その頃、病院内にある手術室では下着だけを残して裸にさせられたらんこは手術台に四肢を拘束されて身動きが取れない状態にされてしまう。近くにはそんな彼女を見下ろすキメラングの姿があった。
「ぐっ、外れない…!」
「無駄さ。その拘束具は私が作った特注でね、簡単に外れない物となっているのさ」
ガチャガチャと音を鳴らしながら両手首の拘束具を外そうとするもキメラングの言う通り外れる事はなかった。
「さて、じゃあそろそろ実験を始めさせてもらおうか」
そう言ってキメラングは側の台に乗っている大きな布を剥がすとその下には無数の手術道具が並べられていた。それを見たらんこは少し前に見た夢とほぼ同じシチュエーションである事を思い出し冷や汗を流す。
「ま、前々から気になっていたんだけど、あんたの私に対するその執着心は一体何なの?」
出来るだけ時間を稼いでこの状況を抜け出すアイデアを考えようとキメラングに質問を投げるとキメラングは彼女の質問に対して少し顎に手を当てて考える仕草を見せると指を鳴らして1機のドローンを呼び出し壁に向かって映像を映す。そこには折れ線グラフが映し出される。
「なに、これは?」
「このグラフは君の強さを表している物だよ。特にここ最近。つまりグラフの後半の部分は著しく変化があるよね。心当たりはあるかい?」
謎の折れ線グラフの正体が自分の強さを表すものだと知りらんこは後半の激しい変化を見てスカイランドから起こった謎の強化なのだと知る。
「ええ、あの強化の事を言っているのね?一応言うけどそれについて聞きたいのならお生憎。私もその強化の原理についてはよく分かっていないわ」
「ああ、そのことなんだけど私はさっきの戦いで君のその爆発的な強化の正体についてわかったよ」
「え、何ですって!?」
自分自身がわからない謎の強化について敵のキメラングがいち早く知った事に驚きを隠せないでいた。対してキメラングはらんこの驚いている表情を見て笑みを浮かべると力の正体について語り出す。
「実はね君の強化の正体は
アンダーグエナジーなんだよね」
「あ、アンダーグエナジーですって…!?」
キメラングの口から出た自身の謎の力の正体がアンダーグエナジーと聞いてらんこは信じられないと言わんばかりの表情を浮かべる。
「う、嘘よ!私の力の正体が…あ、あんた達が使うアンダーグエナジーだなんて…!」
キメラングの言っている事は嘘だと思った。自身のあの力はアンダーグエナジーという事は自分達が今まで戦ってきたランボーグの力が自身の身体の中にあるという事だ。それを想像するとゾッとする。
「だ、大体なんで私にそんな物があるのよ‼︎どうせ私を動揺させる為の嘘なんでしょ‼︎」
らんこは自分の力の正体がアンダーグエナジーと認めようとせず、キメラングの嫌がらせと思い込んだ。そんならんこの気持ちを無視するように彼女は語り出す。
「嘘じゃ無いよ。それは前に君が大量のアンダーグエナジーをその身に取り込んだからだよ」
「はぁ?何言ってんのよ…そんな事私の記憶に無いんだけど」
アンダーグエナジーを身体に取り込んだと聞いてらんこはピンと来なかった。プリキュアになってから一度もそのような体験をした記憶の無いらんこはキメラングの嘘だと思い込む。
「良いや、あるさ。思い出してごらん?君がプリキュアにまだ成れずカバトン君の作り出したランボーグに立ち向かった時の事をさ」
「っ!ま、まさか…あの時…!」
キメラングの説明を聞いてらんこは思い出す。かつて自分がましろやソラの足を引っ張り迷惑をかけて自暴自棄になった際に単身でランボーグと対決したが結局捕まりランボーグの身体に取り込まれた時の事を。
「思い出したようだね。まぁ、此処からは推測なんだけど君は他のプリキュア達とやや異なった事があるんじゃないのか?例えば君の力の元であるミラージュペンが出現した時の事をさ」
「っ!そ、そう言えば…!」
今になって思い返せば自分がミラージュペンを出した時にソラとましろと異なり台風を思わせるような強風を起こしたのだ。
「恐らくだけど、君がアンダーグエナジーにその身体を侵された際に脳のリミッターが少し外れて先に変身した2人と比べてスペックが一回りも二回りも上回ったんじゃないかとおもう。まぁ、その後は中々目立ったデータは取れなかったが、そんなある日の事だ!」
キメラングは再び指を鳴らすとドローンは折れ線グラフの映像が切り替わり別の映像が映り出す、其処にはある映像が映し出されていた。
「こ、これって…!」
「どうやら覚えている様だね。そう、これは並行世界からやってきたゼインとの戦闘の時だよ。まぁ、最も戦ったのは私とスカイ達だけど完膚なきまでにやられちゃったけどね。だけど、大事なのはここからだよ!」
