ひろプリに野良猫系キャラを入れてみた   作:獅子河馬ブウ

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仕事の都合上投稿するのが遅くなってしまいました。
それでは最新話をどうぞ。


第73話 3人で繋げるバトン

リレーの特訓が始まってから数日が経過する。その間、ましろは一同のアドバイスや走るのが上手くなるコツを聞いて学校が無い時間はひたすら走った。勿論ソラとらんこも一緒になってだ。そのお陰かましろは普段よりも少しずつであるものの体力はついていき、走る速さも上がってきている。ましろもそれが実感できている様で自信もついてきた所だ。

因みにどうでも良い事なのだが、ソラは特訓初日にてらんこの特大の地雷を踏んでしまい、それ以降らんこに怯える事があるが…まぁ、そこは大した問題でないのでスルーする。

そして、ついに体育祭当日がやってくる。

 

─────────

 

体育祭当日。本日は雲一つない快晴で体育祭日和であり、体育祭が始まると各々生徒達が日ごろ鍛えた自分達の運動能力を披露するかのそれぞれの種目は白熱した物となっている。

 

「皆さん張り切ってますね」

 

「まぁ一年に一回の体育祭よ。そりゃ皆んな気合いも入れるわよ…って、ましろ?」

 

「うう…」

 

自分達の出番が来るまでらんこ達は先に出場している生徒達の姿を眺めていると側にいるましろが不安そうな顔をしているのに気がつく。

 

「ましろ肩の力が入り過ぎよ」

 

「そうですよ。こういう時はリラックスです」

 

「ご、ごめんね。でも…いざ本番になると緊張が止まらなくて…」

 

2人に対して申し訳なさそうな顔を浮かべるましろ。やはり特訓をして身体を鍛えていても精神までは鍛えられず、実際に走るというプレッシャーに襲われている様だ。これでもし自分が足を引っ張ってしまったらと不安になっていると己の肩にそれぞれ2人の手がのせられる。

 

「大丈夫です。ましろさん自分を信じてください」

 

「そうよ、あんたは十分頑張ってきたんだから後は何も考えず走りなさい」

 

「ソラちゃん…らんこちゃん…」

 

自分を励ます2人を見てましろは少し緊張が解れる。

 

「取り敢えずましろ、私が最初にぶっち切りで走るからあんたに余裕を持たせるから大船に乗ったつもりでいなさい」

 

そう言ってらんこはましろを安心させようとするが、ましろは彼女を不思議そうに見つめる。

 

「らんこちゃんは緊張してないの?」

 

「そりゃあ、少しは緊張しているわよ。でも、母さんや父さんが仕事で来れないのは幸いだったわ。身内の目を気にして走るのって恥ずかしいから」

 

「「え?」」

 

両親が来ない事に安心するらんこを見てソラとましろは驚きの声を上げると彼女を心配そうに見つめる。

 

「けど、寂しくない?らんこちゃんのママとパパがらんこちゃんの活躍を見れないなんて…」

 

「そうですよ。折角の晴れ舞台なのに両親が来ないのは…」

 

家族が体育祭を見に来れなくて本当は寂しいのではとらんこを心配するのだが、彼女は首を横に振る。

 

「ううん、大丈夫よ…まぁ、ちょっとだけ寂しいけど。でも、それを言ったら2人も人の事を言えないわ」

 

らんこの指摘にソラとましろは固まる。ましろの両親は現在外国で仕事をしており、中々家に帰ってくる日が少ない。ソラに至っては家族がスカイランドにいる為、簡単に会う事は難しいだろう。まぁ、ミラーパッドの別世界へ行くトンネルを生成する機能がある今はそこまで難しい物でも無い。

 

「まあ、あげは姉さん達が私達の走っている姿は録画するって言ってたから此処にいない家族の皆んなにも後で見せられるし。そうなると私達はこれからやるリレーの活躍する姿を見せつけるわよ」

 

「らんこさん……そうですね。今この場に来れない私達の家族の為にも良い活躍を見せませんと!」

 

