ソラシド市の住宅街にある一軒家、その住宅の中にある部屋では机に座りノートを開き、ペンで何かを書いているらんこの姿があった。ただし家の中にいるも関わらず相変わらずフードを被っていたが。
【春休み◯日目】
《中学一年生の3学期が終わり、春休みに入り退屈な日々を送っていた私だが、ましろと買い物する待ち合わせをして街の中で待ち合わせをしていた。その時まるで異世界ファンタジー小説の様に異世界から私達の真上に召喚?転移?…まぁ、どっちでも良いけど、私達と同じ位の歳の少女ソラ・ハレワタールと紫色の髪が特徴の
ソラ達を追う様に空から地面に落下して現れたカバトン…怪人豚男がエルを奪いにランボーグという化け物を使って襲ってきた。会って数分も経っていない筈なのにソラは自分から囮となり私とましろはソラから託されたエルを預かって逃げるが、ソラを倒した豚男がランボーグを連れて私達の前に現れる。
私は最初自分とましろの身の安全の為、エルを差し出そうと考えたが、思い留まり、無謀に啖呵を切る事になる。だけど結局ランボーグに捕まる事になる。その後ボロボロの身にも関わらず駆けつけたソラがキュアスカイへと変身して、手も足も出なかったランボーグを叩きのめし、私を助けてくれた──────》
「この時は我ながら最低な事をしてたわね……」
ノートに文章を書いていた手を止めると己の行動を思い返す。いくら自分達が危機だからと言って幼いエルをカバトンに差し出そうと考えた己に自己嫌悪を感じていたのだ。だが、そんな事をした自身に何故かエルは懐くという事に複雑な心境を抱いていた。
「……ほんと何でエルは私なんかに懐くのかしら?」
そう呟きながら思い返すのはソラとエルを虹ヶ丘家に連れて、ヨヨと相談してソラ達は暫く虹ヶ丘家にお世話になる事が決まり、らんこは自分の家に帰ろうとしたがそれを見てエルが泣いたり、その翌日で捻挫して2人に虹ヶ丘家へ連行されて行った際にはエルから抱っこしてと言わんばかりに催促されたり、抱いて暫くして捻挫の治療をして貰おうとましろにエルを預かって貰おうとしたら服を握って離そうとしなかったりするくらいだ。
らんこ自身何故こんなにも懐かれているのか分からず仕舞いで、もしかしたら前世で何かしらの縁があったのではと考えてしまう。
「まぁいいわ……取り敢えず情報を纏めるとこうね」
今は一旦考えは置いておき、日記から重要な所だけを抜き取り、先程書いた日記の隣のページに書き示す。
・春休みの◯日目にスカイランドからソラ&エルと邂逅
・2人を追う様にカバトン豚男がやってくる
・豚男はランボーグという化け物を作り出せる
・豚男の目的はエル
・ソラは変身してランボーグを倒す事が出来る。
以上の五つを上げると上から2番目の項目を注目する。
「豚男は何でエルを狙うのかしら……」
カバトンが態々スカイランドを超えてこちらの世界へ来てまでエルを手に入れようとする辺りただのチンピラでは無いだろう。
ただ、先日のショッピングモールでカバトンの発した台詞にらんこは気になる所があった。
『……ふ、ふざけやがってー!!!名前の事だけじゃなくて俺の気にしている事も言いやがって…!しかもアイツみたいな事を言って余計腹が立つのねん!最初はソラからにしようと思ったけど標的を変更!お前からボッコボコにしてやるのねんフード娘!』
ショッピングモールの時に言っていた
たが、それ以上に気になるのはエルの存在だ。
「エル……あんたは何者なの?」
分かるのは超能力が使える事とソラに変身する力を与える事ができる事だ。それ以外スカイランドの何処に住んでいるのか全く分からない。
カバトンがどう言う訳でエルを狙っているのかはっきりと分かってはいない。恐らくエルの持つソラを変身させた力では無いかと推測する。
「……まだまだ情報が足りないわね」
