ソラ達はスカイランドからソラシド市へ戻る時にそこでトンネル内で待ち伏せしていたキメラングに襲われた。そこでらんこが1人キメラングを相手してソラ達をソラシド市へ逃した後、虹ヶ丘家にいたヨヨとあげはに事情を説明し急いでらんこを助けようと再びトンネルを開いて貰おうとした。その時に庭かららんこが現れる事になるのだが…。
「らんこちゃん…さっきから起きないけど大丈夫かな…」
「所々怪我をしてますし、今は休ませて起きましょう」
リビングのソファで布団を掛けて寝るらんこをチラッと心配そうに見つめるましろをツバサが宥める。一同はらんこが無事とまでは行かないが帰ってこれた事に安心するも先程から死んだ様に寝るらんこの事が気になって仕方なかった。
「らんこさん…私達を逃した後1人でキメラングと戦っていたにしては妙に怪我と体力の消耗が戻ってくるまでの時間とは合ってない気がします」
ソラは持ち前の経験上らんこが多く戦ってきたのを見抜いたが、並行世界に飛ばされた上にその世界とこちらでは少し時間の流れに差がある事を知らない為、違和感を覚える。
「まぁ、そこら辺はらんこちゃんが起きてから聞いてみよう…それより気になるのは…」
恐る恐るあげはは寝ているらんこの直ぐ側にいる赤髪の青い隊服を着込んだ少女を視界に入れる。
「ウ-ン…」
「えるぅ…」
「ああ、らんこ…どうしてこんな姿に…!」
「……」
魘されているらんこの顔を心配そうに触れるエルの側にらんこの手を取り涙を流す少女…ベリィベリーの後ろ姿を見てあげはは無言になる。ソラ達から自分の妹分が危機的状況を知ったかと思えばらんこは何とか虹ヶ丘家に戻ってきた次の瞬間。素性のわからない少女がらんこに強烈な一撃(タックル)をかまして事故とはいえ頭を木に叩きつけた事もあり、あまり良い印象が抱けていなかった。
「ねぇソラちゃん達はこの子が誰なのか知ってるの?」
「はい、この人はベリィベリーさんです。スカイランドを守る青の護衛隊の隊員で私の先輩にあたります」
「えっ、つまり公務員って事!?」
「なんであげはさんも青の護衛隊を公務員呼ばわりに?」
「まぁ、この国って騎士とかは存在しないからね」
らんこといいあげはと言い揃いも揃って騎士や護衛隊を公務員呼ばわりされる事にツバサは複雑な気持ちを抱き、そんなツバサをましろがフォローする。
「所でベリィベリーちゃんって言ったけ?どうして此処にいるの?」
「そうですよ。僕たちがミラーパッドによるトンネルでスカイランドから帰ってきた後、らんこさんが危ない状況なんて知らせて無いのに…いや、それ以前にどうやってこっちに来れたんですか?」
自分達がソラシド市に戻る際にらんこが待ち伏せしていたキメラングから自分達を逃がす為、囮になった事をまだ伝えても無いのにベリィベリーが自分達の使ってきたトンネルを使わずにこちらの世界に来れた事が不思議でしかたなかったのだ。すると、ベリィベリーはらんこが寝ているのを良いことにスカートを摘み上げて中を覗こうとしたが直ぐにスカートから手を離すと彼女達の方に向く。
「実はお前たちがスカイランドから帰って数分くらい経った後だ」
そう言ってベリィベリーは自分がソラシド市へ来た経緯を話し出そうとする。
「ねぇ、その前に今らんこちゃんのスカートの中を覗こうとしなかった?」
ベリィベリーの回想に入る前、あげはは先程彼女がらんこのスカートの中を覗こうとした行動を指摘。
「……実はお前たちがスカイランドから帰って数分くらい経った後だ」
「いや、それよりもs「お前たちがスカイランドから帰って数分くらい経った後だ」あっ、はい」
