此処は風波家、其処にはご存知の通りらんこが住んでおり、その家の庭にはらんこと更にはソラ達の姿があった。
今日は土曜日で以前からひかるがらんこの裸を見たお仕置きの建前でらんこが彼とお出掛けをする約束の日であり、本日は幸運にも天気は晴れてお出掛け日和なのだが。
「らんこちゃん落ち着いて」
「そうですよ。ちゃんとひかる君は来ますって」
先程からソラ達の目の前をらんこが落ち着きなく庭中を歩き回っており、ソラ達は彼女に止まる様に言うとらんこは立ち止まり彼女達の方に視線を向ける。
「そ、そうは言ってもこの後の事を考えると足が止まらなくて…それにさっきから胸もドキドキして静まってくれないのよ」
「まぁ、それは仕方ないよね」
らんこの言葉にあげはも同意する。これから好きな男の子とお出掛けもといデートをすると考えると興奮が止まらないだろう。尚、あげはは過去にデート経験があるのかは謎だが。
「それよりもそのフードをいい加減外したらどうですか?折角のお出掛けなんですから」
「は、外せるわけないでしょ!これが生えている状態で!」
ツバサの指摘にらんこは怒鳴りながら答える。今彼女は久しぶりにフードを被っている状態なのだ。何故、被っているのかというと先日の暴発したミックスパレットによりらんこは猫耳と尻尾が生えてしまった。その後も消える気配がなく土曜日を迎えてしまった為、頭に生えた猫耳を隠す為に仕方なくフードを被る羽目になっているのだ。
「本当に最悪よ。耳と尻尾は消えないままなんて…」
「ほ、本当にごめんねらんこちゃん。で、でもさ、今の猫耳らんこちゃんの姿をひかる君が見ればきっとメロメロになると思うんだよ」
原因であるあげははらんこに申し訳なさそうな顔を浮かべつつ猫耳を利用すべきなのではとフォローを入れる。
「め、メロッ!?そ、そう簡単に上手くいく訳無いじゃない!だ、第一あいつが猫耳好きなんて聞いたこと…って、ち、違う!わ、私はあいつの趣味趣向に合わせるつもりは無いわよ!一体何を言ってんのよ!?」
「めちゃくちゃテンパってるじゃん」
あげはの発言にらんこは自分でも何を言っているのかわからないくらいの動揺を見せる。そんな中ベリィベリーがらんこに話しかける。
「それなららんこ。不安だったら今日の奴とのお出掛けは中止にして私とお出掛けするのはどうだ?私は猫耳が生えたらんことなら何処にでも付き合うぞ」
「ちょっとベリィベリーさん!?」
「今日はひかる君とのお出掛けだから駄目だよ!」
ひかるとのお出掛けをドタキャンしようと促し、更には自分がらんことのお出掛けイベントを楽しもうと目論むベリィベリーにましろとツバサが止めようとする。
「ベリィベリー…嬉しいけど、やっぱり約束したからにはちゃんと最後までやるのが通りよ。それに今日まで服もちゃんと準備してきたから」
ベリィベリーの提案にらんこは丁寧に断る。彼女は今日に向けて服もオシャレなものにしたのだ。上半身の服はフード付きパーカーで隠れているが顔はましろとあげはの協力でメイクしている。下半身はミニティアードスカートで足にはニーハイソックスに靴はローファーを履いている。らんことしては服以外にも実際にこれから向かうお店や施設の道のりもシミュレーションをしてきた為、それが無駄になる事は避けたかったのだ。
「チッ…そうか、約束したのなら仕方ないな。だが、これはあくまでも奴へのお仕置きが目的を忘れるなよ」
「わ、わかっているわよ」
ベリィベリーは周りに聞こえない大きさで舌打ちをしつつらんこに改めてこれがひかるへのお仕置きという事を再確認する。
