前回キメラングにやられた所を運良く並行世界へ転移したらんこはそこで再会したアサヒとユキ達に拾われ治療をしてもらい。らんこはユキから貰ったアップルパイを食べていた。
「モキュモキュゴクン…成る程、大体の事は理解できたわ」
らんこはアップルパイを食べながらアサヒ達から自分と別れてからあった出来事について聞いていたのだ。どうやららんことから別れた後に別の並行世界からやってきた侍を目指す少女の出会いやアサヒとユキが並行世界へ飛ばされ、そこで知り合ったソラの様にヒーローに憧れる少年との出会いなどがあった様だ。しかも驚いた事にどちらもプリキュアでソラ達と共に戦う共通点などがあるそうだ。
「まさか、私以外の別世界のプリキュアと共闘したなんてね……」
「ああ、俺たちも別の世界に飛ばされた時はどうなるかと思った」
「でも、私達は幸いにも2人一緒だから寂しくならなくて済んだよ」
それぞれのプリキュアと共闘したと聞いてらんこは頭が痛くなりそうだ。まさか此処とはまた違う並行世界が一つだけじゃなく複数もあった事なんて事実簡単に受け止められなかった。
「まぁ、そんな事はどうでも良いわ。それよりも
ユキ!あんた身体大丈夫!?」
「…ふぇ?」
『え?』
突然らんこはベットから身を乗り出してユキの両肩を掴み心配し、ユキは目が点になり、アサヒや他の皆んなも彼女の行動に呆然となる。
「きゅ、急にどうしたのらんこちゃん?」
「どうしたのじゃ無いわよ‼︎あんた、私がおいしーなタウンで旅行していた時に重い病気に掛かって危うく命を落としかけたそうじゃない!?まだ、身体に怠さや痛みとかはあるの!?」
実は先程互いのらんこがひかるをおいしーなタウン旅行に誘った日にユキはアサヒ達と共にすこやか市へ出掛け、そこでビョーゲンズというば◯きんまんをタチ悪くしたような存在がユキの身体にメガパーツなる物を入れて死に掛けたと聞いてらんこはパニック状態になっていた。
「だ、大丈夫だよ…ほら、もうこんなに元気いっp「甘い…甘いわよ!アップルパイに練乳と蜂蜜漬けしたくらいに甘いわッ‼︎」うえっ、何その例え……」
『ウップ…気持ち悪るぃ』
物凄い甘すぎる例えを聞いて一同は思わず口を押さえる。
「ほら、まだ身体に違和感があるならベッドをで休んでいなさい。ベットを譲るから」
「う、うん、心配してくれるのは嬉しいんだけど、今らんこちゃんが心配される立場なんじゃないかな?」
病気になったと聞いてとても心配するらんこにユキは嬉しく思うが、今はらんこが怪我人であり休んでいろと言われたらギャグにしか聞こえず、内心苦笑いを浮かべる。
「それにしてもそっちはおいしーなタウンでプリキュアと遭遇か…てかひかるお前なんでその事を黙ってたんだ?帰ってきた時はほぼらんこさんに対しての惚気話ばっかしか言って無かっただろう」
「い、いやぁ…すっかり忘れていて」
アサヒはひかるに対して呆れた眼差しを向ける。自分達が帰ってきて翌日の学校にそれぞれの旅先の出来事を聞いたが、らんこに頭を撫でられたや、一緒に中華まんを食べたや隣の席に座って食事したりなど彼女に対する惚気話しか聞かされていなかったのだ。
一方でらんこはユキにベットを譲ろうとしているとソラが彼女に話しかける。
「……らんこさん少し良いですか、あなたがここへ来た時に傷だらけでしたが…一体何があったんですか?」
「っ……」
「らんこちゃん?」
先程までユキに対してパニックになっていたらんこだったが、ソラが話しかけると先程までの慌てっぷりが嘘と思えるくらい静かになる。
その様子に周りの一同も気になった。
「教えてください。らんこさんは並行世界とはいえ私たちの友達です。貴女の悩みを聞かせて下さい」
