廃病院内の廊下を現在オーロラを先頭にヒョウとひかる、そして少し遅れてらんこが出口に向かって走っている。
「ん?」
「どうしたのオーロラ?」
何やらムッとした表情を浮かべるオーロラが気になったヒョウは彼女に話しかける。
「今、ムーンライズが変な想像をした気がする」
「え、どう言う事?」
オーロラの発言にヒョウは意味を理解出来ずにいた。尚、同時刻にムーンライズは丁度キメラングがハイスペックアーマーを纏う為に白衣を脱ぎその際彼女のアンダーボディの姿を見て顔が赤く染まっている。
そんな事が起きているとは知らないオーロラの筈なのだが、恋人兼パートナーとしての絆が強すぎるが故に遠くにいてもムーンライズの気持ちをアンテナみたいに受信しやすかったのだ。
「はぁ、はぁ…」
「らんこさん大丈夫か?」
オーロラとヒョウの少し後ろにはひかるがらんこを心配して彼女と並走している。彼女は連続で戦い体力も大量に消費して疲労が溜まっており、息も荒く身体はフラつきながら走っている為いつ倒れてもおかしくはなかった。
「だ、大丈夫よ、これぐら…あっ!」
「「「らんこちゃん(さん)!?」」」
疲労による体力の限界が来て足に力が抜けると勢いよく床に倒れるらんこ。そんな彼女を見て3人は足を止めて彼女の側に駆け寄る。
「大丈夫からんこさん?ほら、手を貸すよ」
「あ、ありが…」
「らんこさん?」
ひかるがらんこに手を差し伸べると彼女も手を掴もうとするが途中で手を止める。そんな彼女を見て不思議に思ったひかるはこちらから彼女の手を掴もうとした。
「っ!…さ、触らないで!」
「え?」
「ら、らんこちゃん?」
「一体どうしたの?」
しかし、らんこはひかるの助けを拒絶。ひかるは呆然となり先程助けてからも彼女が表情が暗いことにオーロラとヒョウは不思議に思い話しかける。
「らんこちゃん……ここまで来る途中らんこちゃんの顔が暗かったけど、何かあったの?」
彼女は自分達が来るまで下着姿で手術台に拘束されて手術をされそうになったが、それとはまた違った理由で彼女の表情は暗いのではと推測する。
「私に無闇に触れない方が良いわ……私の身体は穢れているのよ」
「穢れてる?」
「それってどう言う事?」
穢れていると発言する意味が理解出来ずにいたが、ひかるはらんこの頬が少し腫れている事に気がつく。
「…キメラング…いや、ヒューストムに何かされたのか?」
頬の怪我を見て彼女をキメラングと共に攫ったヒューストムの姿が過ぎり更には穢されていると言う発言から彼に肉体的または精神的苦痛を受けたのかと想像するが、
「ううん、違うの…そうじゃ無いの」
「じゃあ、なんなの?」
一体何に対して辛そうな表情を浮かべているのかヒョウは気になり彼女に問うとらんこは暫く無言になってからゆっくりと口を開く。
「……私の身体にはアンダーグエナジーが宿っているの」
「「えっ!?」」
「アンダーグエナジーが!?」
突然彼女の口から己の身体にアンダーグエナジーがあると聞いて3人は驚きを隠せないでいた。
「あのマッドサイエンティストが言っていたの……前に私はランボーグに身体を取り込まれてその際に少量だけどアンダーグエナジーが身体に入って苦しい思いをした。皮肉にもそのお陰で私はプリキュアに成れたけど私の身体に入っているアンダーグエナジーは私が戦いをする度に増え……育って行ったの」
らんこは語るにつれて声が少し震え、その顔には怯えの感情が浮かび上がっていた。
「そして、最近は身体能力を強化する力を手に入れたけど、それを使う度に私の中にあるアンダーグエナジーは急成長して私自身戦いに対する欲求と相手を憎む気持ちが膨れ上がってきたの……」
「あっ、そっか……だからあの時…」
ひかるは河川敷での戦いでらんこがキメラングに殺意を向け殺しに掛かった事を思い出す。通りで普段と違った性格になった訳だと納得する。
