King And Hearts~鍵を待つもの~【完結】   作:かすてらホチキス

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Another13~You Can Do It~

13章 モンストロ 短編

Another13~You Can Do It~

 

 ソラが召喚した耳の大きな空飛ぶ象はヒカリの頭上を旋回していた。

「い、いやぁ~私水嫌いなの~!」

 訂正。ダンボが近くに来るたびに逃げていた。

 

 ここはモンストロのお腹の中。ここが心休まる場所では無いのだが、何においても気を張るのは良くない、いかなる所でも休みは必要だ。

「どう? ダンボの召喚魔法。空飛ぶ象ってすごくかっこいいよな~」

 かっこいいと言われたダンボは上機嫌で帰っていった。ヒカリとマフはダンボに手を振ったが、やはりヒカリのことは覚えていないようだ。

 

「召喚魔法はドナルドさんとグーフィーさんと一緒に力を合わせて使うのですね」

 マフが消えたダンボの輝きから現れたドナルドとグーフィーにお疲れ様とねぎらう。

「そうだよ、僕とドナルドが力を合わせて変身するって言えばいいのかな?」

「王宮魔道士の僕と王宮騎士隊長のグーフィーだから出来るんだぞ~」

 グーフィーの横でドナルドがふふんと偉そうに腕を組むとヒカリは二人を褒め称えることも無くドライな表情でさらっと言った。

「私、今まで一人で普通に召喚していたんだけどそんなに大変な魔法だったんだ」

「もぅ~! 君ってホントめちゃくちゃだ!」

「まぁまぁ、僕たちは三人いて一人前ってフィルが言ってたからね」

 ヒカリの言葉に怒り出すドナルドをグーフィーが引き留めた。

「今はそれで良いじゃん使えるんだし。そのうちオレも一人で召喚できるようになりたいなぁ~」

 ソラが気楽に言い放つとドナルドが少し考えを巡らしてヒカリに言った。

「もしかしたら魔力不足なんじゃ無い?」

 ドナルドが鼻で笑うかのような余裕の笑みを見せるとヒカリは即答で否定した。

「いや、それはない」

「何でそう言えるんだよ~!」

 ドナルドが初めの態度に逆戻り。

「あはは、だって私ってめちゃくちゃだから~」

 ヒカリはそう言って笑ってはぐらかした。

(初めてお披露目してくれた時、ミッキーは一人で召喚していた。しかも三体同時。その前は私も二体同時召喚してさらに大魔法使ったからなぁ)

 さすがにこの答えはドナルドには答えなかった。

 

 

 その後ドナルドのご機嫌取りとはいかないが、ソラ達がヒカリ達の新しい船を物珍しそうに眺めていたので新築を案内しました。

 3LDK+C(Cはコックピット)の一軒家ほどのグミシップはソラ達の船よりも一回り大きい。

 その後彼らはお邪魔しましたと言って近くにテントを出して野営している。

「お隣に引っ越してきました。ソラ、ドナルド、グーフィーです。はい、マスターさん引っ越しそうめん」

 ミッキー(改めソラ達の前ではマスター)が、改めてやってきた三人に笑顔で答えた。

「ご丁寧にどうもグーフィー。せっかくだから茹でて持って行くよ? 流しそうめんは好きかい?」

「流しそうめん! でも、どうやって流すの?」

「お気遣いなく……ってソラ~ご挨拶しに来ただけなのに~」

 ドナルドがはしゃぐソラを叱咤する。

(ねぇヒカリさん……この一連のやりとりはしきたりなんですか?)

(マフは引っ越しそうめん知ってる?)

(まぁ……聞いた程度ですが……)

(大体それであってると思う。私も疑問には思ったけど流しそうめんは賛成だわ)

 マスターはどこまでが本気のやりとりなのかマフとヒカリには理解できなかった。

 

 その後、水の魔法を使って飛翔するそうめんを必死で獲得するミニゲームが始まり。なれてきたソラが満腹する頃には終わった。

(注意:原作ゲームにはありません)

 

 ☆

 

 ここは新しい船のヒカリの部屋。とは言っても前の船カレイドスターよりも窓が大きくなった程度。例えて言えばホテルの一室程度のツインルーム程度。ベッドが二台あれば狭いけど新しい部屋は二段ベッドになったおかげでおしゃれな丸テーブル一脚と椅子が二脚置かれている。そのおかげでちょっとした談話室になっていた。

