ひかるとデートお出かけをする事になったらんこ。彼が自分達の前に訪れるとベリィベリーがひかるへと襲い掛かると言ったトラブルが発生。その後、何とかひかるを家から連れて街へやってくると2人はとある施設へと入っていく。
施設に入ると其処はフロアが広がっておりフロア内には音楽と聞くたびにストレスが発散する様な弾ける音が響き渡りらんこ達の気分は良かった。
そんな中らんこはその店から借りたバスケットボールサイズの硬い玉を手に持つと数m先に離れた綺麗に並べられた10本のピンを睨みつけた。
「ふんっ!」
手に持った玉をピンに向かって投げると玉は床を転がりそのまま10本の内8本が玉とぶつかり良い音を立てながら倒れる。
「ナイスボールだらんこさん」
「うーん、全部倒すつもりが2本残ったわね」
ピンを沢山倒したらんこにひかるは褒めるが2本倒し損ねてしまった事にらんこは納得いかない表情を浮かべていた。
既に察しの通りだが、2人が先ずデートとして訪れたこの場所はボウリング場である。この場所は家族や友達の他にカップルなどがよく訪れてくる事がありデートスポットとしては申し分無かった。
「まぁ、幸いにも残ったピンは隣接してるから次投げればスペアはほぼ確定だよ」
「スペアね…本当は最初にストライクをだしたかったけどねっ!」
最初に全部倒せなかった事を気にしつつらんこは二頭目を投げると残りのピンを倒す事が出来、らんこは少しばかり口元を緩める。
続いてひかるの番になり彼はボールを持って投げる位置に向かうと口を開く。
「それにしても意外だよ。らんこさんってボウリングをするんだ?」
「まぁ、数年ぶりにやるけど…ていうか、ひかるはボウリングが苦手なの?」
「いや、そう言う訳じゃないけど、ただデートって聞くとてっきり映画や買い物をしに行くのかと思ってさ」
自分のイメージしていたデートと異なっていた事にひかるは少し調子が狂っている様だ。
「まぁ、映画も悪く無いんだけどこの時期って私好みの映画はないから……って、デ、デートじゃ無いわよ!」
さらっとデートと言われた事にらんこは慌てて否定しつつ「コホン」と咳払いして冷静さを取り戻す。
「まぁ、買い物に関しては一応予定しているけどあんたが楽しめるかどうかわからないから先ずあんたも楽しめそうなボウリングを選んだって訳よ」
「そっか、俺の為に…ありがとっ!」
礼を言いつつひかるは玉を投げるとレーンの真ん中を転がっていきそのまま10本全てのピンを倒した。
「凄いわね、一頭目でストライクなんて」
「まぁ、コツさえ覚えれば簡単だよ。らんこさんもコツを覚えればストライクをバンバン取れるよ」
ひかるは謙遜な態度を取りその気になればらんこもピンを全部倒せると言うが、らんこはあまりピンと来ない表情を浮かべる。ピンだけに…。
「コツって言われてもストライクのコツなんて私は知らないわよ」
「なら俺が教えるよ。先ずポケットを外さない事、そして投げるときはピンを見て狙うのではなくスパットを狙う事なんだ」
ひかるはストライクのコツをらんこに教えるも先程と同様ピンと来てない様だ。
「あのさ、ソラの様な擬音を使った感じじゃないのは良いけど、専門用語が混じって詳しい内容がわからないわよ」
ボウリングに専門の知識を持ち合わせてないらんこはひかるの説明を聞いて理解出来ておらず首を傾げてしまう。
「細かく説明するのはちょっと面倒だからさ…うん、直接教えるよ。先ずは自分の玉を持って」
「ひゃっ!?ひ、ひかる////!?」
ボウリングの玉を持ったらんこの手をひかるが突然重なる様に握ってきた事に顔を赤くし動揺する。一方でひかるはらんこの赤くなった顔に気づかずそのまま彼女の身体を操る様に教える。