「だから私の身体はすっかりアンダーグエナジーに侵され、いつかは意識が乗っ取られて……ランボーグの様な化け物になってみんなを傷つけるかも……」
「「「………」」」
らんこは今にも泣きそうな顔を浮かべる。自分の身体には知らずの内にアンダーグエナジーが宿っている事を打ち明けた事で3人から忌み嫌われるのではと思い込んでしまう。だけど、また自分がアンダーグエナジーの力に溺れて皆んなを傷つけてしまう。
「わかったら、私からはn「らんこさん」…え?」
離れる様にと言おうとした時だ。ひかるはらんこの手を握り彼女は突然の事に固まってしまうも直ぐにハッとなる。
「だ、だめよ!この手を離して!また、あなたを傷つけちゃう!」
「いいや、この手は離さない」
らんこはひかるの手を振り払おうとするがひかるは彼女の手を離そうとはしなかった。
「離して!私の身体はアンダーグエナジーで穢れt「そんな事はない!らんこさんの身体は綺麗だ!」ッ……」
ひかるの事を振り払い続けるらんこだが、その言葉に動きを止め彼を見つめる。
「確かにらんこさんの身体にはアンダーグエナジーが宿ってるかもしれない!だけど、それがどうした!俺だって一度どころか二度もランボーグにされたんだ!俺だって身体の中にはらんこさんと同じ様にアンダーグエナジーがまだ残ってるかもしれないんだぞ」
「ひかる…」
らんこが彼の発言を聞いていると其処へオーロラが2人の手を自身の両手で重ねる。
「私もすこやか市で身体にメガパーツを埋め込まれたかららんこちゃんの気持ちは良く分かるよ。私も自分の身体からビョーゲンズが生み出されて皆んなに迷惑をかけるかもって思った。でも、アサヒ君や皆んなが私を助ける為に色々と動いてくれた。そのお陰で私は助かったんだ。だかららんこちゃんも諦めないで」
「私も…らんこさんを避けないよ。力が無い私が言うのも何だけど、絶対らんこさんを助ける。例えランボーグになっても私や他の皆んなもらんこさんを必ず助けるから」
「オーロラ……ヒョウ……」
2人の言葉を聞いてらんこは目から涙が溢れ、床にポタポタと落としていった。
「みんな…グスッ、あ、ありがと…!」
らんこは次々と目から溢れる涙を拭き取りながら変わらず接してくれる3人にお礼を言う。
「ううん、気にしないで」
「その通りよ。まぁ、アンダーグエナジーに関しては後でヨヨさんに何とかして貰うのが良いわね」
「ああ、先ずは此処から出ないとな」
「うん、わかっ──」
らんこが返事をしようとした瞬間、彼女は口が止まり何かに気付いたのか顔色も変化する。
「危ない!」
「「「うわっ!?」」」
らんこは慌てて3人を突き飛ばす。3人はいきなり突き飛ばされた事に彼女を問い詰めようとした時だ。先程までいた場所に水が滝のように降り注いできた。
「な、なに!?」
「雨漏りか?」
「そんな訳ないでしょ!外は雲一つも無かったんだから雨なんて降っていないわよ!」
呑気な発言をするひかるにヒョウはツッコミを入れる。そして3人よりいち早く水の存在に気付いたらんこはどんどん降り注ぐ水を睨む。
「違う…あれは…!」
天井に降り注いだ水は床で水溜りになるとそこから宙に浮かび、巨大な球体から手足が生えた。
『ランボォォォグ‼︎』
「ら、ランボーグ!?」
「キメラングの作った奴か!?」
「え、じゃあムーンライズは!?」
目の前に現れたランボーグがキメラングの作り出したものだとひかるは推測するがそれを聞いたオーロラは彼女と戦っている筈のムーンライズの事が気になった。まさか、やられたのではと嫌な想像をした時だ。
『ランボーグ‼︎』
「っ!らんこさん危ない!」
「えっ、きゃっ!」
ランボーグは全身から水で出来た触手を伸ばしらんこに襲い掛かる。それをひかるがらんこを床に押し倒す事で回避が出来た。
「狙いはらんこちゃん!?」
再び触手が襲いかかるもオーロラはそれを全て殴り蹴って防ぎ更にはお返しと言わんばかりに光弾を放つが、ランボーグはその身体を蛇の様に細長い身体に変えて光弾を避ける。
