ひろプリに野良猫系キャラを入れてみた   作:獅子河馬ブウ

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ちょっと長めに書いてしまったで候


第9話 嫉妬する風と優しい光と動き出す狂気

スカイランドとの通信をしてエルの正体がスカイランドのプリンセスと言う衝撃的な事実を知って数日が経過する。その間カバトンの襲撃は無く前回の毒キノコで腹を壊した様でSNSからの目撃情報は一切なかった。その為、らんこはその数日間は家に引き篭もっていた分を取り返す様に充実した日々を送っていた。

 

「ふんふふ〜ん♪」

 

そして現在らんこは街の中を音楽を聴きながら自転車で漕いで走っていた。前回パンクした自転車を後日自転車屋に修理を依頼してタイヤを直して貰い、先ほど引き取ったばかりなのだ。

 

「やっぱり自転車はいいわね……丁度春風が体に当たって気持ち良いわ」

 

我ながら臭い台詞を吐きながらもその顔はとても機嫌が良い表情であった。今日は自転車を受け取った後、以前よりましろと出掛ける約束をしていたのだ。スカイランドからやってきたソラも急遽参加する事になったが、らんこは特に問題なく寧ろオッケーで、虹ヶ丘家へ向かっているのだ。

そして、自転車を漕いでから少しして虹ヶ丘家が見えてくるが、

 

「ん、あれはハマー…?」

 

虹ヶ丘家前に見慣れない車…ハマーが駐まっている。

 

「初心者マーク付いているのにハマーを乗るなんて……中々の度胸の持ち主ね」

 

通常免許入手したての人物は慎重で軽自動車などの小回りが効く車を運転するのが多いが、持ち主は運転に自信があるのかはたまたカッコ付ける為に所持するお調子者かと考えるが、

 

「……まぁ、私にはどうでもいいことね」

 

所詮は赤の他人だから一々気にするなんて面倒と思い、ハマーを無視すると彼女は虹ヶ丘家の玄関に立ちドアに手を掛けようとするが、その手を止める。

 

(……今お客が来ているみたいだから勝手に入るのは失礼ね)

 

普段なら家に遊びに行く事を予め連絡し、インターホンを押さずに入ったりするのだが、今日は先客がいるので其処を配慮して彼女はインターホンを押す。

そして、押してから少しすると家の中から足音が次第に近づき玄関の扉が開く。

 

「ましろ、お邪魔するわ…お客さんが来ている所悪い……ん?」

 

「こんにちは〜、お荷物ですか?今すぐ判子をお待ち……ん?」

 

玄関から出てきたのはましろでもソラでもなく、ましてやヨヨでは無い。長い茶髪を生やした濃いピンクの服を着た女性が出てくる。

 

「「……誰?」」

 

互いに暫く見つめあった後、同じ事を呟いた。

 

「あ、あげはちゃん!荷物の受け取りは私が…って、らんこちゃん⁉︎」

 

「ましろ…この人誰?」

 

すると家の中からましろが出てきてらんこは目の前の女性は誰なのか聞く。

 

───────────

 

その後、家の外で紹介するよりも中で紹介した方が良いとましろの提案により、らんこと女性はリビングに入るとそこにはソラと彼女に抱えて貰っているエルが既におり、らんこは彼女に軽く挨拶をした後改めて目の前に立つ女性を眺める。

 

(何なのこの人……髪を伸ばして、オシャレして、常にテンション高い感じ……まるでギャルね)

 

一瞬、ましろの歳の離れた姉かと思ったが以前彼女から自分は一人っ子であると聞いている為、身内説は外れる。なら何者なかと考察しようと思ったが、直接聞いた方が早いと思いましろに視線を向ける。

 

「まs「ねぇ、()()()()。この子はましろんの友達?」ろ……」

 

らんこが女性について聞こうとした時にそれを遮る様に女性がましろに話しかける。

 

(……気の所為か"ましろん"って言った?……いや、聞き間違いよね……)

 

女性は気軽にましろの事を"ましろん"と呼んだ気がするが彼女はそれを聞き間違いと判断する。

 

「そう言えば初めて会うよね。あげはちゃんこちらは"風波らんこ"ちゃん私が中学に入ってから出来た友達だよ。そして、らんこちゃん此処にいるのはあげはちゃん、"聖あげは"ちゃんだよ。私の小さい頃からの幼馴染だよ」

 

「へぇ、ましろんの中学からの友達か〜」

 

あげはと呼ばれた女性はましろの友達と聞いて興味津々にらんこを見つめる。

 

「聖あげはちゃん?…幼馴染?…()()()()?……ましろん⁉︎

 

一方でらんこはましろの幼馴染と聞いて暫く思考が停止するが少ししてましろの事をましろんと呼んだ事に声を荒げる。

 

「どうしたの急に声を上げて?」

 

「べ、別に何でも…って、うわっ⁉︎」

 

「「あ、危ない!」」

 

いつの間にか近くまで来ていたあげはに驚いたらんこは足をもつらせて後ろに倒れそうになり、ソラとましろは助けようと動くが、

 

「おっと、大丈夫?」

 

その前に近くにいたあげはが彼女の手を掴んで助ける。

 

「だ、大丈夫……です」

 

「そう、怪我しなくて良かった良かった」

 

何処も怪我をして無いと分かるとあげは安心した表情を浮かべるが、

 

「……ふん!」

 

「あれ、嫌われちゃった?」

 

何故からんこは彼女の手を振り払いそっぽを向く。その様子をソラとましろは不思議そうに見ていた。

 

「何だか…らんこさんの様子がおかしいですね」

 

「もしかして初めての会うから緊張しちゃっているのかな?」

 

後ろでソラとましろがらんこが普段とは様子が違う事に気づき小声で相談する。一方でらんこも自身の行動に驚いていた。

 

(どうしたのよ私……初対面の人にこんな態度を取るなんて……)

 

普段ならこんな冷たい態度は取らない、それなのにそんな行動を取った己を不思議に思う。

 

