King And Hearts~鍵を待つもの~【完結】   作:かすてらホチキス

103 / 167
~ダメじゃない!~

 

「ようし見てて、それ!」

 ミッキーもとい、今彼の呼ばれているのはマスターなのだが――彼はソラ達の注目を集める中。空中で勢いよく前転をこなし高く舞い上がる!

 見ての通りハイジャンプの練習中だ。

「このジャンプいつも見てたけどハイジャンプだったのね」

 ヒカリがアビリティの事はまったく知らなかったのでちょっとムッとしながら真似る。

「グワッ」

「アヒョ」

「よっ」

「うん、みんな上手いよ。もう少しだ!」

 ミッキーは四人を眺めて指導中。

「マフもふつうに出来たんだ……」

 ヒカリが不機嫌そうにマフを眺める。

「すみません。隠してたわけではないんですっ!」

 マフはお手本とばかりにぴょこぴょこと跳ぶ。長耳帽子が飛び上がるとその間マフが一回転して着地と同時に頭におさまる。なんだか無駄のない動きも相成って素晴らしいジャンプだった。

(あえてやらなかったのは帽子が落っこちないようにするためか)

 そんな事を思いつつヒカリ達はジャンプを数十回繰り返し――。

「ようし、これでハイジャンプが出来るようになったはずだよ」

 ミッキーがそう言って先ほどまで足も手も届く事が出来なかった板へヒカリが向き直る。

「……でりゃっ!」

かけ声と共にジャンプ!

(トンっ)

 手どころか見事に着地するヒカリにソラ、ドナルド、グーフィが拍手。

 拍手を浴びながら、ヒカリは自分が飛んだ位置を眺め。感動の余韻にしばし立ち尽くす。

 そしていきなり思いついた。

「やった~~これで箒も楽に倒せるっ~!」

「ほうき?」

 三人組は横に頭が傾いた。

(手の届かない宝箱ではないのか?)

 彼女の横の瓦礫のてっぺんには宝箱がキラキラと輝いていたが、嬉しそうなヒカリに水を差すような事は言えなかった。

「待ってなさい~リク!」

「あぁ~~一人じゃ危ないって!」

 ソラがあわててヒカリを追いかける。勢いで跳んだのでためらいなく見事に着地するソラ。

「やった跳べた……じゃなかった、ヒカリ~」

「グワッ! おいてかないでよ~」

「僕たちも渡ろう、アッヒョ」

「みんな覚えるのが早いですね~」

 続いてマフはぴょこぴょこ反動を付けて一気に飛び上がる。ジャンプする時の板の反動でハイジャンプ無しで渡った。えへっとばかりに舌をチロリと出していたのがミッキーには見えた。ハイジャンプより難易度が高いので始めにやればよかったのになんて言えなかったのだろう。

「それじゃあ、ゼペットおじいさん。必ずピノキオを助け出します!」

「本当はワシがピノキオを助けてやりたいのだが頼んだぞ、みんな」

 その声をバックにミッキーが最後にハイジャンプ。真上でくるりと前転して着地!

 その右手には光り輝く武器キー……。

「あ、間違った。つい、いつもの調子で――」

 ミッキーはあわててキーブレードを消して。マフの作ってくれた武器を取り出した。

 ゼペッドおじいさんは首をかしげていた。

 

 

「リク、今あんたが何をやっているのか自分で分かっているの⁉」

 ヒカリがリクに叫ぶが何を言っても無言。表情は変わらない。

「私には答えてくれないのね……」

 さっきの変身していた『私』と違って今の『私』ではリクの表情を変える事が出来ないようだ。

「ヒカリ、一人じゃ危ないって……あ、リク!」

 ソラがヒカリに追いつき、その延長でリクを見つけた。

「ハートレスに心を喰われた人形。カイリを助ける鍵になるかもしれない」

「カイリ……」

 ヒカリの表情が険しくなる。

 私のせいだ、助けてあげたかったのに、カイリの事もだけど、リクは今素性も知らない私じゃなくてカイリの事でいっぱいなんだ。

なんだか心がズキズキする。

「どうだソラ。俺と一緒にカイリを助けないか? そんな女と一緒じゃなくてさ?」

「なっ……⁉」

 ヒカリの目がこの上なく見開かれる。

 ソラしか見ていないどころか、リクに「そんな女」と言われた事がかなりのショックだった。

「そんな言い方無いですっ!」

 マフが言い返すがリクはソラしか見ていない。

「ところで、ミッキーとか言ったか。あの男が居なくなったみたいだが……逃げたのか?」

「……っ!」

 ヒカリの表情がさらに険しくなる。

 ソラ達とマフの後ろにいるミッキーの握る武器がぴくりと動いた。

「――ミッキーとヒカリの事、悪く言うなよ……」

 ソラはリクに向かってでキーブレードを構えた。

「俺と戦うのか? 新しい仲間と心をなくした人形のために」

「オレはヒカリとミッキーにいろいろと教えてもらったんだ」

「ソラ……」

 ヒカリがソラの横顔を弱々しく見つめる。

「それにピノキオの心は残っている『良心』がね」

「良心?」

 リクは訳が分からずソラに聞き返す。

「『良心』の声は小さいけれど、俺にはハッキリ聞こえる」

 ソラがピノキオを見つめた。そこへ小さな良心、ジミニーがピノキオに駆け寄る。

 ソラがリクに向き直りはっきりとこう言った。

「リクのそれは『良くない事』だってね」

「それがおまえの答えか!」

 リクが落胆するように表情が険しくなる。

「ピノキオ! ピノキオ!」

 ピノキオに声をかけ続けるジミニー。

「ジミニー……ボクもうダメだよ」

 ピノキオが弱弱しく言った。

 すると――。

ピノキオの顔の前で鼻が光ってぐんぐん伸びた!

さっきゼペットおじいさんからピノキオは嘘を言うと魔法で鼻が延びると聞かされたばかりだった。

 つまり――。

「あれ? ダメじゃないみたい!」

 とたんに元気になるピノキオ。ジミニーが嬉しさのあまり飛び跳ねる。皆は嬉しいような呆れたようなそんな表情をしている。

 ソラとリクがそれを眺めている横でヒカリはピノキオを見て暗かった気持ちが吹き飛んだ。

 そうだ、ダメなんかじゃない。

そう思ってしまったら、ウソでもいい『ダメなんかじゃない』そう言い聞かせるんだ。

 まだ可能性はあるはずだ。それに今すぐ終わりだなんて言ったら、今この瞬間ですら元気で居られなくなるから――。

もう、私が決めた道だもの。まだその先に絶対、可能性はあるんだから!

「リ……」

 ヒカリがリクに声をかけようとした時。

(ドオォオン!)

リクとソラの間からパラサイトケイジが現れた!

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。