ひろプリに野良猫系キャラを入れてみた   作:獅子河馬ブウ

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今回は前回の終わりから始まったコラボの続きです。


第40話 蹂躙する善意

その場にいた全員はまるで正義のヒーローの様な見た目をするゼインと名乗る存在に困惑を覚えていた。

 

「ゼイン?…聞いた事も無いが……彼は君達の知り合いでは無いのかい?」

 

「いえ、私も初対面です」

 

見た目からしてはヒーローっぽさを感じさせ一見すればプリキュアの仲間なんじゃ無いかとキメラングはスカイ達に問うが、スカイも親近感を覚えるものの否定する。一方でプリズムがある推測をする。

 

「あ、もしかしてマリちゃんが助っ人を呼んでくれたんじゃ?見た目が拓海君…ブラペの色合いにやや似ているから」

 

「という事は……あの人は拓海さん!?」

 

「ま、まさか…」

 

確かに色合いから見れば品田拓海(ブラックペッパー)を連想させるが、先日のキャンプでローズマリーに今回の戦いは助太刀は無しと約束した為、謎の人物ゼインの正体が拓海とは思えなかった。

一方でスカイ達がゼインの正体について考えている中を他所にゼインは周囲を見渡していた。

 

「ふむ……どうやらソラシド市のようですが、私の知る世界と少々異なる部分が見受けられますね」

 

そう呟きながらゼインは冷静に今自身の置かれた立場について理解する。

彼は元々此処とは違う世界のソラシド市に訳あって住んでいたが、どう言う訳かこの世界へ飛ばされてしまった様で特に取り乱す事なく自身の中にあるAIで元のソラシド市と今いるソラシド市を照らし合わせ違いを判別すると続いてスカイとプリズムに視線を移す。

 

(あそこにいるのはキュアスカイにキュアプリズム…私の知る彼女達と比べて少しばかり場数を踏んでいるようですね)

 

彼は一目見て己の知るスカイ達と目の前にいる彼女達の違う存在であると見抜くと続いてツイスターとウィングに視線を移す。

 

(…側にいる2人は初めて見ますがどちらも善意が感じますね。彼女達と同等の善意が感じられます)

 

初めて見るツイスター達を見てゼインは値踏みをしているとキメラングが話しかける。

 

「ねぇ、さっきの口振り……もしかしてだけど君はこの世界の住人では無いのかい?」

 

キメラングに話しかけられた事によりゼインは彼女に視線を向ける。

 

「その通りです…どうやら此処は私の知るソラシド市ではなさそうですね」

 

「あっ、やっぱり?まっ、そんな見た目をしたヒーローがこの街にいたら直ぐ有名になるけど私や彼女達も君を見るのは今日が初めてなんだよねぇ」

 

己の予想が当たった事にキメラングは喜ぶと同時に彼が別の世界の住人であると分かると興味深そうな眼差しを向ける。彼から発する謎のエネルギーを察したキメラングは一体それが何なのか、他にも特殊な能力があるのかと直ぐにでも調べたいと言う好奇心に見舞われていた。

そんな事を考えてるも知らないゼインはキメラングに話しかける。

 

「所で……貴女から並々ならぬ悪意を感じますね」

 

「悪意?まぁ、私はマッドサイエンティストだからね。君達の様な正義の味方から見て悪意のあるヴィランと認識されても当然だと思うよ」

 

「ヴィラン…因みに今まで何をしてきたのか聞かせて貰いたい」

 

キメラングの話を聞いたゼインはそんな彼女への認識を変える。対して彼女はそんな事に気付かず己の所業を語り出す。

 

「そうだね…まっ、人体実験はもっぱらやっているね。他にも私の発明した道具の性能を確かめたりプリキュアと戦ってデータを取ったりとかかな」

 

"他にもやっているけどね"と補足を入れて自身のやっている事についてゼインに伝えるとゼインは淡々と宣告する。

 

「そうですか……ならこの世界に善意を満たすため、先ず初めに貴女という悪意を粛清しましょう」

 

「……は?」

 

突然粛清するなんて物騒な発言をするゼインにキメラングは思わず呆然とする。対してゼインは1枚のカードを取り出す。

 

ゼロワン!執行!ジャスティスオーダー!

