人形劇の準備を終えた一同はエルを虹ヶ丘家の一室へ誘導し、其処には垂れ幕や小さな舞台など随分と本格的な物が用意されており、まだ始まる前だと言うのにエルは目を輝かせている。
「それでは、人形劇の始まり始まり〜!」
あげはが物語の進行役である語り部を務めると人形劇が始まった。舞台に1つの雲が飛んでくる。
「むか〜しむかし。ある所に小さな雲がフワフワと降りてきました」
「雲?」
「あれ、桃じゃ無いんですか?」
事前に聞いた話では桃太郎は桃から生まれてくる為、物語の最初は桃が出てくるものだと一同は思っていたのだが、いきなりの雲に驚かされてしまう。
「ちょっと、アレンジしちゃった」
「は、はぁ…」
物語が始まってすぐにアドリブをするあげはにツバサは困惑の表情を浮かべる。開始早々に物語が破綻したが取り敢えず劇を続ける事にした。
「て言うかこれ桃じゃ無かったら何太郎になるんだ?」
「其処は流れ的に雲から生まれそうだから雲太郎なんじゃ無いの?」
この後雲から生まれそうな雰囲気からして桃太郎では無く安直ではあるものの雲太郎とい名前で生まれるのかと一同はそう思っていた。
「ふわふわと舞い降りてきた雲がぱかっと割れると、中から元気なエル太郎が出てきました!」
「「「「「エル太郎?」」」」」
「える〜!」
予想通り雲からこの人形劇の主人公が生まれてくるも、そこから出てきたのは観客であるエルによく似た人形であった。一同はエル太郎の登場に思わず反応する。
「主人公がエルちゃんなら見ているエルちゃんも楽しめるかなってね」
「成る程…」
あげはの考えに一同は納得し、その後も劇を続いていきエル太郎はミルクを飲んでグングンと大きくなっていく。
「しかし、ある日エル太郎の大好きな姉妹であるあげは姫とにゃんこ姫に危機が迫ってきたのです」
「「「あげは姫とにゃんこ姫?」」」
ソラとましろとツバサは語り部のあげはの口から出た2人の存在に動きを止める。先程までは主人公がまだエルに置き換わった事には納得出来たが、全く知らないキャラが登場する事には簡単に呑み込まない様だ。
「うん、折角作ったんだから出そうと思って、後このにゃんこ姫中々の出来だと思うけど可愛いと思わない?」
「ちょ、ちょっとやめてよ。恥ずかしいじゃない…」
(ああ、頬を赤くするらんこ…なんて可愛いんだ…!)
人形とはいえ自分がモチーフされた事にらんこは恥ずかしそうに顔を赤く染めつつにゃんこ姫人形を受け取る。その様子をそばに居たベリィベリーが見て思わず鼻血が出そうになり鼻を抑える。
一方であげはは再び語り部として戻り物語を進行させる。
「あげは姫とにゃんこ姫の住むお城に鬼がやってきてあげは姫を攫ったのです」
「むっ、私としてはにゃんこ姫が……まぁ良い。チャンスはまだあるさ」
((いや、チャンスってなに?))