「どうやらベリィベリーさん引いてくれるみたいだね」
「ええ、でも油断しないで下さい。ベリィベリーさんの事だからひかるさんがやってきたら何をしでかすか…」
一先ずベリィベリーはこれ以上ドタキャンを勧めない事にましろとツバサは安心するが警戒を緩めないでいた。
そんな時らんこの持つスカイトーンが突然光り出し、彼女達の目の前に人が通れるくらいのトンネルが出現し其処からひかるが出てきた。
「お、お待たせ…らんこさん」
「べ、別に待っては無いわ。時間…ピッタリだし」
ひかるの顔を見たらんこはこれ以上彼の顔を見るのが恥ずかしいのか少し赤らめさせ視線を晒し、ひかるもらんこと同様に顔を赤くし彼女を見つめていると服が普段と違う事に気がついた。
「あ、らんこさん前と服が違うね」
目の前のらんこが普段と服装が異なる事にひかるは気が付くと頭から足先まで彼女の姿を見るが、無意識に視線がスカートとニーハイソックスの間に露出した太腿へと移動してしまう。そんな彼の視線にらんこは気が付き声を荒げる。
「ど、何処に視線を向けているのよ馬鹿!」
「ご、ごめん!た、ただ、ちょっとその格好が魅力的だったからつい視線が…」
「そ、そう?…魅力的ね」
ひかるに今の自分が魅力的と言われ顔が更に赤くなったらんこは自身の顔を隠す様にフードを深く被る。
尚、そのやりとりを見たベリィベリーはひかるに対して血走った目で睨みつけるが、ひかるはらんこに意識を向いている為気が付かない。
「そ、そう言うひかるこそ中々k「ようこそひかる君!」
自分もひかるの服を褒めようとしたらんこだったがそれを遮る様にソラがひかるに挨拶をすると続いてましろ達も彼に話しかける。
「来るのを待っていましたよ」
「おっ、ひかる君もいつもと違って気合いある服を着ているねぇ〜」
「うん、かっこいいよひかる君」
「あ、あはは、ありがとう」
やってきたひかるの前にソラ達が詰め寄る。対してひかるは照れた表情を浮かべる。それを見てらんこは面白く無さそうな顔を浮かべる。
「ちょっと!あんた達詰め寄り過ぎよ!」
「あっ、ご、ごめんねひかる君!」
「い、いや、別に俺は大丈夫だよ」
らんこの声にハッとなった4人は今日はらんこがひかるとデートである事を思い出し慌てて謝罪するがひかるは満更でも無い顔を浮かべる。それを見たらんこは目を細める。
「なに、ニヤついているのよ」
「い、いや、俺はニヤついてなんかいないよ。と言うからんこさんもしかしてだけど、ヤキモチ妬いている?」
「や、妬いている訳無いでしょ馬鹿!」
ひかるの指摘にらんこは否定する。一方でひかるは慌てて否定するらんこの姿を見てまるで猫の様だと思ってた。
(猫耳のらんこさん…可愛いんだろうなぁ…)
内心猫耳が生えたらんこの姿を妄想するひかるは口元が緩む。尚、実際に今らんこに猫耳と尻尾が生えている事は知らない。
「…あれ、そういえば何でまたフードを被っているんだ?」
「べ、別にいいでしょ!今日は被りたい気分なの!」
「そ、そうなんだ…なら別に気にしないけど」
折角下半身はお洒落をしているのに上半身はパーカーを着てるなんて勿体無いと思ったが、ひかるも下手にらんこの機嫌を損ねさせたく無い為それ以上の追求はしなかった。対してらんこはフードについて指摘された時に少し動揺するも何とか誤魔化す事に成功し、安堵の息を吐くとベリィベリーがひかるに話しかける。
「ようこそ雷田ひかる。遥々並行世界からよく来てくれた」
「べ、ベリィベリーさん?」