「うん、ソラちゃんの言う通りだよ!私もこれまでの特訓の成果を出しきって見せるよ!」

 

先程まで暗い表情を浮かべていたソラとましろだが、らんこの言葉に自信が湧く。それを見たらんこは嬉しそうな笑みを浮かべる。

 

《続きましてクラス対抗リレーが始まります。代表選手は入場ゲートへ集合してください》

 

「ほら、私達の出番が来たわよ」

 

「そうですね。行きましょうましろさん」

 

「うん!」

 

自分達の出番が来ると3人は入場ゲートの方へ向かい、その後続々とやってくる生徒達と共に整列していつでも入場出来るように並ぶのであった。

 

(それにしてもこの私も変わった物ね…1年前のままだったらこんな所に立つ事は無かったのに)

 

もう直ぐ始まるリレーにらんこは内心己の過去を振り返る。去年はズル休みをして出なかった己が今年はこうやって出て、友達と共に走ろうとしているのだ。

 

(友達の為に走る…悪く無いわね)

 

過去の自分からすれば誰かの為に何かをやり遂げようとするなんて信じられない事だろう。でも、そう考えられるという事は自分は生まれ変わったのだと実感出来る。

 

「さて、走るからには全力を──」

 

全力を出そうと言って肩を回そうとする時だ。突然周りから大音量の音楽が響き渡った。

 

「え、なに…何なの?」

 

「これは一体?」

 

「リハーサルには…なかったよね」

 

突然響き渡る音楽にらんことソラとましろだけで無く、他の生徒達も困惑した表情を浮かべている。この音楽は何なのかと辺りを見渡すと其処にはいつの間にか吹奏楽部がおり、それぞれが持つ楽器を操り演奏をしていると理解すると同時にグランド中にあるスピーカーから声が聞こえてくる。

 

《さあ、始まりました第〇〇回私立ソラシド学園体育祭!今回の目玉であるリレー種目は特別実況を交えてお送りします》

 

「と、特別実況?それってい…はあっ!?」

 

何故か体育祭の1種目にあるにも関わらず吹奏楽部による演奏と謎の特別実況にらんこは困惑の声を上げると実況席に座る人物を見て驚きの表情になる。

 

《特別実況としてこの私、女子野球部所属の2年、四宮たまきと…》

 

《同じく女子野球部所属3年の扇かなめがお送りさせていただきます!》

 

実況席に座る人物達はかつてらんことソラにスポーツ勝負を挑んできた運動部軍団のリーダー的ポジションをやっていたたまかなコンビであった。

 

「たまきさんとかなめ先輩?」

 

「何で2人が実況なんて…」

 

ソラとましろの疑問は最もだ。先程まで実況をやっていたのは放送部の生徒達だ。それなのに放送部の代わりに特別実況と称して何故出たのか謎だった。

 

《さて、何故このリレーに特別実況が着くことになったのか体育祭に出ている生徒とその御家族を含めた皆さんは気になっている所でしょう!》

 

《この度のリレー種目は私達を筆頭に全運動部に打ち勝ってきた生徒2人が出場するからです!》

 

「「「え?」」」

 

たまかなコンビの言葉にらんこ達3人は身体が固まる。そして、辺りからは運動部に勝った生徒達がいると聞いてざわめき出す。それも仕方ない事だ。今実況している女子野球部のたまかなコンビはソラシド市でも実力ある存在と噂されており市内の中では有名コンビなのだ。そんな2人や他の運動部達に勝った存在がいればこんな反応になるのは当然だ。

 

(え、まさか言うわけ無いわよね?)

