此処はスカイランド…そしてその中央にはスカイランドのシンボルとも言える城が建っているが、その前に数百人の人間や鳥が立っていた。
「なぁ、聞いたか例の噂?」
「ああ…誘拐されたプリンセスが帰ってきたって」
半年程前に自分達の国の姫…プリンセスエルが誘拐され、当時は物凄い大騒ぎだった。だが、最近になってプリンセスが帰ってと言う噂が流れ今日は王と王妃から国民に向けて伝えたいメッセージがあると聞いた為、現在城の前には沢山の人々や鳥が集まっているのだ。
「でも、誰が助けたんだ。青の護衛隊か?」
「だけど、護衛隊のシャララ隊長はその時遠征に行っていたから助けにいけないだろ?そうなると他の隊員達か?」
誘拐した犯人である
「お、おい!アレを見てみろよ!」
すると1人の男性が何かに気付いて指をさすと、其処にはその城に住む王妃が娘であるエルを抱えて城のバルコニーから姿を表したのだ。
「プリンセスだ!プリンセスが帰ってきたんだ!」
「ああ、怪我が一つもなくて元気そうだ!」
国民達は無事にエルが帰ってきた事に歓喜回って声を上げる。エルはそれにつられて手を振って応える。
「国民のみなさま、この度はご心配をおかけしました。数ヶ月前、我が娘のプリンセスエルが誘拐されたのはご存知でしょう。その者は此処とは違う別世界からやってきてプリンセスを連れ去って行ったのです」
それを聞いてどよめきが隠せない。王妃から明かされた此処とは違う世界の存在、そして話によれば誘拐犯はエルを別の世界へ連れ去ったのだ。そうなると誰がエルを救出してくれたのか疑問が生まれる。
「皆様も考えているでしょう。別世界から誰がプリンセスを救い我々のいるこの世界に連れ戻したのか…」
そう言うと王妃は自分の後ろに視線を向けるとそこから4人の少年少女が出てくる。
「此処にいる4人がプリンセスを救い出してくれた勇敢あるヒーロー、プリキュア達です!」
王妃の言葉と共にバルコニーからスカイ、プリズム、ウィング、ツイスターが姿を表した。
彼等を見た国民達は「うおおおおっ!」と興奮した様子で声を上げている。対してプリキュア達は国民達に笑顔を向けながら手を振って答える。
「あれがプリンセスを救ったヒーロー…プリキュアか!?」
「あんなに若いのに私達のプリンセスを取り返すなんて凄いわ!」
「ああ、正にヒーローだ!!!」
エルを取り戻したプリキュア達は国民達にとって好印象で受け止めて、彼等をヒーローと呼ぶ者も出てきた。
だが、そんな中ヒーローと讃えられているプリキュア達の顔色が段々と青ざめていく。
((((どうしてこうなったんだろう…))))
内心とんでもないくらいに動揺していた。本当なら自分達は此処に立っている予定は無かったのだが、とある理由によって4人は王妃に続いて国民達の前に姿を見せる事になったのだ。
その理由については数分前に遡る。
─────────
ヨヨの作り出したトンネルを通ってきたらんこ達はスカイランドの城の中にある謁見の間に立っていた。
「えるぅ〜!」
「歩いた!プリンセスが歩いたわ!」
こちらに向かって支えなしで歩いてくるエルの姿に王妃は感動し涙を流す。
「あなた!見て下さい!」
「よ、よかった
ぷ…プリン…セスが…ぶ、無事で……ぐおっ!?」
だが、王様は床に倒れた状態で涙を流している。それがエルの成長を見て感動の涙なのか腰の痛みによるものなのかはわからない。
いや、最後の呻き声からして腰の痛みによる物だろう。
「「「「す、すいませんでした!!!」」」」
らんこ達4人はそんな王に対して頭を下げて謝罪する。そもそも王がこんな姿になったのは初めにソラ達3人がトンネルから出た先で王の真上に落ち、そして遅れてトンネルから出てきたらんこがトドメとなり腰に向かって思いっきりヒップドロップをしてしまったのだ。その所為で王は腰を強く痛めてしまい1人で立ち上がることが出来ず、うつ伏せの状態でエルの姿を眺めていたのだ。