「スパットって言うのは床にある三角マークの事でポケットは三角同士の間の事を指しているんだ。らんこさんは右利きだから投げる瞬間に左足の先が中央のスパットに来る様にして、玉は中央のスパットとその右隣にあるスパットの間であるポケット。つまりあの辺りに玉を転がせば高確率でストライクが取れるよ」
「あう…えう////」
ご丁寧に解説をしながらひかるはらんこの身体を動かして玉を投げさせると玉はレーンの中央を転がりそのまま全てのピンを弾き飛ばした。
「やったぞらんこさん!ストライクおめでとう!」
自分の教えがあったものの、らんこがストライクを取った事にひかるは彼女以上に喜びを露わにする。
「う、うん、嬉しいんだけど…は、離してくれない?」
「え?…あ、ああっ!?ご、ごめん!急に触って‼︎」
教えるのに夢中になってボディタッチをしてしまった事に気づいたひかるは慌ててらんこから離れて謝罪する。
「べ、別に怒ってない…驚いたけど、ひかるのお陰でストライク出来た。あ、ありがとう」
「え?…あ、ああ、そう言ってくれると俺も助か…ん?」
誤魔化すかの様にらんこは戻ってきた玉を手に取ると今度は自分1人でストライクを決めようと彼に背を向けるとひかるはらんこの後ろ姿を見て彼女のパーカーから再びある物が生えている事に気がつく。
「え…猫の尻尾?」
ひかるはらんこの後ろ姿を見た瞬間固まる尻尾が服から飛び出してまるでヘリコプターの如く荒ぶっていた。
そのままひかるは驚きのあまり、ボウリング場に響き渡る程の大きな声を上げ──
「…やべぇ、俺の妄想が段々と現実と区別出来なくなってきた」
──る訳も無く冷静に考えてそれは再び起こした自身の妄想による物だと判断してスルーする事にした。
一方でらんこは玉を構えて先程ひかるに教わったコツを思い出し精神を集中させている。
(足を中央のスパットに合わせて投げる際は中央と右のポケットを狙う…)
脳内で自分の投げるフォームを思い浮かべ、ひかるから貰ったアドバイスが無駄にならない様にと何度もイメージを繰り返す。
だが、先程ひかるに教わった時にボディタッチをされた事を思い出しかけるも慌てて首を横に振る。
(余計なイメージは削除、あるのはピンを全て倒すまでのイメージよ)
先程までの出来事を可能な限り忘れて今は全てのピンを倒しストライクを決める事だ。そうすれば先程コツを教えてくれたひかるへの恩返しにもなる。だからこそらんこは再び集中し玉を投げようと動き出す。
『任せて、私がストライク取るから』
誰だコイツ?
玉を投げようとした直前脳内に聞き覚えの無い声が聞こえるもらんこはその声にあまり気を取られず玉をコーナーに投げる。そのままボールは中央を転がって行き、全てのピンを倒す事に成功する。
「やったわ!ひかる!1人でストライクを出す事が出来たわよ!」
「え?…あ、ああっ!やったじゃないからんこさん!」
らんこが喜んでいる姿にひかるは先程の尻尾の件で呆気に取られるも直ぐに彼女と共に喜びを分ち合った。今は妄想による幻なんかよりも目の前にいるらんこの笑顔の方が大事であるとひかるは考える。
一方でそんな2人の姿を隣のレーンにいる赤いアフロを被った女性…ベリィベリーがサングラス越しで血走った目で眺めていた。
「雷田ひかるぅ…らんこと2人きりだからって調子に乗りおってぇ…!」
何故彼女が此処にいて変装をしているのか、それはらんことひかるが自分達の居ない所で淫らな行為をしないか心配でソラ達と共に監視する。……そうソラ達に話したものの、それはあくまで建前。本音では2人のデートをぶち壊そうと企んでいる。
そして、そんならんことイチャつくひかるにベリィベリーは手に持ったボウリングの玉を投げつけようかと考えていると、長い髪をポニーテールに結んで星形のサングラスを付けたあげはが声をかける。
