それではどうぞ。
「……ん、んぅ…此処は…?」
キメラングとの戦闘により意識を失っていたらんこは瞼を開けると、知らない天井に見覚えのない部屋が視界に入る。更には今自分が横になっている場所はベットの様だ。
「何処よ……此処…ん、何よこれ!?」
自分の今いる場所を確認しようと上半身を起こそうとするが両手首と両足首に拘束ベルトの様な物で今横になっているベットに固定されていた。らんこはそれを見て思わずパニックになり、力づくで外そうとするもビクともしない。
「ど、どうなっているn「おやぁ、もうお目覚めかい?」っ!その声は!」
聞き覚えのある声がらんこに話しかけてきて、彼女は声が聞こえた方向に顔を向けるとそこにはキメラングが壁に寄りかかった状態でニヤニヤと笑みを浮かべてらんこを眺めていた。
「あ、あんた…どうして此処に!?」
「どうしてって…君を捕まえて私のラボへ連れて帰ったに決まっているだろう」
「なっ!?」
キメラングの言葉にらんこは衝撃を受ける。だが、段々と自身の直前の記憶が蘇る。キメラングに攻撃を仕掛けるも逆に致命傷の傷を負わされて気絶してしまったのだ。その間に自身は攫われてしまい今に至るのだと嫌でも理解する。
「さて…待ちに待ったキュアツイスターの身体…細部まで調べさせてもらうよ」
そう言ってキメラングはメスを取り出すとゆっくりとらんこへ近づく。
「い、いや…こっち来ないで‼︎」
迫り来るキメラングに恐怖のあまり涙を出しながらも必死で拘束から抜け出そうとガチャガチャと音を立てるが、外れる気配が全く無く。そして遂にはらんこの側まで来るとキメラングはニヤリと笑みを浮かべると持っていたメスを振り上げるとそれを一気に彼女の腹部に深々と突き刺した。
──────────
「──い、嫌ああああああああっ!!!!」
らんこは大声を上げながらベットから起きると、先程まで自分がいた部屋では無い事とキメラングがいない事に気がつく。
「はぁ、はぁ……さ、さっきのは夢?…て言うか…包帯?」
息を荒くしながらも自身の腹部を確認するが特に刺された痕跡は無く、それどころか全身の至る所に包帯や湿布などが貼られている。どうやら誰かが自分を助けてくれて怪我の治療までしてくれたらしい。助けてくれた人物にお礼を言おうと今いる部屋を見渡すが所々見覚えのある…と言うよりも見覚えしかない部屋が広がっていた。
「此処って…ましろの家よね。という事はましろ達が私を…?」
今いる場所がましろの家であると分かるとましろ達が助けてくれたのだと一瞬思ったが、彼女達は自分がソラシド市へのゲートに吹き飛ばした筈だ。そんな直ぐに戻ってきてキメラングから助けてくれたとは正直考えづらかった。
(でも、此処はましろの家に違い無い……だけど、何かしらこの違和感……前にもあった様な)
何か変な違和感とデジャヴを感じるらんこだったが、そんな時廊下の方から何やら慌しい足音が近づいてくる事に気づくと、バタンと大きな音を立てながら扉が開かれる。
「らんこさん!目が覚めましたか!?」
「さっき叫び声がしたけど何かあったの!?」
「大丈夫ですか!?」
「える!」
「大丈夫らんこちゃん!?」
すると部屋の扉が開き其処からソラとましろが入ってきて、続いてツバサとあげは達も入ってくる。
「ソラにましろ……ツバサとエルにあげは姉さん……え?」
ソラからあげはの姿を見てらんこは安堵するもあげはの隣に立つ3人を見て驚きの表情を浮かべる。
「らんこさんどうしたんだ?」
「リビングにいたら急にらんこちゃんの叫び声が聞こえたけど何があったの?」
「まさか、傷が開いたのか!?」
其処に立っていたのは以前並行世界で自分を助けてくれたアサヒとユキにひかるだったのだ。
「アサヒとユキにひかる!?どうしてあんた達が、痛っ!?」
『らんこちゃん(さん)!?』