そう言うと次の映像では倒れ伏すキメラングとスカイ達4人がゼインにトドメを刺されそうな時、ツイスターが彼女達を守る様に前に立ち。
『…これ以上みんなを傷つけないで…じゃ無いと私は……あんたを殺す』
そう言うとツイスターの全身から今までに無いほどの暴風が発生する。その場にいたゼインを除く一同はしゃがんでいないと吹き飛ばされそうになる。
「この時だよ。恐らく自分と仲間の命の危機をなんとかしようと君の脳に掛けられていたリミッターが更に外れたお陰であの強化が行える事が出来たんだよ!」
「そ、そんな…そんな事って…!」
だが、キメラングの言う事には一理ある。ゼインの時に起きた現象と自分の強化はほぼ一致しているのだ。
「そして、その後君が何度も強化を繰り返したお陰で体に残っていた僅かなアンダーグエナジーもほら見事に育ったよ」
「ヒィッ!?」
キメラングの見せた瓶には黒くてドロっとした物が入っており、それは少し前にキメラングがツイスターとの戦いにて彼女の身体から取ったアンダーグエナジーだった。しかもキメラングの話が本当なら自分の身体の中に長く入っていたと考えたら吐き気を催した。
「恐らく君はプリキュアであるにも関わらず闇の力に適した身体へと育ったみたいなんだよ。つまり私達と同じって訳さ」
「そ、そんな…私が……あんた達と同じだなんて…!」
自分の身体がプリキュアだけで無くアンダーグエナジーと混合した複雑な身体になっているという事実を突き付けられた事に顔が真っ青になって行く。
「うんうん、ビックリだよね。私も最初は他の2人と比べてスペックが少し高いだけかと思ったけどまさかアンダーグエナジーに適した身体になっているなんてね。まあ、私としても寧ろその方が調べ甲斐があるよ!」
そう言うとキメラングは複数のドローンを呼び出し、全身の消毒と更に手術着へ着用するとドローンからメスを受け取る。
「さて、お話はこれくらいにしてそろそろ始めようか。まず初めに君の腹を開いて中を調べた後、内臓を一つ一つ摘出し、その度にアンダーグエナジーで作った臓器と交換しよう。まぁ、安心したまえよ君は既にアンダーグエナジーをその身体でじっくりと育てたんだから手術の成功確率は高いからさ♪」
「っ!い、いやっ!やめてっ‼︎」
見た感じ麻酔を一切使わず、これから腹を切られて異物を入れられるとわかったらんこは涙を流しながら声を上げて必死に拘束具から抜け出そうとするが、当然拘束具は外れる気配すら無かった。
「君の悲鳴を聞くのを悪くは無いけど、至近距離で聞いたら難聴になるかもしれないからお口はチャック、キメランラン」
「ムガッ!?」
キメラングは呪文でらんこの口をテープの様な物で覆い喋れなくすると、らんこの露出した腹部に手を添える。
「取り敢えず煮沸消毒はしたから感染症の心配は無いからね。安心して手術を受けると良いよ」
「モガアァァァァァ!!!」
テープ越しにやめるように訴えるらんこの行動も虚しくキメラングはらんこの腹部にメスの刃を当てようとした瞬間、手術室の扉が大きな音を立てながら破壊される。そして、扉には破壊によって巻き起こった煙からは人影が確認できた。
「おいおい、手術室は関係者以外立ち入り禁止が普通だろ。部外者は即刻立ち去っt「はあっ‼︎」ぐあっ!?」
キメラングは人影に向かって苦言を言っていると彼女の真横からワープしてきた人物がキメラングに向かって回し蹴りを喰らわせ、彼女は壁に叩きつけられる。
「ぐうっ…再会の挨拶にしては少し激し過ぎないかい?まぁいいや、久しぶりだねサンライズにスノ……お?」
壁に叩きつけられたダメージを気にしつつもキメラングは目の前に立つ人物を見るが其処にはキメラングの予想したサンライズでもスノーにも当て嵌まらないない異なった衣装を着込んだ少女、オーロラの姿を見て固まる。更に其処へムーンライズとひかるとヒョウがらんこの元へ駆け寄った。
「あれ、君って……誰だい?それにそこの黄色い君も見た感じプリキュアだけど初めて見るね」
「おいおい、暫く見ない間に俺たちの事を忘れたのかよ?」
「ど、どうだろう。と言うか前まで姿が違うからわからないかもしれないよ」
キメラングが自分達の事を忘れたのかと思ったムーンライズは呆れた表情を浮かべオーロラは彼にフォローを入れる。
「いや待った。その顔にその声……サンライズとスノー!?一体どうしたんだいその格好は前までと全然違うじゃないか!?」
少し間を置いてムーンライズ達の正体がアサヒ達であると理解したキメラングは興奮気味で話しかける。
「悪いけど、あなたに説明している余裕はないよ」
「その通りだ。俺たちはらんこさんを助け…に……っ!?」
「どうしたムーンライ……あっ!?」
「2人とも揃ってなに……えっ!?」