「ほら、次はベリィベリーちゃんの番だよ」
「わ、わかってる!」
あげはに促されたベリィベリーは玉を自分のピンに向かって投げるが、玉は途中でレーンの端にある溝は落ちてガターとなってしまう。
「クソッ!!!なんなんだこのスポーツは!?」
「落ち着いてベリィベリーちゃん、クールに!クールに行こう!」
ボールをガターに落としてしまって荒れるベリィベリー。そんな彼女をあげはが宥めた。尚これでガターになったのは連続3回目となる。そんな2人のそばにある椅子には鼻メガネを付けたソラ達(ライとエルも含め)が座っており、ベリィベリーに同情の眼差しを送っていた。
「ベリィベリーさん荒れてますね」
「まぁ、さっきからガターばっかだからね」
「更に言えばらんこさんとひかるさんが仲良くしている姿を見ているから余計にですよ」
「えりゅ」
一同はらんこ達のデート&ベリィベリーの監視の為、ボウリング場へとやって来たのだがあげはの提案で自分達もボウリングをやる事になった。しかし、ソラ達は良い感じにピンを多く倒している中でベリィベリーだけは連続ガターで一本もピンを倒せていなかった。そのせいで彼女は余計に苛立ちが募っている。そんな彼女を見てましろはある事を思い出す。
(そう言えばベリィベリーさんって昔手を怪我したって言ってたけど…)
以前スカイランドにてシャララ隊長からベリィベリーが過去に右腕を怪我をしてその所為で腕力が落ちたと言っていた。恐らくそれが原因でボウリングの玉を上手く操る事が出来ずガターになってしまっているのだと納得の表情を浮かべながらツバサと相談する。
「取り敢えずベリィベリーさんは今の所らんこちゃん達に絡んでいく様な事は無いみたいだね」
「ええ、ですが警戒は緩めない方が良いです。ベリィベリーさんは普段はアレでも青の護衛隊の1人です。僕達が気を緩めた瞬間、お二人へ何かしらアクションをしてくる可能性が──」
その時突然フロアの明かりが消え出すと、ノリのいい音楽とカラフルなライトが点きまるでボウリング場がナイトクラブやディスコの様に変化する。
「な、なんですか!?突然場の雰囲気が変わりましたよ!?」
「急にこのフロアが大人が遊ぶ酒場の様に…一体全体どうなっているんだ!?」
「えるっ!?」
突然変化したこの場にソラとベリィベリーとエルは動揺が隠せない様だ。
「おっ、遂に始まった様だね」
「あげはちゃん?」
「何か知っているんですか?」
何やらこの状況の変化にあげはは心当たりがある様でましろ達は気になって話しかける。
「実はこのボウリング場は今日イベントがあってね」
「イベント?」
「なんだそれは?」
イベントと聞いてソラ達も気になりあげはに問うと彼女は「ふっふーん」と得意気な顔を浮かべる。
「そのイベントっていうのはどうやらピンを沢山倒して点数を1番稼いだ人が豪華賞品を貰える事になっているんだ」
「その豪華賞品とは一体なんですか?」
このイベントに出る豪華賞品と聞いてソラは興味を持ち、それは一体なんなのか気になっている様だ。
「私も詳しくは知らないけど結構種類があってね。あっ、そう言えばカップルに似合った賞品もあるって話だよ」
「か、カップルだと!?」
賞品の中にカップルに因んだ物があると聞いてベリィベリーは声を荒げる。もしもらんこ達が此処で1番になってカップルの賞品を手に入れたら2人の中がより良くなってしまう。
「お前ら!!!このイベントに絶対勝つぞ!!!」
「おっ、ベリィベリーちゃん張り切ってるね」
「なら私達もベリィベリーさんに負けないくらい頑張らないと!」
