝突する。らんこは恥ずかしさのあまり目の前の少女に気づいて居なかったらしく、気づいた時にはもうぶつかってお互い地面に尻餅をついた。
「だ、大丈夫らんこさん!?」
「痛たた、お尻打った……って、ああっ!」
らんこは自身の臀部を摩りながらも目の前に自分とぶつかって同様に尻を打った少女の姿に気づく。
「だ、大丈夫!?」
「う、ううん。中華まんは無事だよ」
「いや、あんたの体は怪我していないかって聞いたんだけど」
「はにゃ!?…だ、大丈夫へーきへーき」
自分の事より中華まんを優先する少女にらんこは怪我について指摘すると少女ははっとなり平気とアピールをする。それを見てらんこは安心して胸を撫で下ろす。
「あれ、君はひょっとして此処の中華まんを買うの?」
「え、そうだけど?」
らんこは少女の質問に対して素直に答える。
「ああ、ごめん。この店は数量限定で中華まんを販売していてらんらんが最後のを買っちゃって今日はもう売り切れなんだ」
「え、そうなの!?……って、らんらん?」
目的の中華まんが買えない事にショックするらんこだったが、少女の話の中に聞き覚えのある言葉が出てきた事に反応する。
「そうだよ、華満らんって言うのがらんらんの名前だよ」
「華道らんでらんらん…ていうかその名前って、私が学校の友達から呼ばれているあだ名まんまじゃない…」
らんが自身の一人称を"らんらん"と呼んでいる事にらんこは自身のクラスメイトが付けてくれた自身のあだ名を思い出し親近感を覚える。
「はわわ!?君もらんらんって呼ばれているの!?」
「ええ、そうよ。私は風波らんこでソラシド市からやって来た。学校の友達からはらんらんって呼ばれているわ」
らんこもまさか自分と全く同じあだ名を持つ女の子と邂逅するとは思わなかった為、内心驚いているのだ。
「はわぁ〜、と言う事はらんこちゃんはソラシド市のらんらんでらんらんはおいしーなタウンのらんらんって事だね」
「いや、何よそれ?」
まるで東の高校生探偵と西の高校生探偵みたいな言い方に思わずらんこは呆れた表情を浮かべる。
そんな時ひかるが態とらしく咳払いを起こすと、らんはらんこの隣に立つひかるの存在に気づいた。
「あれ、そう言えば君は?」
「ああ…俺はひかる…雷田ひかるだ。俺は別世界の「ひかる!」…あ…いや、らんこさんと同じソラシド市からやってきたんだ」
ひかるはらんに自己紹介をする。ただし、説明の最中にうっかりソラのように別世界からやってきたと言いそうになるがらんこの指摘で慌てて訂正する。
「へぇ〜、ひかる君って言うんだ…らんこちゃんと一緒にいるって事は友達?それとも彼氏だったり〜?」
こんな所で同じ年の男女が一緒にいるのを見てらんは2人は付き合っているのかと悪戯を思い付いた子供のようにニヤニヤと笑みを浮かべる。
「え、いや俺h「な、何を言っているの!?わ、私とひかるはそんな関係じゃ無いわよ!れ、恋愛感情なんて一つも持っていないから気持ちは無いから!」…え?」
らんこは慌てて割って入ると顔を赤くしながら必死に否定し、それを聞いていたひかるは思わずてショックを受ける。
「え、そうなの?」
「ええ、そうよ!」
らんは彼女が必死に否定する姿を見て何処と無く自身の友達の学校の先輩を思い出す。そして、らんはある事に気がつく。
「あのさ、らんこちゃん「何よ!?」そのさ…ひかる君が地面に両手をついて落ち込んでいるんだけど」
「……え?」
らんに指摘されらんこは振り返ると物凄く落ち込んでいるひかるの姿があった。
「ひ、ひかる!?…だ、大丈夫?」
「だ、大丈夫…だから……」
明らかに大丈夫では無いひかる。落ち込みの余り気の所為なのか彼からどんよりとしたオーラがみえる。
「その……ソラ吾郎揉む?」
「あ、うん…気持ちだけ貰っておくよ」
あげはから借りたソラ吾郎の人形をリュックから取り出してひかるに渡そうとするが、ひかるは遠慮する。だが、彼の様子からして放って置けるわけが無く何とかしようと思いらんこは話しかける。
「その……もし良かったらさ、あんたの気を晴らす手伝いをさせてくれない?今なら何でも聞くけど」
「え、今何でもって?」
「あんたには言ってないわよ!」