拘束されているらんこにムーンライズとひかるとヒョウが彼女の姿を見て思わず固まってしまう。何故なら今のらんこは下着のみ…つまりはブラとパンツしか着ておらずそれ以外裸の状態であった。
「「う、うわぁっ!?ご、ごめん‼︎」」
「2人とも急に声を上げてどうし…ええっ!?」
ムーンライズとひかるはらんこの裸の姿を見て顔を赤くして慌てて背を向け、オーロラは彼等の反応に気づくと先の3人よりも遅くらんこが裸と気付き慌てて拘束具を引き千切った。
「ら、らんこちゃん大丈夫!?な、何か服は…?」
「あっ、オーロラこの布はどう?」
するとヒョウはキメラングが手術道具を隠す為に使ってた大きめの布を見つけオーロラに渡し、オーロラはその布でらんこの裸を隠す。
「ら、らんこちゃん大丈夫」
「モ、モガ…んまっ!…あ、ありがとう……て言うかあんた達変身出来ないんじゃ?」
「詳しい話は後でだ。らんこさん兎に角此処から脱出するぞ!」
そう言ってひかるはらんこに手を差し伸べるが彼女はいつまで経ってもひかるの手を取ろうとしなかった。
「らんこ…さん?」
「…なんで、来たのよ。私はあんたに散々酷いことを言ったり酷い事をしたのよ。なんで、私を助けに来たのよ」
らんこはひかるに視線を晒しながら彼に酷い事をしたにも関わらず助けに来た理由を聞く。
「そ、それはらんこさんの事が心配で…!」
「嘘よ!あんな酷い事をして嫌いな相手を助けにくる訳無いじゃない‼︎」
らんこは言うことは最もだ。散々彼に対して傷つける行為をした彼女はそう思っても仕方なかった。
「違う!俺はらんこさんの事が好きだから助けに来たんだよ‼︎」
「……ふえっ!?」
しかし、突然ひかるから自分の事が好きと言われたらんこは思わず顔を赤くして反応を見せる。
「す、好きって何言ってんのよ馬鹿!こ、こんな時に巫山戯た事を「巫山戯てなんていない‼︎俺はらんこさんの事が本当に大好きなんだよ‼︎」ひゃっ!?だ、だいしゅき!?」
再びひかるから自分の事が大好きと言われ思わずらんこは噛んでテンパってしまう。そしてらんこに対して追い打ちをかけんと言わんばかりに更に言葉を出そうとするが、そのタイミングで待ったが入る。
「あのさひかる。盛り上がっている所悪いんだけど後にしてくれない?」
「え?」
するとヒョウはこの場でのこれ以上のひかるの行いを止めたのだ。それに思わずひかるは声を漏らして周りを見渡すとヒョウだけで無くムーンライズとオーロラは気不味そうな表情を浮かべる。
「そ、そうだったな。う、うん、なら今はこんな事している場合じゃないな!ヨシ、早く此処から脱出しよう」
「う、うん」
再びらんこに手を差し伸べるひかる。対してらんこは今度は戸惑いながらも恐る恐る手を取ると手術台から降りる。
だが、そんな中オーロラはある事に気がつく。
「あれ?らんこちゃん、ミラージュペンはどうしたの!?」
「あ、そう言えば」
裸によるインパクトが高かった所為かオーロラを筆頭に一同はらんこがミラージュペンを所持してない事に気がつく。
「それが……此処で目を覚ました時には既に無かったのよ」
「おいおいマジかよ」
ミラージュペンを何処かに無くしたと聞いてムーンライズ達はこの建物の何処かはたまた河川敷から探さななればいけないのかと不安が過るが其処へキメラングが態とらしく咳払いをして自身を注目させる。
「ああ、それなら君のペンなら此処にあるよ」
するとキメラングは手術着を脱ぎ捨てると白衣のポケットかららんこのミラージュペンを取り出した。
「あっ、あれは私の!」
「キメラングそのミラージュペンを返せ!」
「返せだぁ?返すわけ無いだろ。漸く捕まえたツイスターに引き続き戦利品のこれまで奪われたら溜まったものじゃ無い」
「違う!それはらんこちゃんの物だよ!」
キメラングがらんこのミラージュペンを持ってた事からこちらに渡す様に言うがキメラングは渡す気など更々無かった。
「前までね。でも今は私の物さ。それにまだまだペンの解析は50%も済んでいないからさ…今返す訳には行かないからねぇ」
「(解析?)…オーロラ、俺がらんこさんのミラージュペンを取り戻す。その間にらんこさんとひかるにヒョウを連れて此処から逃げてくれ」
「ムーンライズ何言っているの!?」
何やら気になる言葉が出たが取り敢えず今は後回しムーンライズはらんこ達共に此処から脱出する様に言うが、オーロラは勿論彼を残していく真似はせず反対の意思を見せる。
「大丈夫だ。俺を信じてくれ」
「で、でもぉ……また、あの時みたいになったら…!」
ムーンライズの頼みなら聞いてあげたいところだが、先日彼はスカイランドにて命に関わる事をその身で体験しその場にいたオーロラはその時の出来事がフラッシュバックする。
(い、嫌だよ…またムーンライズが…アサヒ君が辛い目に遭うなんて…!)