「い、いや、気にしなくて良い。私よりも未来ある若い其方たちが大事に至らなくて良かったぞ」
王様の懐が大き過ぎる事に思わずらんこは泣きそうになる。幾ら事故とはいえ王に対してヒップドロップをするなんて不敬を通り越して極刑になるのではと不安になっていたがどうやらそうならずに済みそうだ。
「だが、代わりと言ってはなんだが頼みがある」
「な、なんでしょう?」
「なんでも聞きますよ!」
腰痛を起こしてしまった事に4人は罪滅ぼし王の頼みを引き受けるつもりだ。
「この後王妃とエルと共に国民達に姿を見せてくれないか?」
「「「「えっ!?」」」」
王の頼みというのが国民達に自分達の姿を見せる事という内容であった。4人はその頼みになると予想していなかった為、思わず声を上げてしまう。
「わ、私たちが…」
「スカイランドの皆さんに…」
「姿を見せるんですか……」
「なんて面…そんな事をするんですか?」
(((今面倒くさいって言い掛けた!?)))
最後にらんこが面倒くさいと言いかける途中で修正するも、ソラ達にはバレていた。
「実は昨日にトンネルが出来たとヨヨ殿から聞いた後、国民達にプリンセスが帰ってきた事を発表しようと今日城の前に集まって貰っているんだ」
「え、城の前?」
王の話を聞いてらんこは恐る恐るバルコニーから外を覗くと其処には何百人もの人々や鳥達が城の前に集まっていた。
「ほ、本当に集まっているし…!」
らんこは顔色が段々と青くなっていく。これだけ沢山いる人の前に出る所を想像すると恥ずかしさのあまり気絶しそうになりそうだ。
「本来なら私が出てプリンセスの帰還を大々的に発表する予定だったのだが、今こんな情けない姿を国民に晒す訳にはいかん…あ、いだっ!」
「「「「本当にすいませんでした!!!」」」」
4人は先程よりも大きな声で再び謝罪する。らんこに至っては唯一土下座して謝罪をしている。
「で、でも…やっぱり、私はそう言うのは苦手で…緊張し過ぎて失敗するかもしれないから私は降りても良いですか?」
らんこは恐る恐る頭を上げ、失敗するのを恐れて国民の挨拶をパスしようとする。
「緊張するのも無理はない。だが、そなたたちは私達の大事な一番星を守った。あの子の身の安全だけではない…笑顔もだ!」
そう言いながら王妃の腕の中で笑顔を浮かべるエルを見て王は嬉しそうな顔を浮かべる。
「えるぅ〜♪」
「ソラ、ツバサ、ましろ、らんこ。あなた達はスカイランドのヒーローです!」
「ヒーローだなんてそんな…」
「別に私達はそんなつもりじゃ…」
王妃からヒーロー呼ばわりされている事にましろとらんこは謙遜な態度を取るが、ソラとツバサは逆に目を輝かせていた。
「わ、私達が…!」
「スカイランドの…!」
「「ヒーロー!」」
「あんた達はなに目を輝かせているの!?」
「あ、あはは…」
という事があり腰痛により出て来れない王の代わりにエルをスカイランドに連れ戻してくれた4人がプリキュアに変身して国民達の姿を見せる事になったのだ。
だが、やはり自分達の所為によって王が姿を表す事が出来ない罪悪感とプレッシャーが4人を襲った。
────────
それからしばらくして国民への挨拶が終わり4人は精神的な疲れがあるものの王達を連れて謁見の間とは別の部屋でアンダーグ帝国について話をしていた。
因みに王は腰痛もある為、杖を付きながら移動した。
「アンダーグ帝国、何故プリンセスを狙うのか?」
「あなた…」
王はアンダーグ帝国のエルを狙う事について考える一方で王妃は不安そうな顔を浮かべる。そんな時らんこは恐る恐る話しかける。
「…何か心当たりは無いんですか?エルの持つ謎の力…物を浮かせたり、私達にプリキュアに変身できる力を与えたりしてくれるけど……」
「……すまないが私達も心当たりは無いのだ」
「……そうですか」