「俺からも頼むよらんこさん…アサヒ達の様な力が無い俺は頼りないのは分かるが、相談ぐらいには乗るよ」
「……」
ソラとひかるに詰め寄られて頼って欲しいと言われ、対してらんこはそんな二人の姿を見て暫く悩むが、自分自身で話すべき事だと考えて話す事にした。
「……良いわよ。何があったか話すわ」
それかららんこは一同に話し始める。自分がここへ来る前、スカイランドでの出来事とそこに現れたキメラングの好奇心によりシャララがやられた事、そして彼女が作り出したロボットによりらんこが完全敗北し、更には帰りの異空間で起きたキメラングとの戦闘などすべてを伝えた。
「……以上が私の体験したことよ」
「そんな…シャララ隊長が」
らんこからキメラングによって爆発したランボーグの巻き添えを喰らってシャララがやられたと聞いて顔を青ざめる。
「キメラング…そんな胸糞悪い事をして…!」
「しかも、らんこちゃんの力が見たいだけでシャララ隊長を…!」
アサヒとユキもキメラングの所業…己の好奇心の為だけに犠牲者を出した事に怒りが湧いていた。
「キメラングって奴も気になるけど、もっと気になるのはそのロボットの事だ。らんこさんの話が本当なら倒す事が難しいんじゃないのか?」
かけるはハイマックスというロボットの存在を警戒する。先程のらんこから聞いた話によればスカイやツイスターのデータを持っており下手に戦う事が出来ないと指摘するが、それを聞いたらんこは戦った時の事を思い出し恐怖のあまり顔を青ざめ肩を震わせる。
「かけるさんもう少しデリケートに。らんこさんが怯えています」
「あっ…ご、ごめん!気を悪くさせるつもりはないんだ」
「ううん、かけるさんは悪くない。だから謝らないで」
かけるは震えるらんこに気付くと慌てて彼女に頭を下げて謝罪すると、らんこは謝らなくて良いと言う。
「取り敢えずかけるさんの言う通り先ずハイマックスと言うのを何とかしないといけませんね」
「多分だけど並行世界とはいえ同じキュアスカイ達のデータを持っているからソラちゃん達にとっても戦いづらそうだよね」
ツバサとあげはの言う通り、プリキュア達のデータを持つハイマックスの存在を倒す事を最優先にするも、あげはは推測ではあるもののソラ達でも倒す事が難しいと言う。そんな中あげはの話を聞いてヒョウはある事を思いつく。
「ねぇ、10人のプリキュアって事だからすこやか市にいるのどか達はその中に該当しないんじゃないかな?」
キメラングの持つプリキュアのデータは彼女が直接会ったことのある者だけだ。そうなればのどか達ヒーリングっと♡プリキュア、また他の街にいるプリキュア達であるならばハイマックスを倒す事が可能なのでは考える。
「確かにそれなら勝てるかもしれませんが…」
「他の皆んなをあまり戦いに巻き込みたくないな」
ソラ達もヒョウの考えなら勝てる可能性が高いと思うも他のプリキュア達を戦いに巻き込む事はあまりしたくなかったのだ。
一方で一同を見てらんこは申し訳そうな顔を浮かべる。
「皆んなごめん……やっぱり私がこの世界にいると迷惑が掛かるから直ぐに出て行くわ」
「そんな…水くさいぞ」
「そうだよ。らんこちゃんは悪くないよ」
「2人とも…」
部屋から出て行こうとするらんこをアサヒとユキが止める。
「誰も迷惑なんて思っていないよ。困っているなら助けるよ」
「ましろさんの言う通りです。ヒーローは困っている人を助ける!友達なら尚更です!」
「ソラ、ましろ…」
続いてソラとましろも手を貸すと言いらんこは2人を見つめる。
「僕も力になりますよ」
「私も…皆んなの様に変身して戦えないけど出来るだけ手伝うよ」
「それを言ったら私やかける君とひかる君も変身出来ないけど、らんこちゃんの力になるよ」