 

カードをベルトに挿入しレバーを引くと音声が鳴り、認識していくと同時に挿入したカードはバラバラになって排出され無残に地面に落ちる。

 

「か、カードがバラバラに…」

 

「え、えるぅ……」

 

スカイ達はゼインの行動に不気味さを覚える。エルも今にも泣き出しそうだ。

一方でキメラングはゼインの行動に己の脳内に危険信号が発せられる。

 

「キメランッ!」

 

悪い予感を感じたキメラングは一先ず距離を取ろうとワープしようとした。

 

「遅い」

 

「があっ!?」

 

『キメラング!?』

 

「マッドサイエンティスト!?」

 

ワープする直前にゼインは蛍光グリーンの光の残像を残しながら一瞬でキメラングの懐に潜ると腹に向かって拳を叩き込み、彼女の体は宙を飛ぶ。

 

「ふん」

 

「グホッ!」

 

キメラングの身体は宙を舞うがゼインはそれだけでは終わらず、彼女の背後に回ると胴体に向かって回し蹴りをした。キメラングはそのまま川に勢いよく落ちる。川に落ちた彼女は起き上がると体のダメージと川の水が誤って気管に入った事による苦しみを味わう。

 

「ゲホッ!ゴホゴホッ!…い、いきなり攻撃なんて…穏やかじゃないね…!」

 

不意打ちに近い行動で襲いかかったゼインをキメラングは睨むが、彼は特に気にする事なく語り出す。

 

「私の目的は世界から悪意を根絶し善意が満たされた平和な世界を作る事です。その為、貴女を粛清します」

 

「そうか粛清ね……なら、私も容赦しないよ!」

 

キメラングはゼインが己を抹殺つもりであると分かると、ドローンを呼び出して戦闘の構えを取る。

一方でスカイ達は現状を困惑していた。突然現れた人物はおいしーなタウンの助っ人では無く並行世界の人間である事に驚きつつもそんな人物が特に何も因縁が無さそうなキメラングに殺意を持って襲いかかったのだ。

 

「ど、どうしよう…」

 

「流石に粛清って…穏やかじゃ無いわね」

 

「ですが…キメラングを助けるのは……」

 

キメラングが命を狙われていると聞いてプリズムとツイスターとウィングはどうするべきか悩む。今までカバトン以上にタチの悪い所業の多さに彼女を助ける事に抵抗感が見られる。

 

「3人とも…あのゼインって人を止めましょう。キメラングとは言え一つの命です。ヒーローとして見過ごす訳には行きません」

 

「スカイ……うん、そうだね」

 

「そうですね。幾らキメラングが悪人とはいえ命を取るのは流石に見過ごす訳には行きません」

 

「やられるのをただ見ているのも目覚めが悪いものね」

 

スカイの言葉に3人はキメラングを助けようと2人の間に割って入ろうとした。

 

「おっと手出しは無用だよ諸君。これは私と彼の戦いだからね」

 

「何言ってんのよ!?そいつは言動もそうだけど、見た感じヤバそうよ!」

 

先程の全員が反応出来ない動きでキメラングに襲いかかったのを見て只者では無いと指摘する。

 

「心配御無用、私は大丈夫さ。それに今は絶好調、脳内にアドレナリンが大量に分泌され力が溢れているからね」

 

「それはただ不意打ちされて怒っているだけでしょ!……って、前にも似た様な事があったような」

 

何か自分とキメラングのやり取りにデジャヴを覚えるツイスターだった。

 

「兎に角これは私の戦いだから君達に手を借りるつもりは無いから…あと、勝手に参加しても良いけど流れ弾が当たっても知らないからね」

 

『っ!』

 

そう言って先程カバトンに対して使った拳銃を4人に向けて釘を刺す。どうやら彼女自身は己の力のみでゼインと戦うようだ。

 

「どうしようか?」

 

「キメラングが1対1の戦いを望んでいるのならそれに尊重したいですが……」

 

やはりゼインの先程の"世の中の悪意を根絶する"という言葉が脳裏に残るスカイはこのまま黙って見ているのは気が進まない様子。

 

「なら、しばらく様子を見ましょう。それでマッドサイエンティストが勝てばそれでいいし逆にやられそうになったら助ける事にするって感じで。それに変に戦いに介入したら彼奴の場合は私達を背後から狙うかも」

 

「流石にそんな事は……」

 

無いと言い切ろうとしたウィングであったが、先程カバトンに何も言わずにドーピングカプセルを投与し、暴走させた事もあってか言い切る事が出来なかった。

一方でキメラングは川から立ち上がると赤いドローンを呼び出し、白衣を脱ぎ捨てハイスペックアーマーとして身体に纏う。其処からゼインに向かって飛び掛かる。対してゼインはその場から動く事なく新たなカードを取り出す。

 

ミューズ!執行!ジャスティスオーダー!