らんこは深く追求はせず引き下がる。先程エルの能力について指摘し王が何かを考える素振りを見せるも何も無いと答えた事に訝しんだ。様子からして2人が自分達に何か隠しているのではと推測する。
(……まぁ、今は無理に聞く必要は無いわ)
らんこはその秘密がなんなのか気になるも、もしかしたらこの国の根本に関わるかもしれない。幾らプリキュアになれるとはいえこの世界の人間じゃ無い自分が関わるのはあまり良くないと考える。
「兎に角だ。この度はプリンセスを連れて帰ってくれた事に感謝する。アンダーグ帝国の件は全て私が預かる。そなた達は安心して家に帰るが良い。親元でゆっくりと体を……」
「待ってください!プリキュアの力をお貸しします!」
「私も!」
「僕もプリンセスのナイトとして守らせて下さい!」
「エルがまだ狙われているのなら私も戦うわ!」
王がこの先のアンダーグ帝国との戦いは自分達が引き受けようと言うがらんこ達4人にとってエルは大切な存在だ。此処で引き下がる訳が無かった。
「(ナイト?)…気持ちは嬉しいがまだ子供の其方たちに力を借りるのは…」
ツバサの言葉が気になるもまだ15も満たない少年少女達にこれ以上力を借りる事に大人として頼る事に遠慮しようとするが、その直前らんこが一歩前に出て口を開く。
「お言葉ですが王様…話を聞けば其方は以前エルがカバトンに攫われた時にそちらの戦力では手も足が出なかったりとあまりに実力が不足しています。更に言えばこれから来る敵は誘拐してきたカバトンの実力を上回る筈です。そうなるとそちらだけの戦力でエルを守れるとは到底思えません」
「むぅ…」
らんこの発言に一理あるのか王は黙り込んでしまう。
「ちょ、らんこちゃん!?突然何言ってるの!?」
「幾ら何でも失礼ですよ!」
「そうですよ!相手は王様ですよ!?」
あまりにも王に対して不敬なやり取りに見ていたハラハラするもソラ達は慌ててらんこに注意をする。
「あんた達こそ何言ってんの?エルは未だに狙われているのよ。ソラとツバサが此処にいたとしても私とましろがこっちに来れず、戦力が半分に別れる所を見計らってアンダーグ帝国はマッドサイエンティストや他の刺客を送るかもしれないのよ」
「た、確かにそうですけど…」
不敬な発言である事はらんこも承知している。だが、此処で自分達が引き下がればエルが再び誘拐される可能性が高くなる。そうならない為にも自分達がこの地でも戦わなければならないのだ。
「ふふ、どうやら貴女もプリンセスの事が好きな様ですね」
「べ、別にそう言う事j「えるるぅ〜♪」…もう、エルったら」
王妃にエルの事が好きと指摘された事にらんこは顔を赤くして否定するが、エルが彼女に向かって笑みを浮かべて手を伸ばしくる事から苦笑いを浮かべる。
「…わかった。だが、そなたの言う通りアンダーグ帝国は刺客を送り続けるだろう。厳しい戦いになるが…」
「大丈夫です。私達は今までも厳しい戦いを強いられてきたけど最後は勝ち続けてきましたよ」
王は4人に力を借りる事を検討しつつ改めてらんこに確認をすると彼女は自信が満ち溢れた顔で答える。
「その通りです。相手がどんなに強くても、正しいことを最後までやり抜き、困っている人を救う!そして己の信念を貫く事がヒーローです!」
「ブッ!?あ、あんた…まだそれを覚えているの…?」
ソラの聞き覚えのある発言に思わず吹き出してしまうらんこはソラに視線を向ける。
「当然です!この手帳を貰って初めて書いた言葉ですから…それにらんこさんが気付かせてくれた大事な言葉ですから忘れる筈がありません」
「……そ、そう」
それを聞いてらんこはソラから視線を晒して壁の方に向く。
「あれ、らんこさんどうされましたか?」
「な、なんでも無いわよ…!」
突然視線を逸らしたことを不思議に思いソラは恐る恐る聞くが彼女はなんでも無いと誤魔化す。
「でも、顔が赤いですよ…まさか、スカイランドの環境に慣れなくて体調を崩したんですか!?」