なんとしてでも自分達が一位となってらんこ達がカップル賞品なる物を手にする事を避けようと自身を奮い立たせるのであった。
─────────
それかららんこ達はイベントが始まってからは順調にピンを倒しつつあった。ひかるが上手いのもあり更には先程ひかるからストライクのコツを学んだらんこは連続でストライクを取っていた。
「やるじゃないからんこさん!これなら俺たちが優勝してもおかしくはないぞ!」
「そうかもねっ!」
2人はこのイベントが開かれる事を受けて、自分達が一位に成れると自信があった。本日は幸いにも上級者やプロ級の腕を持った客は居らず。更には連続でストライクを出しつつある事で自分達が必ず一位に成れると思っていたのだ。
「それにしてもこのイベントの賞品って何があるんだ?」
元々ひかるはらんこに今回このボウリングで遊ばないかと誘われた為、イベントや賞品について知らない。なので、らんこなら何か知っていると思い話しかけてみた。
「いや、実を言うと私も分からないわ」
「え、そうなのか?」
てっきりらんこは今回のイベントがあるからこのボウリング場を選んだのかと思ったひかるだが、らんこは賞品について知らない事に驚きの表情を浮かべる。
「まあ、私は賞品よりも今は沢山ピンを倒したいわっ!!!」
賞品についても気になる所はある。だけどらんこは今ひかると2人っきりでいるこの機会はとことん楽しみたいのだ。
一方でベリィベリー達も順調にピンを倒している(尚、ベリィベリーはガター続きである)。だが、ボウリングの経験のあるあげはですららんこ達と比べて少し差が出ている。
(くっ、このままではらんこ達が賞品を…何とか阻止しなければ!)
焦りを生じるベリィベリーはどうにかしてらんことひかるのどちらかが一位になるのを避ける為、禁じ手を使おうとする。彼女は自分の玉を取るとチラッと隣のレーンにひかるが玉を投げようと立っている姿を確認する。
(雷田ひかる…らんこの前で恥を晒せ!)
その後、ベリィベリーはひかるの足元に玉を転がして彼を転ばそうと考えたためにソラ達に悟られない様に動き出す。しかし、ベリィベリーの邪な考えにライがいち早く気がつく。
「にゃあ!」
「ライさん!?」
「まさか!」
ライの鳴き声にましろとツバサは反応しベリィベリーへ視線を向ける。彼女は既にレーンに立っており玉を構えそのまま投げようとする。だが、その直前ベリィベリーは視線をピンでは無くひかるへと視線を向けていた。ましろ達はその姿を見てベリィベリーの企みに気が付く。
「ああっと、手がスベ──」
ベリィベリーは玉をひかるの足元目掛けて投げようとした瞬間だ。
「ましろさん!」
「うん!」
ツバサはましろに指示を出すと彼女はバックから水の入ったペットボトルを宙に放り投げる。
「にゃあ!!!」
それをライが爪で表面を抉りそのまま尻尾でベリィベリーの足元に向かって弾き飛ばすとペットボトルが破裂し中に入っていた水により水溜まりが出来る。
「たって、うおおああああああああああっ!?」
「「べ、ベリィベリーちゃん(さん)!?」」
「びりぃびりぃ!?」
ライ達によって出来た水溜まりに足を取られたベリィベリーは足を滑らせて転倒。加えて先程ボールを投げようとした勢いはそのままであり、彼女はペンギンが腹滑りをするが如く動きでレーンを滑っていく。最終的にベリィベリーはその先にあるピンへと向かって行くとピン弾き飛ばし、ボーリングのボールが落ちるスペースの中に顔を突っ込んでしまう。それを見たソラとあげはとエルは思わず声を上げてしまった。一方でましろ達はベリィベリーの企みを止められた事に無言でサムズアップをする。
「何だ?隣が騒がしいな」
「きっとこのイベントに勝つ為に張り切っているんでしょうね」
