King And Hearts~鍵を待つもの~【完結】   作:かすてらホチキス

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主人公ヒカリは弟のソラといつもの遊び場で仲間達と楽しく過ごしています。ビーチレースや木刀バトル、チュートリアル的な一言でゲーム内要素の多い原作沿い。

ソラ弟設定なので好きな人にとっては態度がちょっと厳しめです。


1章 デスティニーアイランド
~空と海の境~


 

 

 青い海 白い砂浜 上を見上げれば晴天な空。

潮の香りは。側にこれでもかとばかりに植えられているヤシの木の甘い芳香とともに、風に乗って漂う。

 彼女はそのヤシの木のような腰の曲がった木(パオプの木って言ってる)に腰掛けて果てしなく続く水平線を眺めていた。

 空の始まりか海の境かわからないその向こう。

 彼女は何も言わず、ただながめていた。

 

「なにしてんだ、ヒカリ」

 どこからともなく声が聞こえた。

 彼女。ヒカリはその声を待っていたかのようにくるりと声の聞こえた方を向いた。彼女の自慢の、でも少しだけ邪魔だと思ってきた長い髪が後を追うようにサラリと揺れる。

 彼女のいるパオプの木の下に少年がいた。

 

「リク……あのね。空と海、見てたんだ」

 

 ―――沈黙―――

 

 二人の間に波の音が聞こえた。

「……なに凹んでんだ?」

「失礼なっ!」

 さっきまでのなにかしら美しい雰囲気がリクの一言でぶっ飛んだ。リクとヒカリは同い年のせいか言葉の遠慮もなにもない。

「スマン、本当に何していたんだ? ヒカリ」

 あらためてリクが聞いた。

 ヒカリは少し不満な表情で海を見つめて言った。

「うん、あのね空と海がもしかしたらつながっているんじゃないのかなって思ってさ」

 つぶやくようにヒカリが言った。

 なんだか顔が熱い。

(リクのことだからきっと笑われるんだろうな)

 そう思って振り返ろうとしたとき、

「そうしたら……俺がイカダをずっと漕いでいったら空のほうにヒカリがみえるかもしれないな?」

「ぇ……」

「……なんだよ」

「なんか、リクにしてはファンタジーなこと言うなぁって」

 ヒカリは作り笑いで誤魔化そうとしていた顔が一変して、真顔でリクをながめていた。

(このリク、本当に本物?)

 ヒカリは本気でそう思った。

「わ、悪いかよ」

 眺めている彼女の顔に耐えられなくなったリクが今度は赤くなる。

「……いいや、悪くないよ」

 ヒカリはそんなリクにうれしくなってまた海をながめる。キラキラ輝く海を見て、ヒカリはリクに思ったまま言った。

「だったら、私はずっとここにいるよ」

 厚い雲があたりを覆い一気に薄暗くなる。

「雲が空をさえぎっても私はずっとここでまってる。だから――」

 ヒカリがリクを真っ直ぐ見つめている。

「だから、ここから居なくなっても私を見つけてよ?」

 ヒカリはリクの顔を見ながら言った。

 

 強い風が通り過ぎていった。

 

 髪が邪魔をしてリクは彼女の表情がハッキリとはうかがえなかった。その表情は無表情に近い、しかしリクはそれがわかった。

 幼馴染だから。それは何か覚悟したような、こらえるような顔。

 雲が通り過ぎて再び太陽が輝く。

 雲が晴れるとヒカリは今自分が言った言葉を思い出して赤くなった。

 

「あっ……いや、だから。私はね、どこにも行かないよって……い、言ったの! ま、まいごは二人もいらないんだよ! だからその――」

 あたふたとしているヒカリを見ている内にリクは笑い出した。

「誰がまいごなんだよ?」

「それはもちろん……」

「俺はまいごになんかならないからな」

 リクが即答で答えた。

「わ、わたしもならないよ!」

 続けてヒカリも慌てて言い返した。

 顔を合わせてフッと二人は微笑む。昔馴染みでしかできないような気楽さがそこにはあった。

「じゃあ誰がまいごなんだ?」

 いつもの彼の笑顔がヒカリに向けられた。

「うーん……。ソラ?」

 真剣に考えるヒカリ。

「カイリは?」

 リクが付け加えるように聞いた。

「うーん……。二人とも?」

 彼女はさらに真剣に考える。

「怒るぞ、二人とも」

「何? ヒカリとリク、何の話?」

「わぁっ!」

 いきなり現れた少女。カイリの乱入でヒカリとリクは驚いた。

「カ、カイリ……。あっ、あのねリクが面白いこと言ったんだよ!」

「ヒカリ、やめろっ! さっきのばらすぞ!」

「なになに二人とも聞きた~い!」

「何だよ~三人して何の話だ?」

 カイリに続いて橋の下で声がした。ヒカリ達の声を聞きつけてソラまでもこちらへ声をかけたのだった。

「あのね、さっきからずっと二人で海ながめてて、何か話していてさ~」

 カイリが楽しそうにソラへ言った。

「ええっ、見てたのカイリ⁉」

 ヒカリがカイリに向かって驚く。

「えへへ、ヒカリ姉が怒鳴ってた時から遠くで~」

 カイリがとても楽しそうにワッカたちのいる近くの小屋を指差して言った。

 現在地である孤島をつなぐ橋のたもとには眼下の浜辺に繋がる小屋が立っている。そこを見ると、ちょうど浜辺で騒いでいたワッカ達との勝負がついさっき終わったばかりらしく汗だくのソラがこちらへ向かってきた。

 ソラが来た瞬間からリクはここからすぐに逃げ出したい衝動に駆られた。

「なに話してたんだ姉ちゃん」

 ソラがリクを見ながら姉に聞いた。リクは興味なさげに海をながめているのだが少しだけ落ち着きが無い。

「えーと、リクが……」

 ヒカリが言いかけたが――。

「あーもうヤメだっ! ヒカリ、イカダ作るぞ!」

 リクがヒカリの腕をつかんで歩き出した。

「なっ、何で私がぁ~!」

 引きずられるようにして連れ去られるヒカリは道ずれだとばかりにカイリの手をつかんだ。

「イカダ、作るんだね」

 カイリは歩きながらそう言って一人だけ遅れをとって不機嫌になっているソラの手をつないだ。

「なんだよ~三人で何話してたんだよ~?」

 ソラはさっきから不機嫌そうだが、それとは反対にカイリはとても楽しそうだったのでソラはなにも言えなくなる。

「ねえ、ヒカリも行こうよ。外の世界を見に、四人で!」

カイリの声は青空に響いた。

 ヒカリはなにも言わず手を引かれるまま複雑な表情でその青空をあおいだ。

 四人で、行きたかった――

 今は心からそう思う。

 リクと私とソラとカイリと。

 なんで、もっと早く言えなかったのだろうか?

 

――ずっと一緒にいたいって――

 




ゲームのエンドロールを見ていると思い浮かべる想像。それを文字にしたかっただけのお話です。そしてかなり年月をかけてしまいましたがこちらのお話は完結済み長編の再録となります。じつは支部投稿してましたが限定公開設定にしてます。個人サイトでは続編も細々と続けていますので、長い話になりますがゲームプレイしている気持ちになって眺めて貰えたら幸いです。
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