「…五月蝿い!はっ倒すわよ‼︎」
「ええええっ!?な、なんでぇーっ!?」
久しぶりに逆ギレして掴みかかってくるらんこにソラは困惑の表情を浮かべる。
「あはは、らんこちゃんとソラちゃんのそのやり取りは久しぶりに見たよ」
「プフッ!…ふ、2人とも…王様達の御前ですよ」
ましろは久しぶりのやり取りに笑い、ツバサも笑いつつ2人を注意する。
「いや、構わない。面白いものを見させて貰った……やはり青春は素晴らしい…そうだろう?」
「ふふっ、そうですね」
「え〜る〜」
王と王妃も彼女達のやり取りを見て笑みを浮かべエルも笑顔になっている。そんな様子にツバサはお咎め無しなら大丈夫なのかと考える。
「ヒーロー……か」
『ん?』
そんな時、後ろから声が聞こえた事にらんこ達は振り返ると其処には青を基調とした軍服とマントを身に纏い、腰に剣を携えた薄紫色の髪をハーフアップにした女性が部屋の中に入ってきた。
途中その女性は意味深にソラとの目を合わせ対してソラは女性と目が合った事に放心状態になる。
「プリンセス、よくぞご無事で」
「おお、戻ってくれたか」
「都を留守にしていた間とはいえ、プリンセスをお守りできず」
「いいえ、辺境の地の大火災。はるばる……」
女性は王達の前に跪くとエルの無事な姿を見て心から喜ぶと同時に助けられなかった事を謝罪する。
「あの人は誰なんだろう……?」
一方でましろは突然部屋に入ってきた女性の存在に驚きつつも王達に跪いている様子からこの城の関係者と分かるが、先程からソラだけでなくツバサまでもが放心状態になっている事に何者なのか気になっていると、らんこが話しかける。
「ましろ、きっとあの人はこの国の騎士団の団長に違い無いわ」
「え、どうしてわかるの?」
目の前の女性が騎士団の団長と推測するらんこにどうして分かるのかとましろは問いを投げる。
「なにって…あの佇まい、見た感じ若いのに貫禄を感じさせる。そしてマントに剣よ……異世界系アニメである女騎士団長に違いないわ」
「アニメって……え、それだけで騎士団長ってわかるの?」
話を聞く限りアニメの知識を基準にしている為、決めつけるのは早計なのではとましろは思うがらんこの自信に満ち溢れた顔を見て否定しづらかった。
「それだけじゃ無いわ…此処は人払いをされているにも関わらず堂々と入って来れたり、さっきあの人がここまで歩くまでの歩幅とエル達との距離感に今の姿勢、どれも物凄い経験を積まないと出来ないわ」
「らんこちゃん…凄い観察眼だね」
言っている事は凄いが何故そんなに詳しいのか疑問だった。そんな中漸く我に返ったツバサが彼女達に話しかける。
「流石らんこさん……正解です!」
「え、正解なの!?」
らんこの言っている事が正しい事にましろは驚きの声を上げる。
「あの人はシャララ隊長。スカイランドを守るヒーローチーム、青の護衛隊。シャララ隊長はそのリーダー。世界で一番強い剣士なんです!」
「成る程、つまり私達の世界で言う所のうららとまこぴーって事ね」
「た、多分違うと思うよ」
自分達の世界のアイドル達を引き合いに出すらんこにましろは苦笑いを浮かべる。
そんな中先程から放心していたソラがシャララを後ろから身体を抱き締める。
「「そ、ソラちゃん(さん)?」」
「ちょ、ソラ何やってんのよ!?」
突然のソラの行動にましろとツバサは困惑し、らんこは彼女を慌てて注意する。対して突然抱き付かれたにも関わらずシャララは動揺する事なく口を開く。
「大きくなったな、ソラ」
「はい!」
「あれから10年になるのか…」
「はい!」
「「「?」」」
ソラとシャララの親しげなやり取りを見てらんこ達は首を傾げる。
「ソラちゃんとあのシャララ隊長って…どういう関係なんだろう?」
「見た所、知り合いの様ですが……」