 そして、今まさにヒカリとマフは二段ベッドの下の段に腰掛け、ミッキーは椅子に座って話をしていた。

「ダンボさん。全く初対面な感じでしたね」

「トラヴァースタウンでの探索のとき召喚していたから忘れられたとは考えられないのだけど」

「ランプの精のように別の持ち主の手に渡るとご主人様が強制で変わってしまうのでしょうか?」

「彼らは僕がお願いして呼び寄せられるよう石に魔法をかけたんだ。だから僕との記憶が無くなるのは不自然なんだ」

 三人はしばらく考えを巡らせたが、文殊の知恵はやってこなかった。

「う~ん。考えてもしょうがないわね。それよりも私はミッキーがどうやってダンボと出会ったのかが気になるわ」

「そうですね~あの空飛ぶぞうさん。せっかくなので教えて欲しいです」

「ふふっ、ソラたちには内緒だよ?」

 

 ☆

 

 ヒカリがコロシアムで初試合をしている頃にバンビの世界からすぐに僕は別の星へ向かった。そこは列車で旅をしているサーカス団の滞在場所だった。

 僕がやって来たのは夜遅くで、突然ピンクの象のハートレスが沢山現れたんだ。

 

 ☆

 

「ピ、ピンクの象?」

「カラフルですね~」

「大きいのから小さいのまでかなり沢山居たから結構苦労したよ。動物たちの協力もあって何とか退治が出来たんだ」

「動物たちって?」

「サーカス団の列車には人間の他にたくさんの動物がいたんだ。それにしてもあのハートレスはどこからやって来たのかが分からなかったんだ……朝になるまでは」

「朝?」

「ピンクの像の元凶は、なんと木の上にいたんだ」

 

 ☆

 

 次の日サーカスが始まるとハートレスは舞台にやってきた。舞台にはピエロの消防士と火事にあった建物を模した高台。そしてその上には白塗りのピエロに扮した耳の大きな子ゾウ、ダンボ。

 そして、ピンクのゾウのハートレスはダンボの悪夢からやってきたものだったんだ。

 それを裏づけたのがダンボの周りから黒い何かオーラのようなものが見えたんだ。あれは周囲のダンボを眺めている全員の否定的な感情から生まれていたんだ。

 例えば、この前失敗したのはダンボのせいだと言う仲間の象とか、大きな耳がゾウらしくないという観客とか。

 僕はピエロになりすましてそこに紛れたピエロのハートレスとダンボの近くにいたレッドノクターンを倒していった。火事場の高所のレッドノクターンほど面倒なものはいないね。と、片手間で考えていたところ……なんとダンボが大きな耳を羽ばたかせて空を飛んだんだ!

 その瞬間、ハートレスは一気に消えた。

 

 ☆

 

「なんで消えたのですか⁉」

 マフがいつものミッキーへの態度を忘れて乗り出すように語り手にせがむ。

「おそらくみんなの心の闇がダンボの奇跡の飛行で一気に消えたのだろうね。たくさんの人が耳の大きなゾウを否定的な目で見てしまっていた。だけどその耳が、なんと驚くべきことに人とは違うとても素晴らしい特技を秘めていたなんて!」

「お耳が大きいだけなのに、ダンボさん、もう悲しくないですね……よかった~」

 

「観客席中を飛び回る子象は一瞬で多くの人の気持ちを良い方へ変えてしまったんだ。あの感動を見てしまったら生まれながらに持っているものが不幸なことだなんて誰が思ったことだろう。むしろ一変。羨ましさすら感じてしまうくらいさ」

「生まれながらに自分の持っているもの……か。素敵な話ね」

 興奮冷めやまぬマフの横のヒカリにマフが疑問に思う。

「ヒカリさんは……そういうのあるんですか?」

「いや、私の魔法の力もさ、ちょっと独特で火力も強かったりするけど、みんなはよくわからないじゃない、だからかな」

「ヒカリさんの魔法は、なんていうか……うらやましいです。お耳が大きいとか目に見えませんので、威張っていいですよ!」

「あはは~威張っていいのね?」

「ははっ、これ以上ヒカリが威張ったらドナルドみたいになるよ?」

「王様。それ王宮魔道士様が聞いたらあなたにとばっちりが来ますよ」

「ま、マフ~さっきはいい子で話聞いていたのに、いきなり僕に意地悪言うのかい」

「いい話が聞けましたが減点対象ですよ!」

「手厳しいなぁ~最後の締めもあるからちゃんと聞いてくれよ」

 