ベリィベリーに話しかけられた事にひかるは思わずその場から1、2歩下がってしまう。しかしそれは仕方のない話だ。前回ベリィベリーと邂逅した時に彼女はひかるを去勢しようと巨大な鋏を持って迫ってきたことでそれ以来苦手意識を覚えてしまったのだ(まぁ、妥当である)。
そんなベリィベリーだが今回はひかるに対して怒りや嫉妬などの負の感情が一切感じない笑みを浮かべている。
「今日はらんことのお出掛けを楽しむが良い」
「あ、ああ、そうさせt「ただしそれは」…え?」
その時、ベリィベリーはその場を天高く跳ぶと拳を突き出してまるで矢の如くひかるへ恐ろしい形相を浮かべながら突撃する。
「この私を倒してからだーッ!!!」
「う、うわあああああああ!?」
『ひ、ひかる(君)(さん)!?』
やはりというか案の定ベリィベリーはひかるに襲いかかった。らんこ達も先程まで一切怒りを見せなかったベリィベリーに完全油断して反応が遅れてしまい、そのままベリィベリーはひかるに手を掛けようとした瞬間だ。
「ふしゃーっ‼︎」
「え?なん…ぎ、ぎゃああああああっ!?」
『べ、ベリィベリー(ちゃん)(さん)!?』
その時、ひかるの背後から何かが飛び出すとそのままベリィベリーの顔を切り裂いたのだ。顔を切り裂かれたベリィベリーは顔を手で押さえながらその場をのたうち回る。一同は心配しつつも彼女を襲った謎の物体に視線を向けると其処にはひかるを守る様に1匹の大柄の豹柄の猫…ベンガル猫がいたのだ。
「え、何でこんな所に猫が?」
「ら、ライ!?」
「え、ひかるもしかしてあんたの猫なの?」
ひかるの驚きの声を聞いたらんこは目の前にいる猫は彼の飼い猫なのかと問うとひかるは肯定する。
「あ、ああ、実は此処に来る前に一緒にトンネルに吸い込まれてて。此処に出た時見かけてなかったからひょっとして引き返したのかと思ってたけど…やっぱり来ていたんだ…」
今まで見かけてなかった飼い猫のライが自分の前に現れてベリィベリーを返り討ちにした事にひかるは驚きを隠せなかった。
一方で漸く顔の痛みが治って来たベリィベリーは指の隙間からライを睨み付ける。
「ぐ、お、己ぇ…き、貴様…よ、良くも私の顔を傷つけたな…!許さーん!!!」
「お、落ち着いて下さいベリィベリーさん!」
「と言うか今のベリィベリーちゃんむちゃんこ悪役に見えるよ!」
「ええい離せ!離さんかーッ!!!」
顔を傷つけられた事にベリィベリーは頭に血が上りそのままライに襲い掛かろうとするがソラとあげはが必死に彼女を取り押さえる。
「落ち着きなさいベリィベリー。顔を切り裂かれて怒るのは仕方ないけど猫1匹にムキになり過ぎよ。ほら、あんたもこっちへいらっしゃい。煮干しをあげるわよ」
らんこはベリィベリーを宥めた後、その場をしゃがみ込みライと仲良くなろうと煮干しの入った袋をチラつかせて自分の元へ誘い出そうとする。
「騙されるならんこっ!そいつは小さいナリでモフモフしているが、血肉に飢えた猛獣だ!油断を見せれば最後喉笛を食いちぎられるぞ!」
「いや、猛獣って…」
「猫にやられたからって怒り過ぎですよ」
必死にライの危険性をらんこに訴えるベリィベリーだがそんな彼女にましろとツバサは呆れた眼差しを向ける。
「大丈夫よ。私よく近所の野良猫と遊んでいるからすぐ仲良くなれるわ」
自信満々でらんこはそう言うとまるで魚を釣るかの様に煮干しをチラつかせる。一方でライはらんこに対して目を少し細めて彼女を眺めた後、ライは後ろに立っているひかるに視線を向ける。
(頼むライ!らんこさんと遊んでくれ!)
