King And Hearts~鍵を待つもの~【完結】 作:かすてらホチキス
~新しい船~
「こちらです、じゃーん……ってあれ?」
「マフ、説明は後で!」
「ごめんね、すぐに出発しないと!」
マフが船を披露すると二人はすぐさま乗り込んでしまった。
「あ、はい! ところで行き先は?」
マフが操縦桿を確認するミッキーではなくその横ですぐに出発できるようにシートベルトを締めるヒカリに聞いた。マフもそれにならう。
「説明は出来ないの。正確には分からない所」
「分からない所?」
「そうだ、マフはここに来る途中、おおきなくじら見なかった? 多分、まだこの近くに居ると思うんだけど」
操縦画面をすべて確認したミッキーが新グミシップを起動する。前とは少し違う起動音だった。
「ああ、それでしたら。私よりも前の船が分かっていると思いますよ?」
「前の船って……カレイドスター?」
ヒカリは新グミシップの画面を見る。前の船と同じナビゲーションが映し出された。
「そうです、カレイドスターに取り付けていました『テレポグミ』です。先ほどこの船に取り付けましたのでバックアップが済めば前に訪れた星にはすぐに移動できますよ」
「そうか、それで前に出現しただいたいの位置はキオクしている!」
ミッキーが安堵したように前の航海記録を確認した。機種変しても互換性が取れる――さすがグミシップエンジニア、シドである。
「それと、この船には新しい機能がついているのです!」
「新しい機能?」
ヒカリとミッキーの声が被った。
「それをお伝えするために私が乗ってきたのです。まずは一つ目、Mテレポ!」
「コレかい?」
ミッキーが見慣れない三つのボタンをすぐに見つけてマフが指さす一つを発動させる。
するとグミシップがワープ!
別の空間へ瞬間移動した。
「ワープしたけど、この場所どこ?」
ヒカリがあたりを見回すが星らしき塊はなく広い宇宙空間の海原でしかない。
「ここは。僕たちがクジラに遭遇した場所ではないけど?」
「おそらく、そろそろ来ます」
「来るって、もしかして!」
マフの言葉を理解する前にそれはやって来た。
コレを見るのは二回目だが、やはり大きい。
「くじらーー!」
グミシップの真下をかすめる巨体にヒカリは絶叫する。
「今度は逃さない!」
ミッキーはクジラの横を追尾し始めた。推進ブーストが全く違うらしく、前の船と比べて初動の加速は申し分ない。
「どうやって中に入る?」
「口が開いた瞬間に飛び込む!」
「あ、それでしたら良い機能があります。二つ目の機能ミニマム!」
「これだね!」
ミッキーがすぐ隣のボタンを押して発動。
「え、ええ~?」
何かにひきこまれるような、吸い込まれるような感覚。ヒカリはこれを一度体験したことがある。
そう、それは身体が縮んでいく感覚だ。
視界が引き延ばされるような画面は一瞬で止まり、その後すべてのものが大きく映し出されている。この船は今ミニマム化している。
「目指すはクジラの口!」
ミッキーがそう言うとクジラよりも加速して目の前にやってきた。小さくなると推進エンジンの速度メーターが変わり。さらに加速ができるターボ仕様になっていた――さすがグミシップエンジニア、シドである。
そのままクジラの太いヒゲをかき分け、ひょいと隙間の穴から侵入!
「これで小さくなかったら、激突していたかもね」
「怖いこと言わないでよ~ミッキー!」
さらりと仮定をつぶやくミッキーにヒカリは肩をこわばらせた。
クジラの中に侵入した物の真っ暗でよくわからない。しかも小さくなっているだけあってクジラの口の中はとてもだだっ広い。ライトを付けて低空飛行してあたりを見回る。
「マフ、さっきのワープは、もしかして――」
「そうです、ソラさん達のグミシップを探してワープしたのです!」
「やっぱり、ソラ達はここにいるのね……」
今まであいまいに思っていたことがこう明らかにされたことでさらに気分が重くなる。
「シドに救難用の連絡をしておいてよかったよ」
「始めシドさんから聞いたときはビックリしましたが、コレで確信しました」
「ってことは、ミッキーはソラ達のことを助けるために船を頼んでおいたのね!」
「本当はレオンたちにこの船を使って救出を頼もうかと思ったんだけど、僕たちも助けが居るもんで急遽マフに頼んで僕たちも助けてもらうことになったんだよ」
「ちょうどレオンさん達もお留守でしたのでどちらにせよ私が行く予定でした」
「マフってば、結構大変なお使いだったのね」
「そうですよ~大変でしたから~~なので、今回も新しいワールドの型を取らせてくださいね~」
「そんなことならお安いご用!」
「急ぎが終わったら一緒にトラヴァースタウンに贈って行くよ」
「ありがとうございます。でも実は、そんなことないです。ソラさん達が消えた地点を探し出す機能は、ヒカリさん達の捜索にもお役に立ちました」
「いや、でもさ。操縦大変だったでしょう? 前に私一人で操縦した時はもう死ぬかと思ったから」
「一応、私はヒカリさんと出逢う前までは一人旅していましたから操縦くらいなら経験がありますよ」
「そ、そうだったね」
(そうか……この子、私よりも一人旅の経験は豊富なんだよね)
いつもしっかりした子だなーと思っていただけだったので、たった今、初めてマフが大きく見えたヒカリだった。
「この明かりは……ソラ達の船じゃないな?」
しばらく行くと前方からぼんやりと明かりが灯っている。
「降りてみよう」
「え、降りれるの?」
ミッキーの発言に驚くヒカリ。