思わず定番のネタにらんが反応して、らんこは思わず彼女にツッコミを入れる。
「なら、ちょっと俺の頭を撫でてくれないか?……その、人形を撫でる様に…」
「「えっ?」」
ひかるの要望を聞いてらんことらんは思わず声を漏らす。一方でひかるははっとなって自身が何を言ったのかを理解する。これではまるで自分が変態じゃないかと思われてしまう。
「ら、らんこさん!い、今のh「はぁ、仕方ないわね」聞かなかった事に……え?」
先程の要望を取り消そうと慌てて言うがらんこのは膝を曲げてひかると目線を合わせるとポスっと音を立ててひかるの頭部に手を乗せる。
「……特別だからね」
「ら、らんこさん……」
恥ずかしいのか少し顔を赤くしながらひかるに目を逸らすが時折ひかるに目線を向けながら彼女は彼の頭を優しく撫でる。対してひかるの頭の上から撫でられる心地よさの彼女の今の表情を見て胸に温かい何かを感じる。
「はわわ…!なんだか甘い雰囲気…!」
対してらんは目の前のやり取りを見て思わず顔を赤くするのだった。
それから数分してひかるのメンタルは完全に回復した。
「どう、気は晴れたかしら?」
「それはもう絶好調だよ。ありがとう!」
恋愛感情なんて一つもないと言われてショックだったが、らんこに頭を撫でられた事により先程まで沈んでいた気持ちは吹き飛んでいった。
「ところでらんこさん、結局中華まんはどうする?」
「そうね…第二候補としてひかるの選んだ中華まん屋に行くしかないわね」
既にらんこの口は中華まんを受け入れる準備をしていた為、それ以外の料理は口にしたくないので最初の中華まん屋へと向かおうとするが、
「ねぇ、良かったらこの中華まんを食べる?」
「え、いいの?」
「でも、それって華道さんが買ったやつだろ?」
らんが先程購入した中華まんを2人に差し出すが、折角予約して買った物を譲って貰うのは流石に遠慮してしまうが、
「大丈夫。元々3個買ってあるから1個は食べられるよ。それに折角おいしーなタウンに来たんだから是非この中華まんの味を堪能した方が良いよ」
らんの熱意ある台詞を聞いて2人は互いに目を合わせて頷く。
「そうね…其処まで言うなら貰うわよ」
「ああ、じゃあ俺も喜んで頂くよ」
2人はらんから中華まんをそれぞれ受け取り、包み紙を外すと湯気が見られる。それを見てらんも自身の手にある中華まんを包み紙から出した。
「「「いただきます」」」
3人は同時に言うと中華まんを一口頬張る。すると、口の中に広がる美味しさに3人は笑みを浮かべる。
「っ!…美味しい!」
「ああ、本当に美味いなこの中華まん!」
らんことひかるはコンビニなどで売っている中華まんよりも何倍の美味さに思わず声を上げる。一方でらんは一口食べた中華まんをよく噛み締めると飲み込み、口を開く。
「ほひ〜、生地はまるで晴れた日に干されたふかふかお布団みたいな食感に中の餡もジューシーで生地よりも熱く尚且つ生地とよく合う!まるで中華の炬燵みたい〜!」
たった一口食べただけでプロにも負けない食レポを披露すると、それを見ていたらんことひかるは呆然となり、暫くするとらんこは口元を抑えながらクスリと笑う。
「……ぷふっ」
「はにゃ!?…ひょっとしてらんらんは変な事でも言った?」
笑うらんこを見ていつもの癖でやった食レポに彼女は変だと思われたのかと思い込むが、
「ご、ごめん……笑って悪かったわね。別に馬鹿にした訳じゃ無いわ。ただ、あんたの食レポを聞いて前に私の友達が食事を食べて見せてくれた食レポを思い出しちゃっただけよ」
「え、そうなの?…変じゃなかった?」
自身の中華まんに対する表現がおかしく無いか不安に思ったらんだったが、らんこは首を横に振る。
「そんな事無いわ。あんたのその料理に対する思いが伝わってきたわよ」
「ああ、俺も一口食べただけで其処まで表現出来ないのに華満さんは物凄く表現出来るのは凄いと思うぞ」
「そ、そう?…そう言って貰えると照れちゃうなぁ〜」
2人の褒め言葉を聞いてらんは顔を赤くして照れた表情を見せる。
(ソラの食レポも凄かったけど、らんはそれに負けないくらいだったわね)
かつてショッピングモールでハンバーガーを食べた時に見せたソラの姿を思い出す。果たして食レポ対決をさせたらどっちが上手く表現出来るか気になる所だ。