ゴリ押しするベリィベリーにあげはは押され、取り敢えず彼女から此処へ来た経緯について聞くことにした。
────────
それはスカイランドにてらんこ達4人がエルを連れてソラシド市へ帰るのを見送った後、ベリィベリーを筆頭とした青の護衛隊はそれぞれの持ち場へ戻り、ベリィベリーは街のパトロールへ出ていた時だった。
─けて…助けて…
「?…なんだ?」
ベリィベリーは何処から共無く助けを求める声が聞こえた事に周囲を見渡すが、其処にいる住人達は誰も助けを求めている様子は無かった。
「気の所為か?」
先程聞こえてきた声は風か何かの音なのかとそう思っていると共にパトロールをするアリリが話しかけてくる。
「どうしたベリィベリー何かあったか?」
「いえ、誰かが助けを求める声が──」
聞こえたと言おうとした時だ。
─お願い、助けて…。
「っ!?…今の声は…間違いない!!!」
「お、おい、急に声を上げてどうした?」
突然と声を上げ、落ち着かないベリィベリーにアリリは心配する。
「らんこだ!らんこが私に助けを求めている!!!」
「はぁ?お前何言っt「待ってろらんこ‼︎今この私が助けに行くぞ‼︎」お、おい、ベリィベリー!持ち場を離れて何処へ行くんだ!?」
パトロールをそっちのけでベリィベリーは聞こえてきたらんこの声を優先し、彼女はアリリの静止を聞かずその場から走り出す。そのまま街の外れにあった自然発生した世界を超えるトンネルを見つけると躊躇無く飛び込んだ。
そして出た先が虹ヶ丘家の庭で丁度その時らんこが虹ヶ丘家でソラ達と再会した場面に出くわすと……。
「み、みんn「らんこおおおおおおおおおおおおっ!!!」ぐべえっ!?」
『……え?』
ベリィベリーはらんこの姿を視界に捉えると全力疾走し彼女の脇腹に向かって飛び込み、その所為で近くの木にらんこが頭を強く打ち付ける不慮の事故が起きたと言う訳だ。
────────
「──以上が私がここに来た経緯だ」
「「「え、えっと…」」」
途中であったらんこの助けを求める声が聞こえた事に困惑する。だが、それ以上に彼女の行動力に引いていた。
「えっと、ベリィベリーちゃんって言ったよね?そのトンネルが何処に通じているのもわからないで飛び込んだの?」
「ああ、わからなかった。でも、私はらんこに何か危険な事が起きたら直ぐにそちらへ行くと約束したからな。例え世界が違えど!」
あげははどこに繋がるかわからないトンネルを迷い無く飛び込むベリィベリーの向こう水さに一瞬複雑な心境を抱くもベリィベリーの真っ直ぐな発言と眼差しに思わず絶句する。
「(な、なんて真っ直ぐな目……らんこちゃんが此処まで慕われているなんて…!)ましろん、ソラちゃん、少年!この子とっても良い子だよ!」
あげはは最初何処の馬の骨かわからないベリィベリーを警戒していたが、先ほどの発言を聞いて彼女は純粋にらんこを心配する優しい子と思い警戒を解く。きっと、さっきのスカートの件も怪我が無いか気になっていたのだろうとあげはは思ってた(節穴)。
「ええ……ま、まぁ」
「あ…あはは…」
一方でツバサとましろはあげはの発言に同意しづらかった。ベリィベリーの本性…と言うよりもらんこに向ける愛の重さを知る2人にとって悪い人間では無いのだが、あっちで隙あらばらんこの貞操を狙おうとしてきたんだ。そんな人間を良い子と呼んで良いものかと悩んでいると。其処へソラが目を輝かせながらベリィベリーに話しかけてくる。
「凄いです!本来なら世界と世界の壁で聞こえない筈のらんこさんの助けを求める声が聞こえて助けに行こうとするなんて……ベリィベリーさん!!!貴女は間違いなくヒーローですよ!!!」