「じゃあさ、自己紹介をさせて…コホン、私は聖あげは!18歳!血液型はB!誕生石はペリドット、ラッキーカラーはベイビーピンク!最近のブームはイングリッシュティーラテ・ウィズ・ホワイトチョコレート・アド・エクストラホイップ!……はい、そっちのターン!」

 

「……」

 

まるで慣れているのか長い自己紹介を噛まずに終えたあげはは次は君の番だとらんこに自己紹介を求めるが、彼女はそっぽを向いて喋ろうとしない。その姿はさながら人に懐かない野良猫の様だ*1

そんな彼女にソラとましろの2人が恐る恐る話しかける。

 

「らんこちゃん…らんこちゃんもあげはちゃんに自己紹介しなよ」

 

「そうですよ自己紹介をしないのは失礼な事ですよ」

 

ソラとましろから注意されるとらんこは少々気まずさを感じながらも小さく息を吐くと気怠そうに答える。

 

「………風波らんこです…13歳……血液型はA…好きな事は静かな場所で過ごす事と音楽を聞く………後、最近はサイクリングに嵌っています。………ましろとは中学1年からの……友達です」

 

何やら最後の友達の部分に若干強調した様に聞こえたが、

 

「うん、宜しくねらんこちゃん!」

 

「……チッ」

 

「え、舌打ち⁉︎」

 

自己紹介を終えてあげははらんこにお近づきの握手を求め手を出すが、彼女は手では無く舌打ちで返した事にあげはショックを受ける。そんな彼女を見て流石に見ていられなくなったのか2人が前に出る。

 

「ご、ごめんねあげはちゃん!らんこちゃん何時もならもう少し明るいけど、今日は何だか物凄く機嫌が悪いみたいなの!」

 

「そうなんですよ!らんこさんは優しい人で空から落ちる私とエルちゃんを助けようとしたり、ランボーグとの戦いに手助けしたりとそれは良い人なんです!」

 

「え、空から落ちる?ランボーグ?」

 

らんこの印象をできるだけ良くしようとましろとソラはフォローするが、その際ソラがスカイランド関連の事をつい口に滑らせてしまう。

 

「うわあああっ⁉︎た、ターイム!」

 

「ああああっ!?またやってしまいましたぁあ‼︎あ、あげはさん!今言った事も忘れて下さい!」

 

「ええ、また隠し事?……まぁ、友達の秘密なら仕方ないけど」

 

ましろが慌てて両手をTの字にして待ったとかける。ソラも己の失言に気付く、あげはの口ぶりからして恐らくらんこが来る前に同じ事があったのだろうと察する。

 

「そうですよ……私達の秘密だから貴女には全く関係ありませんよ」

 

「「え⁉︎」」

 

「へ?」

 

「える?」

 

あげはを除け者にする様な言い方をするらんこにその場にいた一同(エルは除く)は思わず固まる。

 

「あ、あげはちゃん、ちょっと待ってて」

 

「あ、別に良いけど」

 

あげはに確認を取るとましろとソラはらんこをリビングの端っこへ連れて行く。

 

「らんこちゃんさっきからどうしたの?あげはちゃんを貶す様な事ばかり言ってるけど……」

 

「そうですよ。さっきなんて面白いし絵本を見せてくれたりして、とっても明るくて良い人なのに……何かあげはさんで気に入らない事でもあるんですか?」

 

先ほどかららんこの言動がおかしい事に2人はらんこに問い詰める。

 

「知らないわよ……」

 

「知らないって……もう、らんこちゃん!」

 

流石に先ほどまでの言動で知らないと言うのは無理があると思ったましろは彼女を問い詰めようとするが、

 

「いいよ、気にしないでましろん」

 

「あげはちゃん……」

 

「…………」

 

そこへあげはがましろを止めると、らんこの側へ寄る。

 

「人って1人や2人くらい特に理由がなく最初の印象で嫌いになる事があるから、それで私はらんこちゃんに対して最初の印象付けが失敗しちゃった見たいだから…」

 

「う……」

 

あげはの話を聞いてらんこは罪悪感を感じているのか、顔が少しであるが曇らせる。

 

「だからさ、らんこちゃんこれから仲良くして行こう」

 

「……ッ!」

 

笑顔で握手を求めるあげはに対して、らんこは手を伸ばそうとするが、直前で手を引っ込め再び彼女にそっぽを向く。

 

「あちゃー、そう簡単に上手くいかないか……」

 

「ごめんねあげはちゃん……そのらんこちゃんは良い子で……」

 

「ううん、言わなくてもわかってるって。ましろんの友達なんだから悪い子じゃ無いってね」

 

あげははらんこに対して何も怒っていないと分かるとましろは安堵する。

一方でソラはらんこに話しかける。

 

「らんこさん本当にどうしちゃったんですか?普段のらんこさんならこんな意地悪みたいな事はしないのに……」

 

「え〜る?」

 

「わからないわよ……私だって自分のやっている行動に驚いているんだから(それに……)」

 

チラッとましろとあげはの2人が楽しそうに話している姿を眺める。

 

(何なの……さっきから物凄く胸がモヤモヤして気持ち悪いわ……)

 

自身の胸に湧き上がる違和感の正体がわからないらんこは不快感に悩まされていく。

 

「ところであげはちゃん今日はどうして家に来たの?」

 

「ちょっととある用事でましろんの家が近かったから来てみましたー!」

 

(また、ましろんって呼んだ……私だって呼んだ事無いのに……!)