『ピピピーッ♪』
「ん?」
そんな時、中華まんを頬張っていると聞き覚えのある鳴き声が聞こえ、らんこは振り向くと其処にはいつぞやの雲パンやたい焼きの妖精と同じ様に中華まんの妖精が飛んでいた。
「……ふっ、もう流石に驚かないわ」
3度目となるともうすっかり慣れてらんこはスルーして残りの中華まんを平らげようとするが、
「あ、中華まんのレシピッピだ〜!」
「……え?」
隣で共に中華まんを食べていたらんの言葉に思わず反応を見せる。
「らん…あんたその子が見えるの?」
「はにゃ!?ひょっとしてらんこちゃんもレシピッピが見えるの?」
らんが目の前を飛ぶ妖精…レシピッピの存在を認識している事にらんこは驚いた表情を見せる。
「レシピッピ?…この子って料理漫画とかである美味しさのあまりに見える幻じゃ無いの?」
「違うよ。レシピッピって言うのはお料理の妖精で料理の事を強く思っていると見える様になるって前に友達が教えてくれたんだ。あっ、だとしたららんこちゃんも料理に対しての思いが強いって事だね」
らんこがレシピッピの存在を認識しているって事は人一倍に料理に対しての思いが強いと指摘する。
「え、私はそんな事「ああ、らんこさんは凄く料理に対して思いが強いぞ」って、ひかる!あんた何を言って!?」
ひかるがらんこが話している時に遮る様にらんの質問に答え、らんこは思わずひかるを睨む。
「だって、さっき隠していたけどらんこさんおいしーなタウンの店について結構情報が書いてあったからさ」
「そうなの?…それはらんらんも気になるなぁ〜」
ひかるの発言を聞いたらんはじーっとらんこを見つめる。
「わかったわよ!…全く、本当は人にあんまり見せたく無いのに…」
先程らんが中華まんをくれたから下手に断る事が出来ないらんこは仕方なくリュックからノートを取り出してらんに見せる。
「す、凄い!おいしーなタウンについて詳しく書いてある!」
「別に…其処まで褒められる事じゃ無いわよ」
ノートに書かれている情報量にらんは圧巻されるが、らんこは謙遜な態度を取る。
「そんな事無いよ!寧ろらんこちゃんの料理に対する情熱がノートからましましに伝わってくるよ!」
「大袈裟よ。それなんて3日掛けて書いたから中華エリアは良くても他のエリアはあんまり書けていないわよ」
「はにゃっ!?…3日でこれだけ書いたのだとしたら尚更凄いよ!その証拠にレシピッピだってらんこちゃんの事が好きになっているよ!」
らんの発言を聞いて思わず「えっ」と声を漏らすらんこ、すると先程から自身の頬に何かが当たっている事に気付き、よく見てみると中華まんのレシピッピが頬擦りしていた。らんこは自分に懐くレシピッピを見て思わず胸がキュンとなる。
「そっか…私ってこんなにもレシピッピに好かれるくらい料理に対しての思いが強かったのね……」
「うん、間違い無いよ。らんこちゃんの料理に対する情熱はらんらんが保証するよ」
らんの話を聞いてらんこは顔が少し赤くなり、照れた表情を見せる。そんな様子を見ていたひかるは恐る恐る2人にはなしかける。
「ところで、さっきからレシピッピって何の話だ?」
「「え?」」
ひかるの言葉にらんことらんは声を漏らす。先程から一緒に会話をしているからてっきりレシピッピが見えているのかと思ったらそんな事なかった。
──────────
その後、らんことらんはひかるにはレシピッピの存在は誤魔化し、ある店へ向かっていた。その名はぱんだ軒と言う中華料理屋でらんこが中華エリアの中で一番に行きたい店で偶然にもらんがその店の娘である事に驚きつつも彼女に案内をして貰っている。
「着いたよ。此処がぱんだ軒だよ」
「此処がぱんだ軒……」
「お、名前の通りパンダがいるな」
ぱんだ軒へ到着したらんこは目的の店に到着した事に内心高揚感が溢れる。対してひかるは入り口の隣に立つ中華服を着込んだパンダ像を見つめている。
「ところでらんこちゃんはぱんだ軒の事って何処で知ったの?」
おいしーなタウンの店は全国から幾多かの店が雑誌やテレビなどで取り上げられているから其処で知ったのでは無いかと思い込んでいると、