ソラはベリィベリーの行動をポジティブに捉え、更には彼女の行動は間違いなくヒーローと断言していた。
「フッ…よせ、照れるじゃ無いか。私はただらんこの事を常日頃に思っていたからこそらんこの危機をキャッチ出来たんだ。別に大した事ない」
「「……」」
褒めてくるソラにベリィベリーは謙遜な態度を見せるベリィベリーの発言にましろとツバサは無言になる。どんだけらんこに深い愛を持っていたら別の空間にいる筈の彼女の声が聞こえる様になるんだとツッコミを入れようかと考えていた時だった。
「皆、紅茶を淹れましたから少し休憩しましょう」
「あ、ありがとうお婆ちゃん!」
「丁度疲れていたんで頂きます」
其処へヨヨが紅茶を用意して一同はそれぞれ紅茶を頂く事にする。ましろとツバサは紅茶を飲み干しある程度落ち着くと一旦ベリィベリーの事は後回しにし、今回スカイランドで起こった事件を振り返ることにした。
「お婆ちゃん、どうしてアンダーグ帝国はスカイランドを襲うの?街を傷つけて…皆んなの心を傷つけて…酷すぎるよ…!」
今回スカイランドはバッタモンダーや裏で暗躍していたキメラングにより街は被害にあり幸いにも住民達は怪我をしてないが王と王妃はバッタモンダーにより眠ったままでキメラングによりシャララも行方不明で生きているかどうかわからない事となっているのだ。それにより3人を慕うスカイランドの人間達は以前よりも心が暗くなっている。
「ヨヨさん…アンダーグ帝国についてあれから何かわかった事がありましたか?」
「…そうね。あれから色々調べてみたわ。スカイランドとアンダーグ帝国はいわば光と影。二つの国は大昔に戦ってから交わる事なく過ごしてきた。なのに、何故今になってスカイランドを襲い、プリンセス・エルを襲うのか。沢山の書を紐解いてもその答えは見つからなかったわ」
「そう…」
スカイランドとアンダーグ帝国の関係性はわかったが、結局何故今にスカイランドを襲う理由についてまだ明らかになってないようだ。
「でも、1つだけ。王様と王妃様の呪いを解く方法が分かったの」
『えっ!?』
ヨヨの口から2人の呪いを解ける方法があると聞かされた一同は思わず声を上げ、身を乗り出す。
「あるのお婆ちゃん!?」
「王様と王妃様な呪いを…!」
「解く方法があるんですか!?」
「それって何なのヨヨさん!?」
「教えて下さい!ヨヨ殿!」
上からましろ、ツバサ、ソラ、あげは、ベリィベリーは興奮してヨヨに詰め寄り、ヨヨは興奮する5人を宥めると説明する。
「皆んな落ち着いて…ランボーグを浄化した時に現れる"キラキラエナジー"あれをこのミラーパッドに集めれば呪いを解く薬を作る事が出来るわ」
「キラキラエナジー…それさえあれば王様と王妃様を助けられるんですね!?」
「良かったですねプリンセス!」
「エルちゃん、パパとママを目覚めさせる事が出来るかもしれないって!」
ヨヨからの説明を聞いて一同は安心し、エルにも両親である王と王妃が目を覚ます事が出来ると伝えたがエルは"パパとママ"と聞いて2人が自身の目の前で呪いを掛けられた時の事が脳裏に蘇るとエルの目に涙が溢れ出す。
「ああああああんっ!!!ぱぁぱあああああっ!!!まぁまああああっ!!!」
「え、エルちゃん!?」
「ご、ごめんねエルちゃん辛い事を思い出しちゃって‼︎」
「プリンセス!こうなったら去年の忘年会で披露した私の隠し芸で泣き止んで下さい!」
「ちょっ!?なんで服を脱ごうとしているんですか!?」
「ほら、エルちゃん大丈夫だからねー」