 

運動部に勝った生徒と聞いてそれは自身とソラであると直ぐに察したらんこはまさか本人の同意を得ず勝手に自分達の事を紹介するなんてプライバシーの侵害はしないだろうと思ったが、その希望は簡単に打ち砕かれた。

 

《まずその内の1人は今年の春こちらの学校は転校してきたばかりでスポーツテストを全て学校の新記録で一位をもぎ取った正にスーパーウーマンと言って過言では無いでしょう!2年1組のソラ・ハレワタールさんです!》

 

「わ、私ですか!?」

 

ソラは自分が紹介された事に自身に指を刺して驚きの声と顔を浮かべると同時に周りの視線が一気にソラへ集中する。それを見てらんこは一瞬安心するが先程の放送にてその内の1人と言ってた事を思い出し何かを察するが、もう放送は止められない。

 

《そして、もう1人は去年は体育祭と体育授業に参加しなかった彼女ですが、今年のスポーツテストにてその隠された実力を披露しスポーツテスト総合2位となり、更にはソラ・ハレワタールさんと共に我等運動部軍団に勝った2年1組風波らんこさんです!》

 

「うわあああああっ!?本当に言ったああああああああああっ!!!」

 

自分の名前と功績が大々的に公表された事にらんこは顔を真っ赤にして頭を抱える。すると、先程の放送内容を聞いた生徒とその家族達は一斉にソラとらんこの2人に視線が注がれ、らんこは慌ててソラとましろの背中に隠れる。

 

「ら、らんこさん?」

 

「な、なにやってるの?」

 

「だ、だって、皆んなが私を見ては、恥ずかしいのよ…!」

 

周りの人目を気にするらんこは必死に隠れる。以前スカイランドでも今この場に来ている人間よりも多くの人間や鳥たちから視線を向けられた事があるが、それは王様の腰をやってしまった罪悪感が強かった為、恥ずかしがる暇はなかったのだ。

 

(まさか、看板持っていこうとした逆恨みのつもり!?)

 

兎に角らんこは自分達の事をバラしたたまかなコンビに向かって恨みのこもった眼差しを向けつつ、周りの視線を気にしながらソラ達や他の生徒と共に入場ゲートを潜りそれぞれの走る位置に立つが、やはり先程の放送により自分と同じスタート位置に並ぶ生徒からは対抗心の眼差しを向けられる。

 

(うっ、これじゃあマトモに走れないわよ…)

 

周りから向けられる視線にらんこはソワソワし出す。これでは走る事に集中が出来ず、バトンを渡すましろに余裕を持たせる事が出来ない。

 

(お、落ち着きなさい私!こ、こういう時は深呼吸を……うん、無理だわ)

 

らんこは何とか気持ちを落ち着かせようと深呼吸を行うも一向に気持ちが落ち着かず自身の心臓が激しく鳴る事かららんこは無理だと悟った。そして、スターターピストルを手に持つ教師は心の準備が出来てないらんこの気持ちを知らず無慈悲にも引き金を引いてスタートを始めようとした時だった。

 

「らんこおおおおおおっ!!!ファイトオオオオオオッ!!!」

 

「「「…え?」」」

 

突然大声でらんこを応援する声が聞こえたために教師は引き金を引くのをやめて周りの生徒共々がその声が聞こえた方向へ視線を向ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フレッ!フレッ!ら・ん・こ!繋げ!繋げ!ま・し・ろ!最後は決めろ!ソォ〜ラッ‼︎」

 

そこには観客席にてチアガールの衣装を着てボンボンを持って応援するベリィベリーの姿があった。

 

「「「べ、ベリィベリー(さん)!?」」」

 

驚きの声を上げるらんこ達まさか彼女がチアガールとなって自分達を応援するとは思ってもみなく唖然となるが、

 

「皆んなぁ〜!気分アゲてこッ!」

 

「えるる〜っ!」

 

「あ、あげはちゃん、それにエルちゃんまで…」

 

「皆さん…私達に応援を…!」

 

更にその隣にもあげはとエルもチアガールの衣装を着込んで応援している事にソラとましろは嬉しそうになるが、逆にらんこはこれでは余計に目立ってしまうと考えていた。

 

「こ、これじゃあ更に視線が集中して、は、恥ずか…ん?」

 

恥ずかしいと言おうとした時、らんこはベリィベリー達の隣にもう1人チアガールがいる事に気がつく。

 

(あれは…誰かしら?)