「ええ、ちょっとキュアスタでフォローしている人のアカウントがおすすめしていたからおいしーなタウンに行く機会があれば行ってみたかったのよ」
「へぇ〜、キュアスタか……因みにそれって誰のアカウント?」
らんは彼女がキュアスタ経由でぱんだ軒の事を知ったと納得するが、らんこのフォローしている人物について気になりそれは誰なのか聞いてみた。
「ええ、ちゅるりんって言うんだけど」
「そっか〜、ちゅるりんか〜………ん?…ちゅ、ちゅるりん!?」
らんこのフォローしている人物を聞いて数泊置いてらんは酷く取り乱した。
「らん?…どうしたのよそんなに驚いて?」
何故か今日一番大きな反応を見せるらん。そんな彼女を不思議に思ったらんこが心配そうに話しかける。
「そ、そんな事無いよ!そ、それよりも早く店に入って家一押しのパンダ麺堪能してよ!」
「ちょ、押さないでよ!」
「あ、危なっ!?」
何か誤魔化すようにらんは2人を店の中へと強引に押し入れていく。2人は一瞬転びそうになるが、何とか堪えながららんに押されるままカウンター席へ座った。
「「いらっしゃい!」」
声を掛けられたらんことひかるはそちらに視線を向けると其処にはパンダの帽子とエプロンを纏った男性と女性が厨房から顔を覗かせていた。見た目が何処と無くらんに似ている事から恐らく彼女の両親なのだろうとらんことひかるは考えていると、
「お父さんお母さん、2人にパンダ麺を二丁!茹で加減はバリカタで!」
「「あいよ!」」
らんの返事に勢いよく返すと2人は注文を承り、ラーメンを作り始める。
「さて、パンダ麺の味はどんな物かしらね…」
「ふふふ…家のパンダ麺は其処らラーメンとは比べ物にならないくらい美味しいから期待しててね」
「へぇ〜、やけに自信があるな」
らんの自信満々な態度を見て2人は今作っているパンダ麺を楽しみにする。
そんな時、調理しているらんの父がらんこを見て何かに気付く。
「そう言えばその子ってらんの友達に似ているな」
「え、らんらんの……あっ!」
「え…な、なによ?」
らんは自分の父の指摘に何かに気付いたのからんこの顔をじーっと見つめる。対してらんこは急に彼女が自身の顔を見つめ始めた事に困惑の表情を浮かべる。するとらんこの姿を見て何かに気付いたのか
「……あっ、そうだよ!らんこちゃんってよくよく見たらここぴーに似ている」
「え、まこぴー?…それってアイドルの剣崎真琴の事!?」
まさかの大物の名前が出たことにらんは剣崎真琴と交友関係があるのかと思い込むが、
「ち、違うよ、らんらんの友達の芙羽ここねちゃんって子でらんこちゃんはその子にそっくりだと思ったんだよ。ほら」
らんは訂正しながら手首に巻いているスマートウォッチらしき物の液晶画面に写る写真を見せる。
「あ、確かにこの子髪の色は少し違うけど、所々らんこさんと特徴が似ている」
「…そう?……言われてみたら確かに似ているわね」
ひかるから似ていると言われてらんこ自身はピンっと来ないが、スマホの画面を鏡代わりにして自身とここねという子を比較すると、確かに所々似ている所があり、少しずつだが親近感を覚えてきた。
「良かったらパンダ麺が出来るまでここぴーについて教えるよ」
「そうね。是非そのここねって子を教えて」
ラーメンが出来上がるまでらんことひかるはらんからここねと言う友達について聞くのであった。
─────────
一方で洋食エリアに向かった。あげはとツバサとエルのトリオはと言うと早速美味しい料理を食べ歩いて────────
「うん、この限定パフ中々だね。あっ、こっちのネイルもテンションアガりそう」
「える〜!」
「あげはさん……いつになったら食べに行くんですか?」
おらず、洋食エリアにあるPretty Holicに立ち寄り、あげはとエルはその店に売っている限定の化粧品に興味を示しており、その後ろではツバサが溜息を吐きながら話しかける。
「んん〜…あと5分待ってて」
「それはさっきも聞きましたよ」
「おっ、少年見て!こっちなんてらんこちゃんに似合いそうだよ」
そう言って目の前の棚に置いてあるりんごの香水に手を伸ばそうとすると誰かと手が重なる。
「えっ?」
「える?」
「あ……ご、ごめんなさい!」