大声を上げて泣いてしまったエルにソラとましろは慌てふためき、ベリィベリーはエルを落ち着かせようと何故か自身の服に手を掛け、それを見たツバサが慌てて止めるというカオスな状態がリビングに広がる。そして、あげははエルを宥めようと近付こうとした時だ。
「ああああ「エル…泣かないで……」ひっぐ、うっぐ…え、えるぅ?」
『あっ!』
何者かがエルを優しく抱き上げて彼女の頭を撫でて行くと次第にエルは落ち着いていく。そして一同はエルを落ち着かせた人物の姿に揃って声を出す。
「良かった……泣き止んでくれて…」
『らんこ(ちゃん)(さん)‼︎』
その人物は先程まで寝ていた筈のらんこだったのだ。彼女はエルが泣き止んでくれた事にホッとしている様子だ。
「らんこちゃん!目が覚めたんだね!?」
「良かったです!てっきりあのまま寝ていたらどうしようかと」
ソラとましろはらんこが目を覚ました事に心から喜ぶ先程まで頭を強く打った事による痛みの所為か魘されていた彼女に心配していたのだが、こうやって目を覚ました事で安心を覚える。
「ええ、心配かけたわね皆んな。それにエルもね」
「えるっ!」
一同に視線を向けた後、自身の腕の中にいるエルの頭を優しく撫でるとエルも彼女が起きた事に嬉しそうな顔で返事をする。
「おお…らんこ、目が覚めたんだな…良かっだぁ…ぼんどゔにぃよがっだぁ…!」
「ベリィベリー……あ、あれ、ベリィベリー?なんでスカイランドで別れた筈のあんたが此処にいるのよ?」
泣き出すベリィベリーを見てらんこは何故此処に彼女がいるのか不思議に思った。
「ベリィベリーさんはらんこさんが心配でこちらの世界に自力で来てくれたんです」
「じ、自力で!?え、それってミラーパッドのトンネルを使わずに!?」
自力でこちらの世界やって来たと聞いて思わず目がひん剥きそうになるも軽く咳払いをして己を落ち着かせる。
「まあ良いわ。それよりもありがとうベリィベリー。私の為に来てくれるなんて嬉しいわ」
「ぐすんっ…あ、あぁ、お前の身に危機が迫った時に助けに行くのは当然だからな」
自分の事を心配して来てくれたベリィベリーに御礼を言うとベリィベリー先程まで泣いていた事で鼻声になりつつも謙遜な態度を見せる。
「そう…それにしても何故なのかしら、ベリィベリーの顔を見ると頭が痛いんだけど」
「頭?……あ」
自身の後頭部に手を当てるらんこにベリィベリーは冷や汗を流す。今思い返してみたら自身がらんこに飛び込んだ際に頭を強打した事を思い出すもらんこの様子からして頭を強打した際にその時の記憶が飛んだのを察して胸を撫で下ろす。
「ああ、それはべ「ああ!それはいけないなぁ!きっと慣れないソファで寝ていたから痛めたのだろう!」べ、ベリィベリーさん?」
(((誤魔化した…)))
らんこの言葉にソラが彼女へと頭痛の原因を話そうとした際、ベリィベリーはらんこに嫌われたく無いが為に慌てて誤魔化した。
「そう?…あれ、ちょっと待って、そもそもどうして私は寝てt「さぁ、らんこ。寝室のベットを借りて身体を休ませよう」ちょ、ベリィベリー押さないでよ」
なんとしてでも自分が原因だと悟られたく無いベリィベリーは強引にらんこを寝室へと連れて行こうとする。
「あっ、そうだ。一緒に寝るのはどうだ?見た感じまだ疲れは完全に取れてないとみたぞ」
「え、でも…悪いわよ。スカイランドで色々お世話になったんだから」
スカイランドにて自分が落ち込んでいる時に慰めてくれたベリィベリーをまた頼る事に申し訳無さを感じる。
「心配するな、私はお前を助ける為に此処に来たんだ。存分に私に甘えると良い……そして、寝た時には……ぐへへ」
((まずっ!?))