「えるっ!」
それからヒョウを筆頭に彼女達もらんこを手伝うと言った。
「皆んな……ふふっ、ほんとお人好し集団ね」
自身の為に力貸してくれる一同にらんこは嬉しく思った。これからキメラングとハイマックスと戦うかもしれない。仮にこの場にいる全員で戦ったとしても必ず勝てるとは限らない。だけど、皆んなと共に居れば奇跡が起こりそうだとらんこは思った。
「まぁ、私とアサヒとユキの合体技のエクストリームツイスターズを使えばもしかしたら何とかイケるかもしれないわね」
自分を含めた3人による合体技、エクストリームツイスターズは元の世界ではスカイとプリズムで使っていた技だが元はアサヒとユキが変身するサンライズとスノーの技でもある。威力についても折り紙付きである為、もしかしたら勝てるかもしれない自信がらんこにはあったのだ。
しかし、エクストリームツイスターズの名前がらんこの口から出るとアサヒとユキが何やら言いづらそうな表情を浮かべていた。
「どうしたのよ2人とも?何か顔色が悪いみたいだけど何かあったの?」
らんこは2人の様子がおかしい事に気付き話しかけると2人は互いに目を合わせて恐る恐るらんこに向かって口を開く。
「らんこちゃん……実はね。エクストリームツイスターズは今使う事が出来ないの」
「え、どういう事?」
ユキの口からエクストリームツイスターズが使えないと出て、らんこはその意味が理解出来なかった。
「実は今俺たちはキュアサンライズとキュアスノーに変身出来ないんだ」
「……え?」
続けてアサヒの言葉にらんこは思考が固まる。それから数秒後にらんこはハッとなると2人に詰め寄った。
「ど、どう言う事よ変身できないって!?」
「お、落ち着けってらんこさん!」
2人が変身不能と聞いてらんこはパニックになりかけるが、ひかるが彼女を宥めようとする。
そんな中かけるが言いづらそうな表情を浮かべつつ口を開く。
「実は…俺のせいなんだ」
「かけるさん?」
かけるが変身出来なくなったのは自分の所為って言った事にらんこは首を傾げる。
「俺…と言うよりもシャドーがアンダーグエナジーによる暴走をしてサンライズとスノーの全ての力を使ったんだ」
「その代償としてサンライズとスノーのスカイトーンが使えなくなったの」
「なん…ですって…!?」
暴走したかけるを助ける為に行動したと聞いて褒めるべきなのだが、その後のユキの発言を聞いてらんこは頭が真っ白になる。
「でも、安心してくれ。サンライズとスノーの力はないが俺たちには代わりの力があるから」
「うん、まだ完全には使いこなしていないけど大丈夫……って、らんこちゃん聞いている?」
「……え?……あ、うん!聞いていたわ」
先程の変身出来なくなったと言う言葉が衝撃過ぎてらんこは2人の話を聞いていなかったが、愛想笑いを浮かべながら誤魔化した。
「そ、それよりもだけど、少し横になっていいかしら?まだ疲れが取れていない事とさっきお腹を満たしたから眠気が出ちゃって」
そう言うとらんこは欠伸をして眠そうな顔を浮かべるとベットに座り込む。
「そうですね。もう暗いですかららんこさんは怪我と疲れを癒す為に今日はもう寝てた方が良いかもしれませんね」
「そうだね。らんこちゃんはこの部屋を自由に使って良いよ。お腹空いたらいつでも呼んで」
「あと、俺は今日此処に泊まっていくからなんか有ったら言ってくれよな」
「う、うん…頼りにしているわ」
一同は会話を終えるとらんこにお休みの挨拶を言って部屋から退室する。そして部屋に一人残されたらんこはベットに倒れ込み浮かない顔をする。
「2人が変身出来ないって…なんて事…!」