 

「予測AI起動」

 

Project AI active.

 

「AIだって?…なら、AIが予測する前に早く攻撃をさせてもらうよ!」

 

ゼインから無機質な音声が響くもキメラングは背中に装着したドローンからスラスター展開すると一気にゼインに距離を詰め、顔面に一撃を入れる。

 

「キメランラン!」

 

「な、があっ!?」

 

続いてワープしてゼインの死角に現れるとそこから側頭部に向かって回し蹴りを放ちまともに受けたゼインは倒れ、更に追い打ちを掛けるように両肩両膝のドローンが展開しミサイルが放たれ、ゼインは防御する間も無く全身にミサイルを受けてしまう。

 

「私を怒らせた事を後悔すると良いさ!デスメットキャノン!」

 

最後にトドメとして胸部から放たれる強力な光線、デスメットキャノンにゼインは飲み込まれそのまま光の中に消えていった。

 

「バットパターンシミュレーション完了…」

 

かと思いきや、これまでは全てゼインがこれから起こるであろうキメラングの行動パターンをAIで予測した物であり、現にキメラングはこれからゼインに殴り掛かろうとしている。

 

「AIだって?…なら、AIが予測する前に早く攻撃をさせてもらうよ!」

 

そう言うとAIの予測通りの台詞をキメラングが言うと背中のドローンのスラスターを起動させ距離を詰め、そのままの勢いでゼインに殴り掛かる。

 

「バット回避」

 

だが、既にAIによって彼女の行動は既に予測された為、ゼインはその攻撃を避ける。

 

「キメランラン!」

 

そして、キメラングは先程の予測通りワープしゼインの死角に現れ回し蹴りをしようとする。

 

「なに!?」

 

「バット回避、貴女の行動は既に予測済みです」

 

「があっ!」

 

しかし、足を掴まれたキメラングはそのまま地面に叩きつけられ背部の痛みと肺から強制的に空気を排出された事による苦しみを味わう。

 

Muez Edge unlock

 

そして二丁のナイフ…ミューズエッジを取り出すと地面に倒れるキメラングに突き刺そうと振り下ろすが、

 

「ぬ、うおおおおっ!!!」

 

「むっ…」

 

キメラングは地面に倒れながら回し蹴りをしてゼインの手の中にあるミューズエッジを弾き飛ばし、更に其処からバク転しながら距離を取る。

 

(くっ…まさか、私のアーマーの演算能力を上回るAIを備えているとは…此処は一先ず間合いを…!)

 

間合いを取ろうと考えたキメラングはバックステップをして距離を開けて遠距離攻撃をしようとするが、

 

「逃しはしません」

 

Exceed charge

 

「な、があっ!?」

 

再び音声が響くとゼインはミューズエッジをキメラングの胸部目掛けて投げ込む。するとそれを中心に青い円錐状のエネルギーへと変化して彼女が拘束され、先に投げ込まれたエッジがゼインの持つエッジとロープ状のエネルギーと繋がっており彼女を自身の元へ引き寄せそのまま必殺の一撃を叩き込もうとする。

 

「ぐっ…胸部ドローン、パージ!」

 

「むっ…」

 

だが、間一髪の所でキメラングは胸部のドローンを外す事で拘束から抜け出し、代わりにドローンに必殺の一撃が叩き込まれ破壊される。

 

「アーマーを代償に避けましたか…大人しく受けていればいいものを」

 

「生憎と私は頭の回転はいいのでね。其処等へんの悪党と一緒にされると困るよ!」

 

お返しと言わんばかりに両肩と両膝のドローンからそれぞれミサイルとレーザーを放つがゼインはそれらを全て避ける。そして、新たに一枚のカードを取り出す。

 

デューク!執行!ジャスティスオーダー!

 

ソニックアロー

 

カードが裁断されると赤い弓…ソニックアローが召喚され、ゼインは手に取るとソニックアローの弦を引き矢を放つ。

 

「それぐらいの軌道は読めるよ!」

 

対してキメラングは矢の軌道を読んで避けると、数本のメスを取り出してお返しと言わんばかりに投げ込むがゼインは難なくキャッチする。

 

「キメランラン!」

 

だが、其処に出来た一瞬の隙を突きワープするとそのまま右肩のドローンを拳に装着するとゼインに一撃叩き込むが、ソニックアローを盾代わりにして防ぐ。

 

「中々の実力をお持ちですね」

 