まだソラ達と出会ってそう日数は経っておらず、エルについてもソラが偶々誘拐されていた所を助けたのがきっかけでエルが何処の誰なのか未だにわからない。そう考えている時だった。彼女の思考を遮る様にスマホから着信メロディが鳴り画面には"虹ヶ丘ましろ"と表記される。
「ましろから?」
一体どうしたのだろうと思いつむ画面をタッチしてスマホを耳に当てる。
「もしもし、まs《おおっ!?本当にらんこさんの声が聞こえます‼︎》ロォッ!?」
電話に応答しようとした瞬間スマホから大ボリュームの声が聞こえ、思わず椅子から転げ落ちそうになる。
「び、びっくりするじゃない⁉︎いきなり大声で話しかけるんじゃないわよ!」
《うわぁっ⁉︎ご、ごめんなさい驚かせてしまって……》
「……て言うかその声はソラ?何であんたが電話に出ているの?」
スマホから聞こえてくる声と丁寧な口調から電話してきたのがソラだとわかるとらんこは冷静になり何故ましろのスマホから電話してきたのか問い詰める。
《はい、ましろさんは出掛ける準備があってちょっと手を離せないので私が代わりにらんこさんに伝える為お話をしにきました》
「出掛ける準備?……あんた達何処か出掛けるの?」
《はい。ところでらんこさんは今お暇ですか?》
「…まぁ…暇と言えば暇ね」
正直今日は特に予定とか無く先程までノートに情報を纏めて一区切りつき、今の所彼女はやる事はなく暇と答えた。
《それなら丁度良いです。これから私たちスカイジュエルを探しに行くのでらんこさんもましろさんの家に来てください。あと、服装は動きやすい物でお願いします》
「はぁ、何よ急に?話の内容がさっぱr《それではらんこさんも準備が出来たら現地集合でお願いします!》…って、人の話を聞きなさい!……って、もしもしソラ?………通話切れてるし」
詳しく話の内容を聞こうとしたが、ソラは要件だけを言うと一方的に切ってしまう。
「……言いたい事だけ言って、切るって……はぁ…」
正直こんな強引な頼まれ方をして行く気はしないが、先日のショッピングモールの件でなにか合った時に自分に頼れと言ってしまった為、下手に断る事ができない。
「……仕方ないけど行くしかないわね」
軽くため息を吐くとらんこは面倒くさく感じつつも必要な荷物をリュックに入れて準備をする。だが、彼女は面倒くさいと言いつつも先程まで情報不足で色々行き詰まっていた為、良い暇つぶしになると少しは思っていた。
荷物をリュックに纏め終えると玄関を出て近くに止めてある自身の自転車に跨る。ここから虹ヶ丘家まで徒歩だと最長40分、短くても30分掛かるから自転車を使って時間を削減しようと考え、いざ虹ヶ丘家へ行こうとペダルを踏み込むが、何故かペダルが重く感じて中々前へ進めない。
「……どうなっているの?」
ペダルが重くて中々前へ進めない。自分の体重が重い訳でも無いし、背負っているリュックの中身は特に重い物や大量の荷物を入れている訳でもない。なら、どうしてと思ったらんこは自転車から降りて確認する。
「……最悪」
とある所を見て彼女は不快そうな顔を浮かべる。
それは自転車のタイヤがパンクしていたのだ。通りでペダルを踏み込んでも中々前へ進めない筈だ。彼女は自転車のタイヤを修理する技術は勿論持っている訳がない。そうなると彼女に残された方法は一つしか無かった。
「………はぁ……走るしか無いわね……」
自転車が使えないとわかり直様意識を切り替えると、らんこは軽くストレッチで身体を解した後、虹ヶ丘家へ向かって走って行った。
────────────
一方で虹ヶ丘家では玄関の外にベビースリングを付けたソラ、バスケットを片手に持つましろ、そしてソラのスリングの中に入ったエルがいた。ただし、今日のエルは機嫌がよろしくない様子だ。
「さて、私たちの準備が出来た事ですし、後はらんこさんが来るのを待つだけですね」
「そうだね。ところでソラちゃんは私の代わりにらんこちゃんを誘ったけど、らんこちゃんはどんな感じだった」