「な、何あれ!?」
「あ、あんなのあり!?」
まさか姿を変えて攻撃を避けるとは思わなかった為、攻撃したオーロラとヒョウはそれぞれリアクションを見せる。
「恐らくそいつは身体が水…液体で出来ているから形を自由自在に変えられるのよ!」
「水……って事は固めれば良いんだ!」
「そっか!なら、氷雪拳!氷ノ型!」
相手が水の身体なら凍らせれば良いと考えたオーロラは冷気を纏った拳で殴りかかるが、
『ラン、ボボボボッ!!!』
「うわっ!?」
だがランボーグは身体から水の玉を大量に放ちオーロラは慌てて避け、外れた水の玉は床や壁に飛び散る。
「オーロラ!」
「くそっ!俺たちは黙って見てるしか無いのかよ!」
「私が変身出来たら…!」
攻撃を避け続けるオーロラを見てヒョウとひかる、そしてらんこも今の自分ではオーロラの力になれない事に悔しい思いをする。
「私は大丈夫!皆んなは隠れていて!」
オーロラは3人に平気だとアピールすると引き続きランボーグの水の玉や偶に放出される強力な水圧による水鉄砲を避け続ける。このままではいつまで経っても攻撃できずこちらのスタミナが減る一方である。
(なんとかこの状況を変えるきっかけは……)
オーロラもこのままでは不味いと思い何か策を考えていると、離れた所から見ていたヒョウが何かに気付く。
「ねぇ、気の所為かあのランボーグの身体は縮んでない?」
「「「え?」」」
ヒョウの一言を聞いてオーロラとひかるとらんこは改めてランボーグの姿を見つめる。
「言われてみれば……なんか最初はもっと大きかった様な?」
「でも、なんでだ?」
最初襲ってきた時は5mの巨体もあったが今では3mまで小さくなっている事に不思議に思っていると、らんこが「あっ!」と声を上げる。
「そっか!彼奴は自分の身体の水を打ち出しているからどんどん小さくなっているのよ!」
「そう言う事か!」
「なら、このまま攻撃を出し続ければ私の攻撃を当たるチャンスが出来るって事だね!」
そうと決まればランボーグがある程度縮むまで避けようとオーロラは行動する。
だが、その様子を見てらんこは違和感を覚える。
(そんな簡単にいくものかしら?)
幾らなんでも単純な攻略法にキメラングの作り出したランボーグを倒せるのかと不安を抱きつつヒョウとひかると共にオーロラの戦いを見守る。
それからオーロラはランボーグに水を出し続けると漸く1mくらいまで縮んだ。
「今だ!」
「うん、氷雪拳!氷ノ型!」
氷の拳を叩きつけるとランボーグの身体は一気に凍りつき、更にオーロラが正拳を喰らわせると氷と化したその身体はバラバラに吹き飛んだ。
「やった!ランボーグを倒した!」
「流石だオーロラ!」
「う、ううん、それ程じゃ無いよ…」
ランボーグを倒した事にヒョウとひかるはオーロラを褒めるも彼女は照れた表情を浮かべる。
一方でらんこはランボーグが倒されたというのに浮かない顔を浮かべる。
(やっぱり可笑しい……仮にもあのマッドサイエンティストが作ったランボーグ……オーロラには悪いけどこんなあっさりやられるとは思えないわ)
今までのキメラングとの戦いを振り返ってみたがいつも戦う時は何かしらの仕掛けや道具が用意されてた。それなら今回も何かあるのではとらんこは考える。
「…ん?」
その時、らんこの足に何か冷たい物が染み渡る。らんこは気になって足元に視線を向ける。
「これって……水?」
其処には何故か水溜まりが出来ていたのだ。先程まで自分の周りには水などは無かった筈だったが、先程のオーロラと戦ったランボーグが自身の水による攻撃を外していた光景が頭に過ぎる。
「まさかこれって…!」
嫌な予感を察したらんこはその水溜まりから離れようとした瞬間だ。突如と水溜りから複数の触手が現れると彼女の足を掴むとそのまま吊し上げる。
「きゃあっ!?」
「えっ!?」
「何っ!?」
「らんこさん!?」