ましろとツバサは2人の関係性について考えていると隣に立つらんこがじーっとソラを見つめていると、
「……はっ!?わかったわ!きっとあのシャララって人はソラのお姉さんかもしれないわ!」
「「ええっ!?」」
らんこの推測を聞いてましろとツバサは驚くも少し納得出来る所がある。ソラは昔からヒーローを目指す一方で既に世間からヒーローと呼ばれているシャララなら姉妹関係だとしても不思議ではなかった。
「私が…ソラの姉?」
「ちょ、らんこさん何を言っているんですか!?」
だが、らんこの声が聞こえていたのかシャララはキョトンとした顔をしソラは顔を赤くしながら慌てて否定する。
「え、何その反応…もしかしてお姉さんでは無くお母さんだったの!?」
「違いますよーッ!!!…って、シャララ隊長?」
ソラがらんこの言葉を強く否定する一方でシャララは突然ソラの頭に手を乗せる。
「私がソラの姉か……私は一人っ子だがこうやって妹がいたらこんな感じなんだろうな……うん、悪く無いな」
「シャ、シャララ隊長も皆さんが見ているのに頭を撫でるのはやめてくださーい!!!」
ソラは顔を赤くしながら自分の頭を撫で回すシャララにやめる様に訴える。
「…あれ、私なんかやっちゃった?」
「「あ、あははは……」」
一方でらんこは何か自分はとんでもない過ちを犯したのではと思い、ましろ達に視線を向けると2人は笑って誤魔化し、王達も目の前のやり取りを見て思わず笑ってしまうのであった。
────────
それからというものの、話を終えた一行はエルを王と王妃に預けた後にシャララと共に城の中庭へ来ていた。
「珍しくらんこさんの勘が外れるとは…」
「だ、だってソラが公共の場にも関わらず背後から抱きつくのがいけないのよ…」
「ええっ!?私の所為なんですか!?」
「あったり前でしょ!あんた身内ならまだ納得出来たけど10年前一度会っただけでそんな親しげに抱き着いたら勘違いもするわっ!」
間違えた事を自分の所為にされた事にソラはショックするのに対してらんこは青筋を立てながらソラの先程の場をわきまえない行動に怒りを露わにする。
「私なんて……一度もうららやまこぴーと会話どころか対面すらしてないのにぃ……チクショウッ!!!羨ましく無いんだからッ!!!」
「な、なんか…ごめんなさい」
よくわからないがソラは情緒が不安定ならんこに謝罪する。
「ふっ…ソラは中々面白い友達を持ったな」
「面白いって…」
「ま、まぁ、悪く無い印象だと思うよ」
一見すれば喧嘩している様に思える2人のやり取りにシャララは笑みを浮かべ、それを見たましろとツバサは苦笑いを浮かべている。
「オオーンッ!!!」
『っ!?』
突然何か鳥の鳴き声が上から響くと何かが降りてきてシャララの前に着地する。
「暫く留守にして悪かったな」
「オンッ」
一同の前に現れたのは元の世界ではお目にかからない人間の身長を簡単に越してしまう巨大な鷲だった。そんな鷲に対してシャララは親しげに首を撫で、鷲も気持ち良さそうに返事をする。
「でっかっ!?何アレ!?」
「きょ、巨大な鷲がいるよ!」
先ず元の世界ではお目にかかれない巨大な鷲の存在感にらんことましろは圧倒される。
「凄い‼︎シャララ隊長のワシオーンです‼︎」
「間近で見ると大迫力ですね‼︎」
対してソラとツバサは巨大な鷲…ワシオーンに目を輝かせるとソラがシャララに話しかける。
「あの、近くで見て良いですか?」
「そ、ソラちゃんやめておいた方が良いよ…!」
「その通りよ。その子は猛禽類だから下手に近づくと怪我するわよ」
まだ小さい鳥なら良いが目の前にいるのは自分達の身長を一回りや二回り上回る為、鋭い嘴と爪で襲いかかってくるかもしれない。
「心配ないぞ。ワシオーンは決して人間を襲わない。下手に驚かせやしなければ襲い掛かる事は無いぞ」
「そんな事言われてもやっぱりこw「ましろさん大丈夫ですよ」…って、早っ!?」