 ☆

 

 人気者になったダンボは暴れて繋がれてしまっていたお母さんを檻から救い出したんだ。

 お母さんは生まれて間もない自分の子供を偏見から守ろうとして暴れてしまったらしい。

 そして、その檻を見つめて僕は気がついたんだ。ハートレスの出現はダンボ自身からでは無くその檻からだったんだ。狭い檻の中から開け放たれたお母さん象が外へ出て行くと鍵穴が出現したんだ。

 僕は鍵穴をキーブレードで閉じて、この世界はひとまずは平和になった。

 

 やればできることがあった事。 

 みんなと違う特技が見つかった事。

 そしてみんなの偏見が羨望に変わった事。

 全てがダンボの驚くべき物語だったんだ。

 

 ☆

 

「帰り際にダンボはお礼に僕に召喚石を渡してくれたんだ。おしまい」

「思っていたより手助けしていなかったわね」

 ヒカリがズバリ言う。

「そう言われると返す言葉もないよ。実際ダンボは他にはいない唯一の個性のある象で、そのせいでみんなに煙たがられる存在だった。だけど、それが一変して自分の力で人気者になったのだから。あれ、ところでマフは?」

 さっきまでいろいろ言ってきたマフが何も返事が無い。

「あ、寝ちゃった。私、隣のベッドで寝るわ」

 ヒカリにもたれていたマフをゆっくり横にさせてヒカリは自分のベッドから立ち上がる。

「ところで、ムーシューは?」

「へっ?」

「ダンボがすごいのはわかったけどムーシューはどう言った経緯で?」

ヒカリは最後の召喚獣について言及する。

「それが……ダンボの世界から出たあとに、宇宙空間で偶然見つけたんだ。ムーシューを召喚したら居眠りしていたら星が無くなっていたんだって」

ミッキーの表情は嘲笑に耐えるかのような苦笑いを作っていたが、ヒカリはミッキーとムーシューの経緯を想像すると途端に気の毒な場面が思い浮かんだのでそれ以上のことは考えなかった。

「……なんというか、災難ね。私もソラと島へ飛び出さなかったら家で寝ていたはずだから同じように言えた立場じゃないけど」

「そうしたらヒカリも召喚石で召喚していたのかもね?」

「えっ……私何も出来ないよ? 放水したり、雄叫びで攻撃したり、炎出したり出来ないって」

「それ、君なら全部一気に出来そうだけど?」

 真顔で答えるミッキーにヒカリは冷めた目付きですかさず反論。

「それだったら私、呼ばれた時だけ力貸すのね。どうやらわたしはジャングルの王様や森のプリンスやサーカスの人気者や守り神と同じような存在だったらしわ。さしずめ南の島の大王くらい名乗ってもいいのかしら?」

「ごめん、そこまで言うのなら違うな……冗談だよ」

 やはり真顔で答えるミッキー。

「なによ〜ちょっと期待したのにー」

「よく思ったら、ヒカリを召喚するのにはかなりの魔力が必要そうだから、今こうやって隣にいるのはとても嬉しいなって」

「……そこまで言うのなら、召喚して出てあげるのは却下ね。うん、美味しいご飯も食べられるし。魔法も技も覚えられるから、今のままがいいわ」

「本気で召喚されようと思っていたのかい?」

「実を言うとちょーっと憧れてるところがあるわ。あの出てくる時の演出がカッコイイんだもん!

 杖からお星様たくさん出して扉から飛び出して登場しようかなくらいは考えたわ」

 

「ははっ、僕が思うに、君が出てきたらずーっと帰ってくれなさそうだな」

「なら、今のままでいいじゃない」

「違いない」

 

「……召喚魔法なんで使えなくなったんだろうね?」

「僕が思うに僕らよりもソラ達に渡った方がたくさん助けてくれると思うよ。君みたいな魔法がたくさん使える相棒がいるわけだから。僕は十分助かっているし」

「ミッキーがそう言うならソラ達に使ってもらった方がいいのかもね?」

「そうそう、なんて言ったって僕とヒカリは召喚魔法を同時に使えるくらい強いからね!」

 

「あ、マフが寝てるからこれ見よがしに言ったわね?お・う・さ・ま?」

「マフとあの3人には内緒だよ?」

 

 少し威張って見せた王様はどことなく王宮魔導士様に少しだけ似ていた気がした。

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