悲鳴を上げたらんこにオーロラ達は彼女の方に視線を向けると其処には水の触手に捕まったらんこの姿があり、更には辺りに散っていたランボーグの水が其処へ集まると巨大な人型を形成。
『ランボーグ!』
再びランボーグへとなる。
「なっ、ランボーグ!?」
「そんな、さっきオーロラが倒した筈なのに!」
3人の目の前には先程オーロラが氷雪拳によって氷と化し粉砕されたランボーグが再び姿を表して更にはらんこを捕まえていたのだ。
「まさか、らんこちゃんを捕まえる為にわざとやられた振りをしたの!?」
まさかランボーグが知恵を使った行動をするとは思ってもみなかった為、オーロラも驚く。
一方で3人が驚いて動けない隙にらんこを捕まえたランボーグは彼女を自身の身体へと押し付けた。
「な、ゴボォッ!?」
「「「らんこちゃん(さん)‼︎」」」
水の身体に押し付けられたらんこはそのままランボーグの中へ取り込まれてしまう。
それを見た3人は顔色が変わり、直ぐにオーロラが動き出した。
「なんて酷い事を!待っててらんこちゃん!すぐ助けるよ!」
『ランボォォォォォグ!!!』
らんこを助けようと迫るオーロラにランボーグは腕を鞭へと変えるとオーロラに振るうが、彼女はそれを華麗に飛んで避ける。そして彼女は今度はこちらの番だと言わんばかりに光弾を放とうと手をランボーグの方に向けるが、
「そうだった!ランボーグの中にはらんこちゃんがっ!?」
「「オーロラ‼︎」」
らんこの存在を思い出し攻撃をキャンセルするとその隙を逃さずランボーグが鞭を使って彼女を薙ぎ払い壁へと叩きつける。そして、彼女の元へとヒョウとひかるが駆け寄り心配する。
「ぐぅ…これじゃあ攻撃する事が出来ない…!」
今のランボーグの中にはらんこが捕まっており下手にランボーグに攻撃すればらんこを怪我させてしまうかもしれないのだ。だが、何もしなければらんこは捕まったままな上に彼女は水の中に捕らわれており呼吸をする事が出来ない。その為、早く助けないとらんこは溺れてしまう。一体どうすれば良いのだとオーロラは悩んでいるとひかるが声を上げる。
「よし、なら俺がらんこさんを助けに!」
「馬鹿っ!相手はランボーグよ!下手に近づけば逆にやられるわよ!」
「そうだよ!ひかる君は危ないから下がってて!」
ひかるがらんこを助けに行こうとするのを見てヒョウとオーロラは慌てて彼を止める。ランボーグは普通の人間では太刀打ちできない事はプリキュアとの戦いを間近で見てきた2人ならよく分かっている。ひかるも今助けに行けばミイラ取りがミイラになるオチとなる。その事についてわかっている筈なのだが、彼は助けると言い出した。
「わかってるさ……でも、好きな人が苦しんでいる姿を黙って見ているのは耐えられないんだよ!」
「あっ、ひかる!」
「止まってひかる君!」
ヒョウとオーロラはひかるに止まるように言うが、彼は止まらずランボーグの方へらんこを助ける為に単身走って行った。
『ラン、ボォォグッ‼︎』
一方でランボーグは自分の方に走ってくるひかるを排除するべく身体から水の玉を発射する。
「させないよ!」
オーロラは光弾を放ち水の玉を相殺してひかるを攻撃から守った。そしてひかるはランボーグにある程度の距離を詰めていく。
「う、うおおおおおっ!!!」
その後、声を上げながらひかるはランボーグの胴体目掛けて飛ぶとひかるの身体はランボーグの身体の中へ埋まり、ひかるの視線の先には苦しそうに息を堪えているらんこの姿があった。
(らんこさん…今助けるから!)
直ぐに助けようとひかるは更にランボーグの身体の中を突き進もうとするがそれ以上は進めずにいた。
(くそ…また、俺は何も出来ねえのかよ!)
平泳ぎやクロールと言った泳ぎ方もするが、全然彼女との距離が詰められない事にひかるは悔しさを覚える。これでは態々人質になりに行ってオーロラの迷惑になってしまう事に自身の不甲斐なさを感じる。
「ゴボォッ!」
(っ!?らんこさん!)