隣のレーンにてベリィベリーがピンへ突っ込んで行った事を知らないらんことひかる。2人はこれをイベントによりはしゃいでいるのだろうと判断した。そしてひかるはストライクを決めるとらんこに番を回した。
「じゃあ、次はらんこさんだけど時間的に俺からんこさんのどちらかが一位になれると思うから気楽に投げるといいよ」
「ええ、そうするわね」
そう言ってひかるはらんこに肩の力を抜く様に促すとらんこも緊張が解れ、気を楽にして玉を投げようと床を大きく踏み込んだ。
そんな時、運悪く先程隣のレーンにてライ達のコンビネーションにより出来た水溜まりがらんこの足元まで広がってしまっていた。
「うえっ!?」
「ら、らんこさん!?」
その影響でズルッと音を立てて足を滑らせてしまうとらんこは間抜けな声を漏らして床に倒れていく。ひかるはそんならんこを見て助けようと動き出そうとした。
「う、おおおおおおおおっ!!!」
その瞬間、なんとらんこは床に倒れる直前に身体をベイゴマの如く回転。その回転による遠心力によって上体を起こす事に成功する。しかし、そのまま彼女の回転は止まる事は無く激しさを増して行った。
「ちょ、誰か止めてええええええええええええええっ!!!!」
「ええっ!?止まらないのかよ‼︎」
らんこの声にひかるは思わず驚きの声を上げる。回転が止まらない理由はらんこの手に持つボウリングの玉の重量が原因である。その所為で勢いが止められない所まで来てしまっていた。そのままらんこの回転はベイゴマから竜巻の如き勢いにまで強くなっていき、周辺にはらんこを中心に風が吹き始める。
そんな中らんこの脳内には再び聞き覚えの無い声が聞こえてくる。
『クラシックバレエで鍛えた回転でランス〜』
「んな訳あるかーっ‼︎」
『高速回転で勢いを付けるビィ』
「いや、もう止まらないくらいの勢いがあああああああああっ!!!」
「らんこさんはさっきから何を言ってんだ!?」
思わず脳内に聞こえてきた声にツッコミを入れてしまうらんこにひかるは困惑の表情を浮かべつつも彼女を助けようと助言を送る。
「らんこさん!こうなったら一か八かの賭けだけど玉をレーンに目掛けて投げるんだーっ!!!そうすればボーリングのボールの重さが消えて回転の速さは減速する筈!」
「わかったっ!!!」
危険な行動ではあるがそうしないとこの状況から抜け出せない為、ひかるの言われた通りにしようと動き出す。だが、下手に玉を投げたらひかるや周りの客に当たる為、しっかりと狙いを定めようと集中する。
「……此処よっ!!!」
らんこは目を光らせると同時にピンに狙いを定める。それからタイミングを合わせて玉を大砲の如く投げつけ、投げられた玉は風を纏いピンへ衝突すると10本のピンは一瞬で吹き飛び、更にはその衝撃が他のレーンまで響くとそこに置かれていたピンまで全て倒してしまった。
「「「「「いや、そうはならんやろうっ!?」」」」」
「あ、あはは…や、やっぱり凄いならんこさんは…」
この異常な光景にボウリング場にいた客達全員から思わずツッコミの嵐が入るのであった。唯一ひかるだけはらんこのトンデモストライクに苦笑いを浮かべるのであった。
「ウップ…ギ、ギモヂワルッ」
尚、肝心のらんこは止まりはしたものの回転し過ぎた所為で三半規管がやられて口を手で押さえてグロッキーになっていた。
──────────
それから数十分後、らんことひかるはボウリング場を後にして今度はカラオケ屋に来ていた。
その中にある一室にて、ひかるは好きなアニソンを歌っている中らんこはボウリング場で手に入れた賞品を眺めていた。
(腕輪…ね…)
彼女の掌には緑色の腕輪があり、旋風マークのエンブレムが入ったただのアクセサリーとしても十分良い物だった。ただ、これを貰うときのやり取りがどうしても頭から離れない。