らんこは正直キメラングとハイマックスにはアサヒとユキ、それにソラ達と共に戦えば何とかなる思っていたのだ。かつて自身がこの世界に迷い込みひとりぼっちになっていた所を彼等に助けられて以来、共に戦えばどんな敵に対しても勝てる自信があったのだ。
だがアサヒとユキが変身出来ない今はこちらの戦力は大幅に下がってしまい。勝てる可能性が下がってしまったのだ。
(もし、私やソラ達だけで戦ったとしても勝てる光景が思い浮かばない)
頭に過ぎるのはハイスペックアーマーを纏ったキメラングの姿だ。アサヒとユキは戦っていないが、以前自分の世界のソラ達と戦った際には勝てた事は無い。更には新たな力を得た事で無敵と言っても過言では無いだろう。
「もし、あいつが現れて戦ったら……負ける……」
そうなってしまえば自分だけじゃなくこちらのソラ達だけでなくアサヒやユキとひかるを捕まえて己の欲を満たす為の実験台にするかもしれない。それはまるで先程自身が見ていた夢の様に…。
「っ!…嫌っ……それだけは嫌よ‼︎みんなが…辛い目に遭うなんて……!」
らんこは自分を助けてくれた皆んなが辛い目に遭うと想像してしまい涙を流す。そして、暫くして涙を服の袖で拭き取ると部屋の窓を見つめる。
「……此処から離れないと」
そう呟くとらんこはこっそりと窓を開けて持ち前の身体能力で2階の窓から地面に降りるが、着地した衝撃で身体に痛みが走る。
「くぅ…!」
思わず声を上げそうになるも口元を抑えながら何とか耐えると、恐る恐る後ろにある虹ヶ丘家へ振り返るカーテン越しの窓からは何人も賑やかそうな声と人影が見えてらんこは手を伸ばすも途中で止めると寂しそうな顔を浮かべる。
「……皆んな…ありがとう…そして、さようなら」
自分を助けてくれた一同に対してお礼を言うと存在を悟られない様に暗い道をゆっくりと歩いて虹ヶ丘家から去っていく。
───────
らんこが虹ヶ丘家からこっそり去って数分後、らんこがいた部屋の前にひかるとアサヒとユキがやってきて扉をノックする。
「らんこさんもう寝ちゃったか?夕飯はらんこさんの分をましろさんとユキさんが作ってくれたから腹が減ったら持ってくるぞ」
ひかるは中にいるであろうらんこに話しかけるが中からは返事が無い。
「もう眠ているのかな?」
「まぁ、あれだけ怪我していたんだからもう寝ているんだろ」
「……」
中から返事が無い事かららんこは既に寝ているのだとアサヒとひかるは推測する一方でユキは扉を黙って見つめている。
「……なんか嫌な予感がする」
「あっ!おい、ユキ!」
「せめてノックした方が良いって」
ユキはそう言ってドアノブを捻ると中へ入りアサヒとひかるも慌てて後に続いて入る。すると、中には誰もいない事に気づく。
「らんこちゃん?」
「トイレにでも行ったのか……ん、なんか部屋の中に風が吹いているな」
「風?」
だが部屋から風が入っている事に気付き風が吹いてくる方向に向くと窓が開いていた。
「……まさか!」
嫌な予感を察したひかるはポケットから自身のスカイトーンを取り出した。
「頼む!らんこさんの今いる場所を教えてくれ!」
「ひかる?」
「急にどうしたの?」
突然の行動に2人は理解できず恐る恐る話しかけようとした瞬間、ひかるの持つスカイトーンは窓の外へ一筋の光を刺し示した。
「これは……光が外に?」
「くそっ!やっぱりだ!」
「お、おい、ひかる!さっきからどうしたんだよ!?」
何かに気付いたひかるを見てアサヒは何がわかったのか問い詰める。
「らんこさんはもうこの家に居ないんだよ!恐らく俺たちが部屋を出た後、こっそり窓から抜け出したんだ!」
「えっ、らんこちゃんが!?」
「抜け出したって、何でだよ!?」