その時、らんこはついに耐えられなくなり溺れてしまった。その姿を見てひかるは彼女を助けようと必死に手を伸ばすが、それは全然届かない。
(クソ……諦めねぇぞ!大好きならんこさんを助ける為、俺は…!)
諦めずにらんこを助けようとひかるは腕と足を必死に振るう。何としてでも彼女を助けようとするひかるも段々と口と肺の中に貯めてた空気が限界に近づくも動きを止めようとしない。
(俺は…絶対らんこさんを助ける!!!)
ひかるは例え息がなくなってもらんこを救おうとする意思を露わにしたその時だった。ひかるのズボンのポケットに入っているスカイトーンが黄色く激しく点滅し、稲妻マークが浮かび上がる。それに伴って電気はもう通っていない筈の病院内の廊下にある電灯が全て点滅する。
「な、何っ!?」
「急に電気が…!」
オーロラとヒョウは突然明かりが点いたり消えたりを繰り返していく周りの現象に驚きを隠せない。そして、段々と点滅の速さが上がっていくと次の瞬間、一斉に電灯が割れ其処から電撃放たれランボーグへと襲いかかってきたのだ。
『ボボボボボッ!?』
「え、ええええっ!?」
「ランボーグが感電した!?」
目の前でランボーグが電撃によって感電した事でもがき苦しみ、段々とランボーグの身体は弾け飛び水が全て蒸発して水蒸気が起こり、暫くして床に横たわるらんことひかるの姿が確認できた。
「あっ、らんこちゃん!ひかる君!」
「2人ともしっかりして!」
オーロラとヒョウは倒れているらんことひかるの元へと駆け寄ると2人の身体を揺さぶる。
「う…う〜ん」
「あっ、ひかる君大丈夫!?」
先にひかるが目を開けると辺りを見渡した。
「此処は……あっ!らんこさん!」
ひかるはハッとなりらんこの事を思い出すとヒョウに身体を揺さぶられているらんこの姿を見つけると直ぐに彼女の側へ寄る。
「らんこさん!らんこさん!目を開けてくれ!」
「ひ、ひかる!落ち着いて!」
ひかるは彼女の上体を起こすと揺さぶる。先程らんこはランボーグの中で溺れてしまい今は息をしておらず、ひかるは彼女に目を覚まさせようとする。そんな彼を落ち着かせようとヒョウが止めようとしたその時だ。
「ゲホッ!ゲホッ!」
「「「らんこちゃん(さん)!」」」
ひかるの思いが伝わったのか、らんこは口から水を吐き出すと苦しそうに咳をしながら意識を取り戻す。
「ゲホ…はぁ、はぁ…私は…確k「らんこさん大丈夫か!?」…ひかる?」
ゆっくりと呼吸をするらんこにひかるが話しかけてくる。
「らんこちゃん大丈夫?」
「さっきまでランボーグの中に捕まっていたけど、身体に影響は無い?」
「ランボーグに?……あっ」
ヒョウの言葉を聞いて先程まで自分の身に起きた事を思い出す。自分は先程ランボーグに捕まり、かつての様にランボーグの中へ取り込まれて息が出来ず溺れてしまった事が脳裏に蘇る。
「そう…どうやらまた助けて貰った様ね」
「ううん、助けたのはひかる君だよ」
「え、ひかるが?」
てっきりこの場でランボーグと戦えるオーロラが助けてくれた物だと思ったらんこはひかるに助けてもらった事を知ると面食らった表情を浮かべながら彼に視線を向けるも、ひかるは首を横に振る。
「いや、俺は何も出来なかった。どちらかと言えば助けようとランボーグの身体に突っ込んだのは良いけど、何も出来ずにいたんだけど」
「え、ランボーグの身体に突っ込んだ?」
ひかるの発言を聞いてらんこは目を丸くする。
「ああ、兎に角らんこさんを助けようt「馬鹿っ!なんでそんな無茶したのよ!?」ら、らんこさん?」
突然険しい顔を浮かべたらんこがひかるの胸ぐらを掴んで怒鳴り声を上げる。オーロラとヒョウも突然の事で驚きの表情を浮かべる。
「一歩違えたら命を落としていたかもしれないのよ‼︎もっと自分の事を大事にして……じゃ無いとあんたを許さないから!」
「あ……その、ごめん」
涙を浮かべながら怒るらんこの顔を見て思わずひかるは謝ってしまう。
「ううん、わかったらそれで良いわ……その、ありがとう」
「え、今なんて言ったんだ?」
らんこはボソリと小声でひかるには聞こえないように感謝の言葉を呟くとそれが少し聞こえたのか、ひかるは思わず聞き返す。すると、らんこの顔を段々と赤く染まっていく。