3人の存在にらんこは身を乗り出すくらいに驚くが、その時身体に痛みが走り、床に転落してしまう。
「大丈夫らんこちゃん!?」
「やっぱり傷口が開いたのか!?」
床に落ちたらんこにユキとひかるは駆け寄り心配する。その後ろではアサヒやソラ達も心配の表情を浮かべながららんこを見つめる。
「え、ええ…大丈…夫よ。少し驚いただけだから……」
「嘘を言わないで下さい!そんな辛そうな顔を浮かべているのに痛みがない訳無いですよ!まだ身体を無闇に動かさないで下さい。治療をしてからまだ数時間しか経っていませんから」
「ソラちゃんの言う通りだよ。暫くはベットに安静していて」
「そうね…まだ、ふらつくからそうさせて貰うわ」
ソラとましろの話を聞き、らんこはベットに移動しようと立ち上がろうとすると、其処へあげはが彼女に肩に腕を回した。
「らんこちゃん肩を貸すよ」
「ありがとう。あげは姉さん」
「ふふっ、姉さんか…良いね」
「?」
らんこはあげはに違和感を感じつつ肩を借りるとベットに横になり、そして再びアサヒ達を見つめる。
「ところで…どうしてあんた達が此処に…?」
3人は並行世界の住人だ。本来ならこの世界にはいない筈なのにと思い込むと衝撃的な事実が聞こえてくる。
「どうしてって、此処は私達の世界だよらんこちゃん」
「えっ?」
「俺たちがランボーグを倒した帰り道に突然傷だらけらんこさんが現れたんだよ」
ユキの発言を聞いて思わず固まるもその後アサヒが補足を入れる様に説明すると次第に状況を理解していく。どうやららんこが気絶した後何らかの拍子で並行世界に飛ばされて偶然にもアサヒ達が気絶していた彼女を保護してこちらの世界の虹ヶ丘家へ運んでくれて治療をしてくれた様だ。
「そう言う事ね……悪いわね…久しぶりの再会に情け無い姿を見せるだけじゃなく治療までしてくれて……」
こちらの世界にやってきて早々傷の手当てをしてくれた一同に申し訳ない気持で一杯になる。
「ううん、そんな事無いよ!」
「ああ、そうだ。俺たちは友達だから助けるのは当然だろ」
「こうしてらんこさんが目を覚まして良かったよ」
「そう……ありがとう」
3人の言葉を聞いてらんこは顔を赤くし、お礼を言いつつ一同から顔を逸らす。だが、突然彼女が顔を逸らしたことに不思議に思ったアサヒが話しかける。
「あれ、らんこさん……ひょっとして照れているのか?」
「…別に…照れて無いわ」
アサヒに指摘されるもらんこは否定する。
「いやいや、照れているだろ。だってほら耳まで赤くなっていっ、ぶがっ!?」
『ええええっ!?』
「だ、だから照れていないって言ってるでしょ‼︎」
しつこく指摘してくるアサヒにらんこはつい彼の顔面目掛けて枕を叩きつけ、ユキ達は彼女の行動を見て驚きの表情を見せる。
「いっ、痛え…ら、んこさん。何もいきなり枕を叩きつける事ないだろぉ…」
「いや、さっきのはお前が悪いだろ」
アサヒのデリカシーの無さに側で様子を見ていたひかるは呆れた表情を浮かべる。
そんな中ツバサがらんこに近づく。
「あの、らんこさん…で良いんですよね?」
「ツバサ?何よ、突然改まって……いや、確かこっちのあんたとは確か初対面よね」
ぎこちない反応を見せるツバサを見てらんこは一瞬不思議に思ったが、彼とは以前こちら側に来た際にまだ会った事が無い事を思い出し納得する。
「はい、既に僕の事は知っていると思いますがツバサと言います」
「ええ……なんかややこしいけど、まぁ良いわ。私は風波らんっ…ちょっと待って。そこにいる2人は誰?」
「へ?」
ツバサはらんこの指した場所に視線を向けると其処に薄い黄色のショートヘアの青年にツバサと同年代くらいの白い髪の少女が立っていた。
「……ねぇ、あんた達は誰なの?」
「あ、俺は別に怪しい者じゃないから」
「わ、私も…」
どちらも初めて見る2人にらんこは少し警戒を見せる。対して2人もらんこに警戒を解こうとするが、らんこはじっと見つめたまま警戒を解こうとしない。それを見てユキとアサヒが話しかける。