手を合わせて俺の顔を立ててくれと言わんばかりにお願いするひかるの姿にライはやれやれと言わんばかりに息を吐くとらんこへと近づき彼女の持つ煮干しを咥える。
「それっ!」
「にゃあーお」
するとらんこは煮干しを咥えた瞬間を狙ってライの顔周りをワシャワシャと撫で始める。するとライは気持ち良さそうな顔を浮かべて甘い鳴き声を発する。
「ば、馬鹿な…奴はその気になれば私の目玉も抉る奴だ(決めつけ)…だと言うのになぜあんな単純な罠に引っかかったんだ?」
「ベリィベリーさんプリンセスの前なので物騒な話は控えて下さい…あれ、プリンセス?」
先程まですぐ隣にいたエルがいつの間にか姿を消している事に何処へ行ったのだろうと辺りを見渡すと彼女はらんこの側にいたのだ。
「にゃんにゃん」
「エルも触りたいのね?ひかる良いかしら?」
「ああ、ライが嫌じゃなければ大丈夫だよ」
らんこは飼い主であるひかるから許可を得るとエルに話しかける。
「それじゃあエル最初触る時は顔の周りで段々と慣れてきたら背中を撫でていくのよ。後、足と尻尾は触られると嫌っぽいからあまり触らない様にね」
「える!よちよち」
「ふにゃあ〜」
注意を聞いたエルはらんこの言う通りライの背中を撫で始める。ライも特に不快感は無いのかそのまま撫で回される。
「己ぇ…あの毛玉ぁ…良くもらんこを…魅了して撫でてもらうなんて…羨ましいぞちくしょうーっ!!!」
「そ、そんな…プリンセス!僕の方がモフモフしているのにーっ!!!」
「大変です!ベリィベリーさんだけで無くツバサ君まで情緒が不安定です!」
「ただでさえややこしいのにツバサ君まで…」
「まあ、少年はエルちゃんのナイトだからね」
完全にライに夢中になっているらんことエルを見てベリィベリーとツバサはショックのあまり悲鳴を上げてしまう。それを見たソラ達は困惑の表情を浮かべる。
そんな中ひかるはライを撫でまわすらんことエルを微笑ましそうに眺めていた。
「(らんこさんとても楽しそうだな。証拠に尻尾も左右に揺れて……)ん…尻尾?」
一瞬、チラッとらんこのパーカーの隙間からライと同じ尻尾の様な物が飛び出しており数秒ほどその尻尾を見た後目を擦って改めて確認するが尻尾はどこにもなかった。
「俺の気のせいか?」
先程見た尻尾は目の錯覚かとひかるは思い悩む。冷静に考えるとらんこは普通の人間である為、尻尾なんて生えているわけ無いと判断し先程は自分の妄想が重なって見えたのだろう。
(あ、危なかった…気が緩んで尻尾が飛び出ちゃった)
一方でらんこも自身の尻尾がパーカーから飛び出している事に気付き、ひかるが目を擦っている間にパーカーの中へ戻し、何もなかった様にライを撫でて冷静な心を装った。
────────
それからある程度ライを撫でてエルと共に満足したらんこは立ち上がりひかるに向き合う。
「悪かったわね。時間かけちゃって」
「いや、俺は問題無いよ。ライも気持ち良さそうだったし、そうだろライ?」
「にゃあ」
ひかるはライに話しかけるがライはプイッとそっぽを向いた。
「あれ、ひょっとしてあまり気持ち良くなかったのかしら?煮干しも美味しい物にしたつもりだったけど」
「そんな筈は無いと思うけど…」
そっぽを向くライにらんこはもしかして気分を害してしまったのでは思っていると、いつの間にか鳥の姿になったツバサが口を開く。
「"此処までお膳立てしたんだ。後はその嬢ちゃんと楽しんで来な"と言っているんですよ」
「え、ツバサあんたこの子の言葉がわかるの?」
ツバサが鳥と会話できる事は以前から知ってたがそれ以外の動物と会話できた事に驚きの表情を浮かべる。