ひかるの口かららんこがこの家から居なくなったと聞いてアサヒとユキは驚く。
「俺だって分からない…ったく、らんこさんは怪我人だってのに無茶しやがって…!兎に角俺はらんこさんを探してくる‼︎」
「おい、ひかる!」
「待ってよ!」
部屋から出て行ったひかるを見て少し遅れてアサヒとユキは彼を追い掛ける。
「あ、2人とも、さっきひかる君が家を出て行きましたが何かありましたか?」
「ソラ、それにみんなも!」
すると一階へ降りると其処にいたソラ達と出会した。
「らんこちゃんの様子はどうだった?ひょっとしてもう寝ていたの?」
「それが大変なんだよ!らんこちゃんが家から出て行っていたんだよ!」
『ええええっ!?』
らんこが居なくなったと聞いて一同は思わず驚きの声を上げる。
「じゃあ、さっきひかる君が慌てて家を飛び出したのって…」
「らんこさんを探しに行ったんだ!」
「でも、なんでらんこさんは何も言わず出て行ったんだ?」
未だにらんこが自分達に黙って家を出て行った理由がわからない一同だったが、ユキは「あっ」と声を上げる。
「きっと…私達を戦いに巻き込みたく無いんだと思う」
「え、どういう事だ?」
戦いに巻き込みたくないと言うユキの言葉を聞いてアサヒは詳しく聞く。
「恐らくらんこちゃんは自分を倒す程の敵…つまりキメラングがこっちに来て私達が標的にされない様にこの家を去ったんだと思うよ」
「と言う事は……らんこさんは囮になったって事!?」
ユキの推測にヒョウは驚きの声を上げる。
「くそっ!…水臭いじゃないからんこさん!」
「ええ、友達なんですから私達を頼ってくれても…!」
一人で責任を抱え込もうとするらんこに一同は表情を険しくする。
「なら、皆んなでらんこちゃんを探しに行こう!」
「ええ、辺りはすっかり暗い上にらんこさんはまだ怪我が治っていないので早く探さないと!」
もし傷口が開いて倒れてでもしてたら一大事だ。それにらんこを追いかけて単身探しに行ったひかるの事も気になる。
「なら、二手に別れよう!ソラちゃん達は私の車に乗って、かける君はアサヒ達をお願い!」
「任せてくれ!」
こうしてあげはの車にソラとましろとツバサにエルが乗り込み、かけるの車にはアサヒとユキにヒョウが乗り込むと発進させてらんことひかるを探しに夜のソラシド市を駆け巡るのであった。
─────────
一方らんこは現在川の堤防へ歩いていた。辺りは灯りが少なく道は暗く、また傷が完全に癒えていない為足取りがおぼつかず息も荒かった。
「はぁ、はぁ…うっ!?」
すると身体に痛みが走り地面に膝を突くと脇腹を抑える。
(さ、流石に無茶し過ぎたわね……)
先程まで虹ヶ丘家で休んでいたとしてもキメラングやその前日にあったハイマックスとの戦闘による傷はまだ治っておらず、その状態でここまで歩いて来たことに彼女の身体は限界に近かった。
「はぁ、はぁ…何処か休める場所h「らんこさん!」っ!?」
休める場所を探しに行こうとした時、背後から聞き覚えのある声が聞こえ恐る恐る振り返るとそこにここまで走ってきたのか息を荒くしたひかるの姿があった。
「ひ、ひかる…なんで此処に?」
「なんでって、このスカイトーンを使ってらんこさんの今いる場所を探したんだよ」
そう言ってひかるは自身の持つスカイトーンを見せると地面に座るらんこに近づく。
「さぁ、らんこさん帰ろう。みんなが心配している」
そう言うとひかるは彼女に向かって手を差し出して地面から立ち上がるサポートをしようとするが、
「……嫌よ」
「……え、嫌って?」
らんこはひかるの手を取らずそっぽを向いて拒否する。
「嫌って言ったのよ。私は戻らないわ」
「戻らないって…らんこさんまだ怪我が治っていないんだぞ!その状態で夜中を歩くのは危険だぞ!」