シャララから言われてもいまいち納得は出来ずましろは不安を募らせているといつのまにかソラとツバサがワシオーンに近づいて胴体を撫でており、特に2人に襲い掛かる事はなく穏やかであった。
「わ、私もやろうかな…」
「待ちなさい。ましろはまだ怖いんでしょ?なら、先に私が触るわ」
ましろが少し怖がりながらも触りに行こうとするが先にらんこが触ろうと言うのだ。
「だ、大丈夫?」
「大丈夫よ、私は動物をに近づく方法は分かっているから」
ましろの心配に対してらんこは自信あり気に答えるとワシオーンに近づく。
「動物は人の気持ちに反応しやすいから怖く無いことを示せばあっちも安心してくれるものなのよ」
そしてゆっくりとらんこがワシオーンの胴体に触れようとした時だ。
「オオオーンッ!!!」
「「うわっ!?」」
「どうしたワシオーン!?」
「急にどうしたの!?」
「わ、私はなにもしていないわよ!?」
突然ワシオーンが暴れた事により、2人は驚きひっくり返る。様子を見ていたシャララも突然豹変したワシオーンに驚き、ましろとらんこも驚く。
「オオオーッ!!!」
「え、きゃあっ!?」
「「「ら、らんこちゃん(さん)!?」」」
直ぐ側にいたらんこにその鋭い爪で襲い掛かるもらんこは地面に倒れる形で回避する。しかし、ワシボーンは再び襲い掛かってくる。らんこは慌てて立ち上がって逃げようとするが、体が動かない。
(やだっ、腰が抜けて動けなっ…!)
「オオーンッ!!!」
「い、いやあっ‼︎」
先程の襲われた恐怖により腰が抜けその場から動けなかったのだ。らんこは迫り来る鋭利な爪に身体を引き裂かれそうになった時だ。
「止まれワシオーン!!!」
「オンッ!?」
らんこを守る様に彼女とワシオーンの間にシャララが立ち、ワシオーンは主人であるシャララの存在に気付き動きを止め数歩下がると跪く。
そしてシャララはらんこの方に振り返るとしゃがんで彼女に手を差し出す。
「大丈夫か、怪我は無いか?」
「だ、大丈夫……です」
怪我は無いと返事を返すとらんこはシャララの手を握って立ち上がると、ソラ達が彼女の元へ駆け寄る。
「らんこさん大丈夫ですか!?」
「らんこちゃん怪我してない!?」
「さっき地面に倒れた際直ぐに立ち上がれませんでしたが…何処か強く打ち付けましたか!?」
「だ、大丈夫よ…驚いて腰が抜けただけだから何処も怪我はしていないわ」
自分を心配するソラ達に怪我をしていない事をアピールするらんこ。だが、久しぶりに身の危険を感じて肩が少し震えている。
「すまない。私の相棒が危うく君に大怪我をさせる所だった」
「き、気にしないで下さい…きっと私の髪の毛が緑だったから虫に見えたんだと思い…ます」
ワシオーンは虫と勘違いして襲いかかったのだろうとらんこは推測する。
「いや、可笑しい。ワシオーンはこう見えても普段大人しい。それに髪が緑色で襲われるという線は低いだろう。青の護衛隊には君と同じ様に緑の髪をした隊員もいるが特に襲う事は無かったぞ」
「え、それじゃあなんでらんこちゃんを襲ったんですか?」
髪の色が襲われた原因じゃ無いとすれば一体なんだろうと一同は考える。そんな時ツバサは何かを思い出す。
「あっ!らんこさんもしかしてアレの所為じゃないですか?」
「……あれ?」
ツバサが何か心当たりがある様だがらんこはピンとこず首を傾げる。
「ほら、おみくじの中に書かれていたじゃ無いですか。旅行すると不幸な目に遭うでしょうって」
「え……これフォーチュンクッキーの所為なの!?」
思い返して見るとらんこのおみくじの中には動物に蹴られると書いてあったのだ。最初は馬とかの動物に蹴られるばかり想像していた。
スカイランドにやってきた時には馬が周りに存在しない為、安心していたが不意を突かれる形となり、未遂に済んだが実際に蹴られたのだ。
(そういえば……今思い返すと私こっちにやってきて早々王様の腰を怪我させてる!?)