とある事情でこれからソラとましろはスカイジュエルと呼ばれる物を探しに行くつもりだったが、ましろが出掛ける準備をしている間にスマホを貸してソラにらんこを誘って貰ったが、どの様にして誘ったのか聞くと、ソラは珍しくバツ悪そうな顔を浮かべている。
「あー……実はちょっと"すまほ"に興奮していて伝えたい内容だけ伝えてお話を終わらせてしまいまして…」
この世界に来た時から周りの人達が手にしているのを見かけていたスマートフォンをソラは前から気になっていて、ましろに貸して貰った時興奮してしまい、通話したらんこには特に拒否権など与えずほぼ強制参加させる様な言い方をしてしまった事に自責の念に駆られていた。
「あっ!も、もしかしたららんこさん怒って来ないかもしれません⁉︎」
あんな一方的な会話を聞いてらんこは怒って此処へはやって来ないと想像したソラはどうすれば良いのかわからずその場で慌ててしまう。
そんな彼女をましろは宥めようと声を掛ける。
「大丈夫だよ。らんこちゃんは優しいからきっと来てくれるよ……あ、そういえば……らんこちゃんの家はここからだと確か40分もするって言っていたから来るのが少し遅くなるかも」
「そ、そういえばそうでした!」
初めてソラが虹ヶ丘家に来た時、らんこが言っていた徒歩3、40分掛かる。つまり、此処かららんこの家(風波家)までの道のりは約3kmもある。
「だとしたら無理やり呼び出した私が迎えに行くのが通りです。私らんこさんを迎えに行って来ます!」
そう言ってソラはらんこの家へ向かおうとその場から駆け出す。
「ま、待って!ソラちゃんはらんこちゃんの家を知ってるの⁉︎」
「………あっ」
ましろの指摘を聞いてソラは足を止める。未だにらんこの家へ行った事が無いソラは勿論らんこの家の場所を知っている訳が無く、更にらんことの電話を終えてから10分も経っており、仮にましろから家の場所を聞いてもソラとらんこが同じ道を通るとは限らずすれ違う可能性が高い。
「ま、ましろさん……」
「大丈夫だよ。らんこちゃんの事だから自転車使ってくると思うから」
困った顔を浮かべるソラにましろは心配無いとフォローを入れる。流石に徒歩で40分掛かる距離を自転車無しで来るわけが無い。他にもバスなどの移動手段を使って来るかもしれないから此処は彼女が来るのを待とうと伝えると、
「待たせたわね」
「え、その声はらんこさ……ん⁉︎」
「ほら、言ったでしょ……え⁉︎」
その場から聞こえたらんこの声を聞いてソラとましろは聞こえてきた方へ向くと思わず目が見開く。
其処に
そこから覗かせる顔からは多量の汗を流し、肩で息をして両足もぷるぷると震えて生まれたばかりの子鹿の様に不安定で今にも倒れそうだった。
「ぜぇ…ぜぇ……じ、自転車が……バングゥ、じだがら…ぜぇ…走っで来ッゴホッゴホッ…!け、けどぉ、ばざか通…コフッ……信号に捕まる事なぐっ、ごぉれるなんで、予そぅガフッ‼︎」
「「ら、らんこちゃん(さん)⁉︎」」
「える⁉︎」
スタミナが無くなり足に力が入らなくなったらんこは前に向かって地面に倒れ、気を失う。2人は地面に倒れて気を失ったらんこを慌てて介抱するのであった。そして、先程まで不機嫌だったエルも思わず声を上げて倒れている彼女を心配そうに見つめるのであった。
──────────────
それから数十分後、倒れたらんこはソラとましろの2人に介抱してもらい何とか意識を取り戻し、今はましろから貰ったミネラルウォーターが入ったペットボトル一本を飲んでいた。
「ングング……プハァッ、あー身体に沁みる……」
水を一気に飲み干し、極限状態までカラカラになっていた己の体に水分が行き渡り、段々と体力を取り戻していく事に爽快感を感じた。
更に言えば2人に介抱されるまで割と命の危機を感じていたが水を飲んだ事により瀕死の状態から復活を遂げた事にまさに生を実感した。
『ふわぁ〜、生きてるって感じ!』
誰だコイツ?