─────────
時はらんこがボウリング場にてイベントで一位になった事で店員に用意された複数の賞品を眺めていた。
『はい、今回のイベントの商品ですがどれになさいますか?』
『そうね…』
色々と賞品の種類が豊富でらんことしてはどれにするべきかと悩んでいると、彼女の隣いたひかるが声を上げる。
『らんこさん、これなんてどうだ?』
『それは…腕輪?』
ひかるが勧めたのは緑と黄色の腕輪でそれぞれ旋風と稲妻マークのエンブレムが付けられており、まさに風と雷の名を持つ自分達にぴったりな物であった。
『デザインは悪く無いし…うん、それにしようかしら』
『おっ、なら丁度2個あるから俺とらんこさんでそれぞれって事にしないか?』
『良いわよ』
らんこはひかるの提案を受け入れる。元々は彼からストライクのコツを教えてくれたお陰で自分は一位になれたのだから賞品の選択権はひかるに譲っても構わなかったのだ。
その後らんこは貰う賞品を腕輪にすると店員から腕輪を受け取るが、そんな時に店員から爆弾発言が投げられる。
『ありがとうございます。こちらはカップルに定番のアクセサリーなのでお二人にお似合いですよ』
『『……え?』』
このように店員からそれがカップル限定賞品だと聞いてらんことひかるは物凄く動揺を見せるのであった。
──────────
カラオケ屋にやってくるとらんことひかるは漸く冷静になれたのだが、それでもらんこは時々自分の持つ腕輪と今歌っているひかるが自身の手首に付けている腕輪を見て顔が少し赤くなる。
(私とひかるが…か、カップルだなんて…!)
この腕輪を貰う際に店員からお似合いのカップルと言われた事を思い出したらんこは思わず赤くなった自身の顔を隠す様にフードを深く被ると、歌い終えたひかるが話しかけてくる。
「らんこさんどうしたんだ?またフードを深く被って」
「な、何でも無いわ」
ひかるの指摘にらんこは出来るだけ何事もない様に誤魔化すと次に自分が歌う曲を選曲しようとする。
「あ、そうだ。折角2人っきりだから一緒に歌わないか?」
「い、一緒に歌うですって!?」
一緒に歌うと聞いたらんこは声を荒げる。自分がひかると一緒に歌うとなるとますますカップル感が強くなるんじゃないかと感じたらんこは動揺を見せる。
「え…らんこさんは俺と歌うのが嫌なのか?」
「そ、そんな訳ないじゃない!…ただ、ひかると一緒に歌ったことがないからちゃんと合わせられるか不安で…」
ひかるの事は嫌いじゃない。寧ろ好きだ。だからこそらんこはちゃんと彼に合わせられてちゃんと上手く歌えるか不安なのだ。
そんな彼女を見てひかるは笑みを浮かべながら声をかける。
「大丈夫さ。俺がらんこさんに合わせるから大船に乗った気分で安心してくれ」
「大船……ぷっ」
「あ、あれ、なんかおかしな事を言ったか?」
吹き出すらんこを見てひかるはおかしな事を言ったのかと疑問に思っているとらんこは首を横に振って否定する。
「ううん、そんな事ないわ。ただ、確かにあんたが側にいると安心出来るなって思っただけよ。お陰で気が楽になったわ」
らんこは今までひかるに何度も色んな事で助けられた事がある為、確かに大船に乗った様にな安心感が覚えているのだ。
「そ、そうか?だったら俺の最近ハマっているアニソンを歌ってくれないか?」
「アニソン?なんてアニメの歌なのかしら?」
ひかるのリクエストする曲は一体どんなアニメなのからんこは気になって聞いてみる。
「ああ、今絶賛放送中の◯ンフォギアなんだけどさ」
「ああ、◯ンフォギアね。私も好きよそのアニメ」
