ひろプリに野良猫系キャラを入れてみた   作:獅子河馬ブウ

45 / 138
文字数が一万字を超えているのに何故か物語があまり進んでいません。
そういうわけで本編をどうぞ。


第45話 褒美と偏見

スカイランドにやって来て翌日、らんことましろとツバサは城下町にある食堂に来て食事をしていた。

 

「ふーん…こっちの世界の料理も悪く無いわね」

 

「そうだね。所でらんこちゃん…その、昨日の件は大丈夫?」

 

食事の途中ましろは恐る恐るらんこに尋ねる。昨日ワシオーンに襲われた後、らんこは夕食を摂らず1人先に寝ていたが夕食を終えたましろ達は様子を見に行った際に彼女が魘されていた事があってましろは心配していた。

 

「ええ……まぁ、まだ少し昨日の事が頭の中を過るけどその内忘れると思うから大丈夫よ」

 

らんこは今の所大した事ないと返事をするが偶にスプーンを持つ手が震える事から恐怖が残っていると思われる。

 

(やっぱり、まだ怖いんだ……)

 

それもその筈。ワシオーンを触れようとした時に突然豹変して襲いかかってきて、一度は何とか躱せたが二度目はシャララの助けが無ければ鋭い爪で身体を引き裂かれたかもしれないのだ。想像すると自分でもゾッとする。

 

(あの時、私が先に触っていれば……らんこちゃんが怖い目に遭わずに済んだのかな……)

 

自分達の身長を軽く越してしまう大きさと猛禽類の特徴的な鋭い目を持つワシオーンに恐怖を感じてらんこに順番を譲ったましろだったが、もしも自身が触れればあんな目に合わずに済んだのではと考えてしまう。

 

「ましろ、あんた手が止まっているわよ」

 

「え…あっ、ごめんね」

 

らんこに指摘されたましろは慌てて料理を食べ始める。その様子を見てらんこは不思議に思いつつも自身も残りの料理を口に運ぼうとしたが、手を止めて視線を横に向ける。

 

「それでツバサ…あんたいつまでそんな顔ををしているの?」

 

らんこはチラッと横にいるツバサに視線を向ける。すると何やら嬉しいことがあったのかニヤニヤした顔を浮かべていた。

 

「そうだよツバサ君、早く食べないとご飯が冷めちゃうよ」

 

「あ、すいません…」

 

ましろに指摘されると漸く料理を口に運ぶが咀嚼している途中もニヤニヤと顔を浮かべている事にらんこは引き気味ではあるものの、気になって話しかける。

 

「なんか今朝からそんな顔だけど……良いことでもあったの?」

 

「ふっふ〜ん、聞きたいですか?」

 

ニヤついた顔を浮かべて聞いてくるツバサにらんこはイラッとくる。

 

「いや……なんか腹立つからやっぱり良いわ」

 

「いや、そこは聞いて下さいよ!」

 

ツバサの態度が気に入らなかったのでらんこは聞くのをやめて食事に戻るが、あまりにもしつこい為仕方なく聞くことにした。

 

「実はこの度王様に褒美として正式にプリンセスのナイトになりました!」

 

「へぇ、それはおめでと……ん、褒美?」

 

ツバサの自慢話を聞き流そうとしたらんこだったが、会話の中にあった褒美という言葉に反応する。

 

「ましろ、褒美ってなんの話?」

 

「あ、そういえばらんこちゃんは聞かされていなかったよね」

 

「いや、知らないわよ……と言うかまた私ハブられているの?」

 

実はこの場にいないソラを含めてましろとツバサは王よりエルを無事に連れ戻してくれた事と世話をしてくれた礼としてできる事なら何でもすると言う事でツバサは今回エルのナイト(王公認)になったそうだ。

因みにその時らんこはワシオーンに襲われた恐怖により寝込んでいた為、聞かされていない。

 

「という事はここにいないソラもなんか関係あったりするの?」

 