「ええ、と言っても完全とまではいきませんが凡そはわかります」
「それじゃあ、ライちゃんもこう言っている事だから2人はデートを楽しんで来なよ。ライちゃんの面倒は私たちが見とくから」
「だ、だからデートじゃ!…も、もう良いわ。兎に角ひかるはついて来て」
「あ、待ってくれよ!」
らんこは照れ顔を隠す様に風波拳の敷地から出て行き、ひかるも彼女を後を追っていく。そしてその場に残されたソラ達は互いに顔を見合わせる。
「さて、それでは私たちはどうしますか?」
「2人の邪魔しちゃ悪いよね」
らんことひかるが2人っきりでデートしている間に自分達はどうするか相談し合う。自分達が居ない所で一体どんなデートをするのか気になるがそれをコソコソ付けていくのは野暮な事である。そんな中であげはが提案した。
「ねぇ、気になるから皆んなで2人のデートを見に行こうよ」
「だ、駄目ですよ!確かに気になりますが僕たちはライさんのお世話をしないと!ほら、ベリィベリーさんだって我慢して…あれ、ベリィベリーさん?」
すると先程まで自分達の元にいたベリィベリーがいつの間にかいなくなっている事に気がついた一同は周囲を見渡すが、彼女は何処にもいない。
「ベリィベリーさん何処に行ったんでしょうか?」
「らんこちゃんの家の中に入ってトイレに行ったんじゃない?」
「…まさか!?」
此処にいないベリィベリーの存在に嫌な予感を察したましろは慌てて風波家から出てソラ達もましろの後を追って出ると、其処にはらんことひかるから少し距離を開けて尾行するベリィベリーの姿が確認できた。
そして、ベリィベリーは電柱の陰に隠れると何処からとも無くメガホンを取り出して自分の耳に当てて2人の会話を聞き取っている。
「ところでひかるは今日予定とか無かったの?」
「実はアサヒ達に何とかってホテルに泊まらないかって誘われたけど断った。らんこさんの方が先約だからな」
「ふ、ふーん…わ、私のお仕置きを優先するなんて…と、とんだドMね」
「はは、そうかもな」
元の世界でアサヒ達が何やら楽しいイベントを誘われたひかるが自分の事を優先してくれた事にらんこは内心嬉しく思い、パーカーの中では隠れている尻尾が荒ぶる。対してひかるも彼女の軽口が自身の本心を隠す為のものだと察して合わせる。そんな2人の会話を聞いたベリィベリーは自身の中にある嫉妬の炎をメラメラと燃え上がる。
「あ、あの男ぉ…らんことイチャイチャして…もう我慢出来ん‼︎ベリィベリー出る‼︎」
2人が仲良く談話する様子にベリィベリーは耐えられずメガホンを捨て、2人の間に割って入ろうと動き出そうとした瞬間だ。
「ふしゃーっ!!!」
「なっ!?きさ、ああああああっ!?」
いつの間にかライが現れてベリィベリーの死角から襲いかかり彼女をすぐ側に置かれているゴミ袋の山へ突き飛ばした。それと同時に彼女の脳内に声が響き渡る。
『おっほん!犬の散歩も楽しいザマスけど、私のオススメェ〜アニマルは……ひ・つ・じ……のはあっ!?』
……誰だコイツ
脳内で響いた声の主はペットの散歩をしていたようだったが、何者かによって吹っ飛ばされたらしい。尚、その主は人間では無く羊の執事なのだが。
「ん?」
「どうしたんだらんこさん?」
「いや、頭の中に一緒に変な声も聞こえたけど何でもないわ。同時にそいつをジンギスカンにする事も考えたけど本当に何でも無い」
後方からベリィベリーの声が微かに聞こえたらんこは反射的に振り返るが、ベリィベリーの姿はゴミ袋の山で隠れている為らんこは気の所為だと判断。ひかるの方はそんならんこからの説明を受けて少し引いてしまうが、らんこが大丈夫と言っているのでそれ以上言わずに2人共その場を去っていった。