「ら、らんこさん本当にすいませんでした!」
「へ?」
また知らない誰かが頭に過っていると、ソラが突然頭を下げて謝った事にらんこは呆気に取られる。
「……なんでソラが謝るの?」
「なんでって、私が無理矢理呼び出したから苦しい思いをさせてしまったから……」
「いや、それはここへ来るまで休まず走って来ただけだから…別にあんたは悪く無いわ」
そう、らんこはここへ来るまでいくつもの信号機のある交差点を通って来たが、運が良いのか悪いのかわからないが一度も信号機に捕まら無かった為、らんこは調子に乗って休まずノンストップで此処まで走って来たのだ。
因みにだが走っている途中にバスを使おうと考えたが財布を家に置いていった上に気づいた時は割と結構な距離まで来ていたから引き返さずそのまま直行しようと判断したのだ。
その結果が
「そう……ですか?」
「そうなの……ところでちょっと気になっていたけど……」
「え〜るぅ…」
「…なんかエルの機嫌があまり良く無いみたいだけど」
今日はえらくご機嫌が斜めなエルの様子にらんこは不思議に思っていた。人懐っこいエルがこうも不機嫌な態度を見せている事に一瞬オムツ交換かミルクを飲み忘れたのかと思ったが、2人がそんなミスをするとは思えなかった。
「そうなんだよね。けど、らんこちゃんが来てからは少しは良くなったと思うよ」
事実らんこが来るまでエルは泣いたり嫌々なそぶりを見せたり今よりも機嫌が悪かったが、らんこが目の前で倒れた事に不機嫌な態度は一変して心配そうに彼女を見つめていたのだ。
それでも不機嫌なのは変わりない。そんなエルを見てらんこは何かを思いつく。
「それなら、家から持って来たものが早くも役に立ちそうね」
そう言うと背負っていたリュックを下ろしチャックを開く。そのまま中から何かを取り出した。
「何ですかそれは?」
らんこの手の中には棒状の持ち手がついた小さな太鼓にその両側に玉付きの紐が付いていた物を握っていた。それが何なのかソラは分からないが反対にましろはそれが何なのか理解した。
「あっ、知ってるよそれ!確か"でんでん太鼓"だっけ?」
「そう…家の中を整理していたら見つけたから持って来たの。ほら、見なさい…こうやって遊ぶのよ」
そう言ってらんこはでんでん太鼓をエルに見せて反応したのを確認すると、回して太鼓の音を鳴らす。それを見たエルは先程まで不機嫌だった表情が一変して目を輝かせる。
「える〜!」
「あ、エルちゃんが機嫌が良くなった」
でんでん太鼓が気に入ったのかエルは手を伸ばす、それを見てらんこはエルにでんでん太鼓を渡すと彼女は太鼓をクルクルと回して音を鳴らす。
「凄いです。私達じゃエルちゃんの機嫌を直せなかったのにこうも簡単にやるなんて…!」
「大袈裟よ……赤ちゃんは好奇心旺盛だからこういう見たことない新しい玩具を渡せば自然と興味を持つ物よ…」
凄いとらんこを褒めるソラに対しらんこは謙遜した態度を取る。
「ところで今日は何で呼んだの?」
「あ、そうでした」
先程まで色々あり過ぎて今日らんこを呼び出した目的についてまだ説明をしていない事をソラは思い出すと、らんこの前に立ち上がる。
「実はらんこさんにもスカイジュエルを探すのを手伝って欲しいんです」
「スカイ…ジュエル?…そう言えば電話の時それを探すとか言っていたわね……一体何なのそれは?」
電話でソラがその様な事を言っていたがそれが何なのか全く知らないらんこは首を傾げる。
「スカイジュエルは私の世界にある宝石でそれを使ってエルちゃんのご両親と通信しようと思いまして」
「えっと……どう言う経緯でそうなったのか最初から最後まで教えてくれないかしら?」
いまいち要点だけではらんこには伝わらず詳しい内容について教えて貰おうとソラに説明を求める。
