King And Hearts~鍵を待つもの~【完結】 作:かすてらホチキス
落ちていく感覚。
前と同じ――。
「!」
目を開けると見慣れた風景。
眩しくて熱い日差し。
青い空とそれに負けないくらい青い海。
極端に腰の曲がった木のある離れの島。
しかし、今の私にはなぜか懐かしさのある場所。
『デスティニーアイランド』
どうしてだろうか……。
今は、とても悲しい。
ふと、目の前に人が現れた。
「カイリ……?」
カイリが現れたのはそこの風景と同化しているようにごく自然だった。
これは、夢なのか?
そう思いつつもなぜか嬉しい。
ヒカリは笑みがこぼれる。
カイリがいつもの屈託の無い笑顔を私に見せて言った。
「あなたは何を望んでいるの?」
ごく自然に『アナタ』と言うカイリにヒカリは少し驚くが、(ま、夢なんだから)と受け流す。
「私は―――」
たしかに迷いもなく自分が言った言葉のはずなのに聞き取れない
「そっか叶うといいね」
カイリは髪を揺らして微笑んだ。
そのままカイリは時が止まったように動かなくなった。
パオプの木のある島へ行くと、木の上にリクがいた。相変わらず海の向こうを眺めている。
ふとヒカリを見てこう言った。
「オマエは何処に行きたい?」
『オマエ』って言われることに少しムッとするが、さっきのカイリに免じて聞かなかったことにしておく。
「トーゼンッ私は―――よっ!」
勢いよくしゃべるヒカリ、しかしなぜか聞き取れなかった。
「ふーん、そうか……」
相変わらずぶっきらぼうな言い方のリク。
しかし、その口調は穏やかだった。
イカダのあるほうへ行くと、イカダの上からソラが現れた。
ソラは白い旗を持ってヒカリを見ている。
「キミは何がほしい?」
『キミ』なんてソラの口から言われたので、少しふき出しそうになったが、さっきの二人の言葉から考えるとこの一人称しか無いだろう(笑)
「ソラ、私はね――」
やはり私は答える。ためらいつつもはっきりと。
言い終わるとソラは、
「いいんじゃねぇ、そんなんで」
にっこりと自分の手に持っている白い旗をヒカリに差し出す。
見慣れない旗だ、手に取ると――。
旗が輝き、杖へと変わる。
「これは……?」
驚くヒカリ、この杖は噴水で見つけた杖――。
「ロックセプター」
ソラが戸惑いもなく言った。
「なに?」
弟が何か変な言葉を発している。
「鍵を待つもの、ロックセプター」
(待つ……ダレを?)
「これでキミは寂しくならない」
それが当たり前のように、にっこりと笑うソラ。
「??」
視界が真っ白くなっていく。
島もソラも――。
――待っているよ、ヒカリ――。
(誰の声?)
「ちょっと……待ってよ、これって何!どうやって使うの?」
誰かも知らない声に答えを求める。
――キミはソレをよくシッテイル――
聞くがいなや完全にヒカリの視界はソラを見失った。
しかし手には間違いなく握られている。
ヒカリはソレを強く握りかえす。
そして確かめるように言った。
「鍵を待つもの、ロックセプター」
真っ白い視界がいっきに晴れた。
「ロックセプター……?」
「うん、杖の名前。そう、いってた……」
ぼんやりとした口調で答える。
「ふぅん。それじゃあ、キミの名前も聞きたいよ」
軽い口調で誰かが聞いた。
「なに言ってんのよソラ! 忘れたなんて言わせないわよ!」
がばっと起き上がるヒカリ。
その勢いのせいで頭に激痛が走る。
「大丈夫かい? ついでに言うと僕は『ソラ』ではないけど」
「え?」
頭を押さえながら声のしたほうを見ると。
そこにいたのはソラではなかった。
「ご、ごめんなさい……ここは?」
薄暗い天井、どれも埃を被っていて何年も使われていないようだった。
「キミが倒れていた所から横の方にある空き家さ」
「ゆめ……?」
ぼんやりと記憶がよみがえっていく。
さっきの頭痛とココが見慣れないということから、やはり自分は今一人なんだ。
頭痛をのぞいて、気分はさほど悪くはないがこれからどうしようか。
どうしようもない自分を励ますようにヒカリは横の彼に言った。
「さっきは変なこと言ってごめんなさい。あなたが助けてくれたのね」
「いいや」
「?」
(ベロッ)
「!」
ほほに湿った何かが通過して一瞬ぞわっとする。
ゆっくりとそこを見ると。
「わう!」
黄色い犬。
「……プルート?」
「そう、キミを見つけたのはプルートさ、僕は通りすがり」
それにしてはプルートが彼になついている。
「プルートありがとう。おまえ、てっきり逃げたと思ってた」
晴れやかにヒカリが笑いかけた。この時ヒカリは疑っていた自分を少し恨んだ。
「半分は当たっているかもしれないなぁ」
「はい?」
「僕が出会う前にプルートは街のすみの方で震えていたからね」
「――プルート、それ本当……?」
ヒカリはプルートをにらむ。プルートはヒカリと目を合わせなかった。
「僕を見たコイツったらイキナリ飛び込んできて、引っ張るんだ、公園の方に」
後を聞いてヒカリはプルートをにらむのをやめた。
「私を助けようとしたんだ?」
考えてみればそれが一番効率のいい選択だったかもしれない。
「――ま、許してあげる」
プルートに笑いかけるヒカリ。
「わうっ!」
得意そうに吠えるプルート。
「ところであなたの名前は? 私の名前はヒカリ」
「え? あ――僕の、名前は……」
イキナリ自分に振られてあたふたとしている青年。
黒い短い髪。背丈はヒカリよりか高い。雰囲気は大人びて見えるが、どことなく少年のようにも見える。おそらく声が少し高いせいだろう。とにかく若々しい青年だ。
その青年がなぜかしばらくうんうん唸って考え事をしている。
そんなに自分のことを他人に紹介するのが難しい人なのだろうか。
初対面で名前を言った自分が実は世間知らずだったのだろうか?
「えと、ミッキー、僕の名前はミッキー!」
確かめるような口調にヒカリはギモンを抱かなかった。むしろ、自己紹介をした自分が変ではなかったと確認できてほっとしている。
「ミッキーありがとう。助けてくれて。ところで……」
「ところで?」
「ここ、ドコ?」