「らんこちゃん警戒しなくて良いよ。2人とも私達の友達だから」
「ああ、まぁ、だけど、白い髪の女の方は警戒を続けていた方が良い。なんてったって何かあると直ぐ手を出s「フンッ!」いっだあーっ!!!何するんだヒョウ!?」
突然白い髪の少女がアサヒの後頭部を殴り付けるとアサヒは彼女に向かって怒鳴り声を上げる。
「あんたが私の事を悪く言うからいけないのよ」
「いや、事実を言っただけだろ!?女の子の格好をして結局いつも通り暴力をしてよ……やっぱり男の格好に戻s「フンッ!」あダァッ!?こ、今度は脛を…!」
「何やってんのよ……あんた達」
アサヒと少女が喧嘩を初める様子を見てらんこは警戒するのがアホらしくなったのか呆れた表情を浮かべる。
「あはは…アサヒ君達のは少し長くなりそうだから先にかけるさんを紹介するよ」
「ええ、お願いね」
ユキは苦笑いを浮かべながらもらんこに青年の紹介を始める。
「この人はかけるさん。最近知り合って……で良いよね?私達と同じでましろちゃんの家にお世話になっていて、あげはさんと同じ学校に通っているんだよ」
「へぇ、あげは姉さんと同じ学校の生徒ね」
ユキからかけるについての紹介を聞くとらんこは警戒を解くと、あげはが口を開く。
「そうだよ。後、怪我したらんこちゃんをここまで運んだのはかける君なんだよ」
「えっ!?そ、そうなの!?」
目の前のかけるが自身を運んでくれたと聞いてらんこは段々と顔を青ざめ、かけるの方に向くと頭を下げる。
「ご、ごめんなさいかけるさん!そうとは知らないで私…!」
「い、いや、頭を上げてくれ!そりゃ、初対面な上に年上の男だから警戒するのも仕方ないさ」
「そう…ですか。そう言ってもらえると助かります」
知らなかったとはいえ気絶した自分を運んだかけるに対して失礼な態度を取った事にらんこは謝罪するとかけるはそんな彼女を特に怒るつもりはなく許してくれる様だ。
「……」
一方で2人のやり取りを見て何やらひかるは複雑な顔を浮かべる。そんな彼の変化にソラが気付く。
「あれ?ひかる君なんだか怖い顔をしていますがお腹でも痛いんですか?」
「へ?…あ、ああ、実はそうなんだ。ちょっと最近腹の調子が悪くてな。いてててっ」
そう言って自身の腹を抱えて痛がる素振りを見せるひかる。そんなひかるの姿にましろは既視感を覚える。
(多分ひかる君……アサヒの様にらんこちゃんが目の前で自分以外の男の人と話しているのを見てヤキモチを焼いているんだろうな…)
ましろの脳裏には以前ユキとソラが学校に転校してきた日にユキがクラスの男子たちと仲良く話していた所をアサヒが見て気に入らず、不機嫌になった時が過ぎる。
一方でらんこはかけるとの会話を通して順調に交流を深めていくと、何かに気がついた。
「あれ……かけるさん前に何処かで会いましたっけ?なんだか貴方の顔……見覚えがある様な?」
「え?」
かけるの顔を見て何やら既視感を覚えるらんこだったがそれが何時だったか分からず頭を悩ます。そんな様子を見て先程まで少女と喧嘩していたアサヒが話しかける。
「ああ、それは多分前にこっちに来た時に会っていたからだと思うぞ」
「え、前に?…いや、私の記憶の限りではかけるさんと会ってはいない筈よ」
アサヒから以前会ったことがあると言われてもらんこはあまりピンと来なかった。すると、今度はユキが口を開く。
「まぁ、一応その時はかけるさん姿が今と違っていたから分からなくて当然だよ。かけるさんは前に私たちと戦ったシャドーだったからね」
「シャドー…シャドーって、あのサムライソードマン!?」
思わずらんこは声をを上げてしまう。同時に彼女の脳裏には以前こちらの世界に訪れた時の記憶が過ぎる。