「うん、まだらんこちゃんには伝えて無かったけどソラちゃんは王様からの褒美として青の護衛隊に入隊したんだよ」

 

「え、青の護衛隊ってシャララさんが率いているって言っていた騎士団の事でしょ?つまりソラは…公務員に就職したって事!?」

 

「う、うん…(公務員って……)」

 

言っている意味は同じなのに言葉を少し変えるとなんかダサくなるとましろは思った。

 

「あのソラが就職ね……同年代の私達からすれば立派なものね」

 

同じ年齢のらんこやましろはゆとり世代よりも後に生まれた事もあってかこの年で就職するなんて考えた事はなく、精々バイトをやるかやらないか位だ。

 

(なんだか…暫く会えそうに無いわね)

 

青の護衛隊は話を聞く限り各地の災害や困っている人を助ける仕事をしている為、自分達と会える機会が更に減ると思い少し寂しい気持ちになる。

 

「な、なんだからんこさん…僕の時とリアクションに差がありませんか?」

 

「気の所為よ…それであんたも公務員に就任したんでしょ、おめでとう」

 

「あの…ナイトを公務員呼ばわりしないで貰えますか?まぁ、良いです。とにかく王様僕にこう言ってくれました。"これからもプリンセスの側にいても良い!騎士(ナイト)として!"っと」

 

王様からエルのナイトに就任されて興奮気味となり、無駄にクオリティが高い声真似を見せる。対してらんこはそんなツバサを子供を見る様な眼差しを向ける。

 

「どうですからんこさん?とうとう自称では無く正式にナイトとして認められました。しかも王様公認で!」

 

「靴屋の時の事をまだ気にしていたの?」

 

どうやら靴屋にてらんこから"自称ナイト"や"なんちゃってナイト"と言われた事を根に持っていたそうでエルのナイト(本当?)の称号を得たツバサは優越感に浸っていた。

 

「あれ、でも王様から言われたのは子守役じゃ無かった?」

 

「へ?」

 

「は?」

 

ましろの指摘にツバサは思わず固まり、らんこは目を細くしてツバサを見つめる。

 

「あんた…記憶を捏造しているじゃない」

 

ナイトと言い張っていた事が嘘だと分かるとらんこはツバサに呆れた視線を送る。

 

「ど、どれも同じですよ!プリンセスのお側でお世話する!そこに違いはありません!」

 

「いや、違うでしょ!」

 

ナイトと子守役を強引に同一の役職と言い張るツバサに思わずらんこは声を荒げる。

 

「ふ、2人とも他の人もいるから静かにね」

 

ましろに注意された2人は店内にいる客や従業員の視線が自分達に集まっていることに気付き、バツ悪そうな顔を浮かべると席を座り直す。

 

「そういえばましろは何か褒美とか貰ったの?」

 

「ううん、特にこれと言って欲しい物がなかったから私は貰ってないよ」

 

どうやらましろは褒美を貰うのを辞退したらしい。

 

「無欲ねましろ。折角の王様のご厚意だったから何か貰っとけば良かったのに」

 

「まぁ、私はエルちゃんがお家に帰れたんだからそれだけで十分だよ。そうだ、らんこちゃんは何かある?」

 

「私?」

 

ましろは特に欲しい物は無いが、その時いなかったらんこに何か欲しい物は無いか聞かれる。対してらんこは腕を組んで考えだす。

 

「……いや、私は保留よ。だってこの世界の事をよく知らないのに安易に願い事を言って後悔したら嫌だから……先ずはこの世界の事をよく知ってから褒美を貰おうかしら……まぁ、今の所特に欲しい物なんて無いけど」

 

「そ、それだと僕が図々しく聞こえますよ」

 

目の前の2人が特に褒美は要らないという姿勢に真っ先に褒美を貰ったツバサはとても気不味い気持ちを抱いた。

 

「そんな事言われても現状特に貰いたい物なんて無いんだから……あ、前言撤回やっぱりあったわ」

 