そうなると残りのおみくじに書かれていた内容がこの先実現するかも知らないと考えるとあのおみくじは大凶よりもタチが悪く思った。
『せ、せやけど逆に凄いやん!』
『今が一番悪いんだからこれから良くなるって事だよ!』
『そ、そうだよね…きっとこれから楽しい事ばっかりだよね!?』
誰だコイツら!?
「ふぅ……(兎に角落ち着きなさい風波らんこ。その通りよ、きっとこれから良くなるに違いないわ)」
今回は珍しく3人分の声が聞こえて最後の声は何か親近感を覚えるも、深呼吸をして己をクールダウンさせる。脳内から聞こえてきた謎の声についてはフォローとして受け取る事にした。
「ら、らんこちゃん大丈夫?」
「当然よ…たかが図体がデカい鷲よ。べ、別に怖くもなんとも無いんだからぁ〜…!」
──嘘である。
今でもワシオーンに襲われた恐怖は彼女の身体の中に存在しており身体と声は震えており涙目になっていた。そんな彼女はみんなを心配させない様になんとも無いことをアピールするが、それが強がりである事は直ぐに全員にバレる。
「……と、兎に角、王様からお部屋を手配して貰ったから今日はもう休もうか」
「そ、そうですよ。城のベットは寝心地が良いですかららんこさんもきっとぐっすり眠れますよ」
「と、という訳でシャララ隊長私たちは今日はこの辺で失礼させて貰います!」
「ああ、らんこも済まなかった。後日改めてお詫びをさせて欲しい」
これ以上はらんこのメンタルが持たないと察したソラ達はシャララに挨拶するとらんこを連れて中庭から去って行く。
そして、1人残されたシャララは先程のワシオーンの行動について考えた。
「しかしどう言う事だ……あの子は王様の話ではソラと同じプリキュアの筈だ。伝説の戦士と呼ばれる彼女に何故ワシオーンが襲いかかったんだ?」
たかが一枚のおみくじの所為でらんこが大怪我しそうになった事がどうも腑に落ちないシャララは背後にいるワシオーンに視線を向ける。
「オーン…」
「…怯えているのか?」
そこには何故か怯えているワシオーン。これにシャララは不思議に思った。そして、ワシオーンの視線は城の中へ入っていくらんこに向けている事に気が付いた。
「……ワシオーンはあの子の中に何かを感じたのか?」
動物というのは人間よりも異変などに敏感で地震などが起きる時に動物は吠えたり、異常行動を見せたりする。そう考えると今回のワシオーンの行動は何か異変を察したのかもしれない。
(風波らんこ……彼女自身知らない何かが彼女の身体の中にあるのか?)
シャララはそんな疑問が浮かぶもそれが一体なんなのか現状分からず、取り敢えず一旦護衛隊の兵舎に向かおうとワシオーンの背中に乗って中庭から飛び立っていくのだった。