キメラングの策略によりランボーグにされたひかるを救出しようとするらんこことキュアツイスターの立ち塞がった刀を扱う黒い剣士、シャドー。彼は持ち前の戦闘技術でプリキュアになって日が浅いツイスターを子供の様に扱い、更にはツイスターと共に戦ってくれたサンライズとスノーを同時に相手しても全くと言って良いほど余裕ある顔で戦った実力者だ。
らんこはその時の事を思い出すと直様ミラージュペンを取り出して変身しようとする。
「ちょ、ちょっと待ってらんこちゃん!」
「落ち着いてくれらんこさん!かけるさんは確かにシャドーだったけど、今は良い人なんだ!」
「…どう言う事よ?」
かけるを庇う様にアサヒとユキが彼の前に立ち、らんこに止まる様に説得の言葉をかけるとらんこは警戒しつつも2人に耳を傾ける。
「少し端折るがかけるさんは今年の春に呪われたスカイトーンを拾ってしまってその影響でシャドーになったんだ」
「の、呪われたスカイトーン?」
「うん、先代のプリキュアであるルーセントムーンが強くなりたいと言う想いが長い年月を掛けた事で彼女のスカイトーンが呪われちゃったの」
「先代のプリキュア?ルーセントムーン?」
初めて聞く単語の量にらんこは頭を抱えだす。それを見たましろがアサヒ達に話しかける。
「二人とも、らんこちゃんは先代のプリキュアの事が全く知らないから理解に追いついていないと思うよ」
「あっ、そうだった」
自分達にとってはもう共有してある情報だが並行世界からやってきたらんこにとっては初めて聞く事をましろの指摘によってアサヒは気付いた。
「じゃあらんこちゃん、先代プリキュアについて教えr「ちょっと待って」どうしたのらんこちゃん?」
先代プリキュアについて教えようとしたユキだがそれを遮る様にらんこが止めた事に不思議に思いつつどうしたのかと聞く。
「いや、それってもしかしなくても結構長くなりそうなの?」
「えっと…まぁ、それなりに」
「なら良いわ。悪いけどその話は私が暇な時に聞かせて」
と、らんこが先代プリキュアの解説を断ったことに一同は愕然とする。そして何やらアサヒ達が持つスカイトーンからは何やらずーんと沈む様な雰囲気が感じられたのは気の所為だろう。
「それで、改めて聞くけど貴方はサムライソードマンだったけど今は敵じゃないって事で良いんですよね?」
「ああ、薄らとだけどらんこさんにも迷惑をかけた記憶はあるよ。あの時は本当にごめん」
操られていたとはいえシャドーだったかけるはかつてらんこことツイスターを傷つけていたのは事実であり、かけるはらんこに頭を下げて謝罪する。
「頭を上げてください。話を聞く限りかけるさんは操られていただけの被害者よ。貴方は何も悪くないですよ」
「ありがとう…そう言って貰えると少しは助かるよ」
らんこから謝罪を受け入れられた事にかけるは嬉しそうに笑みを浮かべる一方でそれを見ていたアサヒ達は安心して胸を撫で下ろした。
「ふぅー、どうやら最悪な事態は避けられた様だな」
「うん、らんこちゃんが最初ミラージュペンを向けた時は一時はどうなるかと思ったけど、何とかなったね」
最初の一触即発な雰囲気から一変して穏やかな雰囲気となりかけるとらんこの関係は問題なさそうな事にユキは笑みを浮かべる。
「……」
「ひかる君、また怖い顔になっていますよ」
「…え?あ、ああ、ちょっと腹痛がしてな」
そんな中またひかるの顔に気付いたソラが指摘をすると腹痛と言って誤魔化した。
「それでそっちにいるさっきまでアサヒと喧嘩していた女の子はなんなの?」
かけるとの和解を終えた後、先程アサヒに殴ったり蹴ったりしていた白い髪の少女について聞くと彼女は特に拒否する事なく答える。
「私はヒョウ。あなたの事は少し前にユキ姉さんとひかるから少し聞いているわ」
「そう…所で今ユキの事を姉さんって呼んだけど、あんたはユキの妹なの?」
「まぁ…ユキ姉さんは昔私を助けてくれた事があってそれ以来姉さんって呼んでいるの」