 

視線の先には恐らく自分達の応援の為に来ているが、何やら衣装が恥ずかしいのか3人と違って応援せず先程から顔でボンボンを隠している様子だ。その姿を見てらんこは親近感を覚える。

 

(多分、私たちを応援する為にベリィベリーが雇った応援のバイトかしら?可哀想に…)

 

多分あの様子からしてチアガール衣装を着るとは思って無かった様で相当戸惑っている様だ。そんな時、あげはがバイトの少女(仮)に話しかける。

 

「ほら、何時までも顔を隠していたら応援が出来ないよ」

 

「で、でも、この衣装は恥ずかしすぎますよ!」

 

あげはは少女に話しかけるもやはり少女はチアガールの服に抵抗がある様でベリィベリー達の様にらんこ達に応援を送る所では無い様だ。そんな時、ベリィベリーも彼女?に話しかけている。

 

「良い加減にしろツバサ!お前も早くらんこ達を応援しないか!」

 

「そうだよ少年。せっかくチアガールになっているんだからボンボンで応援しないと」

 

「そんな事言ったって、僕はですよ!衣装だって学ランを着て応援するんだと思ってたのに〜っ!」

 

ベリィベリーもあげはと共に応援しないかと説得するが、ツバサは2人の説得を拒否する──。

 

「「「え……ええええええええええっ!?ツ、ツバサ(君)!?」」」

 

なんと、謎のチアガールの正体はツバサであった。確かに良く観察すればあの特徴的な髪型や声はツバサ本人で間違い無いだろう。

 

「つ、ツバサ!?あんたまでなんでチアガールの衣装着ているの!?」

 

「僕だって好きで着たんじゃありませんよ!」

 

ノリノリで応援する3人の隣には恥ずかしそうにボンボンで顔を隠すチアガール姿のツバサにらんこは着ている理由を問うと本人は不本意で着ている様だ。因みにツバサの隣にはヨヨが座っておりらんこ達にニコニコと笑みを浮かべながら手を振っている。

 

《おおーっと、なんでしょうあのチアガール達は!?》

 

《先程らんこさん達の名前を呼んでいたから恐らく、彼女達の関係者でしょう。因みにこちらにある資料によれば風波らんこファンクラブなる物が存在しており、恥ずかしがり屋派の数はツンデレ派の二つの派閥に別れている様です。更に関係者の情報によれば毎月約10通くらいのラブレターを貰っているようです》

 

「ちょっと何余計な情報開示しているのよ!?って言うかラブレターの事言ったのって誰!?」

 

またしても人様のプライバシーを侵害する解説をするたまかなコンビに思わずツッコミを入れるらんこ。尚、ラブレター10枚の内7枚は男子3枚は女子だったりする。*1そしてらんこはベリィベリー達のチアガール軍団やたまかなコンビへのツッコミをした事で頭が冷静になっていくと、チラッとツバサの方に視線を向ける。

 

(それにしてもツバサ……絶対生まれてくる性別間違えたわね)

 

あまりにも違和感を感じさせないツバサの姿にらんこは内心性別が間違っているのではと考えてしまう。そんな中、ソラとましろは恥ずかしがるツバサに声をかける。

 

「に、似合っているよツバサ君…」

 

「聞きたくありませんよそんなフォローは!!!」

 

「大丈夫です!ツバサ君とっても似合ってます!お世辞なんかじゃありません!」

 

「尚更ですよ!!!」

 

2人もどうやらツバサがチアガールの衣装を着ている事に違和感が無い事を指摘するがツバサは嫌そうだ。そんなやり取りを見てらんこは思わず口元を抑えて笑ってしまうも再び彼女達に視線を向ける。

 

(さっきまで緊張してたけど、皆んなのお陰で緊張が吹き飛んだわ)

 

意識してやった訳では無いが一同のお陰で先程まで己の中にあった緊張が無くなった事に内心感謝し、何時迄もソラ達のやり取りに呆然している教師に声を掛ける。

 

「先生、そろそろスタートを」

 

「…え、あっ、はい!」

 