「当然だ!私はドクターキメラング!アンダーグ帝国の中で1、2を争う天才だ!」

 

普段はデータを取るため他人をモルモットとして見下し余裕がキメラングだが今は余裕が無く、興奮状態である。

 

「ですが、些か冷静さが欠けていますね」

 

「な、うおっ!?」

 

足払いをされ地面に倒れたキメラングへと向かってソニックアローの刃が彼女の胸に突き立てようとするが、右手に装備したドローンでソニックアローを防ぐ。

 

「今度は右手に装備したドローンで防ぎましたか、ですが耐久力はあまりよろしく無いですねっ!」

 

ゼインのパワーが強い、又はソニックアローの刃の切れ味が良くドローンを破壊し、その胸へ刃を突き立てようとする。

 

「ぬ、うおおおっ!」

 

「むっ」

 

だが、両膝に装着したドローンのレーザーを放つ事でゼインが一瞬怯み、其処からバク転して距離を取る。

 

「はあ…はぁ……」

 

「中々しぶといですね。それならこれはどうですか?」

 

そう言うとゼインは己の複眼が発光するとキメラングを囲う様にゼインの姿が増える。

 

「これは分身……いや、ホログラムか!」

 

キメラングは一瞬忍者が使う分身の術と思い込んだが、少し間を空けてそれがホログラム映像であると見抜いた。だが、そのホログラムは乱れは無い上に一見すれば本物かと思うくらいの鮮明な映像である為キメラングはどれが本物か見分けが付かず分身と偶にくる本物の攻撃に翻弄されてしまう。

 

「なら全て攻撃すれば良い!」

 

そう言ってキメラングは残った背部と左肩と両膝のドローンからミサイルとレーザーを周りに向かって放つと、ゼイン達の姿は攻撃によって乱される。その際に一人だけレーザーを避けた事から恐らくそれが本物だろう。

 

「其処だ!」

 

キメラングは本物と思わしきゼインにレーザー攻撃を放つが、そのゼインの身体をすり抜けてしまう。

 

「なんだと!?」

 

「直ぐにこの機能を理解し対処するとは天才を自称するくらいはありますね……ですが、その先の事も予測して置かないと本当の天才とは言えませんね」

 

レモンエナジー ロックオン

 

「はっ!?」

 

上から声が聞こえ反射的にそちらに向くと其処にはレモンの形を模した機械の錠前…レモンエナジーロックシードをソニックアローのスロットに装填させ弦を引き絞るゼインの姿があった。

 

レモンエナジー

 

弦を離すとソニックアローから強力な矢がキメラングに向かって放たれる。

 

「させるかっ!!!」

 

対してキメラングは迫り来る矢に残ったドローンを飛ばすと重ね合わせてバリアを張り防ぎ切る。

 

「さぁ、次はこちらの番…」

 

番だと言い切ろうとした時にゼインは地面に着地するとソニックアローからレモンエナジーロックシードを投げ捨てると新たに真っ赤な錠前を取り出す。

 

ドラゴンフルーツエナジー ロックオン

 

「ドラゴン…だと…!?」

 

その錠前から聞こえる音声に思わずキメラングは一瞬体が固まる。先程使ったレモンエナジーロックシードによる一撃の矢は強力で何とかギリギリ耐えたが、続いて出した紅い錠前‥ドラゴンフルーツエナジーロックシードをソニックアローに装填した際、キメラングの目にはゼインの背後に本物のドラゴンが立っていると錯覚した。

 

「これで終わりです」

 

ドラゴンフルーツエナジー

 

弦を離すとソニックアローから強力な矢と共に赤いドラゴンがキメラングに向かって飛んでいく。

 

「ふ、防ぐんだ!」

 

再びドローンを使ってバリアを張るが先程と比べて威力は段違いでバリアは一瞬にして破壊。

 

「があああああああっ!!!」

 

『キメラング!!!』

 

「マッドサイエンティスト!!!」

 

矢はドラゴンと共にキメラングの胴体を貫き、地面に倒れ伏す。それを見ていたスカイ達は思わず声を上げる。そして、スカイ達より後ろにいるあげははエルにその光景を見せない様に両目を手で隠した。

 

「これでまずこの世界の悪意を一つ粛清出来ました」

 

ソニックアローを投げ捨てるとゼインは倒れ伏すキメラングを背にして去ろうとするが途中で何かに気付き足を止める。

 

「……しぶといですね」

 

「あ、あが…」

 

振り返るとキメラングはまだ息はしている。だが、先程よりも強烈な一撃を受けてしまい、身体に大きなダメージがあり動く事が出来ない虫の息であった。

 