「わかりました。では、最初から説明します」
それからソラは語り始める。
今から数時間前にエルが泣き止まずソラがミルクを飲ませようとするが違うと言わんばかりに拒否し、ならオムツかと思ったがそれも違う。それなら何だろうと考えているとましろからは両親に会えなくて不安なのではと指摘され、エルは泣きながら頷く。それは仕方ない事だ。赤ちゃんのエルはスカイランドから誘拐されてこの世界に来てから一度も両親に会っていないのだ。両親の温もりを恋しくなるのは当然のことである。2人は何とかして両親とせめて顔を見せる事は出来ないかと考えているとそこにヨヨが現れてスカイランドと連絡する手段があると言うのだ。
「ちょっと待って」
「どうしましたか?」
説明の途中にらんこが一旦ストップして説明を中断させる。
「いや、経緯について分かったわ。2人はスカイランドにいるエルの両親と何らかの方法で通信する為にさっき言っていたスカイジュエルって言うのが必要なのは理解したわ。そして、それを手に入れる為に私を呼び出したと言う事なのね?」
「その通りです!まだ半分しか説明していないのにらんこさん理解するのが早いですね」
少し説明しただけで今回呼び出した目的について殆ど理解したらんこをソラは褒める。
「……でも、一つだけ解せない事があるわ」
「解せない事?」
「らんこちゃんそれはどう言う事?」
何からんこの中で納得出来ない事があるのだろうか、2人は彼女に何が分からないのか聞いてみる。
「……何でそこでヨヨさんがスカイランドとの連絡手段を知っているの?」
ヨヨが物知りな事はらんこは前々から知っている。というか寧ろ物知り過ぎて彼女には予知能力か何かを持っているのではないのかと疑惑を持っている程にだ。だが、ヨヨが物知りなのはあくまでこちらの世界について物知りという話だ。あくまでもヨヨはこの世界の人間だ。それなのに何故、
そんな風に考えているとソラとましろがらんこに話しかける。
「あー、その事についてなんですが…」
「実はお婆ちゃんは元々スカイランドの人間だったんだ」
「スカイランドの人間ね…それなら納得………ん、今なんて?」
一瞬聞き間違いだろうか、ましろの口からヨヨはスカイランドの人間と聞こえた気がした。いや、そんな馬鹿な事がある訳ない。聞き間違いだろうとらんこは心の中で判断していると、
「ですからヨヨさんはスカイランドからやって来た私と同じスカイランド人なんですよ」
「あー、成る程成る程。それなら納得………は?
はあああああああああっ!?」
衝撃の事実を聞いたらんこは最初は納得しかけたが、頭の中に
「ちょ、ちょっと待ちなさい!えっ⁉︎よ、ヨヨヨさんが、スカッ!スカッ!スカンディナビア半島にやってきたぁぁぁあああああ!?」
「らんこさんが何を言っているのか全く分かりませんよ⁉︎」
「お、落ち着いてらんこちゃん‼︎」
あまりの衝撃的過ぎる事実にらんこの脳内はキャパシティオーバーし、何を言っているのか全く分からず激しく動揺する。そんな彼女をソラとましろが落ち着かせようと宥めるのだった。
───────────
「……本当にごめん」
「いえ、私達は大丈夫です……」
「らんこちゃんこそ大丈夫?」
先程まで物凄いリアクションを見せたらんこだったが、今は鎮火した燃え滓の如くテンションが低い…というよりも元気が無いように見える。
「……いや、頭が冷えたから冷静になって考えられるわ。この前私が怪我した時のトンデモ薬と半年前に貰った風邪薬を作れた事に納得できる。」
今までヨヨが治療や風邪の時に作った薬は
「…ん、ちょっと待って……ヨヨさんがスカイランド人と言う事は………ましろあんたも異世界人だったの⁉︎」
ヨヨがスカイランド人ならその孫であるましろもスカイランド人という事に気付き驚きの声をあげる。