あげはは重なった手の人物を見てみると其処には緑のかかった紺色のボブヘアーと緑色の吊り目をしたソラやらんこと同じくらいの歳の少女であった。
少女は誤ってあげはと手が重なった事に謝罪をする。
「ううん、気にしないで…所で君もこれを買いにきたの?」
「あ、はい。新商品だからどんな感じか見に来たんですけど貴女もこれを買いに来ましたか?」
「うん、ちょっと私の友達に合いそうだから一つお土産に買っておこうかなって」
目の前の少女の質問に対してあげはは答える。我ながらこの香水はりんごの香りである為、アップルパイが好きならんこに似合いそうだからと想像すると、
「える、えるるえ〜る!」
「え、ど、どうしたの!?」
「どうされましたかプリンセス?」
突然エルが目の前の少女に対して手を伸ばす。対して少女は突然エルに話しかけられた事に困惑の表情を浮かべる。
「エルちゃん急にどうしたの?」
「える!」
「あの、私何かこの子の気に触る様な事をしましたか?」
「い、いえ、見た感じその様な事は…」
先程からエルが反応している事に少女は不安そうな表情を浮かべ、ツバサはそうでは無いと説明する。
一方であげははエルの反応を観察していた。様子からして特に
(ん、そういえばこの子……)
「あの、私の顔に何かついていますか?」
目の前の少女を見て何かに気付いたあげは
「あ、ごめんねー。何だか君ってらんこちゃんに似ていたからついじっと見てちゃった」
「らん…こ?」
少女はあげはの口から出た名前に反応する。
「風波らんこって言う子で、君と髪の色を除いて特徴がよく似ているんだよね」
そう言ってあげはは自身のスマホかららんこの画像を見せる。
「確かに何処と無く私と似ている……」
「成る程…だからプリンセスが反応したんですね?」
「える〜!」
目の前の少女がらんこと見た目が似ていることからエルが懐いているみたいだ。
「そういえば、さっきからプリンセスって?」
「え…あっ、それは…!」
ツバサが先程からエルの事をプリンセスと呼んでいる事に少女は気になって問い詰めると、ツバサも指摘されるとは思わなかったのか咄嗟に誤魔化す。
「この子はエルちゃんで最近おままごとでお姫様の役に嵌っていて少年が付き合っているって感じだよ」
「ああ、おままごと…成る程」
やや強引さはあるもののあげはの話に少女は納得した様だ。
「そう言えば自己紹介が遅れたね。私は聖あげは、今日友達と一緒においしーなタウンへ遊びに来たの。そして、この子はさっきも言ったけどエルちゃん。そして、この子は少年」
「える!」
「ちょ、何で僕だけは名前じゃ無いんですか!?其処はちゃんとツバサって呼んでくださいよ!」
自分だけ名前を呼んでもらえない事に思わずツッコミを入れるツバサ。
「私は芙羽ここねです。ここねで良いですよ」
「そっかここねちゃんね。所でここねちゃんはさっきの口振りからして此処に住んでいるの?それならちょっと此処の店でオススメのコスメは無いかな?」
「あ、それならまずこっちのリップなんて…」
あげははここねに化粧品について聞かれるとここねは嬉しそうな表情を浮かべながら自分が考えているオススメ化粧品について紹介を始めるのだった。因みにエルも興味津々で彼女の紹介する化粧品を眺めるのだった。
「あの、そろそろご飯を食べに行きましょうよ……」
そんな中、ツバサは目の前でコスメ雑談を始める2人を見て溜息を吐くのであった。
───────────
その頃、おいしーなタウンの中心地である巨大な招き猫のある所では黒紫のウェービーロングヘアと菱形が5つ連なったカチューシャを付け、首にはハート型のペンダントを掛けており、目はらんこやここねの様に吊り目をした少女が周囲を見渡していた。
彼女の視線の先には美味しい料理を笑顔で食べる人々の姿があったが、彼女はそれだけでは無くとある物も見えていた。
『ピピー♪』
「今日も元気だな」
レシピッピが元気よく飛んでいる姿を見て笑みを浮かべる彼女。
彼女の名は菓彩あまね。かつてはこの街にある私立しんせん中学で生徒会長を務めていた事がある。
(あれからもう数ヶ月も経つのか…)