「最後は他の力は使わずに私自身の手で粛清しましょう」

 

そう言うと拳を強く握りしめるキメラングへと再び歩み寄る。

 

「ま、不味いです!このままではキメラングが!」

 

「ええ、これ以上見過ごせられないよ!」

 

「兎に角止めに入りましょう!」

 

「そうね。じゃ無いと本当にや…ば………い……?」

 

その時、偶然かどうかはわからないがゼインの青い複眼がツイスターの間に合うと彼女の体が突然固まる。

 

「何よ…コレは……」

 

「「「ツイスター?」」」

 

スカイ達はツイスターの声に反応して彼女の方を見ると何かに対して怯えている様子だ。

ツイスターの目には今スカイ達が見ている光景とは異なった物が見えていた。

それは全ての悪意が消し去り、人々の笑顔が溢れる平和な世界の光景だ。だがそれは人々の"個性(アイデンティティ)"が無くなり、自身の存在を示す特徴が無い、まるで心の無い笑顔という仮面を付けた人形の様な人間が溢れかえった真っ白な世界だ。ツイスターはその光景を見せられた事により自身の心はじわりじわりと漂白されていき、目からハイライトが消えその場に立ち尽くしてしまう。

 

「どうしたんですかツイスター!?」

 

そんな彼女にスカイは両肩を掴んで揺さぶって声を掛けるが、全く反応が無かった。

 

「駄目だよ!全然反応してくれない!」

 

こんな大変な時にツイスターが抜け殻の様に心が無い状態に陥った事にプリズムもどうすれば良いかわからなかった。

 

「仕方ありません。僕たちはゼインを止めましょう!」

 

「ですがツイスターは…!」

 

この状態のツイスターを放置する事は出来なかった。

 

「確かにツイスターが突然反応しなくなった事は心配です。ですが、今はゼインを止めないとキメラングが殺されてしまいます!」

 

「っ!」

 

ウィングの話を聞いてスカイは思わず言葉が詰まる。仲間のツイスターの異常事態も気になるが、此処でゼインの行動を見過ごせばキメラングの命は確実に奪われてしまうと考えたスカイは深く思い悩んだ結果、あげはに視線を移す。

 

「あげはさん!ツイスターをお願いします!」

 

「任せて!スカイ達はあのゼインって奴を止めて!」

 

あげはにツイスターを任せるとスカイ達はキメラングを守る様にするゼインの前に立ちはだかる。

 

「あなた方は…どういうおつもりですか?」

 

「もうそれぐらいでいいでしょう」

 

「そうだよ!このままだと本当に死んじゃうよ!」

 

ゼインにこれ以上の事はやめる様にスカイとプリズムが説得しようとする。

 

「(何処の世界でも彼女達は変わりませんね…)そいつはこの世界にとって害を及ぼす悪意ある存在…世界の平和の為に即刻抹殺するべきです」

 

「世界の平和の為だからって、命を奪うことを正当化しようとするな!」

 

だが、ゼインは全く説得に応じず3人は説得を続けるも話し合いは平行線のままだ。

 

「……はぁ、仕方ありません。これ以上の会話はどうやら無意味なようですね」

 

「ええ、私達も気は進みませんが力づくでもあなたを止めます」

 

そしてお互いにこれ以上の会話による解決は無理と判断し実力行使に移ろうとする。

 

「あまり善意の芽を潰したく無いのですが、悪意有る者の味方をするなら容赦はしません」

 

残念そうな声を出しながらゼインは一枚のカードを取り出す。

 

「せめての情けです。一瞬で終わらせましょう」

 

カブト!執行!ジャスティスオーダー!

 

「「「はああああっ!!!」」」

 

スカイ達はゼインが何かをする前に攻撃しようと駆け出していった。

 

「……クロックアップ」

 

しかし、その言葉と共に世界の時の流れはゼインを除いて遅くなる。

 

────────

 

「ツイスター!らんこちゃん!しっかりして!」

 

「えるる!える、えるるっ!」

 

一方であげはとエルはまるで魂が無いように反応が無いツイスターに声を掛けたり、軽く頬を叩いて正気にしようとするが、全く効果が無い。

 

「ああ、一体どうすれば!?」

 

あげはは全く反応がないツイスターをどうやって元の状態に戻すか考えるも中々良い案が思い付かず思わず匙を投げたくなる。

 

「「「ああああああっ!?」」」

 

「えっ!?」

 

「えるっ!?」

 