 

一方でらんこは先程からあげはに渾名で呼ばれ続けるましろを見て悔しい表情を浮かべる。

 

わ、私だって……ま、まし…まし…!」

 

「ん…どうしたのらんこちゃん?」

 

何からんこが自分に伝えたい事でもあるのだろうか、彼女の方へ振り向く。

 

「ま、ましろングゥッ‼︎」

 

緊張のあまりにらんこは思いっきり舌を噛み、大量の血が舌から噴き出し、彼女は床に倒れ伏す。

 

「うわあああっ⁉︎ら、らんこちゃんが思いっきり舌噛んじゃった⁉︎」

 

「えるぅ⁉︎」

 

「ち、血がっ!血が止まりませんよ⁉︎」

 

「ちょ、大丈夫⁉︎待ってて!今すぐ治療するから!」

 

突然舌を噛んで倒れ伏すらんこに3人は動揺するも彼女を助ける為に協力して治療を行う。そんな彼女達の声を聞きながららんこの脳裏にある声が聞こえてきた。

 

『急いでお手当てするラビ!』

 

らんこが一瞬驚いて目を薄ら開けてからましろの方を向くと、血が出ているせいで見える幻覚なのか彼女の肩に小さなウサギの妖精が乗っているのが見える。

 

「(最悪……幻聴だけじゃなくて幻覚まで見えるなんて)」

 

らんこは内心そう思うのを最後にそのまま目を閉じて気を失ってしまうのだった。

 

 

───────────

 

らんこの治療を終え彼女は目を覚ました後、一同は保育士の専門学校に来ていた。何故専門学校に来ているのかは元々あげはこの街の保育士の専門学校の校長先生と面談する予定があり、ついでに虹ヶ丘家へ来たというのが元々の経緯である。

そして、3人はあげはの運転する車に乗って行き、学校へとやって来て、あげは面談の為校舎に入り残った3人はベンチに座っていた時だった。

 

「………」

 

「「うぅ…」」

 

ベンチの端っこにとてもご機嫌斜めなオーラを出しているらんこに側に座るソラとましろは居心地の悪さを感じていた。

 

「あの、らんこちゃんごめんね……お出かけする約束を破って」

 

「別に…」

 

そう言って明後日の方向へ向いて素っ気ない態度で返事をする。そんな様子にソラはましろに小声で話しかける。

 

「らんこさん…大分機嫌がよろしく無いみたいですね」

 

「うん、らんこちゃん今日のお出かけ楽しみにしていたみたいで、色々予定を立てていたみたいだから」

 

本来はらんこが予定した3人とエルによる街のお出掛けをする予定だったが、あげはの通う予定の専門学校にましろは興味が湧いて、らんことの約束を破る事になってしまう。

その時のらんこはこんな感じであった。

 

『別に良いわよ…久しぶりに会う幼馴染なんだからそっちを優先すると良いわ……出掛けるなんていつでも出来るし』

 

言葉にすればらんこが幼馴染のあげはの事を優先した事に対し、怒っている様子はなく快く譲った様に見られるが、その時の彼女の目は物凄く座っており、声も低く喋り、明らかに不機嫌であると示していた。

そんな事があってから、2人はらんこにとても話しかけづらかった。何とかこの空気を変えようと2人は考えると、

 

「あっ、そ、そう言えば、あげはさんの言っていた保育士とはなんでしょうか?」

 

「(な、ナイスだよソラちゃん!)ほ、保育士さんは小さい子供をお世話する先生の事だよ!」

 

話題を作ったソラに感謝しつつましろは保育士について説明する。

 

「あげはちゃんは昔から保育士さんになりたいって言ってたんだ」

 

「そうなんですね」

 

「なりたい物のために頑張ってる……偉いよね」

 

昔から思っていた夢を叶える為、諦めずに頑張るあげはの姿を思い出すましろであるが、

 

「別にそれくらい普通よ……」

 

「「………」」

 

口が開いたかと思ったら、再びあげはに対し貶す発言をするらんこに思わず2人は絶句して辺りの空気は再び悪くなる。

 

「あ、ねっ、ねぇ、エルちゃんは大人になったら何になりたいの?」

 

「える?」

 

「だ、だよねぇ〜…エルちゃんにはまだ早いよね〜……」

 

我ながら強引さを感じるましろも何とか場の空気を変えようとエルに質問を投げかけるが、勿論エルは首を傾げる。

 

「ち、因みにましろさんは何になりたいんです?」

 

「わ、私⁉︎私はねえ……」

 

咄嗟にソラがましろに質問を投げかけ、彼女もその質問に答えようと口を開くが、その先を言えずに少しの間静寂が流れる。

 

「……特にない!?」

 

ましろはこの事から自身に何も夢や将来の仕事について全然ない事に気づき、頭を抱えて悩み始める。

場の空気は変わったものの、これはこれで嫌な空気であった。

クラスメイト達の大半からは将来の夢とか語っていたが、自分だけそれが無くて置いていかれているような気がするとましろは焦ってしまう。

 

(待てよ…此処でらんこちゃんと将来の夢を語り合えば機嫌が良くなったり、ついでに私の将来の夢の参考になったりして…!)

 

我ながら名案の策と考えたましろは隣にいるらんこに声を掛ける。

 

「ね、ねぇ……らんこちゃんは……夢って、合ったりする…かなぁ〜?」

 

「別に……私は聖さんと違って夢はないから………」

 

「そ、そっか……え、なんでそこであげはちゃんの名前が出てくるの?」

 

らんこも自身と同じ夢が無いと知ると少し安心を覚えたが、何故今あげはの名前を出すのかましろは理解でき無かった。

 

(全く何がましろんよ…馬鹿馬鹿しい……滑稽よ)

 

一方でらんこは虹ヶ丘家で散々ましろがあげはから渾名で呼ばれている所を思い出していた。

クラスメイトからもましろは時折ましろんとあだ名で呼ばれる事は彼女自身わかっているのだが、今はそれが気に入らなかった。

 

(ましろもましろよ……なによ、幼馴染に会えてそんなに嬉しいの?)