「ブハッ!この毛玉‼︎一度どころか二度も邪魔して…もう許さん!」
二度も自分の行動を邪魔したライに怒りの矛先を向けると感情のまま襲い掛かろうとする。
「ストォーップ!!!」
「うおっ!?そ、ソラ?」
その時、ベリィベリーとライの間に割って入る様にソラがやって来てベリィベリーもソラの姿を見て動きを止める。
「もう、何やっているんですかベリィベリーさん!?」
「またひかるさんに襲い掛かろうとしたんですね」
「そんでそれをライちゃんに止められたと」
「える…」
続いてましろ達も遅れて到着し先程までのベリィベリーの身勝手な行動を全て見ていた為、ましろ達はベリィベリーは呆れた眼差しを向ける。
「ま、待ってくれ!誤解だ!弁明させて欲しい!」
「今更弁明なんて…」
今までの行動からして犯罪スレスレの行為をして来たベリィベリーだが、一応話だけは聞く情けは与える事にした。
「それで何ですか?その弁明というのは?」
「ああ、私はな…今回のひかると奴のお仕置きについて物凄く不安なんだ」
「不安って今更何を言い出すかと思えば…」
寧ろ不安なのはベリィベリーさんだとましろがツッコミを入れようとするも其処はぐっと堪える。
「だ、だってそうだろ!?奴はらんこに好意を持ち更にらんこまで……く、くぅ〜…奴に好意を抱いているんだ。そうなるとその内が関係が進んで戦いに影響が出たらどうするんだ!?」
「だからと言ってそれで無理矢理2人の邪魔をするのはよくないと思いますが」
確かにベリィベリーの発言に一理ある。だが、ソラのいう通り2人の恋路を邪魔するのはあまりよく無いと指摘する。
「わかっている。しかしだな、らんこ達はまだ14歳だ。我々の世界では自立出来る大人だがこちらの世界ではまだ子供だ。其処で不純異性交遊なんてしたらどうする!?」
「ふ、ふじゅんって!?」
「また何を言い出すんですか!?」
「ぷ、プリンセスの前ですよ!」
以前の服屋の様にまた卑猥な発言をした事にソラ達は動揺を見せる。尚、前回娼婦の意味がわからなかったソラがましろとツバサと同じ反応を見せるあたり勉強したんだと感じられる(親目線)。
「あげは、この中で年長者なお前ならその事をよく分かるだろう」
この中で年長かつ色々と経験豊富そうな(決めつけ)あげはに聞くと彼女はしばらく唸る様に考える。
「う〜ん、確かに気になるね。2人とも相思相愛だからね。ひかる君は兎も角、らんこちゃんなんて自分からキスをしたって言うからあと少し何かしらイベントがあるとやりそうだね」
「そうだろそうだろ!だから私は清い交際をする為にも2人を監視しスキンシップが激しくなれば止めるつもりだ」
あくまでも清い交際の為とマトモな事を言い放つベリィベリーだが、実際は2人の仲をこれ以上深まらない様にという本心を隠す建前であった。
「で、でも、2人は其処らへんの常識はしっかりs「いや、そうとも限らないよましろん」…え、あげはちゃん?」
2人に限ってそんな一夜の過ちみたいなことは起こらないと思ったましろだが、其処にあげはが声を出したのだ。
「最近の中学生って結構進んでいるみたいだし、稀にその年で子供を産むって事も聞くから可能性は無きにあらずだよ」
「な、何ですって!?だとしたら止めませんと!」
「ええ!確かにそうです!それにそんな事をされたらプリンセスの教育にも影響しますし」
「ソラちゃんにツバサ君まで!?」
まさかのあげはの発言に同意するかの様にソラが同意し、更には自分と同じくベリィベリーのヤバさに気付いているツバサまで同意するとは思ってもみなく衝撃を受ける。