鬼役を演じるベリィベリーの発言にましろとツバサは不穏を感じるも今はまだ様子を見ることにする。
「あーれー、助けてー!」
「お姉さまー!」
「ガーハッハッハ!あげは姫は貰ったオニ!返して欲しければにゃんこ姫!鬼ヶ島へくるオニ!」
「いや、語尾がオニって」
「ま、まぁ、ベリィベリーさんも真面目にやっているからそこは気にしないであげよう」
ベリィベリーの鬼の語尾に何やら癖がある事からツバサは思わず口出しをするもましろはそれをフォローする。
尚、余談だが此処とは別に絵本の登場人物に似た妖精達が住むメルヘンな世界では狼と魔女の妖精と仲良く遊んでいる赤鬼の妖精が思わずクシャミをしたとか…。
「ねぇ、この攫われた姫を救う為に敵の本拠地へ向かうシナリオってやっぱりマr「らんこちゃん気持ちは分かるけど言っちゃダメ」
らんこは何処ぞの某配管工の名を出しかけたりするもましろは直前で遮る。その後も物語は進み攫われたあげは姫を助ける為ににゃんこ姫とエル太郎は合流して鬼ヶ島を目指す。道中でソラ達が演じる犬と猿と雉を仲間にした。
「エル太郎達5人は旅をしながら笑ったり、偶には喧嘩したりして少しずつお互いの事を知り仲良くなっていきました」
あげはの言葉に一同はそれぞれの脳裏に自分達の出会いや様々なエピソードが甦り、懐かしい気持ちを抱きながら役を演じていくのであった。そして、エル太郎一行はあげは姫を攫った鬼が住む鬼ヶ島へ向かって行く。
「あれが、鬼ヶ島!」
「なんだか、嫌な感じです…」
「この嫌な雰囲気…アンダーグ帝国を思い出すわ」
その言葉に一同はスカイランドでの出来事を思い出す。自分達の力不足により王と王妃それにシャララが犠牲になってしまい気分が沈み表情も暗くなっていく。
「ヒッグ……あ、ああああああああんっ!!!!」
「「「「え、エル(ちゃん)!?」」」」
「「プリンセス!?」」
そんな時、突然エルが泣き出してしまう。一同は泣き出すエルを見て一旦人形劇を中断してエルの元へ向かう。
「急にどうしたの!?」
「エルちゃんどうされたんですか!?」
「もしかして…私達の気持ちにエルが反応しちゃったのかも」
どうやら一同の気持ちがエルにまで伝わってしまい不安のあまり泣いてしまった様だ。一方でソラは泣き出すエルを見てスカイランドでエルが泣いてしまった時の事と重なり、悔しい表情を浮かべ拳を強く握り締める。
「未熟でした…エルちゃんを元気にさせるつもりが逆に悲しませるなんて…!」
「ソラちゃん…」
己の不甲斐無さに嘆くソラをましろは心配そうに見つめる。それに釣られてツバサとらんことベリィベリーも表情が暗くなり、自分達の力不足に痛感していると、あげはが泣いてるエルを抱き上げて宥める。
「エルちゃん大丈夫だよ。エル太郎は最強だからね」
「えぅ、えぅ…える?」
あげははエルにエル太郎人形を見せると次第に落ち着き、笑顔になっていく。そして、エルが泣き止むのを確認したあげはは一同に視線を向ける。
「皆んな…劇の続きをやろう」
「あげは姉さん…」
「でも…」
今の自分達はエルを泣かしてしまった。そんな自分達が劇を続けてもエルが元気になってくれるとは思えなかった。
「話を聞く限りあっちでは大変な事があったのは分かるよ。でも、スカイランドに行ってない私が言うのもなんだけど今は失敗した過去に振り返るよりも今一番大事な事をするのよ」
「今…一番…」
「大事な事…」
確かにそうである。自分達はスカイランドでの出来事で傷ついたエルを元気にする目的で今人形劇を初めていたのだ。それを途中で投げ出すなんてやってはいけない事だ。
『そうだよ!今一番大事な事をする…だってそれがトロピカってるから!』
だからトロピカるってなんぞや?