「ち、違っ!…くはないけど…いや、そうじゃ無くてお婆ちゃんはスカイランドの人間だけど、50年前にコッチの世界にやってきたの。それで私はこの世界で生まれたから純粋なスカイランドの人間じゃ無いから」
「あー…そういう事ね」
要するにヨヨは純粋なスカイランド人であるが、ましろはスカイランド人のクォーターであると言う事だ。
「それじゃあ、色々脱線したけど……ソラさっきの説明の続きを教えてくれる?」
「はい、良いですよ」
特にソラは拒否する事は無くらんこに再び説明をする。
2人の前に出て来たヨヨが教えてくれた。彼女の持つミラーパッドと呼ばれる鏡を使えばスカイランドとの通信が可能であるというわけだ。ヨヨはこの時に自分がスカイランド人だと明かし、それを知ったましろはその際にらんこと同様にキャパシティオーバーをして動揺した。
曰く、ヨヨはスカイランドにいた頃は博学者をしていて薬の調合なども出来てしまうそうだ。
話を戻すとミラーパッド単体ではスカイランドとの通信する事は出来ず、スカイランドに通信するにはそれなりのエネルギーが必要である為、スカイジュエルと呼ばれる石をソラとましろが探しに行くと言う事らしい。
「成る程…経緯について全て把握したわ」
俄かに信じられない話だ。1枚の鏡で世界と世界を超えて通信する事など、まさにファンタジーじゃないかとらんこは考える。
「……いや、ファンタジーだったわね」
らんこは目の前で起きてる事がまさにでは無く本当にファンタジーだと断言。ソラとでんでん太鼓で遊ぶエルを見て呟いた。片や異世界から来たヒーロー志望の変身ヒロイン。もう1人は超能力の使い手ハイパースゴスギ赤ちゃんだ。これでファンタジーじゃないなら何をもってファンタジーとすれば良いのかと思えるくらいである。
「それでそのスカイジュエルだったかしら?それって話を聞く限りソラの世界に存在する石で良いのよね?」
「はい、スカイジュエルは私の世界に存在するエネルギー資源の鉱石です」
「でも、それってソラの世界に存在する物でしょ?だったらこの世界に存在しないんじゃ無いの?」
今回の目的であるスカイジュエルは元々
「実はスカイジュエルはこの街にも存在するらしいんですよ」
「え、そうなの?」
「うん、しかも割と近所にあるらしいんだ」
スカイジュエルがこの街のご近所にあると言う事実を聞かされたらんこは一瞬信じられなかったが、恐らくその情報源はヨヨからだろう。それなら信憑性が高いだろうと納得する。
「それでそのスカイジュエルって、何処にあるの?」
「ええ、あそこにあります」
「あそこ…?」
自信満々にソラはある場所に指を指す。それに釣られてらんこはその場所へ視線を移すとそこには虹ヶ丘家の近くにある大きな裏山が存在していた。
「……なんか私の目にはましろの家の近くにある裏山しか見えないけど」
一瞬目頭を押さえながら再び視線を戻すがらんこの視界にはやはり裏山しか見えなかった。
「はい、スカイジュエルはあそこに有ります」
「……え、ごめん。ちょっと聞いていなかった。もう一回言ってくれない?」
一瞬聞き間違いであって欲しいと思い再びソラに問うが、
「ですからましろさんの家の裏山にスカイジュエルがあるんです」
「……………」
ソラの言葉を聞いてらんこは無言になり恐る恐る視線をましろに移すと彼女は無言で頷き、ソラの言っている事は本当であると示している。
即ち、この果てしなく広大な山から小さなジュエルを捜索しなくてはならないのだ。しかも少数人で。
「……じゃあ、せいぜい頑張りなさい」
その場から180度回転すると、自身の家から来た道を早歩きで戻ろうとする。
「ま、待って待って!」
「か、帰らないでください!」
早歩きで帰ろうとするらんこをソラとましろそれぞれ肩を掴んでが止める。