「な、なんでも無いわ!それよりもこんな所はさっさと脱出するわよ!」
「あっ、らんこさん1人で行くのは危険だ!」
らんこは照れ隠しと言わんばかりにその場を1人で走っていき、ひかるはその後を追いかける。
その場に残されたオーロラとヒョウは互いに顔を見合わせる。
「なんだからんこちゃん…さっき怒っていたけど嬉しそうだったよね」
「まぁ、告白された上に自分の身の危険を顧みず助けようとしたかららんこさんもすっかりひかるに対する意識が変わっちゃったみたいだから」
2人はそう言うと先に走って行ったらんことひかるの後を追いかける。だが、その最中先程ランボーグに起きた現象が脳裏に過ぎる。
(結局、あれはなんだったんだろう…ランボーグが倒されたのは良かったけど、なんであのタイミングで廊下に電気が?)
今いる病院は廃病院であり勿論電気は通っていない筈、それなのにあのタイミングで廊下にある電灯を全て破壊する程の電気が流れて、ランボーグに襲い掛かり中にいたらんことひかるを救ったのだ。
だが、それよりも気になる事がある。
(幾らランボーグが水で出来ているからって、普通の電気で浄化されるなんて…)
ランボーグは基本的にプリキュアによる浄化技で浄化される。鍛えてある人間でも倒せるのだが、ランボーグの力の源であるアンダーグエナジーはその場に留まり近くの物体に憑依して再びランボーグと化すのだが、見た感じアンダーグエナジーが留まっている感じはしなかった。
(まさか、ひかる君が……なんてね)
一瞬ひかるが何かしたのではと考えるもそれは直ぐに違うと否定する。彼は今までプリキュアの力やまた何か特別な力があったりとそれを匂わすような行動は一切無かった為、それは違うと判断する。
取り敢えず気になるも今はこの病院から出ようとオーロラはヒョウと共に出口に向かって走り出したのであった。
だが、此処で一つオーロラはある事を見落としていた。それはランボーグが電撃で倒されたのなら中にいたらんことひかるも感電する筈。しかし、二人は全くの無傷であった事だった。
───────
一方その頃、ムーンライズは現在手術室から飛び出して少し離れた場所でキメラングと戦闘を繰り広げていた。
「うおおおおっ!!!」
「ハハハハッ!!!中々やるじゃないか‼︎」
お互い光弾やレーザーを放つも一進一退の攻防が続いている。ハイスペックアーマーを纏ったキメラングは基本的に強く複数人のプリキュアが相手でも勝てる実力を有している。だが、それにも関わらずムーンライズとの互角の戦いを見せるのは少し前に強化したツイスターと戦闘した際にアーマーを形成するドローンが一部破損した事と、ムーンライズの多彩な技で本来の実力を発揮出来ていなかったのだ。
「良いねムーンライズ!君の実力は中々の物だよ。最初はサンライズと比べてパワーが弱かったから弱体化したのかと心配したよ!」
「そっか、それはどうもっ!」
持ち前の機動力で一気に距離を詰めそのままの勢いで飛び蹴りを放つも、
「はい、ハズレ!」
「チィッ!なら、これだ!」
飛び蹴りが回避されるも攻撃の勢いを止めずにムーンライズは光弾をキメラングに向かって放つ。
「はい、今度も外…グオッ!?」
迫り来る光弾を避けたキメラングだが、光弾は軌道を変えてキメラングへ命中する。
「今度は当たったな」
「ぐっ、まさか追尾式とは…先程まで私に通常の弾を放って油断させた所をまだ見せてない追尾式でやるとは……中々やるじゃないか」
「当たり前だ。俺は何度も戦って経験を積んだんだ。これくらい出来て当然だ」
そう言うとムーンライズは再びキメラングに光弾を浴びせようと右手を突き出す。
「キメランラン」
「なっ!?」
キメラングはその場から消えると一瞬でムーンライズの側に現れると彼の右腕を両大腿で腕をはさみ込み、手首を両手で掴んで腕を後ろに反らせる。
「がああああああっ!?」
「ハーハハハッ!!!どうだ痛いかい?私は戦いについて研究しているからアーマーのスペックだけに頼らずこう言う技も出来るんだよ」
キメラングの行った技は腕ひしぎ十字固めである。よりにもよって少し前にらんこから受けた関節技を再び喰らうとは思っても見なかったムーンライズは右腕に大ダメージを受ける。
(ぐっ、ぐそぉ…よりにもよってらんこさんと同じ関節技を掛けやがって…!)