「そうね…確かにそうよね」
「エルちゃんが元気に…喜んで貰うには最後までやり遂げないと!」
またらんこの頭に聞いた事のある声が聞こえるもその言葉とあげはが先程言った言葉に同意する。そしてソラも彼女と同じくエルを元気にする為に人形劇をやり遂げようと決心する。
「ああ、そうだ!私も悪の鬼っぷりを見せ!プリンセスを楽しまなければ!」
((なんだろう…不安を感じる…))
鼻息を荒くしながら意気込むベリィベリーだが、その様子にましろとツバサは彼女の今までの行動を見て何かやらかなさいか不安を覚える。
「では、人形劇を再開し改めて鬼ヶ島へ向かいましょう!」
それから一同は再び人形劇を続け、エル太郎一行は鬼ヶ島へ辿り着くと其処にはあげは姫を攫ったベリィベリーが演じる鬼が待ち構えていた。
「フッフッフ、よく来たオニ。エル太郎率いる家来達ににゃんこ姫よ」
「えるっ!」
「来てやったニャン!この誘拐露出魔‼︎」
「ろ、露出魔!?」
早速にゃんこ姫のあだ名呼びが炸裂した事に鬼は精神的なダメージを受け怯んでしまう。だが、それを見た猿が恐る恐るにゃんこ姫に話しかける。
「にゃ、にゃんこ姫ちゃん…今回はエルちゃんに見せる人形劇だからそれは控えた方が良いウキ」
「え…あっ!そ、そうだったニャン!私とした事がつい…」
うっかりいつもの様に悪党をあだ名で呼ぶ癖が出てしまった事に自身の額に手を置く。だが、今までエルの前でカバトンやキメラングをそれぞれあだ名で呼んでいたから今更なのではと考えてしまう。
「お前はエル太郎さんと僕達が倒すケーン!」
「その通りですワン!観念してあげは姫と村の財宝を返すワン!」
数的に有利なエル太郎一向は鬼に向かって降参する事を勧めるが、鬼はそれを一蹴する。
「ハッ!誰が降参なんてするかオニ!それに私の目的は最初からにゃんこ姫だ!あげは姫などにゃんこ姫をおびき寄せる餌に過ぎん!」
「え…私?」
((あれ、なんか雰囲気がおかしく…))
鬼はあげは姫など眼中に無くにゃんこ姫が目的である事ににゃんこ姫は目を丸くする。勿論この台詞はベリィベリーのアドリブである。しかし、ましろとツバサは彼女の発言に胸騒ぎが強くなる。
「にゃんこ姫が目的って、一体何をするつもりですかワン!?」
一方で犬はにゃんこ姫を守る様に彼女の前に立ち、鬼に向かって目的を問いただそうとする。
「フッフッフ、それはだな
にゃんこ姫の女体を※※*1する為だからだ!」
『!?』
「える?」
その時、突然時間が止まったのかと錯覚するかの様にその場が静まる。一同は鬼役を演じるベリィベリーのアダルティな発言を聞いて思考が停止する。しかし、幸いにもエルは幼い事からベリィベリーの発言の意味を理解しておらず首を傾げる。
「えっと……すいません。ちょっと今聞きそびれちゃったみたいです」
今のは恐らく聞き間違いだろうと一同は思い込むも、鬼のベリィベリーは一同の反応に首を傾げつつも再び口を開く。
「分からなかったオニか?具体的に言うとにゃんこ姫の※※*2を※※*3してだな」
「「「「なっ、なっ////」」」」
詳しく説明する鬼を演じるベリィベリーに一同は顔を赤くしていくと、慌ててましろが叫んだ。
「た、タイムーッ!!!」
「うおっ!?急にどうした、まだ私の台詞の最中だぞ!」
「「「「「じゃ無いわっ!!!」」」」」
耐えられなくなったましろが此処で一旦人形劇を中断させ、ベリィベリーは自分の台詞を遮られた事に不満を見せるが、一同が怒った表情を見せ彼女に詰め寄る。
「ベリィベリーさん何言ってるんですか!?」
「プリンセスの前ですよ!?」
「そうだよ!エルちゃんの教育上悪いよ!」
「そうだよ!ちょっと、いやかなり台詞が刺激的過ぎるよ!」
ソラを筆頭に一同はベリィベリーのあまりにも逸脱した発言に強く注意する。その中でましろとツバサはベリィベリーがヤバい奴だとらんこが漸く気付いたのではと彼女に視線を向けると、案の定らんこは顔を赤くしながらベリィベリーに詰め寄る。
「ベリィベリー‼︎あんた言って良いことと悪いことがあるわよ‼︎」
「ら、らんこ…!」
らんこの怒った表情を見てベリィベリーは彼女に嫌われたのかと涙目になる。対してましろとツバサはその様子に"いいぞ!はっきりと言ってやれ"と心の中で思っている。
「あんたね
役にのめり込むのは良いけど観客は幼いエルなんだから表現をもっとマイルドにしなさい!」
「「ズコーッ!?」」
てっきりベリィベリーの本性に気付いたのかと思ったが、気付いていなかった事に思わずましろとツバサはずっこける。
「2人ともどうして何も無いところで転んでいるんですか?」
「「いいえ、何でも…」」
事情を知らないソラは突然ずっこける2人を見て心配するもましろとツバサは立ち上がり、らんこに呆れた眼差しを向ける。
