King And Hearts~鍵を待つもの~【完結】   作:かすてらホチキス

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~暗闇の声~

 

 クジラの体内から生還したヒカリ達は、ソラ達とピノキオ、ゼペット爺さんの安否を確認するために一路トラヴァースタウンへ向かっていた。

 最新の船はワープドライブですぐに到着するのだが、ミッキーがドナルド達に船を明かしたくないみたいなので鉢合わせしないよう船内でしばしの休息を取っている所だった。

 

 マフは新調した広い格納庫でヒカリのロックセプターを拝借して何か作業をしている。隣の部屋で絶えず鼻歌が聞こえるのでとても楽しそうだ。

 そんな鼻歌の聞こえる中、ヒカリは新しい船の自分の部屋で宇宙の海原をぼーっと眺めていた。

「……ヒカリ!」

「あ……ミッキー?」

 振り返るとミッキーがいた。

「ちょっと! 入るよ、くらい言ってよ!」

「言ったさ、返事がないから開けたのに……」

「そう、だったの」

 いつもよりも覇気のないヒカリの声にミッキーが疑問を持つ。

「いつもならレディの部屋に許可無く入ってこないでよね――とか付け加えるのに?」

「うん、そうね」

 ここまで言ってもなにも反論がないヒカリにミッキーは肩を落として言った。

「ヒカリ、今日は何か変だよ?」

「……そう?」

「いつにも無くキミが押し黙っているなんて、珍しいことだから」

「ミッキー……」

 弱々しく微笑むヒカリ。

「一人で落ち込むより、力になれるかもしれないよ?」

「やっぱり相棒には隠さずに言うべきね……」

「うん、前に約束したからね」

「そうだったわね」

 さっきより晴れやかな顔を見せたヒカリにミッキーは安堵したように微笑み返す。

「リクの事?」

「リクは――心配だけど……」

 そうじゃないと首を振るヒカリ。

「じゃぁもしかして、あの時かな?」

「え?」

 ヒカリが口を開く前にミッキーがヒカリに問いかける。

「ピノキオのおじいさんが言った言葉かな?」

 目を丸くするヒカリ。

 ミッキーが確信したとばかりに微笑む。

「……やっぱりミッキーにはかなわないわ」

 そう言ってヒカリが語り出した。

 

 

 リクがピノキオを担いでゼペット爺さん達に対峙した時のことだ。

 ミッキーは友達の意に反した行動に戸惑うソラの隣で別の色の表情をするヒカリに違和感を覚えていた。

 

 

 ヒカリはさっきの言葉に答えを探す。

 何だろう、誰の声?

 今まで聞いた事があった?

 ううん。それ以前にどこでどんな時に聞いた?

 それはまちがいなくどこかで聞いた覚えのある言葉だった。でも、誰なのか思い出せない。

 だからこそ言葉だけを覚えていたんだ――。

ヒカリ自身が思わず反応したこの言葉。

「人形じゃない、ピノキオはわしの息子だ!」

 ヒカリの脳裏に何かが引っかかった。

 

『この子は私の娘だ……』

 

 そう、誰かがどこかで「私」に言った言葉。

 

『私』は……誰?

 

 

「『この子は私の娘だ』って言っていたの」

「その言葉で何か思い出しかけたんだね?」

「うん……娘って誰の事なのかな」

「もしかしたら自分の事じゃないのかもしれないよ?」

「カイリの心が呼応しているのかもしれない……ってこと?」

「おそらくはね」

「でも、何か違う気がするの」

「違うって?」

「いつもなら……カイリの心なら『懐かしい』ってなんとなく思うんだ」

「でも今回は違った?」

 相棒の言葉にこくりと頷く。

「あのとき、声がしたの」

「どんな声?」

「低くて、綺麗な発音……そう、魔法を唱えるような――」

「今まで会った事はある?」

「今なのか昔なのか全然分からない。もう一度聞かないと分からない」

「声を覚えているのなら、最近聞いたと考えてもいいはずだよ?」

「それが、誰なのかさっぱりなの。名前も顔も」

「うーん……」

 考え込むミッキーにヒカリは参ったとばかりに苦笑する。

「でも変よね? どこで聞いたかもわから無いのに声だけ覚えているなんてさ。ふつうなら顔とか分かるはずなのに」

「分からないとか? もしかして見えなかった」

「あ……」

「顔が見えない場所にいたとか?」

「っ……」

ヒカリの顔がこわばる。

 

「ヒカリ⁉」

 

 ひざを折り、その場からへたり込むヒカリを見てミッキーは驚く。

「大丈夫かい⁉」

 ミッキーが駆け寄る。

「なんか……闇の中を想像したら急に怖くなっちゃって」

 分けも分からず震えるヒカリ。

「私の、記憶がない時だったらって思うと……なんだか急に体の力が入らなくて」

 おびえるヒカリにミッキーは失言だったと顔を曇らせる。

「ゴメンよ。今いろいろと考えていても分からないモノは余計に恐怖を煽るだけだったね」

「怖くない、おまじないのこと?」

 いつかトラヴァースタウンでシドに聞いた。怖くならなくなるおまじないの事を思い出す。

 ミッキーはその場で優しくヒカリにベッドの毛布をフワリとかけた。そして毛布のままヒカリの肩を抱いてすぐそこのベッドへと誘導させる。

「答えを出すにはまだ時間が必要だ、この話はここでやめにしておこう」

「うん……」

 ベッドへ腰を下ろしたヒカリは目を伏せて毛布に顔を埋める。

「さて、気を落ち着かせるには暖かい物がいいね……ホットミルクを作ってあげるよ」

 ミッキーはポンポンと毛布の上から肩を叩いて扉を開けた。

「ありがとうミッキー」

 相棒のはからいにヒカリは毛布から顔を出して出来る限りの笑顔を作った。

 ――が、それを見たミッキーがドアを閉まる際にちょっと笑っているのが見えた。

 不思議に思って窓に映る自分の顔を見ると。

 この上なく「変な顔」だった。

 あまりに変なので、ヒカリは思わず吹き出した。

 

 

 

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