King And Hearts~鍵を待つもの~【完結】 作:かすてらホチキス
「リクって…あのリクさん⁉」
「ヒカリ……あっ、待ってくれ!」
二人の困惑した顔をよそにヒカリは走り出した。
☆
ソラ達はピノキオを追っていた。クジラの中はまるで迷路のようにあちこち穴があいているのでどこに今いるのか、わからなくなりそうだ。
しばらくするとピノキオはドコカに繋がっているであろう出入り口の場所でソラ達を見ていた。
「なにやってるんだよ、戻るぞ」
「ピノキオ、ゼペットじいさんが心配しているよ」
「遊んでいる場合じゃないんだぞ」
ソラ、ドナルド、グーフィがピノキオにそう言ってもと来た船に戻ろうとうながす。
「お前もよく遊んでたのにな?」
その声はピノキオではなかった。
「?」
ソラが振り返ると――。
「キーブレードの勇者になったら遊びは卒業か?」
この場に居るなんて夢にも思わなかった人物。
「リク⁉ どうしてこんな所に居るんだよ!」
ソラは前までずっと見慣れていた人物の名前を久々に叫んだ気がした。それだけ懐かしくもこの場所にそぐわない人物は居ないであろう。
「ピノキオと遊んでいるのさ」
対するリクはいつもと変わらないような素振りでソラを眺めている。そんなリクになんだか調子が狂ってしまうソラ。
「そうじゃない! カイリは――カイリは見つかったのか⁉」
「俺をつかまえられたら教えてやるってのはどうだ?」
「ふざけるなよ!」
ソラの声は無視してリクはピノキオの手をつかんで奥へと去って行った。
☆
「まってくれヒカリ! リクと会って何を話す気なんだい⁉」
早足で斜面を駆け上がるヒカリ。ハートレスがいるのにもかかわらず素通りし、ソレでも立ちはだかる相手には軽く魔法を放ちあしらっていく。
そんなヒカリにマフとミッキーはその後片付けをするように倒していった。
「ヒカリさん! そんなことでは経験値がたまりませんよ!」
マフが何となくもっともなことを言うが今のヒカリはおかまい無しだった。
何かに焦るようなヒカリにミッキーはついに両手を広げてヒカリの前についた。
「ヒカリ! 事によって僕はキミを止めなければ行けない気がする」
「ミッキーさん⁉」
ミッキーの言葉にマフが一番驚いていた。
「事によって――って例えばどんな事?」
焦るような素振りのヒカリは今のミッキーの言葉になかば上の空だ。
「キミがリクを説得してマレフィセントの怒りを買いそうな事」
「そんなことしないわ」
ミッキーの言葉にヒカリは即答。
「ソラを説得してリクとの決裂を止めようとするような事」
「だから、そのような行為はしないわ!」
「じゃぁ最後。魔法でソラとリクの二人の前に立ちはだかる事」
「……」
図星のようだ。
「二人の前に割り込むのは事を荒立てるだけだよ……ましてや君の魔法については前回のことがある」
前回というのは闇の魔法を無意識に繰り出したことだろう。トラヴァースタウンとアグラバーでの自分の行いは正直、自分の行いだと身に覚えがないのだ。
「うっ……でも、あの二人にとって、とてもつらい想いをさせたくないの!」
「今の僕たちには何も出来ない…いつかはこうなる運命だったんだ」
「そんな、運命だなんて!」
マフが反論するように荒立てたがその後ミッキーの表情を見て押し黙った。
「君の気持ちはよくわかるよ。でも、つらいのはキミだけじゃない」
「そんなの分かってる」
「分かっていても、今の僕たちは見守る事しか出来ない」
「そんなの、嫌だよ。せっかくココまで来たのに、そばに居るのに!」
「僕たちは必要以上にソラ達には関わってはいけない。初め僕はそう言ったよね?」
「……」
「それがどんな意味か忘れたのかい?」
「ソラ達はカイリとリクをドナルド、グーフィは王様を探して旅をしているから」
「そのとおり」
「私は彼らとは無関係の存在で、ミッキーは彼らとは大きく関わってはいけない存在だから」
「そこまでは言ってない」
「じゃぁ、今ココで何をしないといけないの?」
「それを今考えなければいけない。飛び出すタイミングが重要なんだ」
「タイミング?」
「謎多き正義のヒーローはいつ登場していつ退場する?」
「え?」
「今の僕たちは『ここに居てはいけない』今の時点ではね」
☆
歩いているリクの隣にマレフィセントが現れた。