その時、スカイ達の悲鳴が聞こえあげはとエルはそちらに視線を向ける。其処には信じられない光景が広がる。

先程、約30秒ほど前に自分達にツイスターを任せてゼインを止めようと動いたスカイ達がボロボロになって地面に倒れていた。

 

「そ、そんな…!スカイ!プリズム!ウィング!」

 

「え、えうっ、ぷいきゅああああっ!!!」

 

倒れ伏す3人を見てあげはは目の前の光景が信じられなかった。対してエルは泣きながらプリキュアの名を叫ぶ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……スカ……イ」

 

そんな中、先程まで反応が無かったツイスターの口からスカイの名が出る。

 

一方でゼインの目の前にはクロックアップにより世界の時を遅くした事により彼の攻撃をなす術なく受けてしまったスカイ達の姿があった。

 

「な、何が…!?」

 

「私たちは……何をされたの……?」

 

「まったく…見えなか……った…!」

 

スカイ達にとってはゼインがカードをベルトに挿入して何か呟いたら全身に激痛が走り、気がついたら地面に倒れて指を一本も動かせ無いという理解できない状況であった。

 

「さて、これで暫くあなた方は動けません。その間に私は奴を処刑します」

 

動けないスカイ達を確認するとゼインは視線をキメラングに移すと何処から共なく飛んできた一振りの大剣…パーフェクトゼクターを掴むと同時に飛んできた機械の蜂(ザビーゼクター)機械のトンボ(ドレイクゼクター)機械の蠍(サソードゼクター)がパーフェクトゼクターに合体する。

 

 

KABUTO POWER!

 THEBEE POWER! 

DRAKE POWER!

 SASWORD POWER! 

ALL ZECTOR COMBINE!

 

パーフェクトゼクターの4色ボタンを全て押すとエネルギーが溜まり、握っているグリップを曲げると銃携帯へと変形し、キメラングに向かって構える。

 

「今だ!マグネコントローラー!」

 

「なに?」

 

その時、キメラングは待っていましたと言わんばかりに以前使ったマグネコントローラーを装備し起動させるとゼインの持つパーフェクトゼクターが彼女の手の中に収まる。

 

「ハッハー!形成逆転だね。君の武器は頂いたよ!」

 

そう言ってキメラングはパーフェクトゼクターを構えるとゼインに向かって引き金を引こうとする。

 

「成る程、ヴィランという者は追い込まれると厄介な事をする…久しく忘れていましたね」

 

ガイ!執行!ジャスティスオーダー!

 

コンファインベント

 

その音声が響いた瞬間、キメラングの持つパーフェクトゼクターが鏡が砕け散る様に消え去る。

 

「な、なにっ!?」

 

「私は自分の得物を悪意ある者に使わせる程、寛容ではありませんっ!」

 

「があっ!」

 

「「「キメラング!」」」

 

ゼインはキメラングに一瞬にして近づくと彼女を蹴り上げる。そして、蹴り上げられたキメラングはスカイ達の直ぐ側に落ちる。それを見たゼインは少し考える。

 

(ふむ、よりによってキュアスカイ達の所へ落ちましたか)

 

このままキメラングにトドメを刺そうとするとキュアスカイ達が再度邪魔、又は己の攻撃が当たってしまうと思い一瞬攻撃するのをやめようかと考えるも。

 

(まぁ、彼女達の代わりにこの世界を平和に導くのもいいですね)

 

善意ある者が悪意ある者の味方をすればその悪意がウイルスの様に侵される。現にスカイ達とキメラングのやり取りを見れば何度も悪事を働くキメラングを抹殺せず見逃す彼女達は正義を執行出来ていない。それなら自分が代わりにこの世界を善意溢れる世界に導こうと考えたゼインはスカイ達諸共キメラングを粛清しようと新たに一枚のカードを取り出してベルトに挿入しようとした時だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やめてっ!」

 

「むっ?」

 

「「「ツイスター…!」」」

 

その時、倒れるスカイ達を守る様に先程まで動く事が出来なかったツイスターがゼインの前に立ち塞がる。

 

「…これ以上みんなを傷つけないで…じゃ無いと私は……あんたを殺す

 

そう言うとツイスターの全身から今までに無いほどの暴風が発生する。その場にいたゼインを除く一同はしゃがんでいないと吹き飛ばされそうだった。

 

「な、なんですかこの暴風は!?」

 

「これは、らんこちゃんが初めて変身した時の!」

 

「いや、あの時よりも凄い風です!」

 