ひかるは戻ろうとしないらんこを説得しようとするが彼女は応じようとしない。
「もしかして、アサヒとましろさんの家を飛び出したのはやっぱり深い理由があるのか?もしそうだとしたら俺が相談に乗るよ!」
「相談……ですって…?」
「え?」
するとひかるの言葉に何か琴線に触れたのか彼女の声が低くなると、怒りを露わにしてひかるを睨みつける。
「巫山戯るんじゃ無いわよ!!!」
「ら、らんこさん?」
突然声を張り上げるらんこにひかるは驚きの表情を浮かべる。
「何が相談に乗るよ!?調子良い事を言って‼︎あんたは私の今困っている事を解決出来る力を持っていると思っているの!?」
「らんこさん落ち着いて!」
「これが落ち着いていられる訳無いでしょ!?あのマッドサイエンティストの事よ。直ぐに私のいる場所を見つけて来るかもしれない。その上アサヒとユキはプリキュアに成れない…そんな状況を落ち着いてられる訳無いでしょ!?」
今のらんこは連日の戦いによりその身を持って体験した脅威と頼りにしていた2人が変身出来ない事に精神的に追い詰められている。
「ら、らんこさんよく聞いてくれ、アサヒ達は確かに前までの姿には変身出来なくなったがその代わりの力があるから大丈夫だ」
「大丈夫……そうやって安心させる為だけの出まかせなんて聞きたくないわよ」
「お、俺は出まかせなんて……」
すっかりらんこはひかるの言う事を信じていなかった。
「大体なによ…そもそもあんたは戦う事が出来ないのに私達に関わるのよ?……さては、私達と知り合いになる事で世間ではヒーロー扱いのプリキュアの友達って立場の優越感でも浸っているつもり?」
「ち、違う‼︎お、俺はそんな事思っても……」
ひかるはらんこの言葉を否定しようとするが途中言葉を詰まらせて動揺してしまう。最初はソラシド市で活躍するプリキュア達の正体が自分のクラスメイトで唯一それを知るのは自分であると言う事に優越感があったのは確かだった。
「っ…ほ、ほら、その反応が何よりも証拠よ!」
一瞬らんこは悲しそうな表情を浮かべるも直ぐに表情を戻すと動揺している事を指摘する。
「ち、違う!俺は本当にらんこさんを心配して!」
「違く無いでしょ!あんたは最初から……私の事なんて別に…っ!」
「らんこさん?」
その先の事を言おうとしたらんこはひかるの方を見て目を見開く。対してひかるはらんこの様子の変化に気付きどうしたのだろうと話しかけようとすると、
「危ない!!!」
「え、おわっ!?」
突然らんこに押し倒されたひかるは驚く、何故彼女はこんな事をしたのか問い詰めようとした瞬間、先程まで自分がいた所の地面が何やら焼き焦げている事に気がつく。
「い、一体なんなんだ?」
何故地面が焦げているのか理解できないひかるはじっとその場所を見つめているが、
「だ、大丈夫…ひかる?」
「あ、らんこさん俺はっ!?ら、らんこさんその怪我は!?」
心配してくるらんこにひかるは大丈夫と返事をしようとしたが先程までらんこの右腕には何も無かった筈なのに右腕の袖は赤く染まりその腕から血を垂らし、左手で二の腕…傷口を押さえている様子だ。
「べ、別に…唯の掠r「こんな時に見栄を張らないでくれ!」
心配させまいとするらんこの痛々しい姿にひかるは持っていたハンカチを取り出すと傷口を塞ぐ様に縛った。
「ごめん……あんまり上手く出来なかった。兎に角家に戻って安静にしないと」
「悪いけど、戻るつもりは無いわ…それに彼奴が来たわ…!」
そう言ってらんこはひかるの後方を睨みつけ、ひかるも背後に振り返ると其処には無数のドローンを周りに飛ばしているキメラングの姿があった。