「よし!多数決で尾行するに決定だな。では、早速らんこ達の後を追うぞ。後に続け!」
「「「おおーっ!!!」」」
「お〜う!」
ベリィベリーが某戦闘民族の王子の如く音頭を取るとそれに応える様にソラ達も声を上げて2人のあとを追う事に決まった。
「ま、待ってよ皆んな!今日はらんこちゃんの楽しみにしていたひかる君とのお出かけだよ!それを私たちがコソコソ付き纏うなんて駄目だよ!」
「臆病者はついて来なくても良い!いくぞお前たち!」
ましろが静止の声を掛けるもベリィベリーは一同に気の迷いが生じない様にソラとあげはを連れてその場を去っていく。ましろはそれを見てどうしようと頭を抱えて悩むが其処にツバサが声を掛ける。
「ましろさん、心配なお気持ちはわかります」
「ツバサ君?」
ツバサの発言を聞いて驚きの表情を浮かべる。てっきりベリィベリーの口車に乗せられたかと思ってたツバサが実は先程までのは演技でベリィベリーを欺こうとしていたのだ。
「ですが、此処で僕たちが帰るとベリィベリーさんの事ですから邪魔されないのをいい事に2人のデートを滅茶苦茶にしようとするに違いありません。ですので近くでベリィベリーさんを監視するんです」
「な、成る程」
ツバサの説明にましろは納得する。先程だって自分達が目を離した瞬間にベリィベリーは尾行をはじめ、ライが妨害しなかったららんこ達のデートが早々に滅茶苦茶になっていただろう。
「あ、もしかしてソラちゃんとあげはちゃんもベリィベリーさんの行動を牽制しようと」
「いえ、それは多分違うと思います」
2人もツバサの様にベリィベリーの動きを牽制しようと彼女と共に行動したのだと推測するがツバサに否定される。
ソラの場合はらんことひかるが不純異性交遊をしない様に見守る事とあげはの場合はらんこ達のデートを見たい口実が欲しかったからベリィベリー達と共に行動する事を選んだ様だ。
「兎に角です。今回は僕たち以外にも幸いにも動機は異なりますが、ソラさんにあげはさんの目がありますのでベリィベリーさんはあまり派手なことは出来ないと思います。ただ…」
「ベリィベリーさんだもんね…何をするか本当に私達の想像を超えるから要注意しないと」
今までのベリィベリーに行動から何かしら今回のデートにて2人の間を裂こうと動くと思われる為、ましろとツバサは協力してベリィベリーの悪巧みを止めようと決める。
「にゃあ」
「ライちゃん?」
「どうしましたか?」
其処へ2人の元にライがやってきて声を上げる。どうやら何かを自分達に伝えたい事がある様で、ツバサは再び鳥へと姿を変えて話を聞く。
「えっと、"俺もその話に乗せてくれ。ひかるの奴は今日まで楽しみにしていたからな。それを失敗される訳にはいかねえ"って言ってます」
「え、ライちゃんも協力してくるの?」
ツバサの通訳によりライが自分達に協力してくれる事に驚きの表情を浮かべ、ツバサは引き続きライの通訳を行う。
「"ひかるは一応俺の飼い主だからな。それに今日まであの嬢ちゃんの惚気話を耳にタコができるくらい聞かされてこれでしくじったら寝覚めが悪い”って言ってます」
「そうなんだ…フフッ、何だからんこちゃんみたいだね」
ちょっと面倒臭そうにしているがひかるの為に自分も動こうとするライの姿ににましろはらんこを連想する。
「わかったよライちゃん!それならベリィベリーさんの悪巧みを一緒に止めよう!」
「にゃあ!」
「ええ、僕たちが協力すればベリィベリーさんを止める事が出来ます!」
こうしてましろとツバサに新たな協力者である猫のライが共に2人のデートを成功させる為、ベリィベリーの妨害を阻止しようと決心すると先に行ったベリィベリーの後を追いかけるのであった。