「ふーん、なんだか私とあげは姉さんみたいな関係ね」
ヒョウと名乗る少女がユキの事を姉と呼んで慕う事からその関係性かららんこは親近感を覚える。
「らんこさん気をつけろよ。ヒョウはユキに近づく奴には容赦なく嫌がらせしてくるk「フンッ!」あだっ!?」
「……何やってんのよ?」
らんこはヒョウに脇腹をド突かれてその場に蹲るアサヒを呆れた眼差しを向け、ヒョウはらんこの視線に気がつくと咳払いをして誤魔化す。
「あ、あと、あっちの世界でツバサの事を知っているのなら話は早いけど、私もプニバード族なのよ」
「へぇ、そうなん…プニバード族?…えっ、ヒョウもプニバードなの!?」
「そうだよ。その証拠に…」
そう言ってヒョウはボフンと音を立てると彼女は白いプニバードへと姿を変える。すると、それに釣られてかツバサもプニバードへ姿を変える。
「どう、本当だったでしょ?」
「……」
「あれ、らんこさん?」
ヒョウはらんこが驚いた表情を見せた事に悪戯が成功した子供の様に満足した表情をみせるが、ツバサが先程から顔を俯いて肩を震わせている事に気がつく。
ヒョウは何か自分が彼女の気に触るような事でもしたのかと思い近づこうとした瞬間だ。らんこが魚を狙った猫の如く目を輝かせると一瞬でヒョウとツバサを自身の腕の中に入れそのまま抱きしめて頬擦りをする。
「きゃ、きゃわいいいいっ!!!!」
「「うわあああああっ!?」」
『えええええっ!?』
一同は目の前の光景に驚きの声を上げる。かつてらんこと邂逅した時はあまり人と関わろうとせず冷たく当たったりとクールなイメージが強かった。だが、今目の前でそのらんこがあげはの様にプニバードの2人を愛でていたのだ。
「ら、らんこさんって、あんな一面があったんですか…」
「わ、私も驚きだよ…」
「さっすが、私の妹!そうこなくちゃ!」
ソラとましろは普段とのギャップの差に動揺を見せ、あげははらんこの愛でる姿を見て親近感を感じた。
「ら、らんこちゃん…まさかあんな姿も見せるなんてね」
「ああ、まるであげは姉みたいにツバサやヒョウと接している」
アサヒとユキもソラ達と同様に驚いた様子だ。
「ああ、クールならんこさんも良いけどこうやって可愛い物に目が無い女の子らしいらんこさんも素敵だな…」
「あ、はは……ひ、ひかるはらんこさんに目が無いみたいだな」
一方でひかるは相変わらずらんこに目が無く彼女の姿に夢中になり、そんなひかるにかけるは思わず苦笑いを浮かべる。
そんな中、ツバサとヒョウは先程から撫でらたりと頬擦りをされるも何時迄も耐えられる物ではなかった。
「「は、離してよっ(下さいっ)‼︎」」
「あ……」
2人はらんこの腕から抜け出すと人間の姿へと戻り、らんこはそれを見て落ち込んでしまう。それを見てツバサとヒョウは少し罪悪感を感じた。
「いや、そんな落ち込んだ顔をしないで下さいよ」
「そうよ。まるで私達が悪いじゃ──」
ヒョウが悪いじゃないかと言おうとしたその時、部屋から何やら"ギュルルルゥ〜"と言う音が響渡った。突然の音に一同は驚くもらんこの顔が何やら赤くなっている事に気が付き、ユキはそんな彼女の様子を見て何かを察した様子。
「ねぇ、らんこちゃんでお腹空いていない?」
「べ、別に空いてなんか「ギュルルルゥ〜」っ、ぅ…うぅー…////」
空いてなんかいないと言おうとしらんこの腹部から音が鳴り響き、彼女は慌てて自身のお腹を手で隠す様にすると涙目になる。こんな大人数がいる前で派手にお腹の音を鳴らした事にらんこは恥ずかしくて顔から火が出る思いだ。一方でそんな彼女の顔を見てユキを除く一同は気不味く思いさっと視線を壁に向ける。
「らんこちゃん。さっきましろちゃんと一緒に作った物があるんだけど、良かったら食べない?」
「……食べる」
ユキの提案にらんこは素直に応じると、ユキは部屋から出ていき料理を取りにキッチンへと出掛けた。