 

「ブタサンガアブナイ!」

 

思い出すのは仲良さげにあげはと会話をするましろの姿だ。その姿を思い出す度に胸がチクッと痛む。

 

(それでも私の方が仲が良いに……)

 

「フゥ、アブナイトコロデシタ。ブタサンアレハワナデスヨ」

 

決まっていると思おうとしたが脳裏にはあげはと会話するましろの笑顔が浮かぶ。あの顔は普段よりも嬉しそうに見え、更に今日の街へのお出掛けもキャンセルして、幼馴染(あげは)の用事を優先する事に自分なんてどうでも良いと思っているのではとらんこは考えてしまう。

 

 

(そんな筈無い!……そんな……はず……)

 

「カバトントン」

 

らんこはどうにかそれを否定しようとするが、内心強く否定出来なかった。小さい頃の幼馴染という事は少なく共自分よりもましろと長くいるのだが、それでも自分があげはよりも仲がいいと信じ込む。それから彼女はパーカーのポケットに入れている音楽プレーヤーを強く握り、勇気付けようとしたその時。

 

「カモン!アンダーグエナジー!」

 

『ランボーグ‼︎』

 

「え、何って、豚男とランボーグ⁉︎」

 

高らかに叫ぶカバトンの声とランボーグの声を聞いてらんこは目の前にいつの間に現れていたカバトンとランボーグの存在に気付く。

 

「フード娘其処に居たのか。相変わらずフードなんか被って湿っぽい奴なのねん」

 

「五月蝿いわね!あんたも毎度毎度色んなとこにいてしつこいのよ!既に3回もやられているんだから、そのブタ面を見るのはいい加減飽きてきたのよ!」

 

「まーた!俺を馬鹿にしやがって……まぁ、良いのねん。今日こそはソラ共々纏めて倒される日なのねん!」

 

一瞬らんこにバカにされた事に憤慨するが、直様表情が怪しい笑みへと変わり勝利宣言をするカバトンにらんこは思わずため息をつく。

 

「はぁ、この前食べた毒キノコで頭までおかしくなったの?……まぁ、いいわ。ソラ早くやっつけちゃって」

 

ソラに視線を向けランボーグを倒す様に言うが、一向に変身しない事にらんこは不思議に思う。

 

「どうしたのソラ?」

 

「ごめんなさいらんこさん!今変身する事は出来ません!」

 

「はい?」

 

ソラの"変身する事はできない"という台詞にらんこは思わず首を傾げる。何故ソラが変身しないのかわからないらんこはひょっとしてカバトンが近くにいる人を人質にしたのかと思い、カバトンとランボーグに視線を移す。しかし、何処にも人質らしき人物は見当たらなかった。

それなら何が変身出来ない理由になっているのか考えていると、カバトンが勝ち誇ったように語る。

 

「無駄なのねん!ソラはキュアスカイに変身できないのねん!」

 

「はぁ、何言ってんの?」

 

突然のカバトンの言葉にらんこは再び首を傾げると、カバトンはある物を取り出すとらんこはそれを見て驚愕の表情を浮かべる。

 

「何故ならソラがプリキュアに変身するアイテムは俺様の手の中なのねん!」

 

「えっ、それはミラージュペン!」

 

いつの間にかミラージュペンをカバトンから取り上げられていたのだ。ランボーグは基本的にソラが変身するキュアスカイの必殺技"スカイパンチ"で倒せるのだが、肝心のソラがミラージュペンを取り上げられた今キュアスカイへの変身は不可能。そうなると、その結果は…。

 

「ら、ランボーグを…倒す事が……できない⁉︎」

 

そう、倒す事が現時点で出来ない。打つ手無しの状態になっていた。

 

「ギャーハッハッハッ!そう言う事だ!さぁ、ランボーグやれ!」

 

『ラン♪ラン♪ランッ…ボォーグッ!』

 

ランボーグは両手から胞子を出すとそれをおにぎりの如く握り大きな胞子の塊を作ると、それを3人に目掛けて投げる。

 

「ましろさん!らんこさん!避けて下さい!」

 

「言われなくたって!」

 

「え、ええっ⁉︎」

 

ソラとらんこは咄嗟に避ける事が出来たが、エルを抱えたましろは反応が遅れてその場から動けなかった。

 

「「ましろ(さん)!」」

 

「せめてエルちゃんだけでも…!」

 

「える!」

 

2人は直ぐに走り出すが、間に合わずこのままましろが胞子の塊を浴びる事になってしまう。

 

「くっ…ましろおおおおおっ‼︎」

 

「らんこちゃん⁉︎」

 

するとらんこは火事場の馬鹿力か、その場から強く踏み込みバネの如く跳んでいく。そのまま咄嗟にましろの前に飛び出すと彼女を守る様に自身の身体を盾にしてましろとエルの代わりに胞子の塊をその身に受けてしまう。

 

「「らんこちゃん(さん)!」」

 

「えるっ!」

 

胞子の塊を受けたらんこを3人は心配する声を上げる。

 

「ゲホッ、ゲホッゲホッ!何よこれ、全然痛みが無いんだけど……」

 

だが、彼女の体には全然ダメージが無く、胞子によって視界が見えなくなるぐらいであった。

察するにこれは煙幕や目潰しの類の攻撃と判断したらんこは手で仰いで胞子を飛ばそうとする。

 

「ソラー!ましろー!エルー!ちょっと返事してくれない?今私が何処にいるかわからな………え?」

 

視界が晴れると先程まで屋外にいた筈がらんこは今何処かの学校の教室に立っていた。だが、彼女の顔はとても青ざめていて動揺を隠さないでいた。

 

「嘘……ここって……」

 

思わず後退りすると、後退りした足に何かがぶつかり振り返ると、そこには沢山の悪口が落書きされた机が存在していた。

 

「い、嫌……⁉︎」

 

その机を見て思わず床に尻餅を付くも、背後から沢山の視線を感じ、振り返ると小学生くらいの子供達が白い目をして彼女を見下していた。

 

「ち、違う!…わ、私は嘘やズルなんてして無い!本当よ‼︎」

 

錯乱する彼女は目の前にいる子供達に弁明をするが、その中で1人の女の子がらんこに手を伸ばして近づこうとしてくる。

 

「こ、来ないで‼︎」

 

「キャッ!」

 

「……え、今の声って」

 

思わず目の前にいる子供を手で振り払うが、その時聞き覚えのある声が彼女の耳に入る。

彼女は冷静になり、目の前にいる人物が誰なのか気付く。それと同時に周りの景色は元の景色に戻る。

 

「ま、ましろっ⁉︎」

 

「ら、らんこちゃん……?」

 

彼女の頬は薄らと赤くなっており、それが先程のらんこが振り払った際に出来た傷であると理解する。

 