彼女の脳裏には去年のクリスマスにこの街を中心に世界規模で起きた大事件が過ぎるが、今は平和を取り戻し、人々もそんな事件の事などすっかり忘れていた。
「さて、そろそろ帰るか」
あまねは今ある平和を噛み締めながら自身の家に帰ろうと足を動かしたその時。
「うーん…参ったな。全然見つからないな」
「うん?」
あまねは声が聞こえた方向に視線を向けると其処には黒い鏡を見つめる白いヘルメットを被り白衣を着込んだ文字通り変わった少女が立っている。
(なんだろうか…あの少女を見ると彼奴の姿がチラつく)
あまねは目の前の少女の姿を見て何処となく薄緑色の長髪を生やした自意識過剰な男の姿が脳裏を過ぎる。
「何か困っているのか?」
「ん?ああ、ちょっと探し物をしていてね。私の持つこのダークパッドのレーダーでそれを探しているんだけど中々見つからなくてね」
「ダークパッド?」
恐らく彼女の手に持つ黒い鏡の事を言っているのだろう。見た目と名前からしてあまねにはあまり良い印象は持てないが、目の前で困っている姿を見て放っておけなかった。
「ちょっと見せてくれないか?」
「まぁ、別に良いよ。一応精密機器だからデリケートに扱ってくれよ」
少女は拒否する事なくあまねにダークパッドを手渡す。そして、受け取ったあまねは鏡面に映るレーダーを見つめる。
「この赤い斑点が君の探しているものなのか?」
「そうなんだよね。ここら辺にあるらしいけど、全然見当たらなくてさ」
周囲を見渡すが特に彼女が探している物は見当たらないが、あまねはレーダーを見ながら辺りを歩き回ると何かに気付く。
「…ひょっとしてこの招き猫に探し物があるんじゃ無いのか?」
「え、招き猫?」
あまねの発言にキメラングは不思議に思うも、自身の背後にある巨大な招き猫を見て手を叩いた。
「おお、それは盲点だった」
ダークパッドに映るレーダーの中心点と位置が被っていたからこの招き猫にあるとは考えて居なかったようだ。
「じゃあ、ちょっと探してみるよ」
あまねからダークパッドを返して貰うと少女は招き猫の頭部に向かって高く飛び上がる。
「と、飛んだ!?」
巨大な招き猫の頭部まで飛んだ少女の姿にあまねは思わず面食らってしまう。
一方で招き猫の頭の上に乗った少女は周囲を見渡すと右耳の部分に何かをみつける。
「お、あった♪」
少女…キメラングはそれを見つけると手に取り招き猫から降りてきた。
「探し物は見つかったのか?」
「ああ、見つけたよ。中々面白いものをね」
そう言うとキメラングは先程手に入れた物をあまねに見せると彼女の表情は一変して驚愕の表情を浮かべる。
「なっ!そ、それは…!?」
あまねの視線の先にあるのは紫と白のラインが入った楕円形の弁当箱の様な物だった。特徴的なのは天面にバツのマークとその上にあるBという文字であり、それが今キメラングの手の中にある。
「協力感謝するよ。それでは私はこの後コレを解析してデータの採取と実験があるから失礼するよ」
そう言ってキメラングはその場から去ろうとするが、
「待つんだ!…それをこっちに渡して貰おうか」
あまねは彼女を呼び止めて先程手に入れた物を渡すように要求する。対してキメラングは振り返りあまねの顔を見つめるとニヤリと頬を釣り上げる。
「その表情…どうやら君はこれが何なのか知っている様だね」
「そうだ。だからこそ、それによってどれだけの人間が傷ついたのか私自身が良く知っている」
あまねはキメラングの手に持つ物を見て、かつて洗脳された己が黒い衣装を纏い料理の妖精…レシピッピ達を奪う自身の姿が過ぎる。
「なら、止めたければ止めると良いさ。私はこの街で実験を始めるからそれを止めれば君の勝ちだよ。それじゃあね、キメランラン♪」
「な、待て!」
キメラングはその場から消え、1人残されたあまねは歯を食いしばりながら自身の拳を強く握る。
(まさか、此処でかつての因縁が来るなんて…!)
かつての己の所業が此処で回ってきた事にあまねは辛そうな表情を浮かべるもすぐにその場から駆け出す。
「今は悲しみに暮れている場合じゃない!被害が出る前に奴を探さないと!」
一刻も早くキメラングを見つけて実験を阻止しなければとあまねはおいしーなタウンの何処かにいる彼女を探しに行くのだった。