普段なららんこは人が作った料理に仕方ないと言わんばかりの態度を見せる彼女だが、今回はこれ以上自身の醜態を晒したくない為になんでも良いから一刻でも早く腹に食べ物を入れてこの忌々しい音を消したかったのだ。
それから数分してユキは作った料理が乗った皿をらんこの元へ持ってきてくれる。
「お待たせ、冷めちゃっていたから温め直してきたよ」
「悪いわね態々温め直してもら……ん?」
らんこはユキの持ってきた料理を見て目を丸くする。最初はユキとましろが作った料理はお粥か雑炊と言った怪我人や病人の胃に優しい物を予想したが、実際持って来たものは全然異なっていた。
「はい、ひかる君からアップルパイが好きって聞いたから作ってみたよ」
「ア、アップルパイ?」
まさか出てきたのは自身の好物のアップルパイに思わずらんこは固まってしまう。
「あっ…ご、ごめんねらんこちゃん!流石ににアップルパイってキツイよね!」
らんこの様子を見てユキは彼女が怪我人である事を思い出し、此処はお粥などの胃に優しい物にするべきだったと思いらんこに謝罪しアップルパイを下げようとするもらんこはヒョイっとアップルパイをユキの手から逸らすと切り分けられた一切れを手に取る。
「……折角作ってくれたんだから一つ食べてあげるわ」
「ら、らんこちゃん…!」
素っ気ない発言ではあるものの自分達の作ったアップルパイを食べようとする彼女にユキは嬉しく思った。対してらんこは手に取った一切れを一口食べると暫く咀嚼して喉に流し込むと目が見開く。
(美味しい…ましろが前に作ってくれた味もするけど、それとは異なった味…多分これがユキの味だけどましろの味を阻害せずに寧ろお互い味を引き立ててくれる…!)
たった一口食べただけにも関わらずましろとユキが一緒に作った味を分析していた。
「ら、らんこちゃん…ど、どうかな?」
一口食べて暫く黙っているらんこにユキは不安を覚えながらも恐る恐る味の感想を求める。
「……まずまずね。精々点数を付けるとしたら93点って所ね」
「いや、無茶苦茶高得点じゃん!?」
思わずヒョウは声を荒げる。最初らんこがユキのアップルパイを悪く言ったと思い口出しをしようとしたが続いて言った点数を聞いてズッコケそうになったのだ。
「あと、カスタードクリームがあれば完璧ね」
「なんか…図々しいですね」
折角作って貰ったのに食べて点数を付けた上に贅沢を言うらんこにツバサは呆れた表情を浮かべる。
「いや、思った事をはっきりと言える素直さ…それがらんこさんのいい所だ」
「どちらかと言えば我儘なんじゃ?」
らんこの事を全て肯定しようとするひかるにツバサは思わずツッコミを入れる。
そんな中ソラとましろは小声で会話する。
「なんだかひかる君はらんこさんと会ってからやけに生き生きしてませんか?」
「きっと大好きならんこちゃんと会えて嬉しいんだと思うよ」
自分達といる時でも普段中々会えないらんこを一途に思うひかるは今回の様にらんこを前にするとも以上に元気が出ているのだ。
「ふふっ、ありがとう……なんだか最後別れた時かららんこちゃん明るくなった気がするよ」
「確かにな。前あった時と比べて性格結構変わっているな。なんて言うか柔らかくなったって感じの?」
ユキは自身のアップルパイに高得点をくれたらんこにお礼を言いつつアサヒと共に以前と比べて性格が変わったと感じられた。
「そうね……お互い別れてから数ヶ月くらい経っているから何があったがアップルパイを食べながら教えてくれない?」
「おっ、それは面白そうだな。なら俺も少し小腹が空いたからアップルパイを一つくれよ」
そう言ってアサヒはアップルパイに手を伸ばすもらんこはさっとアサヒの手からアップルパイの乗った皿を避ける。
「嫌よ。これは私のアップルパイよ。一切れも渡すつもりは無いわ」
「いやいや、らんこさんも流石に丸々一枚は食べきれないだろう。俺もユキのアップルパイが食べたいから少し分けてく───」