「うそ、私は……ましろを……ましろを……⁉︎」

 

友達である彼女を傷付けた、それは嘘偽りのない事実を突きつけられた彼女は目の前が真っ暗になり動揺する。

 

「今だランボーグ!フード娘と脇役諸共プリンセスを捕まえろ!」

 

『ランッ!』

 

ランボーグの身体から生える触手がらんことましろにエルを捕えようと伸ばしてくる。

 

「らんこちゃん逃げて!」

 

ましろがらんこに声を掛けるが彼女は酷く動揺して、動けずにいてましろと共に捕まりそうになろうとするが、

 

「2人とも危ない!」

 

ソラが間に入り回し蹴りをして触手を弾き飛ばすが、他の触手を伸ばし、ソラの四肢に巻かれランボーグに捕まってしまう。

 

「「ソラ(ちゃん)⁉︎」」

 

「ぐ、2人ともエルちゃんを連れて逃げて下さい!」

 

ランボーグに捕まったソラは2人に逃げる様に呼びかける。

 

「ましろん!らんこちゃん!」

 

「あげはちゃん⁉︎」

 

そこへ校舎から様子を見ていたあげはが2人の元へと駆けつける。

 

「状況は分からないけど、今は取り敢えず中へ!」

 

「で、でも!」

 

あげはが校舎へ避難をするように言うが、ソラはランボーグに捕まったまま。それでも今の自分には何もできない。加えてソラから先程エルを連れて逃げてと言われた為にその意思を無視する訳にはいかなかった。ただ、ましろは走る前に一度ソラの方を向いてから何も出来ない自身に悔しい気持ちを抱くと彼女に背を向けて走り出した。

 

「らんこちゃん!らんこちゃんも建物の中に!」

 

「私の…私の所為でソラが……」

 

ましろがらんこに呼びかけるが、彼女は胞子の影響がまだ残っている様で己の所為でソラが捕まった事にと強く錯乱し、その場から立てずにいた。

ましろはそんな彼女を何とか立たせようとするが、あげはが近づくとらんこの右手を両手で包み込む様に握る。

 

「らんこちゃん大丈夫?立てる?」

 

「ひ、聖さん…?は、はい」

 

あげはに手を握られ、少し精神が安定したのかあげはに支えてもらいながら立ち上がり、そのまま校舎の中へ逃げ込む。

カバトンはそれを見越して、ランボーグから一回り小さいランボーグを生み出すと、3人を追いかけて校舎へ入っていく。

 

─────────────

 

校舎へ逃げ込んだ3人は追跡してくるランボーグの存在に気付き、屋上へと逃げ込み扉は開かない様に細工を施していると、

 

「あー、マイクテス、マイクテス……無駄な抵抗をやめるのねん!今すぐプリンセスを連れて出てこい!」

 

何処で手に入れたのかメガホンを使って屋上にいる3人に向かってカバトンは降伏する事を呼びかける。

 

「ましろさん!らんこさん!出てきてはダメです!」

 

「お口チャーック!」

 

額の宝石を光らせると、以前らんこが捕まった時と同じ×の模様が入ったテープらしき物がソラの口に貼られて塞がれてしまう。

 

「あっ!」

 

「ソラッ!」

 

「2人とも出ちゃ駄目!」

 

飛び出そうとするましろとらんこをあげはが抑え込む。それを見てカバトンは出てこないのが分かると、ランボーグから更に触手を生やしてソラの身体を少しずつ嬲りはじめる。

 

「……どこかに落ちてる金属バットを拾って戦えばワンチャン……いや無理。ああ、何か良い手は……?」

 

捕まっているソラを何とか助けようと考えるあげはであったが、あんな化け物相手に普通の人が勝てる筈無いと判断するも、諦めずに考える。一方でらんこも持っているバックの中身をその場で全部出してこの状況を打破するものが無いか探す。

 

「何か!何か役に立つ物は…?」

 

持ってきた物を全て見たがどれも、役に立ちそうな物は無かった。これ以上は打つ手が無い。だが、やはり現時点でランボーグを倒せるのは今捕まっているソラが変身するキュアスカイの力しか無かった。

 

(こうなったら私が捨て身の覚悟でソラを助けに……いや、無理ね)

 

この状況になった責任の一端は己にあると思った彼女は自身の身を犠牲に助けようと考えたが、今まで散々ランボーグとの戦いを間近で見てきたが、下手に突っ込めば逆に自分も人質になると思い、助けに行けなかった。

 

「プリキュアに……プリキュアになれさえすれば助けられるのに……!」

 

助けに行くにはプリキュアの力が必要であった。だが、プリキュアに成れる条件を知らない。だが、ソラがプリキュアに変身する力を与えたのはエルだと思い出し、あげはが抱えるエルに視線をずらす。

 

(エルなら私をプリキュアに……)

 

そう思ったが、エルの不安そうな目を見て思わず自身を殴りたくなる。今己の顔は鏡で見ていないが恐らく思い詰めた表情をしているだろう。そんな顔でエルに力を求めたらエルが泣いてしまう。そう思った彼女は益々悩んで動揺する。

 

「どうすれば……どうすれば良いのよぉぉぉぉぉぉ!!?

 

「らんこちゃん…」

 

動揺するらんこを見てあげは何とか宥めようと声をかけようとしたその時。

 

「行かなきゃ!…ソラちゃんを助けなくちゃ…!」

 

「ましろん⁉︎」

 

声を上げたのはましろである。らんことあげはがその場にある物で何とか出来ないか悩む中でも彼女はソラを助けたい気持ちでいっぱいになっていたのだ。

 

「そんなの分かってる!でも、どうすれば…!」

 

ましろの気持ちはあげはもよく分かる。だが、相手は普通の人間では太刀打ち出来ないランボーグ。そんなの相手に何の力も武器も無い自分達が行ったら返り討ちに合う。

 

「それでも…それでも行かなくちゃだよ!」

 

その時、ましろの心からの叫びに反応する様に彼女の胸から辺りを照らす様に優しい桃色の光が現れる。

色は異なるがその光に見覚えのある一同(あげはを除く)はそれが何なのか理解する。

 