1日に2度同じ技に加え同じ右腕に受けてしまった為、ムーライズは余計にダメージを感じていた。
「おやおや、顔が段々と赤くなっているけど、私の身体を直接触れて興奮でもしたのかなぁ?」
「ぐっ…調子に乗るのもここまでだぜ…!」
そう言うとムーンライズは痛みに耐えながらも身体に光のオーラが纏われると彼の身体は浮かびそのまま勢いよく天井にキメラングを叩きつける。
「ゴオッ!?」
「そら、お返しだ!」
天井に叩きつけられた事によりキメラングは技を緩めてしまい、ムーンライズはその隙を狙い彼女を床に向かって叩きつける。
「があっ!!!」
床に叩きつけられた事に衝撃でクレーターが出来、キメラングは意識を失った。
「ふぅ…悪いな。でも、俺は忠告したぜ。怒ると手をつけられなくなるってな」
そう言うとムーンライズは床に倒れ伏すキメラングに近づき彼女の腰に付いているらんこのミラージュペンを取ろうと手を伸ばす。
「……くく、クハハハハハハッ!!!!」
「っ!?おいおい、マジかよ…!」
意識を失っていたと思われていたキメラングが笑い声を上げた事にムーンライズはギョッとなり数歩離れる。対してキメラングは決して軽くないダメージを負っているにも関わらず、ゆっくりと立ち上がる。
「いたたっ、全く。まさかキュアウィングの様に飛行能力も持ち合わせるとは…まるで玩具箱の様に色々な能力を持っているねぇ。これはデータの取り甲斐があるってものだよ!」
「まだ、戦うのかよ…!」
「あったり前さ、私はまだまだ君の事を知りたいんだ。だから君が全てを丸裸にするまで戦うのを辞めないよ」
これ以上の戦闘は命にも関わる。それにも関わらず戦おうとするキメラングにムーンライズは止めようとする。
「おい!それ以上は辞めろ!このまま戦うと死んじまう……って、なっ!?」
その時、ムーンライズは信じられない物を見る。先程までボロボロで動けそうになかったキメラングの全身の傷は映像を巻き戻すかの様に治っていき、あっという間に全快する。
「嘘だろ!傷が回復した!?」
先程まで重症だったキメラングの身体はまるで回復アイテムを使ったのではと思ったが、それは直ぐに違うと判断する。何故ならその様な物は戦いの最中使ったりそれを見せた様子は無かったのだ。それなら何故傷が治ったのだと考えているとキメラングが笑みを浮かべる。
「その反応、かつて戦ったキュアフィナーレの事を思い出すねぇ。彼女も今の君みたいに驚愕な表情を浮かべていたよ」
「フィナーレって誰だか知らないが、その回復…一体何をしたんだ?」
ムーンライズはどうやってキメラングが己の傷を治したのか、言わないとわかっているがダメ元で聞いてみると、
「なんだい、私がどうやって怪我を回復させたのか知りたいのかい?」
「えっ、教えてくれるのか?」
「ふふん
お・し・え・な・い♪」
「教えねえのかよ!?」
ムーンライズは思わずツッコミを入れる。無駄に溜めといて結局は教えない事にキメラングに揶揄われたのだと理解する。
「まぁ、特別にヒントを与えるよ。注目するのは此処だよ」
「此処って……ヘルメットの事か?」
キメラングが自身の被るヘルメットに指し示した事にムーンライズは首を傾げる。
(キメラングは確か今使ってるアーマーやハイマックスを作り出したんだ。あのヘルメットにも何か特別な力があるのか?)