ましろとツバサはベリィベリーの邪な声が聞こえ、このまま行かせたららんこの貞操が危ういと確信した。
「あ、あのっ!らんこさんにお願いがあります!」
「そ、そう!エルちゃんを元気にするのを手伝って欲しいの!」
「エルを元気に……具体的に何をすれば良いの?」
「「えっと、それは……」」
らんこが色んな意味で助ける為、咄嗟に手伝って欲しいと頼んだ物の何をすれば良いのか其処は考えていなかった様だ。早くエルを元気にさせる案を思いつかなければらんこはそこに居る性欲魔神にイタダキマス(意味深)されてしまうから2人は急いで案を出そうと脳みそをフル回転させる。
「それなら私に良い案があるよ」
「「えっ?」」
「…チッ」
「あげは姉さんそれって何なの?」
まさかのあげはが提案してくれた事にましろとツバサは呆気に取られるもその間にらんこはあげはから良い案について尋ねる。尚、その間にベリィベリーはらんこ達に聞こえない大きさで舌打ちをしていた。それはさておき、あげはは持っていた鞄から絵本を何冊か取り出す。
「これって…絵本?」
「読み聞かせでもするの?」
「あの、それでしたら僕もスカイランドの絵本を持ってきましたよ」
あげはの言う良い案とは絵本の読み聞かせなのかとらんことましろは推測する。ツバサも読み聞かせをするのなら故郷であるスカイランドから持ってきた絵本を出そうとした。
「ううん、少年がスカイランドから持ってきた絵本も気になるけど、今回やるのは読み聞かせじゃなくて人形劇だよ」
『人形劇?』
一同はあげはから人形劇をやると言う発言に思わず口を揃えて聞き返す。一方であげはは持ってきた鞄から自分をモチーフにしたお姫様の人形を取り出した。
「可愛い!なんだか、あげはちゃんみたい!」
「本当にあげは姉さんが1人で作ったの?凄いわね…まるでお店で売っているみたいね」
「ふっふーん、2人ともありがとう」
自分の人形が褒められた事にあげはは嬉しそうにするが、それを見てベリィベリーはむすっと不機嫌そうに顔が膨れる。
「らんこ……私も人形くらいは作れるぞ!」
「急にどうしたのよ?」
あげはの人形に興味を示すらんこにベリィベリーも彼女に注目してもらおうアピールをしたが、らんこは突然のベリィベリーの発言に首を傾げる。
「それでエルちゃんはどんなお話が良い?」
「える…」
あげははエルに人形劇の題材となる物語を決めて貰おうとシンデレラや赤ずきんといった女の子が主人公の絵本を見せるがどれもピンと来ない様子だ。そんな中ソラは一冊の本を手に取ってエルに見せる。
「でしたらエルちゃんこれはどうですか?」
「える?」
ソラがエルに見せたのは1人の男の子が3匹の動物達を従えて赤い肌が頭に生えた角が特徴である鬼と戦いを挑もうとするイラストが描かれた絵本だ。
「中身はわかりませんが、表紙にとてつもないヒーローを感じます!」
「ソラ、勘がいいわね」
「へぇ、桃太郎か…」
ヒーローを目指す者の直感なのか表紙を見ただけでどう言う物語かある程度察しがつくソラに感心を示すらんこ。一方でましろはソラが桃太郎を選んだ事に少し悩む。エルは女の子であるから男の子が主人公の桃太郎は楽しめるのかと思ったのだ。
「えるぅー!えうえうっ!」
「へぇ、エルちゃん興味あるんだ?」
どうやらエルは桃太郎が気に入った様子だ。
「桃太郎って言いましたが、どんなお話なんですか?」
「私も気になるな」
「桃太郎って言うのはね──」
それからましろは桃太郎について軽く説明する。桃太郎とは桃から生まれた桃太郎が悪い鬼を懲らしめる為に道中きび団子で仲間にした犬と猿と雉を従えて共に鬼ヶ島へ向かい鬼を倒して村から奪った宝を取り戻す話である。
「へぇ〜、こっちの世界の犬と猿と雉は強いんですね」