「「え、あるの(んですか)?」」

 

先程要らないと言ったそばに欲しい物があると唐突に発言するらんこにましろとツバサは反応してしまう。

 

「ここの食堂はデザートが置いていないから褒美にスカイランド1のスイーツでも貰おうかしら」

 

「いや、褒美がスイーツって!?」

 

「ら、らんこちゃん。王様からどんな褒美を貰うかはらんこちゃんの自由だけど、せめてもう少し考えた方がいいよ」

 

「そうは言っても今本当にスイーツが食べたいのよ」

 

変に欲をかくよりもそしてツバサは先程己の事を図々しいと思ったが、らんこに至っては自分とは別のベクトルで図々しい…いや、卑しさを感じるもある事を思い出す。

 

「あ、そうだ。スイーツなら僕が此処にくる前に買ってきましたよ」

 

「なに、アップルパイでも買ってきたの?」

 

「いえ、ですけどらんこさんが気に入ると思いますよ」

 

そう言うとツバサは箱をテーブルの上に乗せると蓋を外す、其処には油で揚げたのか香ばしい香りと色をした丸いお菓子が幾つも入っていた。だが、そのお菓子を見たらんことましろは既視感を覚える。

 

「…なんか見覚えある形をしているわね」

 

「うん、と言うかこれって…ボールドーナツじゃ?」

 

箱の中身が自分達の世界でも馴染みなお菓子である事にましろは指摘する。

 

「いいえ、これはスカイランドで人気なお菓子ドールボーナツですよ」

 

「どーなぼーる…?」

 

「ドールボーナツです」

 

ややこしい名称にましろは思わず頭を悩ましてしまう。

 

「ヤーキターイと同じパターンね。一部文字が入れ替わっているのよ」

 

「あ、なるほど」

 

以前にツバサの歓迎パーティーで出したヤーキターイの様に見た目と名前が似ている事を思い出すと納得する。

 

「ささ、らんこさんお一つどうぞ」

 

「ありがとう、じゃあ一つ貰うわ」

 

らんこはそう言うと箱から一つボーナツを取り出すと口の中でに入れて味わっていく。

 

「うーん…外はザクザク中はふんわりして甘い香りが鼻腔を通ってそれから……ん?」

 

「らんこちゃん?」

 

ドールボーナツを堪能していたらんこは途中何故か表情が固まり、そんな彼女を見てましろは首を傾げる。

 

「どうですからんこさん、ドールボーナツのお味は?」

 

一方でらんこの異変に気付かないツバサは彼女に味の感想を求める。するとらんこは口に入れたボーナツを咀嚼して飲み込むとゆっくりと口を開く。

 

「……まっっっずっ!!!!」 

 

また、らんこの叫びと同時にまた脳内に声が聞こえてきた。

 

『ブンドル、ブンドルー!』

 

誰よこんな時に!? 

 

しかもそれは前においしーなタウンで会ったあまねの声とそっくりだったために余計に彼女の脳を混乱させる。

 

「え?」

 

「当然です!なにしろドールボーナツはとっても不味いですから……え?」

 

途中まで美味しそうに食べていたらんこが飲み込んだ後放った台詞にましろは固まり、ツバサも予想した台詞とは全く反対な事を吐いたらんこに困惑する。

 

「あんた…私になんか恨みでもあるの?こんな不味いドーナツ擬きを食べさせておいて…!」

 

スカイランドにやって来たから不幸続きな彼女は現状食事が楽しみである為、不味い物を食べさせたツバサにマジギレしている。更に言えば先程らんこにつられて言ってしまった言葉に彼女からは悪意を持ってやったと思われている。

 

「ご、誤解です!僕はらんこさんに美味しいものを食べて笑顔になろうと思って…!」

 

「こんなの食べて笑顔になる訳ないでしょっ!!!」

 

その時、らんこが怒りに身を任せてテーブルに拳を叩きつけると、テーブルは大きな音と共にバラバラに砕け散る。

 

