King And Hearts~鍵を待つもの~【完結】 作:かすてらホチキス
ピノキオを飲み込んだハートレス「パラサイトケイジ」は二本のマフラーのような触手をうねらせてこちらを見下ろしている。
「いくぞ!」
ソラがハートレスへと走り出す!
「ようし!」
ドナルドが意気込む。
「アッヒョ!」
グーフィが二人を援護。
「……」
大型ハートレスを無言で見つめるミッキーの手のひらからカギのような武器が現れるとソラ達と共に武器を構えたリクは驚いた表情で彼を見ていた。
ミッキーはその表情を見ずにハートレスに向かって走り出した。
走りながらミッキーは自分の武器の柄にあたる沢山のカギの刺さった一つをひねる。そしてハートレスへ振りかざした。
(ボゥッ!)
彼の武器がヒットした場所から一瞬だけ炎が現れた。ソレを眺めていたリクはミッキーがちらりとこちらに視線を送ったのに気づくと自分もソラ達同様に戦闘を開始させた。
リクの手にしているのはこうもり羽根のような武器。前にヒカリが一度剣を交えたものだ。ミッキーは視線をパラサイトケイジへと戻してたたかう。
一発目、飛跳ざまに武器を振り上げるが狙いの場所へは届かない。
続いて二発目、ヒットしたのは触手のためダメージが与えられない。着地と共に不規則な動きの触手がミッキーに迫る。
(飛ばされる!)
体制が整っていないミッキーはなす術も無い。
「ミッキー!」
ソラが叫ぶのと触手の攻撃が同時に繰り出された!
(キィン!)
「……ん?」
短く響いた澄んだ音にミッキーは触手の不自然な動きに疑問を抱く。
(触手が跳ね返った?)
よく見ると、自分の周りでシュルシュルとせわしなく風が体を覆っている。
「これは?」
「間に合ってよかった~」
不思議そうなミッキーにソラが駆け寄る。
「そうか、これはソラの魔法だね?」
「そのとおり!」
ソラが得意そうに笑顔で言った。
「僕のために魔法を……ありがとうソラ」
ミッキーが気遣わしくも嬉しそうに微笑んだ。その顔と言ったら誇らしげな表情に少しだけ切なさが見える、なんとも爽やかな笑顔だ。
「良いって良いって~オレ、グットタイミングだよな? さっきのってちょっとカッコイイ?」
せわしないソラにミッキーは肩をすくめながらも笑顔。
(なんだかよくわかんないけど、子供みたいにはしゃいじゃってるよ)
ミッキーの中のヒカリは弟の表情に少し恥ずかしくなる。ま、ソラに言わせれば憧れのヒーローに声をかけてもらえた少年の気分なのだろう。この前の星でヒカリも似たようなことがあったので少しは共感する。
「それよりソラ、お前自分が危ないのに人の事気にしていていいのかよ」
「うっ……」
リクの言葉にソラは表情を硬くする。
よく見るとソラは少し元気がない。どうやらさっきのミッキーの攻撃のように触手に阻まれ苦戦しているようだ。リクも同様。背後からの攻撃もあまり効果的ではない。
なにか方法を探すしかないようだ。
それには今ここにいる皆の力が必要なのは言うまでもない。
(とにかくここはまず体勢を立て直さねば)
「ソラ、お礼にこれを!」
ミッキーはロックインロックブレードの一番端のキーをひねって、ソラの足下にめがけ武器を叩き付けた!
(キィイン!)
澄んだ音と共にソラの真下から青緑色の光が輝く。そして後から温かな陽光とほのかな潮の香りがリクのそばまで流れて行った。
「ん~気持ちよかった~」
ソラが潮風を懐かしむような表情をみせる。
「ケアルブレード回復の攻撃だよ」
「ありがとう。ミッキー」
「どういたしまして」
「……攻撃ってことは、直接身体へ攻撃すればダメージは与えられるのか?」
「良い質問だキミ」
ミッキーがうれしそうに驚いた表情をリクにみせる。
「……リクでいい」
「リク、良い質問だ」
ミッキーがあらためてそう言うとプイと顔をそらしたリクはなんだか赤くなっている。
(もしかしてリク照れてる?)
ソラがなついているからなのか。それとも男装しているせいなのか?