「無茶言わないでよ……あんなでかい山から異世界に存在する石ころを探すなんて結構根気がいるわよ……それに私はここまで来るのに全力で走って来たんだから明日から筋肉痛確定な上、あの山に探しに行ったら間違いなく筋肉痛が悪化して数日寝込む羽目になるわよ。…後、面倒臭いし」
「ねぇ、最後にぼそりと面倒臭いって言わなかった?」
恐らく最後に言ったことが本音であろうらんこはこれ以上運動はしたく無かった。だから断ってさっさと帰りたかった。
「それでしたらスカイジュエルを探した後、ヨヨさんに筋肉痛に効く薬を貰いましょうか」
「鬼かあんたは⁉︎」
さらっと鬼畜発言をするソラに思わずらんこはツッコミを入れる。
「そんな事言わないで……ほら、エルちゃんもらんこちゃんに手伝って貰った方が嬉しいと思っているよ」
「ちゃぁ〜」
「うっ…」
先程からでんでん太鼓で遊んでいるエルはらんこに向かってつぶらな瞳で見つめるが、思わず目を背けてしまう。此処で負けたら絶対に面倒事に巻き込まれる。それが嫌な彼女は何とか2人を振り切って逃げようと考えるが……
「……エルちゃんはお父さんとお母さんに会えなくて悲しんでいるんだよ」
「……」
ましろのエルが悲しんでいるという発言を聞いてらんこは無言になり、再び視線をエルへ向ける。元々スカイランドで穏やかに暮らしていたであろうエルはカバトンにどう言う目的で狙われたのか未だ不明だが、誘拐されて知人もいないこの世界に事故で来てしまった。"そんな子が何日も両親の顔を見られないそんな悲しい事があって良い訳がない!"とらんこの中にある良心が訴えている。
「……まぁ、わざわざ遠い所まで来たんだから何もせず帰るのもアレね…春休みもまだあるから退屈凌ぎにもなるかも」
「「やった!」」
「え〜る♪」
らんこは面倒くさそうな態度を示すも内心エルの悲しい顔は想像したくないため、スカイジュエル探しに協力するのであった。
「それに…フィジカルが弱いましろが途中でばてるかもしれないから、そうなったらソラに負担がかかりそうね」
「なっ⁉︎」
せめても無理矢理誘ったお返しと言わんばかりにましろに軽口を叩く。
「そ、そんな事無いよ!最近だって朝ソラちゃんとランニングを始めたから少しずつ体力つけているもん!」
「はいはい分かったわよ。それよりもソラ、スカイジュエルについて石のある場所って見当ついているの?」
ましろの発言を軽く流してソラにスカイジュエルを探す方法があるのか聞く。
「それならご心配無く。このミラージュペンを使います」
「……まさかだと思うけど、変身して有り余る体力でしらみ潰しに探すつもり?」
確かにミラージュペンを使ってキュアスカイになれば山の中を夕方までに探索する事は容易いだろうが、ソラは首を横に振って否定する。
「違いますよ。ヨヨさんが言うにはミラージュペンが場所を示してくれるみたいなんです」
「え、そのペンって変身するだけじゃなくてレーダー機能もあるの?」
「詳しい事は分からないけど、お婆ちゃんが言っていたんだよ」
ミラージュペンに備わる変身以外の機能にらんこは凄いと思ったが、その後に何故ヨヨはその事を知っていたのだろうと疑問を抱く。最初はソラ達と邂逅した時は既にソラとエルがスカイランドから来た事は把握してたであろう。だけど、"プリキュア"について最初は知らない事を言っていたが、もしかして最初からプリキュアについて何か知っているのではと考える。ソラ自身も知らないミラージュペンの機能を知っているのだから。
取り敢えず今はその考えは後にして今はスカイジュエル探しに専念しようと思い2人に声をかける。
「わかったわ……なら、そろそろ行くわよ」
「はい!」
「そうだね」
こうして3人はエルを連れていざスカイジュエル探しに裏山に向かうのだった。