「やぁ、漸く見つけたよツイスター…そしてやや久しぶりだねモルモット君」
「き、キメラング…!」
いつの間にか背後にいたキメラングにひかるは動揺するが、先程の焦げた地面とらんこの怪我を思い出す。らんこはキメラングの飛ばすドローンの攻撃から己を守る為に押し倒し、その際彼女は避け切れず光線が右腕を掠ったのだと理解する。
「そうか…らんこさんの怪我の原因はお前か?」
「怪我の原因?…うーん、生憎心当たりが多くてどれの事を言っているのかわからないなぁ〜」
「巫山戯るな!さっきの事だ!」
「あー、そっちか。いやはやごめんごめん手負のツイスターを今度こそ確実に捕まえようと足に向かって撃とうとしたんだ」
「ごめんね」と軽く謝罪するキメラングにひかるは怒りが沸いてくる。こんな奴にらんこは苦しめられているのだと思うと腹が立って仕方なかった。
「でも、先日の戦いや異空間での戦いに加えてその腕…もうあまり動けない様だから大人しく捕まってくれるよね」
「待て!らんこさんは連れて行かせないぞ!」
らんこを捕まえようとするキメラングにひかるはらんこを庇う様に彼女の前に立つ。
「おやおやモルモット君、君の力はたかが知れているよ。そんな君が私に挑むのはちょっと、ていうかかなりの無謀じゃないのかな?」
確かにキメラングの言う通りだ。彼女はアンダーグ帝国の住人、それに加えて自身の発明品とワープを巧みに扱いプリキュア達と同等の実力を持っている。はっきり言って一般人のひかるが戦うのは無謀と言える。
「あ、なんなら前の様に君を操ってツイスターを捕まえても良いんだよ」
「な、それは…!」
キメラングは目の前に黒いドローンが現れる。それはかつて彼女がこちらへ来た際にひかるを操った洗脳ドローンであった。
「さて、これでもう一度君を洗脳してランボーグにするのはデータの見直しになりそうだし…やろうかな♪」
「くっ…!」
ジリジリと距離を詰めてくるキメラングにひかるは焦った顔を見せながらも後退りをしそうになる。
「や、やめなさい…!」
すると先程ひかるによって応急処置をした右腕を押さえながららんこが立ち上がると、ミラージュペンを取り出す。
「あんたの狙いは…はぁ、私の筈…でしょ…!」
「ら、らんこさん!?」
「へぇ…その状態にも関わらず私に立ち向かうとは…流石ヒーローだねぇ」
1発でも攻撃を喰らったら倒れそうなぐらい身体がボロボロにも関わらず戦いを挑んでくるらんこにキメラングは称賛の声を上げる。
「らんこさん無茶だ!その状態で戦ったら死んじまうぞ!」
「大丈夫…よ。いつも私って、ボロボロになっているにも関わらず…な、何とか…はぁ、勝ってきたん…だからぁ……」
ひかるに止められるも、らんこは止まらずキメラングと戦おうとする姿勢を崩さずミラージュペンを掲げる。
「ひろがる…チェンジ、ツイ…スタァー…!」
一気に変身をしてらんこはキュアツイスターへと姿へ変える。
「うーん、実に良いね。諦めないその不屈の精神は…なら、それに応えてこちらも全力を出そうか」
そう言うとキメラングはハイスペックアーマーを纏った。それを見てツイスターは膝に力が抜けて地面に倒れそうになるも何とか堪えてその場を保つ。
しかし、それが見るに耐えられなくなったひかるはツイスターの前に立つと彼女の肩を掴む。
「ツイスター逃げるんだ!やっぱり今の君じゃ勝てない!」
「……」
ひかるはツイスターに逃げる事を勧めるが、彼女何も返事をせずゆっくりとひかるの手を外す。
「怪我をしたく…なかったらどいて……」
「ツ、ツイスター……」
ツイスターはひかるを退かすとキメラングへと近づいて行く。一方でひかるは己の無力さを恨んだ。
(もし、俺もらんこさん達のように戦えたなら…!)