「そんなにあの子が気になるのかい?」
あの子とはソラのことだリクは足を止める。
「あの少年はお前よりもキーブレードと新しい仲間を選んだのに……」
「べつに気にしていない、ちょっとからかっているだけだ」
リク自身無表情を装っているが彼の胸の内の思いはマレフィセントが当然のごとく見透かしている。
「そうかい、まぁいいけどね。心の中の闇に気をつけな。ハートレスの大好物だからね」
「俺は大丈夫だと言っているだろ!」
リクの罵倒を聞くまでもなくマレフィセントは消えて行った。
ちょうどその時、リクの前にソラが現れた。
「リク!」
ソラと同時に飛び出してきたピノキオはリクの横を通り抜け更に向こう側へ走って行った。
リクは黙ってソラへと視線を向ける。
「リク! 何でこんなコトするんだよ。何やってるのか分かっているのか?」
「ソラ、おまえこそ何をしているんだ? あちこち飛んでっちゃそのキーブレードを得意げに振り回しているだけだろ? お前、カイリを助ける気があるのか?」
「それは……」
「ソラは当然、カイリを助ける気はあるさ」
「!」
ソラとリクが驚く。第三者の声が聞こえた。
「お前は?」
リクは怪訝な顔で現れた人物を見つめ、対するソラは驚きと嬉しげな表情を彼に向けている。
二人に対峙する人物は、穏やかな落ち着きのある表情でゆっくりと二人の視線に目をくばる。
リクはこの人物を知らないがソラの後にやって来たドナルド、グーフィが彼の名前を言った。
「驚いた~! ミッキーがいる~」
「何でこんな所にミッキーがいるの⁉」
長い髪を赤いリボンで低い位置に留める少年。オリンポスでは三人まとめて挑んでも敗れた。オリンポスコロシアムの優勝者、ミッキー。彼は四人の視線に穏やかな表情で答えた。
「偶然ソラ達の船が呑み込まれる所を発見して、助けにきたんだ」
「そっか、心配してくれたんだ!」
「僕たちのために来てくれたんだね~」
「でもさ、いるなら早く言ってよ!」
見知った間でほのぼのとした会話が続く。
「三人とも元気そうで何よりだよ。でも、そっちの彼は不機嫌そうだけど」
視線だけを動かしてリクをちらりと眺めるミッキー。ソラとの間にいきなり割り込まれた事に彼の表情はあきらかに友好的ではない。
そんな空気を和ますように、はじめに声をかけたのはミッキーだ。いつもの優しげな、そしてどこか威厳に満ちた表情を真っ直ぐにリクに向ける。
「自己紹介が遅れたね。僕はミッキー。ソラ達と同じく訳あって旅をしている身だよ」
「ソラと同じ理由だったらただの遊びだな?」
「遊んでないよ!」
ソラが口を挟んだが二人の視線は動かない。
「誰だって訳があるから旅をするだろ? 理由は何であれ遊びだけでは旅なんて物は出来ないよ」
ミッキーは真っ直ぐにリクを見つめ彼の怪訝そうな表情を見透かすように続けた。
「たとえば『何かを探している』とか」
肯定と否定。そして一歩先をゆく返答にリクは数秒黙った。そして真顔でミッキーに言った
「さっきの言葉……お前は、カイリを知っているのか?」
「それは、俺がカイリのこと話して……」
「ソラ、今コイツと話をしている」
リクにぴしゃりと言われたソラは何か言いたげに口を尖らせる。
それでも黙っているのは、今のリクは先ほどソラと話している表情とは比べ物にならないぐらい冷たい表情だからだった。
だが、ミッキーいいや『ヒカリ』は見透かしている。ソレは寂しさと焦りを必死で隠しているのだ。
「答えろよ、カイリの事どこまで知っているんだ?」
ミッキーはリクの表情に寂しげに微笑み、ためらいがちに答え――。
「ワーッ!」
奥の方から悲鳴が聞こえた。
「……ピノキオ⁉」
ミッキーは続く答えを置き去りにして奥へと駆け出した。リクとソラがそれに続く。
さっきまでの通路のような場所から、叫び声のする場所に駆けて行くと広い所にたどり着いた。そこでピノキオは檻のような所に閉じ込められていた。
これは檻では無い。
ピノキオを呑み込んだ巨大な檻のようなハートレス『パラサイトケイジ』だ!
ハートレスの近くには黄色い池のような液体が見える。おそらく身体に触れると危険だ。
「倒せるか?」
リクがソラに聞いた。
「やれるさ! リクと俺とミッキーもいる!」
ソラの言葉にミッキーは不意をつかれたように驚き、すぐに、にっこりと力強く二人にうなずいた。