「ええええっ!?て、テーブルを壊しちゃったよ!?」

 

「そ、そんな馬鹿な!?」

 

ましろとツバサは目の前でらんこがプリキュアに変身していないにも関わらずテーブルをワンパンで粉々にした事に驚きを隠せないでいた。

一方でらんこは己の行動に気付かずツバサに詰め寄る。

 

「何が馬鹿なよ!?あんたも食べてみなさいよ!!!」

 

「い、いや、ボーナツの話j「つべこべ言わず食べなさい!!!」むぎゅ!?」

 

「つ、ツバサ君!?」

 

怒りで我を忘れるらんこはツバサに有無を言わず無理矢理ドールボーナツを口に詰め込む。ましろは彼女がそんな奇行を目の当たりにしてと声を出し表情を歪める。

一方で無理矢理口にボーナツを入れられたツバサは咀嚼して飲み込むと、両手を床につける。

 

「た、たった一年スカイランドを留守したら味が落ちているなんて……!」

 

「全く、折角の食事を楽しんでいたのに不味い物を食べて気分が……ん、不味い……飯マズ!?」

 

ツバサがショックを受けている一方でらんこは何かを思い出す。昨日のワシオーンに蹴られた時の様に自身今起きている事がおみくじに書かれていたのだ。

 

「め、飯マズって……これのこと…!?」

 

てっきり自分の料理の腕が不味くなるという事だと思っていたらんこはまさか店で売られている物が不味いと予想していなかった為、また不意打ちをくらった感じでショックを受ける。

 

「うう、最悪…」

 

「らんこちゃん…気分が悪い時に話しかけるのもアレなんだけどテーブルを見て」

 

「へ、テーブルがどうかし…ってええっ!?」

 

らんこはましろに話しかけられると漸く自身の手によってバラバラになったテーブルの存在を認識する。

 

「なんでテーブルがバラバラになっているのよ!?なにがあったのよ!?」

 

((え、気づいていない!?))

 

先程文字通りらんこ自身の手によってテーブルが粉砕される所を目撃した2人は彼女の発言に耳を疑う。同時に周りでましろ達と同様にらんこの行動を目撃していた客や店の従業員もらんこの発言に戦慄する。

 

「あ、あのさ、らんこちゃん…実はさっきらんこちゃんがツバサ君に怒っていた時にどさくさに紛れてテーブルを殴って壊したんだけど」

 

「え?……いや、私身体能力はそれなりに良いけど幾ら何でも素手でテーブルを壊せる訳無いわよ」

 

「「え?」」

 

らんこの発言2人は声を上げる。彼女は先程テーブルを目の前で壊したというのに本人は自分はやっていないと言い張る。その様子からして怒って周りが見えなくなっていた様だ。

 

(もしかして、これが火事場の馬鹿力ってことなのかな?)

 

人間必死になっているとあり得ない力を出す事が出来ると聞いた事がある。もし、それが火事場の馬鹿力なら納得できる。しかし、それでテーブルを粉砕できるかと言われれば疑問に思わざるを得ない。

 

(でも……幾ら何でもそれでテーブルを壊せるのかな?)

 

かつてソラに関節技を決めた事に関しては火事場の馬鹿力だと思うが、らんこが先程壊したのは頑丈なテーブル。人間の力で壊すのは難しい。幾ら身体能力がそれなりにあると言ってもソラの様に普段から鍛えている訳じゃ無い為、怒りに身を任せた力で壊すなんて考えづらかった。

そんな中、ましろにらんこが話しかける。

 

「ねぇ、それよりもだけどましろ…王様から貰ったお金って幾ら残ってる?このテーブルを弁償できるほどのお金は残っているかしら?」

 

「えっ?…む、難しい…かな」

 