らんこに話しかけられた事に教師は慌てて返事をし、スターターピストルを掲げる。それと同時にらんこと同じタイミングで走る生徒たちも構えを取る。それを確認するとらんこも走る構えを取る。

 

「いちについて、よーい!」

 

パンッと火薬が爆発する音が響くと同時にらんこ達第一走者は一斉に走り出した。

 

《さあ漸く始まりましたクラス対抗リレー!まずはじめにトップに出たのはらんこ選手だ!他の選手達から大きく距離を離して独走状態だ!》

 

《私達運動部軍団を倒した実力がある通り、本気になった彼女の実力はこれぐらいはないと》

 

実況の言う通り独走状態であるらんこ。持ち前の運動神経を発揮し次に走るましろの為に出来るだけ他の選手達から距離を取って走っている。そして、らんこはそのまま第二走者であるましろに向かってバトンを渡す。

 

「ましろ任せた!」

 

「うん、任せて!」

 

バトンを受け取ったましろはらんこが大きく差を付けたお陰で余裕を持って走れる。だが、ましろに続いて他の第二走者もましろを追い抜こうと距離を詰めていく。

 

《バトンは第一走者から第二走者に渡り中盤へと差し掛かります》

 

《ですが、現在一位であるましろ選手を追い抜こうと他の選手達も負けずに走ってます》

 

実況の言葉通りましろの後ろには第一走者からバトンを託された第二走者達がどんどん距離を詰めていく。

 

(絶対このバトンをソラちゃんに…!)

 

後ろから追いかけてくる生徒達の存在を気にしつつましろはなんとかソラに繋げようと必死に前を向いて走るが、背後から追い掛けられるのに焦ったのか体力が激しく消耗するフォームで走ってしまい、事故が起こる。

 

「ああっ!?」

 

「「ましろ(さん)!」」

 

コーナーを曲がる際に足がもつれてしまい派手に転倒してしまった。それを見たらんこ達は思わず声を上げ、応援していたベリィベリー達も心配する。

 

《あーっと!此処でましろ選手転倒してしまった!》

 

《其処へ次々と他の第二走者達が抜かして行ってしまう!》

 

実況の言う通り他の選手達は動けないましろをチャンスと見て抜き去ってしまい先程まで一位だった彼女は最下位まで落ちてしまう。

 

(どうしよう…これじゃあもう…)

 

先程まで自身が優位だったが、文字通り転落してしまうと後ろにいた走者たちに全員抜かれてしまった。ましろはその事に絶望感を味わい、これではもう勝つ事は出来ないと思い込んだその時。

 

「ましろ立ってー!」

 

「ましろさん諦めないで下さい!」

 

「っ!…らんこちゃん…ソラちゃん…」

 

まだ勝つ事を諦めて無い2人が自分を応援する姿を見てましろは自身を恥じた。何の為に今まで特訓してきたのだ…それは友達の2人と共にこのリレーを最後まで走りきるのだと思い、ましろは立ち上がると擦りむいた傷の痛みに耐えながら再び走り出す。既に他の走者はバトンをアンカーに託して、すっかり置いてかれるもましろはアンカーであるソラの元まで無我夢中に走る。

 

「ソラちゃん!」

 

「ましろさん!」

 

そして、ソラの元まで走るとましろは彼女にバトンを託した。

 

《さあ、ましろさんは遅れてアンカーのソラさんにバトンを託したッ!》

 

《だけど、他のアンカー達の距離が大きく離れていて此処からの逆転はむz──》

 

難しいとかなめが言おうとした時、グランドに一陣の風が舞う。突然の風にグランドにいたリレー選手達はなんだと疑問を浮かべるが、直ぐにその正体がわかった。

 

《そ、ソラ選手が物凄いスピードで走り出していく!!!》

 

それはましろからバトンを託されたソラであった。彼女はスポーツテスト以来の猛スピードで走り出し、目の前に走るアンカー達を追い抜いていく。

 

《ソラ選手、次々と他の選手を追い抜いていく!これが人間の出せる速さなのか!?まるでウ◯娘の様だ‼︎》

 

《ですが、此処からトップに一気に駆け上がることは出来るのか!?》

 

実況の言葉の通りソラの走る速さは学校のリレー選手達の速さを超えており、巷で流行っているウマ耳を生やした少女達の様に人間では到底出せない速さで走っているのだ。だが、それでもトップを走る選手との距離には差があり更にはその選手はあと数mでゴールテープを切りそうだ。

 

(これでは間に合わない…!)