それから物語は再開し、先程の発言はにゃんこ姫を自分の嫁にすると変更されて取り敢えずその場は収まる。
「さあ、にゃんこ姫を渡すオニ。そうすればあげは姫を返してやるオニ」
「そうはいきませんワン!あげは姫もにゃんこ姫もどちらも私達にとって大事な友達。渡しませんワン!」
にゃんこ姫を渡さないと言う強い意思を見せると鬼は溜め息を吐くと側にあった金棒を手に取ると振り回した。
「なら、力強くでにゃんこ姫を俺の物にするオニ!」
「そうはさせませんワン!はああああああっ!!!」
話し合いが通じないと断定し、犬が仲間を守る為鬼に向かって先制攻撃を仕掛けようとする。
「なんのっ‼︎喰らえ!雷鳴◯卦ィ!!!」
だが、鬼は何処ぞの海の皇帝に君臨する大海賊が使う技を口にすると雷を金棒に纏わせカウンターを決めようと迫る犬に向かって振るうが、犬は持ち前の身軽さでその攻撃を避けるが、雷を纏った金棒は避けた先にあった壁に当たると燃え移りそのまま鬼ヶ島へと…。
「って、うわああああっ!?燃えてる!本当に燃えてるよ舞台が!!!」
「「「「うわあああああっ!?」」」」
「えるーっ!?」
本当にベリィベリーの手で操る鬼から雷と言うよりも電撃が発せられ、舞台に当たり火事が起こり、その場は大惨事と化した。
───────
それからと言う物の炎上した舞台は部屋の隅っこに置いてあった消火器を使ってなんとか火を消す事が出来、被害は舞台と鬼の人形が燃えるだけで済んだのだが、
「本当にすまないっ!!!!」
一同の前にはベリィベリーが土下座して謝っていた。
「あ、頭を上げて下さいベリィベリーさん!」
「そうだよましろんも許してくれてるし」
「それにプリンセスも僕らも火傷してないですし」
「えるっ」
床に頭を付けるベリィベリーにましろとあげはは頭を上げる様に言う。ツバサもエルや皆んなが怪我をしてないから大丈夫と彼女を宥める。
「でも、演技に夢中になり過ぎてグローブを外し忘れてうっかり電撃を出しちゃうって……」
「ま、まぁ、うっかりは誰にでもありますよ」
「いや、普通うっかり電撃を放つってピ◯チュウじゃ無いんだから」
らんこは呆れた顔を浮かべソラはベリィベリーをフォローするも思わずツッコミを入れる。
「でも、どうしよう…これじゃあ人形劇の続きが出来ないよ」
「うーん、どうしようかなぁ…」
まさかの舞台が燃えると言うアクシデントは流石のあげはも考えておらず。幸いにも鬼を除く人形達以外は無事ではあったものの、今から舞台と文字通りベリィベリーの手により消滅した鬼を作り直すとなると夕方になってしまう。一体どうすれば良いのかと悩ませていると、エルに変化が起きた。
「えう…ん、しょ…」
「エル?」
「「「エルちゃん?」」」
「「プリンセス?」」
その時、エルが突然立ち上がるとゆっくりであるものの一同の方まで歩いてくる。一体どうしたのだろうとおもっているとエルはその小さな手を突き出すと口を開いた。
「しょーら」
「っ!エルちゃん!?」
突然ソラの名前を呼んだのだ。だが、ソラだけではない。
「ましお…ちゅばしゃ…あげは…びりぃびりぃ…」
「え、エルちゃんが!?」
「僕たちの名前を…!」
「呼んでくれたっ!!!」
「この中で付き合いが短い私までも呼んでくれるなんて…!」
ましろ達は自分達の名前を呼んでくれた事に感極まる。ベリィベリーはエルとはそんなに交流が無い上に人形劇を台無しにしてしまったにも関わらず呼んでくれた事に涙を流し出す。
「え、エル!わ、私は!?私の名前も言ってみて…!」
一方でらんこも一同に続いて自分の名前も呼んでもらおうとアピールをする。
「りゃ、りゃん…」
「ええ、そうよ!その調子よ!」
赤ん坊である事から舌足らずであるものの一生懸命らんこの名前を呼ぼうとするエルをらんこは応援する。そして、最後の一文字をエルが言おうとした時であった。
「りゃん、りゃん…える?」
先程の人形劇にてらんこが演じたにゃんこ姫人形がエルの視界に入り、らんこと人形を見比べると次の瞬間、彼女に指をさして名前を呼んだ。
「にゃんこ!」
「ええ、そうよ。私はにゃんこで……え?」
らんこは自分の名をにゃんこと呼ぶエルに頷いて返事をするが、思わず固まってしまう。
「にゃんこ♪にゃんこ♪」
「ちょ、ちょっとエル!にゃんこじゃ無くてらんこよ!」
すっかりにゃんこの名前が気に入ったのからんこをにゃんこと連呼するエル。そんなエルにらんこは否定するもにゃんこ呼びは変わらなかった。更に追い討ちをかけるように脳内に声が響く。
『よろしくな、ニャン子!』
『ニャン子!?私の名前はユニよ!』
『そっか!バイニャン、ユニ子!』
誰だコイツ等?