スカイ達は目の前で凡ゆる物を吹き飛ばす台風を彷彿とさせる風を起こすツイスターを見て驚愕する。

 

「この力は…それにカードが共鳴している…?」

 

対してゼインもツイスター放つ暴風と自身の持つとあるカードがツイスターに反応していたのだ。その様子にゼインは顎に手を当てて何か考え事をするとツイスターに話しかける。

 

「……良いでしょう。貴女のその力に免じてここいらでやめにします」

 

「そう、なr「ですが一つ条件があります」な、なによ?」

 

見逃してくれると聞いて一瞬安堵するが、ゼインの言う条件と聞いて思わず動揺する。まさか、とんでもない条件を言うのではと内心ビクビクするツイスターであったが、

 

「貴女を含めた4人のプリキュアのデータを貰う事…それが見逃す条件です」

 

「え、私達のデータを…?」

 

てっきり無理難題な条件を出すかと思いきや自分達のデータを貰うと聞いて呆気に取られる。

 

(あれ、なんでプリキュアの事を知っているの?)

 

ゼインは並行世界からやってきたと最初のキメラングとの会話でわかったが自分達の事は知らない筈であるが、

 

「どうされました?」

 

「……良いわよ」

 

だが、今はそんな事考えている余裕は無く倒れているスカイ達に目配らせすると3人も頷いて了承するのを確認すると、ツイスターは代表して自分達のデータを明け渡す事にする。

 

「おい、何を言っているんだツイスター!?こんな訳のわからない部外者に無限の可能性たる君たちのデータを明k「ふん!」ムガッ!?」

 

ゼインに自身のデータを渡そうとするツイスターにキメラングは止めようと説得するが、ツイスターはマフラーを振りキメラングの口元を覆って喋れなくする。

 

「さて、それではあなた方のデータを貰い受けます」

 

そう言うとゼインは何も絵柄が描かれていないカードを4枚取り出すとそれぞれを4人に向けると、それぞれの体からオーラが出てカードに収まっていくとその4枚にはスカイとプリズムとツイスターにウィングの絵柄を浮かび上がる。

 

「これで良し…取り引きは成立です」

 

「そう、なら早く帰ってくれない?じゃ無いと…私はあんたを許さないから」

 

そう言うと彼女は威嚇のつもりで自身の周囲に風を起こす。対してゼインは先程使おうとしたカードが再び反応している事を確認する。

 

(仮面ライダーWのカードが共鳴している…やはり、彼女の善意と力がダブルの風の力と切り札(ジョーカー)の力に作用しているのか…)

 

先程スカイ諸共キメラングを倒そうとした際に使おうとしたのはこのカードであり、その際ツイスターの力が強く共鳴をした事にゼインは彼女に興味が湧いたキッカケとなったのだ。

 

「ええ、これにて私は失礼させて貰います。ですが、最後に一つ良いですか?」

 

「ま、まだにゃにかあるの?」

 

再びゼインがツイスターに話しかけられて緊張のあまり噛んでしまう。

 

「私は仮面ライダーゼイン、本当の名前は善井正義と言います。貴女の名前を教えて下さい」

 

最後にツイスターに対して敬意を払うつもりゼインは己の名前を明かすと彼女に名を聞く。

 

「……私はキュアツイスター…風波らんこよ」

 

一瞬、言うべきか悩んだが自分の名前をゼインに伝えると「そうですか」と返事をして新たに一枚のカードを取り出すのを見て思わずツイスターは身構える。

 

ディケイド!執行!ジャスティスオーダー!

 

ベルトにカードを挿入すると、ゼインの後ろに灰色のカーテンが現れる。

 

「ではプリキュアの皆さん。また会える機会が有ればよろしくお願いします」

 

そう言ってゼインは灰色のカーテンに入って姿を消すと同時に灰色のカーテンは消滅する。

ゼインがいなくなったのを確認するとその場の緊張感は解け、キメラングは自身の口を縛るマフラーを外す。

 

「プハーッ!……どうやら君たちに借りが出来た様だね。この借りはいつか返すとしよう」

 

そう言ってキメラングは珍しくワープをせず徒歩でその場を去る。

 

(全く、あのゼインには本当に肝を冷やされるよ…危うく本当に殺されそうになるとは……まっ、だけど収穫はあったね♪)

 

するとキメラングの隣に新たなドローンが出現すると先の戦いにてゼインが力を使う際にバラバラにしたカードの残骸を袋に詰めて持っていた。

 