3人は食事代やお土産代も兼ねて王からそれなりにお金を貰っていたのだが、この食堂へ来るまでお土産を買ったり少し食べ歩き(主にらんこ)によってあまりお金は残っていなかった。王からお金を借りる…と言うより貰う事は可能かもしれないが、相手はスカイランドを収めている一国の王、それに加え昨日の件もある為頼みづらかった。一体どうすればと頭を悩ませているとらんこがある事を思いつく。

 

「あ、そうよ!こういう時こそ王様のご褒美って奴を使うべきよ」

 

「「ええっ!?」」

 

まさかのテーブルの弁償に王から褒美を使うと言う発想にましろとツバサは声を上げる。そして、そんな2人を他所にらんこは周囲を見渡す。

 

「あ、すいません。ちょっと良いですか?」

 

「は、はい!?」

 

らんこは近くに居た店員に話しかける。一方で話しかけられた従業員は物凄く怯えている。

 

「今壊したテーブルなんですけd「け、結構です‼︎どうかお気になさらずに‼︎」…え、ちょっと!?」

 

弁償について話をしようとしたが、従業員はらんこから逃げる様に去っていき、らんこは呼び止めるも従業員は既に店の奥へと入ってしまった。

 

────────

 

それからという物の3人は食事代を払った後、食堂から出てきた。

 

「……なんだか悪い事をしたわね。虫に食われてたとはいえテーブルを壊したのはこっちなのに弁償しなくて良いって」

 

らんこは店のテーブルを壊したというのに弁償もせず何もお咎めなしにイマイチ納得出来ていなかった。

その後ろでは小声でましろとツバサが話をしていた。

 

「ね、ねぇ、ツバサ君…あのテーブルって本当に虫とかが食べていたのかな?」

 

「……見た所、虫食いされていた痕跡はありませんでした」

 

らんこが店員に話しかけている間はテーブルを確認したが何処にも虫に喰われた痕跡や年季が入って劣化してもいなかったのだ。そうなるとらんこ1人の力でテーブル壊した事になるのだ。

 

「でも、見た感じらんこちゃんは自分の力だけでやったなんて自覚してなさそうだよね」

 

「そうですよね」

 

普段の彼女を知るましろ達はらんこが変身もせずにあんな力を持っているなんて聞いた事ない。ましてや本人が今まで隠していた様子は無い。

それなら一体どうしてと思っているとらんこがツバサに視線を向ける。

 

「あ、そうだ。ツバサちょっと良いかしら?」

 

「な、なんですか!?」

 

突然話しかけられたツバサは思わずきょどる。まさかさっきのボーナツの件をまだまだ根に持っているのではと不安になる。

 

「気晴らしにあんたの街に案内してよ」

 

「え、僕の街…って事はプニバード族の村に?」

 

1年間帰っていない自分の故郷に突然案内して欲しいと頼み込むらんこにツバサは一瞬目をパチクリさせる。

 

「一応聞きますが……何をされにいくんですか?」

 

「え、ちょっとモフ…じゃなくて調査を」

 

らんこは目的について聞かれた際つい本音を言いそうになるが、途中でいつもの様に調査と言って誤魔化そうとするがツバサにはばれていた。対してツバサは今回は特に指摘するつもりはなかった。

 

(まぁ、らんこさんはこっちへ来ていい事が無いから別に良いか…いや、待てよ)

 

不憫続きな彼女にツバサは村を案内しようとするが途中で止める。今のらんこは本人も自覚してない馬鹿力を有している。そんな彼女を自分の村に案内させたら両親や近所の皆んながその細い腕からは想像もできない力で締め付けられてしまう。

 

(じょ、冗談じゃない!?そんな事したら僕の家族やご近所さん…いや、プニバード族が絶滅する‼︎)

 

今のらんこは自身でも制御出来てない馬鹿力がある為、下手に同族に合わせたらミートボールにされかね無い。それだけは避けなければと思ったツバサは誤魔化そうと口を開く。

 

「じ、実は僕の村は此処よりも遠くにあって…い、行くのに2日や3日も掛かるんです」

 