ひかるは自身の手の中にあるスカイトーンを強く握り締める。このスカイトーンが自身を変身させる力があるのなら今すぐ彼女の代わりに戦ってやりたい…そう願うのであった。
ーおまけー
それはらんこが此処へ来るまで自分の身に何があったのかを打ち明けていた時だった。
「あの、らんこちゃん少し聞いても良い?」
「どうしたのよ?」
何やらユキがらんこに聞きたいことがある様だ。
「らんこちゃんが気を失っている間に治療をしていたんだけどさ、その中で右腕に大きな火傷があったんだけどそれってどうしたの?」
「え?」
ユキの指摘にらんこは固まる。らんこが目を覚ます前まではこの場にいる女性陣達によって治療をしたのだが、その際に右腕にあった火傷は全身の怪我よりも前の物だと分かり、一体何が原因で火傷を負ったのか気になっている模様である。
「えっと……言わないと駄目?」
「そりゃらんこちゃんは女の子だもん。若い女の子が一際目立つ火傷なんて一大事じゃん」
「らんこさん…一体何があったんですか?」
あげはやソラの他の一同もらんこの火傷について気になっている様子にらんこは軽くため息を吐くと口を開ける。
「…実はこれ……ベリーなのよね」
「え、なんて言ったんだ?」
小声でぼそりと何かを呟いたが全員聞き取れず再度教える様に言うと、らんこは今度は少し大きめな声で言う。
「だからこれは……べ、ベリィベリー…によるもの…なの…よ」
『……え?』
「「「誰?」」」
あげはとかけるとひかるの3人は知らないが、スカイランドに旅立った組はベリィベリーの事は存じている。彼女は青の護衛隊の一員でソラの実力を疑って模擬戦をした赤髪の少女だ。
「べ、ベリィベリーさんが!?」
「な、なんで!?」
「あの人、プリキュアとは言え一般人に手を出さないでしょ!?」
まさかのベリィベリーがらんこに火傷をさせた犯人に同じ青の護衛隊であるソラとユキは衝撃を受ける。ヒョウも最初の印象はあまり良くなかったが、なんやかんやで悪い人間では無いと知った為、無闇に一般人に手を出す様な者ではないとわかっている。だが、どうしてベリィベリーがらんこに手を出したのか3人は問い詰めようとする。
「落ち着きなさいって、この火傷は事故でこうなっちゃったのよ」
「「事故?」」
「それは一体?」
大きな火傷を起こすくらいの事故と聞いてそれは一体どんなシチュエーションで起きたのか一同は気になった。
「あれはソラがベリィベリーに実力を分からせるためにやった模擬戦の事よ。その際ベリィベリーの電撃が私の方に飛んできてこうなっちゃったのよ」
らんこから火傷の経緯を聞くとソラを筆頭に模擬戦の事を思い出す。一方でひかるはらんこを心配する。
「らんこさん……もう痛くないのか?」
「ええ、火傷の痕は残ったけど全然後遺症とかは無いけど大丈夫よ」
後遺症は無いと聞いてひかるは安堵する。一方でアサヒは内心スカイランドからソラシド市へ戻る際に言った自身の言葉を思い出していた。
(まさか、本当に感電したなんて……じゃあ、他のも体験…いや、流石に無いか)
まさか自分の言った事が本当に起きたなんてアサヒ自身驚くも残りの言った事は流石に全部体験する訳ないと決めつける。
(と言うか…らんこさんが大火傷するくらいの電撃をくらったソラはなんでこうも頑丈なんだ?)
同じベリィベリーから電撃をくらった筈のソラは身体が痺れるだけで済んだ事に疑問が浮かぶ。
「ねぇ、その後ベリィベリーさんはどうなったの?」
ましろは事故とはいえ、らんこに怪我をさせてしまったベリィベリーはその後どうなったのかと気になった。
「まぁ、私はあの後1発ど突こうかと思ったけど、ベリィベリーの悲しむ姿を見てどうも他人の様に思えなかったから許して友達になったわ」
(ど突くつもりだったんだ…)
実際やらなかったがらんこがベリィベリーをど突くつもりなった事にましろは内心苦笑いを浮かべる。
「それでベリィベリーなんだか私に火傷させた事に負い目を感じて色々生活の補助をしたのよね」
「あのベリィベリーさんが……」
ベリィベリーがやったとしても仕事があるにも関わらず一人の人間の生活を補助した事に同じ青の護衛隊としてソラは鼻が高かった。
「まぁ、内容はお風呂で私の背中を流したり、先にベットに入って温めてくれていたわ」
『……ん?』
らんこの口から出た言葉にソラを除く一同は声を漏らす。
「他にも仕事で疲れたのか、私がトイレに行こうとしたら同じトイレに入り込もうとしたり、私の使っていた汗拭きタオルを自分のと間違えたりと多かったわね」
『んん?』
更にらんこの口から出る言葉に一同は声を上げる。
「あっ、そう言えばよく私の背中を流している際息が荒かったりと鼻血が出たりしていたけど、のぼせていたのかしら?」
「今思うと申し訳ない事をしたわね」とらんこがそう呟いていると、一同はコメントがしづらかった。それはソラを除く全員は察したからだ。らんこの世界のベリィベリーは間違いなくらんこにLOVEであることに。
そしてその中で同じくらんこに好意を向けるひかるは危機感を覚えるのであった。