やり取りからして猫耳を生やした青髪の女の子の方が名前間違いをされているようだが、奇しくも最初に呼ばれた名前はらんこと同じだった。
「あ、はははっ…でも、可愛いよにゃんこちゃん」
「ちょっと、ましろもにゃんこって呼ぶんじゃないわよ!」
エルに釣られてか、ましろもついにゃんこと呼んだ事にらんこは怒った表情を見せる。
「良いじゃんにゃんこちゃんって可愛いと思うよ」
「あげは姉さんまでって…何それ?」
あげはも自分の事をにゃんこと呼ぶ事にウンザリした表情を浮かべかけるもあげはがらんこに何かを渡してきた。
「ちょっと、人形作りで材料が余ったから作ってみたんだ。猫耳カチューシャ」
あげはがらんこに渡したのは猫耳が付いたカチューシャである。渡されたカチューシャにらんこは恐る恐るあげはに目を合わせる。
「えっと、これをどうしろって?」
「それは勿論らんこちゃんが付けるんだよ。そうすればにゃんこちゃんの出来上がり、なんてね」
あげははらんこに猫耳カチューシャを装着する様に言うが、らんこは嫌そうな顔を浮かべる。
「嫌よ。なんで私がこんな物を…」
「私は似合うと思いますよ。それにエルちゃんだって…」
「にゃんにゃん♪にゃんにゃん♪」
「うっ…」
どうやらエルはらんこにカチューシャを付けて欲しい様だ。そんなエルの期待な眼差しを受け、らんこは溜め息を吐くと渋々カチューシャを装着する。
「これで良いかしら?」
「にゃんこ!にゃんこ!」
「はいはい、にゃんこですよー」
エルは猫耳が頭に付いたらんこに興奮した様子で手を伸ばすと、らんこはそんなエルの様子に満更でも無く彼女を抱き上げると笑みを浮かべる。そんな様子をソラ達は微笑ましく見ていた。
「エルちゃん…すっかり元気になりましたね」
「その前に私達がエルちゃんに励まされちゃったね」
「そうですね…あれ、ベリィベリーさん?」
先程からベリィベリーが静かな事に不思議に思ったツバサは彼女がいる場所に視線を向ける。
「ね、猫耳のらんこ…さ、サイコー…ガク」
「べ、ベリィベリーさん!?」
「ち、血が!鼻から大量の血が!?」
「しっかりして下さいベリィベリーさん‼︎」
「ほら、ティッシュあるから鼻を押さえて!」
その直後には頭に猫耳が生えたらんこの姿にベリィベリーは興奮のあまり大量の鼻血を吹き出し、床に血の池を作って倒れるとその様子にソラ達は慌てふためき介抱する。そこに事情を知らないヨヨが部屋に入ってきた。
「皆んな、ちょっと良いかしら?」
「「「「今は駄目ーっ!」」」」
「あら」
何かの用できたヨヨだが、目の前で幸せそうに鼻血を出すベリィベリーとそれを介抱するソラ達を見てタイミング悪いと考え、出直す事にするのであった。
───────
それからというものの、ベリィベリーの鼻血が治ると一同はリビングに待つヨヨの元へ向かうと其処にはテーブルにミラーパッドを置いて椅子に座っているヨヨの姿があった。
「皆んな、先程スカイランドから通信が入ったわ」
すると、一同はヨヨの言葉にミラーパッドに視線を移すと其処にはスカイランドにいるアリリの姿やその後ろには護衛隊と兵士たちが映り込む。
《王様と王妃様の目を覚ます方法についてはヨヨ殿から聞いた。スカイランドは大丈夫だ。皆希望を胸に前に向かって進もうと頑張っている!》
「え、目を覚ます?…ねぇ、それって何の話?」
通信先のアリリの口から出た重要な話にらんこは鼻にティッシュを詰めたベリィベリーにその事について尋ねる。