「えぇ…そんなに掛かるの?それじゃあ仕方ないわね。また別の機会にするわね」

 

「はい……良かった

 

「ん?…なんか言ったかしら」

 

「い、いいえ!何も言ってません!」

 

取り敢えず何とか誤魔化す事に成功したツバサは内心胸を撫で下ろした。これで当面は家族や村のプニバード達の安全を守れると確信した。

 

「それじゃあさ、気晴らしにソラちゃんの様子を見にいこうか」

 

「そういえば今は青の護衛隊にいるのよね、場所は分かるの?」

 

「それなら昨日王様から護衛隊の本部の場所を教えてもらっているので問題ありません」

 

「そう…(また、私だけハブられている)」

 

また自分だけ聞かされていない事に寂しさを感じつつ2人に道案内をしてもらう事にした。

対してましろとツバサは今のらんこを自分達だけでは対応出来ない。心苦しいが此処は自分達の中で一番身体能力の高いソラに頼る他ならなかった。

 

(ごめんねソラちゃん。でも、今のらんこちゃんを私とツバサ君だけで対応するのは難し過ぎるよ…)

 

ましろは内心ソラに謝罪しつつ無力な自分達を恨む。一方でらんこは何か考え事をしている様で顎に手を当てながら歩いていると途中で「あれ?」と声を漏らす。

 

「ねぇ、ちょっと待って」

 

「らんこちゃん?」

 

「どうかされましたか?」

 

突然声を掛けられた2人は足を止めて彼女の方に視線を向ける。

 

「思ったんだけどソラって王様からの褒美で入隊したって言ってたけど……それってつまりコネで入った事になるんじゃ」

 

「「え?」」

 

らんこの核心に迫った発言に思わず2人は固まってしまう。

 

「いやだってそうでしょ。王様の褒美として入隊した事になったら間違いなくコネじゃん」

 

「こ、コネって…」

 

「い、言われてみれば……」

 

確かにらんこの言う通りかもしれない。ましろとツバサは先程まで入隊したソラを祝っていたが、らんこにコネだと指摘されるまでその事に気付かなかった。

 

「でも、突然なんでそんな話を?」

 

「いや、考えてみたのよ。話に聞けば青の護衛隊ってこの世界を守る実力集団なんでしょ?そんな所にコネで入った事になると1人や2人それに気に食わずソラを虐めてくる可能性があるわ」

 

「い、いや、幾らなんでもそれは無いんじゃないかなぁ…」

 

確かにコネで入隊するのは否定しない。しかし、ソラの実力を知っている自分達からすれば青の護衛隊で十分やっていけそうだと思っている。

だが、らんこは「いや」と否定の声を上げる。

 

「異世界系アニメではよくあるパターンよ。主人公が何らかの部隊やチームへ入る際に相手に喧嘩を売られるのよ」

 

「ねぇ、らんこちゃん…スカイランドにやってきてかららんこちゃんのアニメに対する信頼はなんなの?」

 

気のせいかスカイランドにやって来てから何かとアニメの知識を口に出すのが多い事に違和感を覚える。ソラシド市にいた時はそんな事を口にしなかった彼女が何故そんなにアニメの知識を語るのかわからなかった。

 

「実はソラやツバサ、スカイランドの事を知ってから私は異世界系アニメに嵌っているの」

 

「異世界系…ですか?」

 

ツバサは自分達の存在で異世界系のジャンルに嵌っていると聞いて困惑の表情を浮かべる。

 

「それでもし、異世界に行く事を考えたらある程度知識を得た方が良いと考えたのよ」

 

((でも、それフィクションじゃん…))

 

らんこはらんこなりにスカイランドへ行く準備をしていたのは分かるが、結局アニメはフィクションであると2人は内心ツッコミを入れる。

 

「兎に角よ、私の勘が正しければ今頃プライドの高い青の護衛隊の中で実力が真ん中か少し上くらいの隊員がソラの実力に難癖付けて喧嘩をふっかけていると思うわ」

 