 

流石のソラは此処から一位に登り上がるのは難しいと思い走る速度が落ちそうになるが、そこに二人の声が響く。

 

「ソラーッ!!!頑張って!!!」

 

「最後まで諦めないで!!!」

 

「っ!」

 

それはソラへと届けられたらんことましろからの応援の声である。更にソラの耳にはそれに続くように沢山の声が聞こえた。

 

「そうだ!らんことましろの為にも諦めるな!」

 

「最後までスピードと気分をアゲて行ってっ!」

 

「しょーらっ!」

 

「が、頑張って、下さい!」

 

それは観客席にいるベリィベリー達の応援であり、それを聞いたソラは全身に力が漲っていく。

 

「はい!!!頑張りますっ!!!」

 

ソラは大きく足に力を込めると地面を大きく抉り、更に加速。文字通り目にも止まらぬ速さとなると一位の選手を抜き去りそのままゴールテープを切ったのだ。

一方でその場にいた全員は何が起こったのか理解出来ず呆然としていたが、いち早くらんこが我に帰る。

 

「そ、ソラ……や、やったわ!やったのよ!ソラが一位になった!!!」

 

らんこの言葉にその場にいた一同は漸く状況を理解し、ソラがゴールテープを切った事に気がつくと一気に歓声が湧き上がる。

 

《…ハッ!な、何というか事でしょう!?私、目の前の出来事が飲み込めず呆然となってました‼︎》

 

《なんと、逆転するのは難しいかと思われたソラ選手がロケットの如く一気に先頭選手を抜き去りそのままゴールインをしたっ!!!つまり、今回のクラス対抗リレーは2年1組の勝利だああああああああっ!!!》

 

実況していたたまかなコンビも漸く我に帰るとソラが一位になった事を高らかに発言すると更に観客と生徒達の歓声が大きくなる。

 

「はあ、はあ……わ、私……勝ったんですか?」

 

一方でソラ自身は走るのに夢中になり、ゴールしてから息を整えて漸く周りの声に気付き自身が勝った事に気がつき、ソラは勝った嬉しさにガッツポーズを取るもハッとなりましろと先に彼女の元へ合流したらんこの元向かう。

 

「ましろさん!らんこさん!見てくれましたか!?」

 

「ええ、見てたわよ。最後の逆転は良くやったわソラ」

 

勝利に興奮するソラにらんこは笑みを浮かべて彼女を褒める。

 

「うん、凄かったよソラちゃん…本当にね、目にも止まらぬ速さっていうか、ビュ〜ンで、バンッでね…っ!」

 

「あ、ましろさん!」

 

「ましろ!」

 

ましろもソラが勝ったことに喜び語彙力を無くして行くが自分が転倒して2人の足を引っ張ってしまった事を思い出し、申し訳無い表情を浮かべるとその場から走り去ってしまう。らんことソラは直ぐに追いかけようとするが、先ほどのましろの顔を見て思わずその場で足を止めてしまうのであった。

 

────────

 

そして、ソラとらんこから逃げる様に去っていったましろは校舎裏の水道に来ており転倒した際に顔についた泥を洗い流していた。だが、泥を洗い流しても何度も洗顔を繰り返していき、暫くすると蛇口を捻り水を止める。顔を何度も冷たい水で当てたお陰で段々と落ち着いてきたましろであるが表情は暗いままだった。

 

「「ましろ(さん)」」

 

「あっ」

 

そんな時、後を追ってきたソラとらんこに声を掛けられたましろは思わず肩を揺らし、顔を起こすと恐る恐る2人の方へ視線を向ける。

 