「そう言えばらんこはその時寝ていたな。実は寝ている間にヨヨ殿から王様達の目を覚ます方法について聞かされたんだ」
「え、何?また私だけハブられたの?」
またしても重要な話を自分だけ把握出来ていない事に落ち込み掛けるとアリリからの慌てた声が聞こえる。
《べ、ベリィベリー!?お前何処に行ったかと思ったらそんな所にいたのか!?と言うかどうやってそっちに行った!?》
スカイランドで行方が分からなくなっていたベリィベリーがらんこの隣に立っている事にアリリは驚く。一方でベリィベリー「ふふふっ」と得意気に笑いながらアリリの質問に答える。
「それは……愛です‼︎」
『何故そこで愛!?』
ヨヨとエルを除くその場にいた全員は一斉にベリィベリーの回答にツッコミを入れる。
《ま、まあ良い。兎に角ヨヨ殿にトンネルを開いて貰うからこっちn「嫌です」な、なにぃ!?》
スカイランドに戻ってこいと言おうとしたが、ベリィベリーはそれを拒んだ事にアリリは驚きの顔を浮かべる。
《ベリィベリー何を言っている!?お前は青の護衛隊だ!スカイランドを安全を守らないでどうする!?良い加減にしないと減給だけじゃ済まされないぞ!》
「それでも私は帰りません‼︎」
スカイランドへの帰還を拒否するベリィベリーをアリリは説得しようとするが、ベリィベリーは強く拒否する。お互い平行線なやり取りにソラ達はどうすれば良いかと悩んでしまう。
「話を遮る様で申し訳ないけどアリリ副隊長、ベリィベリーを連れ戻すのは待って貰えますか?」
《らんこ仮隊員?》
「らんこぉ‼︎」
2人の話し合いにらんこが入ってきたのだ。アリリはらんこが突然自分達の会話に入ったのと同時にベリィベリーを連れ戻すのを待ったと掛けた事に困惑の表情を浮かべ、対してベリィベリーはらんこの言葉に目を輝かせる。
「今私達は残念な事にアンダーグ帝国との戦いは苦戦を強いられてます。そこで提案なんですけど、ベリィベリーの力を借りても良いですか?」
《ベリィベリーの力?》
らんこの口からベリィベリーの力を借りたいと出て、アリリはそれを聞いて眉を顰めると、ベリィベリーの方に視線を移す。
「らんこ…私を必要としているのか!?嬉しい…嬉しいぞー!!!」
《…本当にそれが必要か?》
後ろで何やらおかしなテンションになっているベリィベリーを見てアリリは思わず彼女をそれ呼ばわりする。
「え、えぇ…少し前に血を大量に流しておかしな事になっているけど、そこはお気になさらず。ゴホン…ベリィベリーは実力もあります。スカイランドでは私とソラが一時的とはいえチームを組んでランボーグの撃退の実績があります。それに行方不明のシャララ隊長をこちらで捜索する時、隊員が1人でもいた方が良いと思って」
実際シャララがここにいるかどうか分からないが、捜索を続けて今だに彼女の痕跡や彼女と共にいたワシオーンの羽の一つが見つからない事からひょっとして爆発の際に別の世界へ飛ばされた可能性だって無きにしも非ずなのだ。
《ふむ、確かにお前の言葉にも一理ある……わかった。実はシャララ隊長捜索やプリキュア達のサポートとして隊員を2、3名程送ろうかと検討していたが丁度良い。それならベリィベリーにはプリキュアのサポートとそちらの世界でのシャララ隊長の捜索任務与える》
「はっ!その任務謹んでお受けいたします!」
アリリはらんこの説明を聞いて納得するとベリィベリーに正式にソラシド市に滞在する任務を与えた。
《いいか、くれぐれも迷惑をかけるなよベリィベリー》