「ず、随分具体的だね…」

 

あまりに具体的過ぎる内容にましろもどうリアクションをすれば良いかわからなかった。

 

「らんこさん……さっきから黙って聞いていれば青の護衛隊を馬鹿にし過ぎです」

 

「つ、ツバサ君?」

 

珍しく怒っているツバサを見てましろは驚きの表情を見せる。それもその筈だ。青の護衛隊はスカイランドを守るヒーローチーム…スカイランドの誰もが憧れる存在だ。もちろんツバサもファンであり、青の護衛隊をアニメの偏った知識で悪者の様に決めつけているらんこを見過ごせなかった。

 

「アニメの見過ぎですよ。青の護衛隊は完璧です。僕のいたプニバード族の村だけじゃなくスカイランド中でも評判が良いんですよ。そんなフィクションの様な事ある訳ありませんよ」

 

「そ、そうだよ。幾ら何でも偏見で物事を決めつけるのはよく無いと思うよ」

 

らんこの話はあくまでもフィクションの話だ。それを現実でもそうなると決めつけるのは良くないと2人は彼女に注意する。

 

「いや、別にアニメだけの話じゃなくて現実でもそうよ」

 

「現実って…証拠なんてあるんですか?」

 

対してらんこは2人の注意を聞いても自分の発言を否定せず突き通す姿勢にツバサは呆れた表情を浮かべつつも証拠について指摘する。

 

「……この前のキャンプ覚えているかしら?」

 

「へ、キャンプ?」

 

「それって、ソラちゃんがカバトンと決闘する為にみんなで行ったキャンプの事?」

 

突然キャンプの事を話に持ち出した彼女にましろとツバサは不思議に思う。今やっている口論にキャンプの話なんて全く関係無さそうだと考えるが、

 

「その時偶然マリちゃんがいて、なんか辛い過去を語っていたじゃない」

 

「そういえばそんな事言ってたね」

 

思い出すのはらんこの厨二病ファッション(嘘)を見たローズマリーが何やら辛い過去(トラウマ)を口にして深く後悔している姿だった。

 

「それで私気になったから翌日ソラシド市に帰る前に聞いてみたのよ」

 

「え、そんな傷口をえぐる様な真似をしたんですか!?」

 

あの元気な大人のイメージが強めなローズマリーが落ち込む位の辛い過去だ。それを追求するらんこに思わずツバサは引いてしまう。

 

「いや、だって気になるし…それに私だけ聞くのも不公平だから私の虐められた時の事を先に話したわ」

 

「「ええっ!?」」

 

まさかの話を聞く為にらんこ自身あまり人には話したく無い虐められた過去について明かした事に2人は衝撃を受ける。

 

「ら、らんこちゃん自分から話して辛く無かったの!?」

 

「そ、そうですよ…幾ら知り合いだからって自分の辛い過去を易々と話すのは…」

 

自分の過去について明かすのはとても辛い事だ。しかも、らんこの場合はそれが小学生で起きた出来事、お陰で精神が不安定になって彼女の人格も歪んでしまったのだ。そんな辛い過去を話した事にましろ達は心配そうに顔を浮かべた。

 

「確かに昔は辛かったわ……でも今はあなた達が私の心の支えになっているから大丈夫よ」

 

「「らんこちゃん(さん)」」

 

らんこの話を聞いて2人は照れ臭そうな表情を浮かべる。

 

「それで話を戻すけど、私の過去について話したらマリちゃん泣きながら私を抱きしめて頭を撫でてくれたわ」

 

((そりゃそうなるよ…))

 

ローズマリーの人間性として自身の虐められた過去について明かしたら大人としてそうせざる負えないだろう。

 

「その後マリちゃんから話を聞いたのよ。かつて修行仲間のフェンネルって人についてなんだけど……」

 

「フェンネル…確か再会した時にその様な人の名前を言っていましたね」

 