リクは今の自分に心を開いている気がする。
ミッキー(ヒカリ)はなんだか嬉しくなった
しかしその表情は表に出さず答えた。
「ソレは考えた事が無かったな、今度のコロシアムの大会で試してみるよ」
「ミッキー今度の大会は出るんだな⁉」
「前のチャンピオンも大きな大会なら出られるみたいだからね」
「やったー!」
とても子供じみた行動のソラにリクはさっきまでの冷たい表情がウソのようなあきれ顔。
「でもその前に、ピノキオの救出だよ」
ミッキーが控えめに指を指すと。ドナルドの怒声がソラの後ろで聞こえた。
「ソラーサボってないで戦ってよ~」
ドナルドが不機嫌なのはどうやらMP切れのようだ。グーフィが絶えず触手の攻撃から守ってくれているので二人はまったく動けない状態だった。
「いっけねーごめん!」
「まったく、相変わらずのんきだな」
リクのつぶやきはミッキーにも聞こえた。
三人は戦闘に戻った。
(なんだかこの雰囲気。今の自分の姿でこの状況じゃなかったら素直に喜べるんだけどな)
だけど、今はそんなことを考えている場合ではない。よくも悪くもハートレスとの闘いが最優先だ。
「ピノキオ? 大丈夫かい?」
ミッキーがハートレスのおなかの中へ声をかける。中から声が聞こえた。
「うん大丈夫。ぐらぐら揺れてるだけだからなんとも無いよ~」
「そう、よかった」
一瞬だけ柔らかな表情を見せたミッキーはその後眉を吊り上げて自分の武器へと集中させる。
「それじゃピノキオ、ちょっと揺れるよ!」
そして声高らかに叫んだ。
「ファイアスウィング!」
(ボゥッ!)
ミッキーは炎のまとった武器を振り回し勢いよく横回転。火の輪のような炎は巨体へ見事にヒット!
(ドォオン!)
弱点ではない部分なのでダメージは無いに等しいがパラサイトケイジが横転した。
しかし、これが狙いだ。
「二人とも弱点は顔だ!」
ミッキーがソラとリクに叫ぶ。
「でりゃー!」
二つの武器がほぼ同時にパラサイトケイジの弱点触手上の顔へと振り下ろされた。
が――。
二本の触手がソラとリクに迫る!
「うっ!」
「うわぁっ!」
二人は同時に飛ばされたが、身をひねって受け流しミッキーの後方へ飛び退く。
パラサイトケイジは素早く起き上がると天上へ飛び上がりピノキオを吐き出す。吐き出されたピノキオは床に開いた穴の中へ吸い込まれて行った。
リクは躊躇無くその穴の中へ飛び降り消える。
「あっ、リク!」
ソラの声もむなしくリクの姿が消え去る。
「ハートレスは?」
ドナルドが警戒するがいない。
「俺たちも行こう!」
ソラがリク同様穴の中へ飛び込んだ。
ドナルドも飛び込む。最後にグーフィが――。
「じゃぁ次はミッキーの番で――アッヒョ?」
後ろを振り返ると、誰もいなかった。
☆
ソラ達が飛び降りた場所は初め船が不時着した場所。クジラの口だった。そこではゼペット爺さんの声が聞こえる。
「お願いだ!ピノキオを返しておくれ」
「それはできないね」
リクは意地悪くおじいさんを見下ろす。
おじいさんの横から高い声が聞こえた。
「ずいぶんと意地悪するのねリク!」
「ミッキーの言う通り、ピノキオを返すんだリク……って、えぇっヒカリ⁉」
今まで一緒に居たはずのミッキーではなく、今までこの場所に居なかったヒカリが突如現れた。
「いつから居たの?」
「ずっとこの場所に居たわよ」
「そうなのか」
(おじいさんの船じゃなくてモンストロって意味だけどね)
言葉足らずだがあながち間違いではないとヒカリは自分の中で言い聞かせた。それよりも久々に見るであろう幼馴染へと視線を向ける。
「リク、ピノキオをどうするつもり?」
「おまえと話をしている場合じゃない。この人形にはまだ用があるんだ」
さっきまでとは変わり、リクの表情がとても冷たい。リクにとってのヒカリはただの別の星の他人でしかないのだろう。
「人形じゃない、ピノキオはわしの息子だ!」
「!」
思わず、ヒカリの脳裏に何かが引っかかった。しかし彼女の表情に気づく者は誰一人居ない。
「心のある人形なんて滅多に無いからな。心を無くした者を復活させるのに、役にたつかもしれない」
「それ、カイリの事言ってるのか?」
ソラがはっとしてリクへ問う。
「お前には関係ない事だろう」
リクのこの言葉でヒカリは我にかえった。
ヒカリはリクを呼び止めようとしたが彼はモンストロの体内へと消えて行った所だった。
三人組はリクを追う。
「僕たちはどうする?」
「もちろんピノキオを助けなくちゃ!」
ヒカリは即答。
「今度は私もお手伝いします」
マフも意気込む。
「それじゃ決まり……ってソラ、どうしたの?」
リクを追いかけると言ったソラ達は、まだ目の前に居た。
「さっきから向こうに行こうとしているんだけど」
「いるんだけど?」
きょとんとしているヒカリにソラは気恥ずかしくもこう言った。
「行こうとしたけど……この場所、ちょっと高くて、向こう側まで飛べないんだ」
ここだけの話をひとつ。
カッコイイかっこいい(*´>ω<`*)って言ってるソラ。これが女の子でしかもお姉さんだったと知ったらどうなる事やら。
おそらく、リクならどう思う?って聞くんですけど返しの言葉がカイリが男装して仲間に入っているのを考えれば?と言う。
あーなるほど。そう考えればカッコイイな〜で終わり。
リクはと言えば、惚れた女子なのにそれだけなのか!?と驚く。
セクシーなのキュートなのどっちが好きなの~?の妄想すらしないソラでしたとさ。