(あの光はまさか…)

 

「おいおい!この展開はまさか…⁉︎」

 

カバトンは慌ててランボーグの上に乗るとそのままランボーグは上へ伸びていき、拘束されているソラと共にその光の正体を見る。

 

「ゲェッ⁉︎あ、あれは!」

 

それは今カバトンが持っているソラのミラージュペンと全く同じ物が目の前に存在していた。そして、それがましろから生まれたミラージュペンであると理解する。

 

「な、何これ?」

 

「えるぅ〜…」

 

一方であげは初めてみるミラージュペン誕生の現象に困惑を隠せないでいた。

 

「やっぱりましろも成れるんだ……プリキュアに……」

 

らんこもましろから現れたミラージュペンを見てソラと同じ様にプリキュアになれる資格があると理解する。

 

「このペンは私の?……私がプリキュアに…?」

 

ましろ自身も自分から出てきたミラージュペンの存在に動揺しつつも、この力があればソラや皆んなを助ける事が出来ると思い、ペンに手を伸ばそうとする。

 

「止めろ!脇役がプリキュアになんかなれるものか!お前に何の力がある?自分だってわかってるだろ?ほら!」

 

「な、豚男⁉︎」

 

カバトンがましろをプリキュアにさせまいと心を折ろうとしてくると、効果があった様でましろはミラージュペンに伸ばした手を引っ込める。

すると、其処へ3人を追いかけていたランボーグが屋上の扉を開けようと激しくドアノブを捻ってくる。

 

 

「早く…プリキュアにならなきゃだよ……でも、私なんかじゃ……」

 

タイムリミットは迫っている此処でペンを取らなければランボーグと戦う事が出来ない。しかし、何の取り柄が無い自分が変身した所でランボーグに勝つ事が出来るのかと、ましろは葛藤する。

 

「ま、ましろ……」

 

一向にミラージュペンを手に取ろうとしないましろにらんこは励まそうと声を掛けようとするが先程ランボーグが見せた幻覚で錯乱した際に彼女を殴った事を思い出したのか、喋る事はできなかった。

 

(私が…友達である私がましろを励まさないといけないのに……どうして言葉が出ないの……!)

 

早く彼女を勇気付けないととランボーグが扉を開けてきてしまう。

 

「……ましろん」

 

するとあげはが葛藤してなかなか手を伸ばせないましろへと声をかけた。

 

「それを手に取ったらどうなるのか、プリキュアって言うのが何なのか私にはわからない……でも、そんなのどうだって良い!……そこ、うるさい!!」

 

『ラッ⁉︎』

 

屋上の扉を開けようとするランボーグに一喝するのと、彼女は語り出す。

数年前ソラシド市に住んでいたあげは。彼女は今より小さいましろと近所付き合いで今と変わらず仲良くしていた。だが、ある日あげはの親の都合で別の街へと引っ越す事なり、あげはは家出してしまう。それから近くにある川の堤防で泣いている時、ましろが迎えにきて彼女を慰めた。ましろもあげは同様に悲しくて寂しい気持ちがあっただろう。それでもましろは泣くのを我慢し、あげはの前で笑顔になり励ました事であげはは救われたのだ。

 

「あの日、ましろんに教わったんだ。優しいって事は強いって事だって……私なんか?そんな事言うな!そんな事誰にも言わせるな!ましろんには優しさって言う誰にも負けない力があるんだよ!」

 

「っ!」

 

ましろはあげはの言葉を聞いて覚悟が決まる。それと同時にランボーグが天井を破壊して姿を見せる。それを見てあげはとらんこは動揺するが、ましろはミラージュペンを握り込む。

 

「エルちゃんお願い!」

 

「ぷいきゅあああ!」

 

ましろはエルから飛び出したその光を掴むとそれはスカイトーンへと変わる。ソラとは異なり彼女の手の中にある物は薄いピンクにハートマークの絵が浮かび上がる。

 

「ヒーローの出番だよ!」

 

その台詞と共にペンが光、ましろの体を包み込む。

 

「スカイミラージュ!」

 

ミラージュペンがスカイミラージュへと変化し、ましろが手に取る。

 

「トーンコネクト!」

 

そして、スカイミラージュのスロットにスカイトーンを嵌め込むと、マイク部分が回転する。

 

「広がるチェンジ!プリズム!」

 

マイク部分にPRISMと文字が浮かび上がると、辺りが光り、光りが晴れると、ましろを中心に大きなステージと幻想的な宇宙空間が広がると、彼女の小豆色の髪が明るいピンクに変わり更に伸びていく。

そして、ステージに降り立つとそれから両足にピンクのフリルが付いた白いブーツが履かれる。

 

「煌めきホップ!」

 

その言葉と共に舞台にHOPの文字が浮かびが頭に白いリボンが装着し、両耳にはイアリングが付けられる。

 

「爽やかステップ!」

 

続いてSTEPと文字が舞台に浮かぶと体に白を基調としたドレスを身に纏い、スカート部分には星の煌めきをイメージしたインナーが浮かび上がる。

 

「晴れ晴れジャンプ!」

 

最後に言葉の通り飛び上がるとJAMPと字がテカテカと現れ、両腕に白のロンググローブが装着され、そして腰にはハートマークが入った二枚の布が現れる。

 

「ふわりひろがる優しい光! キュアプリズム!」

 

キュアスカイに続き、新たな伝説の戦士キュアプリズムが誕生する。

 

「ましろが…プリキュアに……」

 

「かっこよ!」

 

「えるぅ〜!」

 

目の前でましろが変身した事にらんこは呆然となり、あげは達もキュアプリズムとなったましろの姿を賛美する。

 

「な、キュアプリズムだとぉ⁉︎ええい、所詮は脇役!変身したからってYOEEEE筈なのねん!ランボーグいけぇ!」

 

『ランッボーグ‼︎』

 

ランボーグは大きく飛び上がるとそのままプリズムに向かって踵落としを決めようとするが、プリズムはタイミングを見計らって背後に跳んで避けるが、初めて変身で力の制御が難しく後ろに建っているビルの壁まで跳んで行ってしまう。

 

「うわあああっ!?力加減間違えたー!!!」

 

「ましろん⁉︎」

 

「変身して早々に何やってんのよぉっ⁉︎」

 

戦場から離れていくプリズムに2人は思わず声を上げる。

 

「ギャハハハッ!今なのねん!フード娘を人質に取れ!」

 

『ランボーグ!』

 

「っ⁉︎らんこちゃん!」

 

「え?」

 

あげはの声を聞いてらんこは背後にランボーグが立っている事に気付き、拳を振り上げていた。

 

『ランボォォォッ!』

 

(やばい!)