「まぁ、お話だからね」
桃太郎の話を間に受けるソラにましろは思わず苦笑いを浮かべていると、ベリィベリーは神妙そうな顔を浮かべている。
「いや、犬達は置いといて桃という果物から生まれる桃太郎…そいつは人間なのか?それに犬達も団子で仲間になるとは安くないか?もう少しこう戦って相手に実力を認めさせて仲間にする物じゃ無いのか?」
「か、考え過ぎですよベリィベリーさん!」
「そうだよ。これはあくまでも絵本の話だからね」
真面目に桃太郎を考察するベリィベリーをツバサとあげはが説得するもそれでも納得が行かないのからんこに話しかける。
「らんこ、お前はこの桃太郎以外にも鬼を退治する物語を知ってたりするか?」
「桃太郎以外に?……そうね、力太郎なんてどう?」
「力太郎…何だろうか名前を聞くだけで断然と興味が湧いてきた。是非内容を聞かせてくれ」
名前からして一時期力に固執していたベリィベリーにとって親近感が沸き、一体どう言う内容なのからんこに説明を求めた。
「簡単に説明するとあか太郎って奴が桃太郎同様に鬼を懲らしめる為、道中己の腕っぷしで癖のある実力者を2人ほど家来にして鬼を倒したって話ね」
「おお〜!それだそれ!私が求めたのはそう言う話だ!」
力太郎の話を聞いて正に実力ある者が勝つというシンプルな話にベリィベリーは目を輝かせるもらんこの次の発言で目から輝きは消える。
「まぁ、主人公のあか太郎も桃太郎みたいに生い立ちに癖があるのよね。何せ元はお爺さんとお婆さんの垢から生まれた垢人形なのよね」
「え……垢?」
「今、垢っていいましたか?」
「垢人形って…」
らんこの口から出た衝撃的な発言にベリィベリーは固まり、側で聞いていたソラとツバサまで固まってしまう。
「そう、垢なのよ。あか太郎はその名の通りお爺さんとお婆さんのかき集められた垢から作られた人形に命が宿って人間になったのよね…あれ、ベリィベリー?」
「アカ…アカ…アカ…」
「ちょ、ベリィベリー!?どうしたのよ!?」
力太郎の主人公であるあか太郎の名前にあかが付くからてっきり髪が赤いと思い親近感を抱いていたベリィベリーはあか太郎のまさかの正体に壊れた機械のようにアカという言葉を繰り返し、それを見たらんこは驚愕の表情を浮かべる。
「と、取り敢えず、人形劇の題材は桃太郎で良いよね」
「「うんうん!」」
ベリィベリー程では無いものの力太郎も魅力的に思ったソラとツバサはあか太郎の正体を聞いて力太郎の評価を180度変えて桃太郎に首を縦に激しく振るう。
「はは、じゃあ、人形を作ろっか」
あげはも2人の様子に軽く笑うと皆んなと共に桃太郎の人形を作り始める事にする。
「じゃあ、取り敢えず人形を作るにあたってそれぞれの役割りとか決めない?」
「はいはーい!それなら私は犬をやりたいです!」
「珍しいわねソラ、あんたならてっきり桃太郎をやるかと思ってたわ」
ヒーローを目指すソラが主人公ではなくてその家来である犬役を立候補した事に意外だと思っている。
「ええ、最初は桃太郎をやろうかと思いましたが、ヒーローを目指す桃太郎さんの手伝いをしてヒーローにするのも良いかと思いまして」
「ふーん、まぁ好きにすれば?」
特にソラが犬役をする事に反対する理由はなくそのままソラが犬を演じる事が決まる。
その後、ましろは猿役でツバサは雉役となり、3人はそれぞれの人形を作る中がらんこはまだ演じる役が決まって無かった。
「残ったのはお爺さんとお婆さんに敵である鬼ね…悩ましいわね」
前者であるお爺さんとお婆さんはどちらも物語の途中でフェードアウトするのが目に見えており、一方で鬼は物語の敵役として桃太郎達の前に立ちはだかるのだが、らんこは鬼を連想すると並行世界にて自我が無かったとはいえムーンライズやオーロラ達と敵対した事を思い出してしまい、正直やりたくは無かった。