(この身で体験したがどれも私の興味をそそる物ばかりの力だったね…幾つかドローンや私の新たな発明品に転用できないか試してみるしようか)

 

帰ったら楽しみだと言わんばかりの笑みを浮かべると傷ついた身体を引き摺りながら河川敷から去っていく。

そして、その場に残ったスカイ達はダメージがある物なんとか立ち上がる。

 

「い、行っちゃいましたね」

 

「なんだったんだろ…あのゼインって人は?」

 

「まるで嵐の様でした」

 

余りにも理不尽過ぎる強さを持つゼインがいなくなった事に安心したのかどっと疲れが出て地面に座り込み変身を解く。

 

「うぅぅ…」

 

『ツイスター!?』

 

だがツイスターが地面に膝をついて顔を伏せてうめき声の様な物を上げているのに気付き、ソラ達とあげはが駆け寄る。

 

「どうしましたかツイスター!?」

 

「まさか、何処か怪我を!?」

 

この中でゼインと戦わなかったツイスターがうめき声を出している事からもしやゼインが去り際でツイスターに何かしたのかと心配する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわあああああん!!!!ごわ゛がっだよ゛おおおおおおっ!!!!」

 

『ええええっ!?』

 

突然大声で泣き出したらんこに一同は困惑する。それといつの間にかツイスターは泣き出した影響なのか変身は解けていた。

 

「み、みんな、死んじゃうかとおもったよぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

「ら、らんこちゃん…!?」

 

「な、泣かないで下さいらんこさん!私達はらんこさんのお陰で助かりましたよ!」

 

「そ、そうですよ!らんこさんはみんなの恩人です!あのままでは僕たちはキメラング諸共やられていたかもしれませんから!」

 

「そうだよらんこちゃんの勇気がみんなを救ってくれたんだよ!」

 

「える、えるるる!えるっ!」

 

「うわあああああんっ!!!」

 

普段クールな性格を見せるらんこが久しぶりに己の本来の性格を曝け出して泣く姿に一同はなんとか宥めようとするが、一向に泣き止む様子は無い。それだけ今回の件はらんこの精神が耐えられなくなり赤ん坊の様に号泣している。

 

「ど、どうしましょう!此処は一つエルちゃんみたいに抱っこしましょうか!?」

 

「ソラちゃんいいアイデアだけど、それだと後から来る恥ずかしさにらんこちゃんが余計苦しむよ!」

 

抱っこして宥めようと考えるも後々のデメリットを考えてあまりにおすすめ出来なかった。

そんな中あげははある事を思いつき持ってきたバックからタッパーを取り出す。

 

「ほら、らんこちゃん。雲パンあるからこれを食べて元気出して」

 

それは小腹が空いた時にましろが用意してくれた雲パンであり、本当はカバトンとの決闘を終えた後にみんなで食べようと思っていたが、今はらんこを泣き止ませる為、雲パンを彼女に差し上げる。

すると、らんこは雲パンを受け取ると次第に落ち着いていき泣き止んでいく。

 

「よし、大成功!」

 

「おお!らんこさんが泣き止んでいきます!」

 

「凄いよあげはちゃん!」

 

「流石最強の保育士!」

 

「えるっ!」

 

泣き止むらんこをみてあげははガッツポーズを取り、ソラ達はらんこを泣き止ませたあげはを褒め称える。

 

「グス…ありが……ん?」

 

『らんこちゃん(さん)?』

 

一方でらんこはあげは達にお礼を言って雲パンを食べて気分を鎮めようとしたその時、雲パンを見てらんこは固まる。そんな様子にソラ達はどうしたのだろうと不思議に思い話しかける。

 

「雲パン…白…真っ白…漂白……悪意ない世界……ゼイン……」

 

『?』

 

雲パンを見て1人連想ゲームを始めるらんこを見てソラ達は疑問符を浮かべる。そして、らんこはゼインと彼が見せた悪意なき世界を思い出すと顔の色が真っ青になっていき。

 

「……クペ」

 

「「「「ら、らんこちゃーん(さーん)!?」」」」

 

変な声を出して気絶するらんこに思わずソラ達は彼女に駆け寄る。

かくして並行世界からやってきた謎の戦士ゼインとの遭遇によりらんこの心は折れ、暫く引き篭もる事になり一週間程学校を休む羽目となる。なお、その間にソラ達がらんこのメンタルケアをする事により1週間後にはいつもの調子に戻るも暫く白い物を見て恐怖心を抱く事になるのであった。

 




ikkunさんコラボありがとうございます。またの機会があればお願いします。
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