ツバサはローズマリーは落ち込みながら"フェンネル"なる人物を語っていた事を思い出す。

 

「それでその人はマリちゃん達の住む世界…クッキングダムのクックファイターの近衛隊長って役職についていたのよ」

 

「こ、近衛隊長!?」

 

らんこの口から出るフェンネルという人物の役職を聞いてツバサは衝撃を受けた顔を見せる。

 

「えっと…つまり隊長だから偉いって事…だよね?」

 

「偉いって物じゃありませんよ!スカイランドで言う所青の護衛隊、謂わばシャララ隊長と同じ役職ですよ!」

 

「そ、そうなの!?」

 

ツバサの説明を聞いてシャララと同等の役職という事にましろも驚いた顔を見せる。

 

「それで話の続きなんだけど、どうやらその人は同時にらん達が以前戦っていたブンドル団って言うレシピッピを独占しようとしていたボスでもあったのよ」

 

「「え……えええええええっ!?」」

 

まさかの身内が敵の組織のボスという衝撃過ぎる事実に2人は今まで聞いた話の中で一番のリアクションを見せる。

 

「ど、どうしてそのフェンネルって人はそんな事をしたんですか!?」

 

クッキングダムで近衛隊長という偉い役職についているにも関わらずデリシャスパーティ♡プリキュアと戦っていた理由についてツバサは問い詰めようとするが、

 

「私もそこら辺は気になっていたんだけど、なんだかその事を言おうとしたマリちゃんがあまりにも辛そうだったからそれ以上は聞かない事にしたのよ」

 

「そ、そうなんだ…」

 

ましろとツバサはフェンネルが悪事に染めていた理由について物凄く気になるが、ローズマリーが辛そうならそれ以上は聞かななかったらんこの話に納得する。彼も大人とはいえ本当の兄弟みたいな存在が悪事をしてしまった理由を人に語るのも酷である。

 

「まぁ、そう言う事だから組織って一筋縄では出来ないって事よ」

 

「らんこちゃん…も、もしかして、あのシャララ隊長がアンダーグ帝国の一員って考えているの?」

 

昨日初めてあったシャララがまさか自分達がこれまで戦っていたカバトンやキメラングの仲間なのかと推測するが、

 

「いや、幾ら何でもそれは無いと思うわ…見た感じあのソラがヒーローを目指すきっかけとなった憧れの人よ。それに私が襲われそうになった時危険を顧みず助けてくれたからそうじゃ無いと思うわ」

 

らんこはソラの様に昨日大怪我をしそうになった所を助けられた為、アンダーグ帝国の関係者とは思えなかった。

 

「まぁ、私が言いたいのはそこまでじゃ無いにしても何人かは邪な考えをするのもいるかもしれないって事よ」

 

「そ、それでも…僕は青の護衛隊を信じています!」

 

らんこの話を聞いてツバサは一瞬精神が揺らぐも主張を貫き通す姿勢を見せる。それから3人は青の護衛隊本部へ歩き始めるがましろとツバサはフェンネルという人物が近衛隊長という役職に就いているにも関わらず悪の組織の親玉を勤めていた理由について気になっており喉に小骨が刺さるような思いをしていた。

 

────────

 

そして本部に到着した3人は中に入り、訓練所辺りから何やら騒がしい声が聞こえ様子を見に行くと。

 

「「はああああっ」」

 

そこにはソラと彼女に向かって敵意剥き出しの顔を浮かべて戦っている隊員服を身に纏った赤髪の少女の姿がいた。

 

「らんこちゃんの言った通りになっている!?」

 

「そ、そんな馬鹿なぁっ!?」

 

「だから言ったでしょ?こう言うのは異世界ではあるあるなのよって」

 

ましろとツバサはらんこの言った通りの事が起きていることに衝撃を受けているのに対してらんこは自分の予想が当たった事に笑みを浮かべるが、数秒してソラの身が危険であると気付くと2人と同様に慌てた表情を浮かべるのであった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。