その時、アサヒが再びアップルパイに手を伸ばそうとした瞬間、らんこはアップパイを宙に投げるとその隙にアサヒの右腕を掴むと彼をベットに倒してそこから素早く腕ひしぎ十字固めを決め、器用にアップルパイの乗った皿を額でキャッチした。
「いだだだだっ!?」
「ちょ、らんこちゃん!?」
「何やっているんですか!?」
「今の見た!?一瞬でらんこちゃんがアサヒの腕を関節技で決めたよ」
突然アサヒがらんこに関節技を掛けられた事に一同は驚愕の表情を浮かべる。そんな中ひかるは何かを思い出した素振りを見せる。
「あー、悪いアサヒ。らんこさんは大好物のアップルパイが一切れでも食われるとキレるんだ。しかもそれであっちの世界のソラさんをはっ倒すくらいに」
「ええっ!?それって本当!?」
「わ、私をですか!?」
ひかるの衝撃的な事実にソラとましろは並行世界のソラが倒されたと聞いて再び驚愕な顔を浮かべる。
「いや、それを早くいっ、だだだだだだだっ‼︎」
一方でアサヒに掛ける関節技の力が更に増すると、らんこは冷めた眼差しをアサヒに向けて物凄い低い声を発する。
「私のアップルパイを狙う物は……誰だろうと許さない!」
「わ、悪かった。俺が悪かったからって、うでがああああああああっ!!!!」
「ら、らんこちゃん止めて!それ以上やっちゃうとアサヒ君の腕が壊れちゃうよ‼︎」
「に、にぃにっ‼︎」
悲鳴を上げるアサヒを見てユキとエルは泣きそうになりながらもらんこに止めるように訴える。続いて他の皆んなもやめるように言うが1人だけ異なった考えを持つものがいた。
「良いよらんこさん!その馬鹿、デリカシーが無いからもっとやっちゃって!」
「ヒョウ‼︎お前ここぞと言う時に煽るんじゃねえええええっ!!!」
応援するヒョウにアサヒは苦痛に耐えながらも彼女に対して大声を上げるのであった。
─────────
一方その頃、ソラシド市の街では夕陽が沈み辺りがすっかり暗くなり街灯や建物に灯りが点き始めている。そんな中、とあるビルの屋上では空間に歪みが生じてそこからゲートが作られると中から人影が出てくる。
「ふむ…ツイスターの残留エネルギーを辿ってみたものの…まさか再びこの世界に訪れるとはね」
ゲートから現れたのはキメラングだ。どうやらあの後、らんこが並行世界に飛ばされたのだと知ると以前作った並行世界を渡る装置を使ってこちらの世界へとやってきた様だ。
「さて、早速鬼ごっこを再開しても良いけど暫くキュアサンライズとキュアスノー…それにこちらのキュアスカイ達とも会っていなかったから以前よりも成長していそうだからそちらを先に当たるのも悪くないね」
キメラングはらんこだけでなくアサヒとユキやソラ達のデータを収集しようと考える。
「よし、ならツイスターを探すついでに彼等も探しに……ん?」
探しに行こうと言おうとするが辺りから強い風と何やら気配らしき物を感じたキメラングは周囲を見渡す。
「ここら辺にアンダーグエナジーを感じると思ったら見掛けない奴がいるな」
「おや?」
話しかけられた方向を振り向くと其処には暗い緑色の髪をした少年が立っていた。
「君は何者だい?」
「それはこっちの台詞だ。お前の身体から感じるのは間違いなくアンダーグエナジーだ。だが、俺の知る限りアンダーグ帝国にはお前の様な奴は知らないな」
少年はキメラングに怪しむ様な眼差しを向ける。
「ほう、君はこっちの世界のアンダーグ帝国の人間か…と言う事はシャドーの知り合いかい?」
「なに…お前、あの裏切り者の事を知っているのか?」
キメラングの口からシャドーの口が出た事に少年は驚きの表情を浮かべるもますますキメラングに対して警戒する。
「なに、彼とはかつてある目的で共闘した中さ……所でさっき裏切り者って言ったけど、何かあったのかい?」