「あ、あははは…ど、どうしてもお水が飲みたくて…汗もかいたし、それに体に泥がついていたから洗おうと、思って……」

 

 

ましろの言い分にソラとらんこは黙って聞いていると、らんこは水道の前に立つと蛇口を捻って水を流し持っていたハンカチを水で濡らすとましろに近づく。

 

「ら、らんこちゃ「怪我したとこ…まだ綺麗になってないわ」え、いたっ!」

 

一体何をするのかと思いきや、らんこは濡れたハンカチを使ってましろが転倒した時に擦りむいた膝を優しく拭く。ましろも傷口がしみって思わず声を上げるもらんこの行動を止める事が出来ず、ましろはらんこが本当の事を問い詰めたりせず、自身の身体を心配してくれる事に目から涙が溢れる。

 

「ご、ごめんね。わたし、走るの苦手だし…リレー選手だって自信なくて、なのに自分にもできるって思っちゃったんだよ……沢山特訓したから……2人みたいに速く走れなくても、ちゃんと走れるって……で、でもっ!だいじな、ところで転んじゃって…それで…それで…!」

 

折角らんこが頑張って余裕を持たせてくれたのにその努力を自分が無駄にしてしまい、ソラにも大きな負担を背負わせてしまった事に悔しさと申し訳なさの2つの感情が爆発して涙が流れていく。

 

「…別に私は気にして無いわ。ましろだって転んだけど諦めずに再び走ってバトンをソラに繋げたでしょ?」

 

「それでもだよ!私は2人の足手纏いに「ごめんなさい!!!」…え?」

 

すると、先程まで会話に参加してなかったソラが突然頭を下げて謝り出す。それを見たましろは驚きの表情を浮かべる。

 

「ましろさん…私、言いました。勝つためにはましろさんのバトンパスが必要だって、でもそれは半分は本当です。もう半分は……ましろさんとらんこさん友達の2人と走りたかったんです……だから、ましろさんが転んでしまった時…ほんの少しだけ、諦めてしまったんです。負けるかもって、仕方ないって割り切りそうになりました。でも、ましろさんは転んだ時、悔しいや悲しいとかじゃ無く…ただひたすら前を見て…前にいる私を見て走ってくれた。それを見て私の心に火をつけてくれたんです」

 

「っ!」

 

ソラの発言にましろは目が見開く。自分の走りにソラが影響された事にましろは驚いた。

 

「でも、私もその時先頭にいた子との距離もありまして逆転するのが難しいと諦めかけましたが、らんこさんとましろさん…そして、観客席に応援していたベリィベリーさん達の声を聞いて力を貰ったんです。絶対に一位になって見せるって」

 

そう言うとソラはましろとらんこの元へ歩み寄りそれぞれの手で2人手を握る。

 

「らんこさんはバトンをましろさんに繋げて、ましろさんはそのバトン…最高のバトンを繋げてくれましたよ」

 

「ソラちゃん…」

 

「フフッ…」

 

ましろはソラの発言に嬉しそうに笑い、らんこも同じ笑みをこぼし3人の間に和やかな雰囲気が広がって行こうとした時だった。突然辺りに大きな地響きが起こる。

 

「きゃあっ!な、なにっ!?」

 

「これは、地震!?」

 

「2人とも伏せて下さい!」

 

突然地面が大きく揺れた事にましろは驚き、らんこは周囲を警戒し、ソラは2人の身体を優しく抱きしめて怪我をしない様にする。

 

『ランボーグ!!!』

 

「「「っ!?」」」

 

その直後、グランドの方からランボーグの声が響き渡った。

 

「あの声はランボーグ!?」

 

「だとしたら不味いわ!あそこにはあげは姉さん達や皆んながいる!」

 

「急いで行きましょう!」

 

グランドにランボーグがいると確信した3人は急いでグランドへ向かうのであった。

 

────────

 

一方その頃、グランドではランボーグが出現した事に大パニックが起こり生徒と観客は慌ててその場から避難していく。

 