ヘルメットに回復させる秘密があるとわかったが具体的にどんな秘密があるか分からないが、何かしらの物があるのだと推測する。
「さて、そろそろ戦いの続きを始めようか!」
「っ!」
キメラングは不意打ちと言わんばかりに背部につけてあるドローンからスラスターを起動させ、一気ムーンライズに距離を詰めるとその勢いで回し蹴りを放つ。それに対してムーンライズは咄嗟に左腕で防御する。
「ぐっ、いきなり不意打ちって…!」
「悪いね。君の反射神経を試してみたかったんだ。だが、その様子なら私を満足させてくれるデータを提供してくれそうだね!」
キメラングはそう言うと少し距離を空けると両肩のドローンを展開してミサイルを発射する。ムーンライズは迫り来るミサイルに対して持ち前の機動力で回避して自身も光弾を放ってミサイルを相殺させると爆煙が舞ってそこからキメラングが飛び出してくる。
「なっ!?」
「そおらっ!」
「があっ!」
爆煙を煙幕として利用して現れたキメラングにムーンライズは思わず呆気に取られ、その隙を突いてキメラングの拳をモロに受けムーンライズは身体が宙に舞うも、バク転してダメージを受け流し床に着地する。
「おお、ナイス着地。これならもっとデータを取れそうだね♪」
キメラングはムーンライズに向かって賞賛の拍手を送ると続いて攻撃をしようとする。
「いや、悪いが俺はこれ以上お前との戦うつもりはねえ」
「え?」
そう言うとムーンライズは背を向けてその場から去ろうとする。それを見たキメラングは思わず呆然となるも数秒ほどでハッとなり彼を呼び止める。
「ちょいちょい、君さ何か忘れてないか?私はツイスターのミラージュペンを持っているんだよ。それを手に入れないってのかい?」
この戦いのキッカケであるらんこのペンを求めて先程まで戦っていたのに突然ムーンライズが戦いを止めた事にまさかペンを諦めるのかとキメラングは思ったが、
「悪いが、ペンならもう手に入れた」
「え?……はあああああああっ!?」
ムーンライズが手に持つ物を見てキメラングは珍しく驚きの声を上げる。今彼が手に持っているのはらんこのミラージュペンだった。
「い、いつの間に取ったんだ!?」
「お前が煙の中から出て来て殴った時にな」
そう、ムーンライズはキメラングが爆煙の中から飛び出して不意打ちをした際に彼女の腰に付いていたミラージュペンを回収したのだった。
「と言うわけだこれ以上お前と戦う理由は無いからな。じゃあな!」
そう言ってムーンライズはその場から走り去って行こうとする。
「おっと、そう簡単に逃す訳には行かないよ!」
キメラングがその場から逃げようとするムーンライズを追いかけようとする。
「いや、逃げさせてもらうぜ!はああああっ!!!」
背後から追ってくるキメラングの方に振り返ったムーンライズは全身から激しい光を放った。
「があああああっ!?め、目がああああああああっ!!!」
ムーンライズの光を間近で見たキメラングは目が眩みその場で悶え苦しんだ。
「真っ暗な廃病院を戦いに選んだのが不味かったな。兎に角今はこいつをらんこさんに届けないとな!」
そう言うとムーンライズはキメラングを放置して先に外へ向かったらんこ達を追いかける形で自身も出口へ向かうのであった。
そして、その場に残されたキメラングはそれから数十秒後に漸く目がの調子が戻る。
「ぐっ……まさか、目眩しの技もあるなんてね。実に興味深い」
キメラングはムーンライズへの怒りは一切無く逆に彼を褒めている様子だ。色々と持っている技や能力を前に彼女はそっちに興味を示していた。
「さて、今のハイスペックアーマーではやられそうだからハイマックスに予備のドローンを持って来させるか……あっ、そうだ!丁度こっちの世界に来たんだから以前手こちらで手に入れたアレを使ってみるのも悪く無いな」
キメラングはそう言うとダークパッドを取り出し、ハイマックスに連絡を取るのであった。