シャドーの事を懐かしむ表情を浮かべるも少年が彼を裏切り者呼ばわりした事が気になって追求しようとする。
「その事が知りたかったらまずお前の事を教えろ…もう一度聞くが、お前は何者だ?」
2度は言わないと言わんばかりのさっきを向ける少年にキメラングは「おお、こわっ」と言うが実際に怖がる様子は見られない。
「まぁ、確かに君の言う通り先ずは自己紹介が先だね…私の名前はキメラングさ。元の世界にあるアンダーグ帝国ではドクターをやっている者さ…」
「元の世界……どうやら面白い話が聞けそうだな。俺はヒューストムだ」
こうしてキメラングはヒューストムと邂逅をすると自分がこちらの世界へやってきた目的について話すのであった。
ーおまけー
虹ヶ丘家では一同の説得もありらんこの怒りが治ると漸くアサヒは開放される。
「あー、いちちちっ。マジで腕がやられるかと思った」
「大丈夫アサヒ君?」
痛む右腕を摩るアサヒに心配する表情を浮かべるユキが駆け寄る。
「あー、大丈夫。だけど、俺もユキのアップルパイが食べたかったn「……」わ、わかってるって!らんこさんのアップルパイには手を出さないから!」
無言でアップルパイを食べながら圧を掛けてくるらんこにアサヒは先程の事を思い出し、慌てて彼女を説得する。
「アサヒ君。そんなに私のアップルパイが食べたいの?それならこの後もう一枚作るよ」
「おっ、マジか?ユキの作る料理は何でも美味いから楽しみにしてるよ」
「え、えへへへ…そ、そう言ってくれると嬉しいな〜」
アサヒから自身の料理を楽しみにしていると言われてユキはとても嬉しそうな顔を浮かべる。そんな2人のやり取りに先程からアップルパイを食べていたらんこが注目していた。
「モキュモキュゴクン…ねぇ、ひかるちょっといい?」
「どうしたんだらんこさん」
「あの2人……気の所為か距離が近い…と言うよりも近過ぎない?」
先程からやけに親しそうに話している様子を見て不思議に思う。以前会った時と比べて2人との間にあった距離がなんだか近くなったと感じていた。
「あー…そう言えばらんこさんには言ってなかったな。実はあの2人は少し前から付き合っているんだよ」
「ふーん、そう……ん?」
一瞬、興味なさげな態度を見せ再びアップルパイを食べようとしたが動きが止まり、ゆっくりとひかるの方に顔を向ける。
「えっと、ど突き合い?」
「いや、お付き合い。恋人関係の奴」
「 」
ひかるから2人が恋人関係になっていると聞かされ、らんこは絶句するも恐る恐るソラ達の方にも視線を移すと全員が首を縦に頷いた。そしてらんこは漸く2人が付き合っていると理解する。
「あ、あんた達付き合ってんの!?」
「うおっ!?びっくりした!」
「ら、らんこちゃんどうしたの!?」
突然大声を上げるらんこにアサヒとユキは驚いてしまう。
「ど、どうしたも何も無いでしょ…あ、あんた達がいつの間にかそんな関係になっているなんて驚きよ!」
自身の知らぬ間に2人が恋人同士になっているなんて思ってもみなくらんこはややパニックに陥っていた。
(ま、まさか…アサヒとユキがそんな関係になっているなんて…!)
自分の友達が数ヶ月間会っていなかった間に恋愛関係に発展した事に困惑と友達としての嬉しさの感情が同時に感じていた。
まさか同じ屋根の下で暮らしている2人とプリキュア同士が付き合うなんてらんこは予想もしなかったのだ。
『プリキュアには一つ重大なルールがある…それは恋愛禁止だ』
誰だコイツ?
「はあっ!?恋愛禁止って、何処の誰だか知らないけど勝手に人様の恋愛事情に首を突っ込むんじゃ無いわよ‼︎」
『ら、らんこちゃん(さん)?』
らんこの脳内に何時もは女の子の声が聞こえてくるのだが、今回は男性でしかも恋愛禁止なんて抜かすかららんこは謎の声に対して不満をぶつける。一方でそれを見ていた一同は突然らんこが何も無い壁に向かって怒鳴り声を上げた事に困惑をするのであった。