「ねえ、らんこちゃんやる役がピンと来なくて困っている感じかな?」
「ま、まぁね」
「フッフッフッ、それならこのあげは姉さんがらんこちゃんにプレゼントを上げるよ」
そう言うとあげはは自分の鞄に手を入れるとそこから新たに人形を取り出した。それを見てらんこは驚きの表情を見せる。
「えっ!?も、もしかして私!?」
それは先程出したあげは自身をモチーフにしたあげは姫人形と同様にお姫様の衣装を着たらんこの人形をあげははらんこ本人に見せつける。しかし、その頭を見て疑問を浮かべた。
「あ、あれ?…ねぇ、あげは姉さん気の所為かこの人形って頭に何か生えてない?なんか…猫の耳のような」
自分に瓜二つな人形で頭の上に存在しない筈の猫耳を見て思わず目を細める。
「そうだよ。何せその子はにゃんこ姫であげは姫の可愛い妹だから」
「にゃんこ姫!?」
らんこ姫では無くにゃんこ姫であると聞かされ思わず声を上げる。というか何故自分そっくりな人形に猫耳なんて付けたのかとあげはに問い詰めた。
「だって、らんこちゃんって猫のイメージが強いんだよね。だからつい」
「ついって…はぁ、前にも誰かに猫って言われたような気がする…て言うかそれ以前に桃太郎にお姫様なんていない筈よ」
桃太郎にこんな西洋バリバリのドレスを着た姫が登場したら世界観がぶち壊しになるのではと懸念する。
「大丈夫だよ。其処はアレンジを効かせて鬼に攫われるって設定にするから」
「鬼に攫われるって…それ主人公が緑色の騎士の服を着た青年か、赤い帽子と髭を生やした配管工の物語に被ってない?」
どちらも世界的有名なゲームを連想する特徴を出すらんこにあげはは「ふふっ」と笑う。
「イイじゃん、こう言うの面白いでしょ?それに人形劇は演じる方も楽しまなきゃ」
「楽しむね……分かったわ。なら、私はそのにゃんこ姫って役にするわ」
演じる方も楽しむと聞いてらんこは納得し、あげはからにゃんこ人形を受け取る。後は敵役である鬼は誰が演じるか相談しようとすると其処に1人会話に混ざってくる。
「なら、私は鬼をやろう」
「「ベリィベリー(ちゃん)!?」」
会話に混ざってきたのは先程まであか太郎ショックにより壊れていたベリィベリーだった。
「ベリィベリーあんたもう大丈夫なの?」
「問題無い。私は青の護衛隊のベリィベリーだ。これくらいで落ち込む程精神はやわでは無い」
(いや、思いっきり衝撃受けてたよね?)
ドヤ顔で語るベリィベリーだが、あげはは思わずツッコミを入れようとしたが内心に留めて置くことにした。
「ところであげは、この人形劇は演じる方も楽しむと言ったな。なら多少のアドリブは目を瞑ってくれるのか?」
「え?別に良いけど、エルちゃんに楽しんで貰う事を忘れないでね」
「もちろんだ。この人形劇はあくまでもプリンセスを元気にする。その事は忘れてはいないさ」
スカイランドを守る護衛隊としてプリンセスであるエルを元気付けるという最終目的を忘れてはいなかった様だ。と言うかそれ以前スカイランドでの職務を放棄してソラシド市へ来てる事を本人は自覚してない。
「オッケー!これでそれぞれ演じる役は決まったね。なら、早速準備に取り掛かるよ!」
「「オオーッ!」」
あげはの音頭にらんことベリィベリーそれぞれ拳を上げて応えると、人形劇の準備を始めるのであった。尚、その際にベリィベリーがなにやら邪な笑みを浮かべていたのにはらんことあげはの2人は気付かなかった。
今更ながらベリィベリーがヤバイ奴になっている件。この作品の初期では特に主人公であるらんことこれといった関わりは書くつもりが無かったけど、気付いたらこんな感じに……いやぁ、心境の変化って恐ろしいッスね(他人事風)。