「えっ、らんこさんも◯ンフォギアを見ているのか!なら話は早いな。それなら◯リシラコンビの曲を一緒に歌おう」
らんこが自分の好きなアニメを見ていると聞いてひかるは嬉しく思いつつ、彼女にそのアニソンのデュエットを申し込むとらんこはもう一本のマイクを手に取りひかるのデュエットに応じるのであった。
そんな2人のやり取りを反対側の部屋のガラス扉越しにソラ達が覗いていた。
「2人とも楽しそうですね」
「うん、らんこちゃんもひかる君とのデートは今の所順調みたいだしね」
2人が仲良くしている姿にソラとましろは安心感を覚える。このままより一層2人の仲が良くなっていくのが楽しみだと思っていると、近くから汚い咀嚼音が聞こえてくる。
「あの、ベリィベリーさんもう少し静かに食べませんか?今、あげはさんが歌っている上にプリンセスの情操教育にも悪いですし」
「うるさい、私が食事をどう食べようが私の勝手だ」
視線を隣に向けると其処には店内の食事サービスで出た料理をクチャクチャと音を立てながら食べるベリィベリーに彼女を注意するツバサがいた。どうやら先程のボウリング場で妨害が失敗した事とらんことひかるが完全に2人っきりになっている今の状況を見てやけ食いをしている様だ。
(クソォ…このままではらんこは奴と確実に…だが、私はまだ奥の手がある。これさえあれば…!)
まだらんこたちのデートを妨害しようと目論むベリィベリーは服のポケットに手を突っ込み中にある物を確認すると再び汚い咀嚼音を立てながら食事を再開する。
因みにあげははエルと一緒に楽しく歌っており、ライは尻尾を揺らして2人の歌う姿を眺めていたのであった。
ーおまけー
◯ンフォギアの曲を歌い終えたらんことひかるは注文したドリンクを飲みながら喉を潤しているとらんこはある疑問を口にした。
「そういえば◯ンフォギアに出てくる装者…何人か聞き覚えのある声がしていたわね」
「え、そうなのか?」
らんこの疑問を聞いてひかるはあまりピンときてない様子だ。
「いや、私の気の所為なのかもしれないけど、◯歌の声って……おいしーなタウンのあまねの声に似てない?それに◯来もらんに似ている様な気がするし」
「あー…そう言われてみると似ている気がする」
どちらも自分達の知り合った友達で久しく聞いてない2人の声は今も脳裏に残っており、それぞれのキャラに照らし合わせると声色は確かに似ていた。
「ただ、性格は全然違うわね」
「ははっ、確かにな」
らんこの言葉にひかるは思わず同意する。立ち振る舞いに気品を感じさせ人望もあるあまねがお気楽で語尾にデスが付いた姿をイメージするが全然似合っておらず、また人一倍料理に情熱があってハイテンションならんには愛が重過ぎてラスボスになるイメージも全然出来なかった。
「あれ…そう言えば」
「どうしたのよ?」
何か思い出したリアクションを見せるひかるにらんこは気になって話しかける。
「いや、俺の気の所為かもしれないけど後1人誰か聞き覚えのある声がいた気がするんだよなぁ」
「聞き覚えのある声?………あっ」
らんこはひかるの発言を聞いて心当たりがあるのか声を漏らした。
「誰か思い出したのか?」
「あー……多分、だけどユキだと思うわ」
「え、ユキさん?……ああ、成る程」
ひかるはらんこが出した名前が自分の世界にいるユキだと聞いて色々と納得した表情を浮かべる。
確かにユキの声は◯ンフォギアに出てくる◯歌といつも一緒にいるあのキャラと声が似ているのだ。2人はその後ユキがそのキャラが言った台詞を喋るイメージをしてみる。
「「違和感あまりないわね(な)」」
すると2人は全く同じ感想を同時に口に出すのであった。
尚、余談だが偶然にも並行世界にて丁度同じ場所にユキ達3人が揃っており、同時にクシャミをしたとか…。