「それは心外ですよ副隊長、私は青の護衛隊の隊員…風紀を乱すような真似を今までしてませんよ」
((いや、さっきまでがっつりとしてました))
先程までの人形劇で奇抜な行動や卑猥な発言と言ったエルの情操教育によろしく無く、更には危うく家を火事に仕掛けた事など青の護衛隊とは思えない数々の所業がましろとツバサの脳裏に甦り、思わずベリィベリーにツッコミを入れようと考える。
《分かった。では、こちらにも何か進展があったら連絡する》
「はい、こちらはお任せ下さい」
アリリとの通信を終えるとヨヨはミラーパッドをソラに渡す。
「王様と王妃様の呪いを解くために必要なキラキラエナジーを集めるにはミラーパッドが必要となりますから、ソラさんはミラーパッドを持っていて下さい」
「はい、わかりました」
ヨヨからミラーパッドを受け取ると、らんこがソラに話しかける。
「ねぇ、キラキラエナジーって何?さっきから私だけ情報が更新出来てないんだけど、どう言う事よ?」
「ああ、実はですね……ん?」
「ソラ、どうしたのよ?」
キラキラエナジーについて説明しようとしたソラであったが、何やらミラーパッドを凝視する。それに不思議に思ったらんこはソラに話しかける。
「あ、いえ…実はミラーパッドを見て気づいたんですが、キメラングの持つあの鏡って…ミラーパッドと似ている気がして」
「マッドサイエンティストの?…そう言えば…」
今まで疑問に思わ無かった事だが、ミラーパッドを見てその疑問が浮上する。キメラングは今までの戦いにてランボーグを作り出す時や何かをする時にダークパッドと呼ばれる鏡を使っていた。そして、偶然なのか今ソラが手に持つミラーパッドと色は異なるも形状はほぼ同じであったのだ。
「ねぇ、お婆ちゃんこのミラーパッドってお婆ちゃんが作ったんだよね?」
「ええ、そうよ。私がまだスカイランドにいた時にそのミラーパッドを作ったのよ…でも、急にどうしたの?」
ましろの質問に対してヨヨは特に隠す事なく答えると何故今それを聞くのかヨヨは不思議に思いましろに聞き返す。
「実は私達このミラーパッドとそっくりな鏡を敵が使っている所を見たことがあるの」
「ミラーパッドとそっくりな鏡…それって……」
ヨヨは敵がミラーパッドとそっくりな鏡を使うと聞いて何か考え出そうとした瞬間である。
「うわっ!なに、何コレ!?」
窓の外に沢山の小鳥達が飛んでいる事にあげはは驚くとツバサが窓に近づく。
「あー、僕の鳥友達です。何かあった時に僕に知らせる様に頼んだんですよ」
「鳥友達って、あんた…いつの間に猫集会みたいな事をしていたの?」
困惑の表情を浮かべるらんこを他所にツバサは窓を開けると鳥の姿になり小鳥達の話を聞く。
「えっ、公園に!?」
「どうしたの?」
「公園に何かあったの?」
驚きの表情を浮かべるツバサが気になり一同は話しかける。
「大変です!どうやら公園にアンダーグ帝国の敵が!」
「「ええっ!?」」
「何ですって!?」
どうやら公園にアンダーグ帝国の者が現れた様で一同は驚くと、ベリィベリーはグローブを嵌めた拳に電撃を纏わせる。
「アンダーグ帝国…王様やシャララ隊長を…!」
「皆さん行きましょう‼︎」
「「「「うん(ええ)(はい)!」」」」
一同はアンダーグ帝国が現れたとされる公園へ直行する。そして、ヨヨは公園に向かう一同の後ろ姿を見て不安な顔を浮かべる。
「もう一枚のミラーパッド……まさかね…」
何か考えついた様子だが、それは違うだろうと判断し今はランボーグを倒しに行った皆んなの帰りを待つ事にするのであった。