それはスカイランドをランボーグの脅威から救った後、ヒューストムが濃密なアンダーグエナジーをオーロラへぶつけようとした際ムーンライズが庇い意識を失い、更には身体も普通な状態では無くなってしまったのだ。
そんな事があった為、またあの時の悲劇が繰り返されると思ったオーロラは涙を流すがムーンライズが彼女の涙をそっと拭き取る。
「心配するなオーロラ。俺は必ずお前の…ユキの元にまた戻ってくる。約束だ」
「……わ、わかったよ」
ムーンライズと約束したオーロラは彼に背を向けるとらんこ達を連れてその場から逃げようとする。
「おいおい、ツイスターを簡単に逃す訳ないd「お前の相手は俺だ‼︎」うわっ!?」
メスを手術室から出ようとするオーロラ達に向かって投げ込もうとするが、それをムーンライズの放った光弾によって止められてしまう。
「ったく、プリズムみたいな真似事をするとはね…まぁ良いさ。ムーンライズだったけ、サンライズとはまた違ったデータが取れそうだから楽しみだよ…だけど、それはそれとして彼女達を逃すつもり更々無いけどさ」
そう言うと近くの机にあった水の入ったペットボトルを手に取る。
「なんだ?激しい運動するから予め水分補給でもするのか?」
「それも良いけどもっと良いことだよ」
そう言ってペットボトルを放り投げ、ムーンライズは警戒するとキメラングはダークパッドを取り出した。
「インストール、アンダーグエナジー!」
『ランボーグ!』
ペットボトルの中身が吹き出し、そこから様々な形へ姿を変える水のランボーグが生み出される。
「水の…ランボーグ!?」
「さぁ、ランボーグ。ツイスターを捕まえてきてね」
「なっ!?そうはさせるかよっ!」
らんこを狙っていると聞いてムーンライズはランボーグに向かって無数の光弾を放つが、ベースとなったのが水である為、身体の形を歪ませると光弾を避け近くの壁の隙間に潜り込んで行った。
「しまった!」
慌ててランボーグを追いかけようと部屋の出口に向かおうとするが、キメラングが回り込む。
「おやおや、何処に行くのかな?君はこのペンが目当てなんだろ?」
「お前こそやめとけ。言っとくけど俺は怒ると手を付けられなくなるから怪我をしたくなかったらペンを渡せ」
「ヒュー、紳士的ご忠告ありがとう。でも心配御無用さ、私は結構強いからね」
そう言うとキメラングは白衣を脱ぎ捨て下にきていた黒のアンダーアーマーを晒した。だが、思春期を迎えるムーンライズにとってはボディラインがくっきりと浮かび上がった彼女の姿を見て思わず顔を赤くする。
「うおっ!?お、お前なんて格好をしているんだ!?」
「おや、まさか君が私の身体を見てそんな反応を見せるとは…クククッ、さてはムッツリスケベってやつかなぁ?」
「だ、誰がムッツリスケベだ!?」
キメラングの煽りに思わずムーンライズが反応するもキメラングは彼の事ら全く気にせず赤のドローンを呼び出すと体に纏わせていく。
「なっ、なんなんだそれは!?」
「君達には初めて見せるよね。ハイスペックアーマーは君達プリキュアの力に匹敵、いやそれ以上の力を発揮できる私の発明品さ」
「ハイスペック…アーマー…だと!?」
キメラングの纏ったハイスペックアーマーについて聞くとムーンライズはファイティングポーズを取りいつでも攻撃できるようにする。
なお、ムーンライズはハイスペックアーマーを見て彼の心を燻らせカッコいいと思っていた。
「はっ!ハイスペックだが、フルスペックだが知らないが兎に角ペンは返して貰うぜ!」
「やれるものならやってみると良いさ!」
ムーンライズが光弾を放ちそれを相殺するかの様にキメラングのレーザーが衝突すると戦いの狼煙が上がる。