 

足を動かそうとするが、何故か足を動かす事が出来ずその場から逃げ出す事が出来なかった。

 

(な、何で、逃げなきゃ行けないのにどうして⁉︎)

 

何とか動こうともがくが、全然動いてくれない己の両足に困惑していると、そのままランボーグの拳は振り下ろされる。

 

(あ、これは避けられない)

 

もう避ける事は不可能と理解したらんこはそのままランボーグに捕まってしまう。

 

「危ない!」

 

その時、間一髪のところであげはがらんこを抱きしめて地面に倒れ、そのままランボーグの手から避ける。

 

「大丈夫らんこちゃん⁉︎」

 

らんこを心配そうに見つめるあげはにらんこは頭の中には疑問しか思い浮かばなかった。一方的に嫌っていた筈なのに何故彼女は自身を助けたか全く理解できなかった。

 

「な、なんで?」

 

「何でって、子供の前では良い格好させてよ。それに友達を助けるのは当たり前でしょ?」

 

「とも…だち……私が?」

 

散々嫌がらせして、目の仇にしていた自分を友達呼んだあげはの姿にらんこは胸を締め付けられる様な痛みを感じた。

 

「何やっているランボーグ⁉︎早く捕まえろ!」

 

カバトンは再び命令を出すとランボーグは倒れている2人に手を伸ばした。

 

「させないよ‼︎」

 

二人が捕まる直前に建物の壁を足場にすると跳び上がったプリズムが校舎の屋上へ戻りそのままの勢いでランボーグの腹に蹴りをお見舞いする。

 

「へっ?『ラァァン!?』ぎゃああああっ!?」

 

プリズムによって蹴り飛ばされたランボーグはカバトンと衝突し、カバトンも吹っ飛び、その際手に持っていたソラのミラージュペンを放り投げる。

それを見たソラはプリズムに目配せした。

 

「分かったよソラちゃん!」

 

プリズムはソラが何を伝えたいのか理解するとソラを拘束するランボーグの体に向かって光弾を作り出すとマシンガンの様に放ち、ランボーグは光弾によるダメージでソラを拘束する触手を緩めてしまい、彼女はその隙を見逃さず拘束から抜けると宙を舞うミラージュペンに向かって飛び、手に取ると口を塞ぐテープを剥がして台詞を言う。

 

「ヒーローの出番です!」

 

ペンの光がソラを包み込む。

 

「スカイミラージュ!トーンコネクト!ひろがるチェンジ!スカイ!」

 

そして一気にソラはキュアスカイへと変身する。

 

「無限に広がる青い空!キュアスカイ!」

 

変身が完了したスカイは地面に降り立つと先程まで自身を拘束していたランボーグを睨む。

一方でプリズムはソラが拘束から抜け出して変身したのを確認すると側にいるあげはとらんこに視線を移す。

 

「あげはちゃんらんこちゃん大丈夫?」

 

「ましろん大丈夫私もらんこちゃんも無事だよ。勿論エルちゃんもね」

 

あげは自身とらんこは何処も目立った怪我をしていないのを確認するとプリズムは安堵の息を吐く。

 

「良かった……2人は此処でエルちゃんを見ていて、後は私とスカイで決めるから!」

 

そう言って彼女は屋上から飛び降りようとするが、そんな彼女をらんこが呼び止める。

 

「ましろ……」

 

「ん、どうしたのらんこちゃん?」

 

そのため、プリズムはらんこの方へと振り返った。

 

「その……ごめん。やっぱり、何でもない」

 

何か言おうとしたかったらんこだったが直前でやめる。

 

「そう……行ってくるね!」

 

そう言うとプリズムは屋上から飛び降りると丁度もう一体のランボーグがスカイに背後から奇襲しようとしているのに気付く。

 

「させないよ!」

 

『ランッボッ⁉︎』

 

プリズムはランボーグに向かって光弾を放つと、怯みその隙に腹部に拳を一撃決めると、ランボーグは吹っ飛んでいくと、プリズムは己の体から湧き出る力を実感するとそのままラッシュを決める。

 

「ヒーローガール……スカイパァァァァンチ!!!」

 

一方でスカイはカバトンの命令が無い所為か全く動かないランボーグにスカイパンチを決める。

 

『スミキッター』

 

ランボーグは浄化され元のキノコへと戻り、一方でプリズムの方も決着が決まろうとしていた。

 

「これで決めるよ!」

 

両手の間に作り出した光弾を作り出す。

 

「ヒーローガール……プリズムショットォォォォォッ!!!」

 

真上に掲げると自身の身長くらいの大きさへ変わり、ランボーグに向かって放たれる。

 

『スミキッター』

 

プリズムショットが命中したランボーグは元のキノコへ戻る。それに伴い戦いによって巻き込まれた校舎と敷地内の施設は修復される。

 

「つ、TUEEEE⁉︎」

 

カバトンはスカイだけでなく脇役と思っていたましろがとんでも無く強くなっていた事に驚愕しながら撤退するのだった。

それからプリズムは戦いが終わり、変身を解くとその場にへたり込む。

 

「あ、あれ…?」

 

初戦闘による疲れは想像以上だったのか彼女は腰が抜けてしまった様だ。

 

「ま、ましろさん大丈夫ですか⁉︎」

 

それを見たソラは慌ててましろの元に行くと彼女を心配する。

 

「大丈夫。緊張が解けたらフニャ〜ってなっちゃっただけ……」

 