「ランボーグ!?こんな所に!?」

 

「あー!もうっ!折角3人が勝って気分アゲアゲだったのに!」

 

先程までらんこ達がリレーで勝利した事にあげは達は勝利の余韻に浸っていた所をランボーグが現れて折角いい気分が台無しになってしまったのだ。

 

「兎に角だ。ランボーグが現れたとなればやる事は一つだ!」

 

「そうですね。3人が何処へ行ったのか分かりませんが、戦うしかありませんね」

 

いち早くボンボンを手から外したベリィベリーはグローブを装着し、ツバサも続いて自身とこの場にいないらんこ達の分のミラージュペンを取り出した。

 

「よし、行くぞツバサ!」

 

「はい!……って、え?まさか、この格好で向かうんですか!?」

 

ベリィベリーの掛け声につい返事をしたツバサは冷静になり、今の自分達の姿を思い出し足を止める。今のツバサとベリィベリーは先程まで応援していた為、チアガールの格好をしたままなのだ。

 

「?…何当たり前な事を言っているんだ。早く行くぞ」

 

「い、嫌ですよこの格好で戦いに行くなんて!僕着替えてきます!」

 

ベリィベリーは気にして無いがツバサはこの格好のまま戦いに行くのには男として抵抗があり、せめて着替えてから向かおうとその場から離れようとするが直ぐにベリィベリーに捕まってしまう。

 

「なにを呑気な事を言っている!?そんな暇ある訳無いだろう!兎に角来い!!!」

 

「い、嫌だぁーっ!!!こんな格好で行ってアンダーグ帝国に見られたら末代の恥ですよーっ!!!」

 

「んな事知るかっ!!!貴様のくだらんプライドの為に余計な被害が広がってたまるか!お前も騎士を自称するなら多少の恥は我慢して街の平和を守れ!!!」

 

ツバサは頑なに拒否するもベリィベリーに担がれ、そのままランボーグの元へ向かってしまう。何時もはらんこが絡むと変態寄りな思考になるベリィベリーだが今回ばかりは非常事態である為、真面目モードとなっていた。*2

 

「頑張ってベリィベリーちゃん!少女!「ちょっと!?」あ、間違った少年!」

 

「びりぃびりぃ〜ちゅばしゃ〜」

 

その場に残されたあげは達はベリィベリー達を応援するとヨヨはあげは達に声を掛ける。

 

「さあ、あげはさんエルちゃん。私達も避難を……ん?」

 

ヨヨは自分達は避難しようと声をかけるが、校舎の屋上に誰かがいるのに気がつく。そこにいるのはらんこ達が戦うアンダーグ帝国の刺客の1人であるキメラングだ。ヨヨは初めて見る敵の姿に一瞬呆然となるが、内心ある感情が芽生える。

 

(あの子……前に何処かで……それに懐かしい……何故?)

 

初めて見る筈にも関わらずヨヨは何やらキメラングとは何処かで会った事があるのか既視感があるも同時に何故か懐かしい気持ちが芽生える。一体どういう事なのかとヨヨは珍しく悩んでいると、あげはに声をかけられる。

 

「ヨヨさん!私達も避難しましょう!」

 

「あげはさん……ええ、そうですね」

 

今この場にいるのは危険と判断してあげは達と共にその場を去っていくが、時折振り返ってキメラングの姿を確認するヨヨ。

 

(彼女は一体……何者?)

 

ヨヨはそんな疑問を抱きながらその場から去っていく。

 

「クククッ、さあ、プリキュア達…早く姿を見せてくれよ!そして、この発明した装置の力を試させてくれ!」

 

一方で校舎の屋上に立つキメラングは暴れ回るランボーグを止めにやってくるプリキュア達が早く来ないかと楽しみに待ち、その間に手の中にある装置を弄り回すのであった。

*1
ひかるがいるのにも関わらず、男子生徒だけには飽き足らず女子生徒からも貰うなんて……かーっ、卑しか女ばい!

*2
普段から真面目であれば良いのになぁ、本当評価がし辛い女である。

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