「まだ消化器官じゃないから酸とかで解けたりしないよ。それとも待っているかい?」
「やだやだ! 待ってるのだけは絶対嫌!」
あまりのヒカリの変わり身にマフはちょっと唖然としている。
『待ってる』
この言葉でヒカリが動くことをミッキーは分かっているようだ。
☆
「ミニマム機能って便利ね」
ヒカリ達が先ほどクジラの中へ侵入したときの機能『ミニマム』それの本来の使用方法は『船を持ち歩く』ことであった。
三つ目の最後のボタンを押し三〇秒後。船は遠隔でミニマム化し四角いシャボン玉のようなものが現れてスノードームのように変化した。
そしてその中に浮遊する新型グミシップは今、ポーション&エーテルと一緒にバックパックの中に保管している。
「別の星では人気のない所で使用しないとこの機能は驚かれますけどね」
「そっか、他の星へ移動する時に場所を選ぶのは変わらないわね」
「それでも隠し場所にこだわらなくなった分とても助かるよ」
「そうだミッキー。この船の名前どうしよう~」
「今まで通りの『カレイドスター』で良いんじゃないかな?」
「それじゃぁ前までのカレイドスターに悪いの。新しい名前考えないと」
「そんな物かな?」
「そんなもんです! やっぱり『○○スター』ってシリーズでいきたいわね~」
「前に言ってた『エクスカリバー』の候補があったよね?」
「それはソラが考えた物だからダメよ!そのうちソラ達が乗る新しい船についてそうなんだもん!」
「それじゃぁ前回は『カレイドスコープ』から考えたから今度は『ホロスコープ』とか……」
「それよりも今は明かりの場所に着きました!」
ミッキーとヒカリの名前決めに参加しなかったマフが目の前の明かりを指差し言った。
☆
「船だ……」
船は船でもグミシップのような宇宙船のような形ではない。それはきっとふつうに青い大海原を進んで行くまぎれもない木造船だった。
「あ、見て。ソラ達のグミシップだ!」
船の明かりの近くにソラ達の船『ハイウインドー』を発見。
「あの船の中に居るのね、よかった無事で」
「あっヒカリ……って、もう入っちゃった」
ミッキーの声も聞かずにヒカリはピョンと木造の船に飛び乗る。
「ソラ、ドナルド、グーフィ! 助けにきた……わ?」
ヒカリが目にしたのは三人の姿ではなかった。
「おや、いらっしゃい。まだクジラの犠牲者がいたのかい」
そこには白髪の丸いメガネをかけたおじいさんと隣には真っ赤な金魚の金魚鉢が目に入った。
☆
「そうかいそうかい、あの三人を助けにわざわざここまで来てくれたのか」
「今、三人はどこに居るのですか?」
ミッキーがゼペットお爺さんに訪ねる。
「ワシの息子のピノキオがクジラの中を探検しておってな。そんなに遠くへ行かんように言ったのじゃが、ちと帰りが遅いな」
「きっとあの三人のことだから一緒に迷子になっていそうね」
ヒカリがズバリ言い当てる。
「わざわざ救出しに来たのに悪いが、ウチのピノキオとあの三人を連れ戻しに行ってくれないかね?ワシはもう少しでこの船の修復が完成するから」
「分かりました、ところでピノキオはどんな子でしょうか?」
ミッキーが迷子の息子さんの容姿を訪ねるとゼペット爺さんは自慢の息子を嬉しそうに顔をほころばせて言った。
「わしのピノキオは一目見ればすぐに分かるよ。何せふつうの男の子より小さくて鼻がとても長いからな」
☆
「背丈はマフよりも小さいのなら結構やんちゃな男の子なんだね」
ヒカリが先ほどのゼペットじいさんの説明を繰り返しながらマフを見る。
「それでもそんな男の子が居たならきっとクジラのおなかの中に二人としていませんよ」
自分を眺めるヒカリにマフは少し困ったように笑った。
ゼペットさんの説明は何か引っかかる物があった
「鼻がとても長いって、いったいどんな鼻なのかしら?」
「ソラ以外の男の子が居た時点でその子がピノキオだろうね」
「そう言えばそうなんだけどね~」
「それにしてもマフよりも小さな男の子がこんなクジラの中で探検なんてスゴイ勇気があるわね~」
ヒカリが周辺を眺めながら言った。
「ヒカリさんは小さい頃は探検しなかったのですか?」
「キミならいろいろ探検していたのだろう?」
楽しそうにマフとミッキー。
「ん~~正直覚えてないや。面白いことしていたならきっと覚えていると思うんだけどね――私。昔は身体弱かったから」
「……意外ですね」
「まったくだ」
なぜかつまらなそうにマフとミッキーが顔を見合わせる。この時の二人は珍しく意見が一致した。
「小さい頃の私をなんだと思っているのよ。しいていえばあの頃の私は――あれ? ん~なにか、あったような……」
ソラがリクと島の中で冒険したと話してくれたのは覚えている。その後、私は気になって――。
いろいろと考えていると突然ヒカリが赤く輝き出した!
「!」
「ヒカリ⁉」
「ヒカリさん⁉」
後ろにいたヒカリにミッキーとマフが振り返る。
ヒカリがポケットのロケットを取り出すとリンゴのロケットが真っ赤に輝いていた。この場所自体薄暗いのでなおさら真っ赤に見える。
「アップルシード。探したい人物を思うと近くにいればいるほど真っ赤に輝くロケットです。ちなみに青はワールド内ですが……いきなり赤とは」
ヒカリの手の中のロケットを見て製作者のマフが解説をする。
「ヒカリは今、誰を思っていたんだい?」
ソラ達ならクジラの中にいるのですぐに青くなるはずだった。ヒカリは信じられないとばかりに真っ赤なロケットを眺めている。
そしてポツリと言った。
「リクが……いる?」