「ご、ごめんなさい。私が未熟なせいで……私がカバトンの罠に騙されなければこんな事には……」

 

全て自分の所為だと言わんばかりに己を責めるソラに対して、

 

「ううん、そんな事言わないで……悪いのはソラちゃんを騙したカバトンだよ。それにこれからソラちゃんやらんこちゃんばかりに危険な目に合わせなくて済む様になるから、これで良かったんだよ」

 

そう言うとましろは自身のミラージュペンを眺める。

 

「凄い!凄い!2人とも凄いじゃーん!」

 

「える!」

 

そして、屋上から降りてきたあげはは2人の戦いを見て、興奮しており2人に詰め寄る。

そして、少し距離が離れた所にらんこは彼女達の様子を見ていた。

 

「……醜い…なんて、私は醜いのよ」

 

そう呟くとらんこは3人に存在が悟られない様にその場から逃げ出す。

 

「あ、らんこちゃんもあの時私とエルちゃんを助けてくれてありがとう……らんこちゃん?」

 

「あげはさんらんこさんは何処ですか?」

 

「え、らんこちゃんなら此処に…って、あれ?さっきまで一緒にいたのに……」

 

「える?」

 

3人はらんこが近くにいない事に気がつくと、校舎と敷地内を探しにいき、30分が経過すると3人は校舎前へ集まる。

 

「らんこちゃんはいた?」

 

「こっちには居ませんでした。ましろさんの方は?」

 

「ううん、駄目!何処にも居ないよ!」

 

3人は周辺を虱潰したり、近くの人に聞き込みをしたがらんこは何処にも居なかった。

 

「まさか、カバトンがらんこさんを攫って⁉︎」

 

「そ、そんな⁉︎」

 

実にあり得る話だ。カバトンはらんこに目を付けて隙を見て攫った可能性は否定出来なかった。

 

「そうだましろん。らんこちゃんとは連絡先交換してあるでしょ?それならスマホで今何処にいるか確認してみたら?」

 

「それだよあげはちゃん!」

 

あげはのアイデアを聞くと早速らんこに連絡を取ろうとスマホを取り出した。

 

「あれ?」

 

「どうしましたかましろさん?」

 

ましろがスマホの画面を見て何やら不思議そうな顔を浮かべていたためにソラはましろに話しかける。

 

「少し前にらんこちゃんからショートメッセージが着ている」

 

「なんて書いてあるの⁉︎」

 

「見せてください!」

 

らんこのメッセージ内容が気になった2人はましろに詰め寄ると、彼女は2人に応えるように画面をタップし、メッセージを確認する。

 

「えっと、"悪いけど、先に家に帰る"って」

 

「と言う事は……」

 

「一先ず安心ね……」

 

2人はらんこの安否が確認できた事にホッとするが、対してましろはそのメッセージを見て不安が過ぎる。

 

「らんこちゃん……」

 

勝手に1人で帰るなんて彼女は今までした事はない、いつも何かの用事でやむ得ない場合は一声掛けて帰るのが、彼女の流儀だった。だけど、今回の様に何も言わずに帰ってしまう事に嫌な予感を感じる。

そして、自分とエルの代わりにランボーグの攻撃を受けた際には酷く錯乱し、その後らしくない行動が目立っていた。

 

(私の考え過ぎじゃなければいいけど……)

 

彼女は此処にいないらんこの事をただただ、心配するのであった。

 

───────────────

 

 

一方でらんこはフードを深く被りながら人気の無い道をらんこは歩いていく。その足取りはフラフラで今にも倒れそうだった。

 

「……うわッ!」

 

すると、近くにあったゴミ箱にぶつかりゴミ箱共々倒れる。そして、ゆっくりと体を起こすと、屋上で自分の代わりにましろへ励ましの言葉をかけるあげはの姿を思い出す。

 

「……滑稽ね私ったら……私が1番仲が良いと思っていたのに実際のところは聖さんが上ってね。それに過去に縛られてましろを傷つけるなんて私ってとんだピエロね……ふ、ふふふっ、あはははははははっ!!!」

 

誰もいない道で1人笑うらんこであったが、次第に彼女の瞳から一筋の涙が流れる。

 

「はは、はははっ!うはは…うっ、うう、ヒッグ、う、うわあああああん!!!」

 

笑いから泣き声と変わる彼女の悲しき姿は誰も見る物もいない為、励まされる事なく彼女は涙が枯れるまで泣き続けるのであった。

 

───────────

 

一方此処は闇が広がり光など一筋も無い、そんな所に一際目立つ丸い建物があり、その中には様々な機械、木の実や、動物の骨が置かれていった。その中で何か蠢く物があった。

 

「あれぇ、おっかしいなぁ〜?研究するために用意した幻覚作用が強いキノコが無くなっている…」

 

その人物は頭には白い髪がが露出したヘルメットを着用しており、白衣を纏っていた。

一見すると研究者に見えるが、その姿は幼くソラやらんこと同じくらいの少女であった。

 

「そう言えば……ここ最近カバトン君がよくラボにやってきて私のアドバイスを求めるけど……もしかして……」

 

そう呟くと側に少女が被るヘルメットと酷似したドローンらしき物が何かを持ってくる。

 

「おっ、良い子だ。ありがとね」

 

少女はそのドローンを撫でると"黒い鏡の様な物"を受け取ると、鏡面に触れると其処にはそのラボからカバトンがキノコを持ち去る瞬間が映っていた。

 

「おやおや、カバトン君……私がタダでアドバイスをやっていると言うのに人の物を泥棒するなんて悪い子だね……」

 

キノコを持ち去った人物がカバトンと分かると、少女はドローンに黒い鏡を返す。

 

「最近ちょっと、私の研究が行き詰まっているからね。キノコを取り戻すついでに彼の派遣先の世界へ行けば、新しい研究テーマが生まれるかもしれないねぇ」

 

そう呟くと彼女は首に掛けてある黒い宝石を触れると呟く。

 

「キメランラン♪」

 

宝石が光ると共に彼女の姿はその場から消えるのだった。

*1
申し訳程度の野良猫要素

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