King And Hearts~鍵を待つもの~【完結】   作:かすてらホチキス

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~拾い物~

 

「ねぇ、アリエル」

「なぁにヒカリ」

「私を見つけたのはここからちょっと行った場所なんだよね?」

「ええ、そうよ。あそこは暴れん坊のサメが時々来るから他の人魚達は寄り付かない所なの」

「危険なんだよ!」

「そ、そうなんだ。はは……無事で良かった」

 そんなところで自分は溺れかけていたのか。

「私たちが来なかったらちょっとあぶなかったわね……ヒカリって本当に運がいいわ」

「まったく、本当によくそんな所で無事で居られたよね」

 ヒカリを誉めるアリエルと説教するフランダーの板挟みにどう反応すればいいのやら迷うヒカリ。

 そしてふと思った。

「じゃぁさ、サメが出てくる物騒な場所に二人は何をしていたの?」

 アリエルとフランダーは顔を見合わせ、しばらくして頷いた。

「いいわ、ついてきて」

 

 

 ついてきてと言われたものの、実はさっきまで人間で――しかも泳ぎが得意じゃないヒカリは当然二人には追いつく事が出来ない。

「おそーい!」

「フランダーが早いの!」

「じゃぁこうしましょう。私の手をつかんで一緒に泳ぐのはどう?」

「じゃぁ……お願いします」

 経験値が少ないとか、初見だとか、初歩の段階からもう詰んでいるので情けないなんて言ってられない。ヒカリはうつむき気味に顔をそらしてアリエルの手を取った。

「行くわよ!」

 アリエルはヒカリの手を取ると始めはゆっくりと、次第に速度が上がる。

 アリエルに手を引かれ上へ下へ――右へ行ったと思えばすぐに斜め。

 重力や平坦な道の概念の無い広い海の底はやはりヒカリにとっては新鮮な新しい世界だった。

 島に帰れたら冗談抜きで海の中を見に行ってみようなんて思えてくる。

「ヒカリを見つけたとき、私てっきり人間だと思っちゃったわ」

 何気なく言ったアリエルにヒカリは自分の心を見透かされたような気がしてとても驚いた。

「えぇっ⁉ アリエルは『人間』知っているの?」

「知っているわ。尾ひれが無いのよね、でも本物は見た事は無いの――ヒカリはあるの?」

「え? う、うん。まぁね~旅してたら沢山新しい発見もある事だし?」

 人魚とか海の底が今最大の新発なのだが。

「どんなだった? かわりに足って言うのが二本あるのよね?」

「う、うん。そうだよ」

「それで、地上では――こうやってダンスをするのでしょ?」

 アリエルは楽しそうにヒカリの手を引いてワルツのように緩急をつけてぐるぐると横に回る。

「よ、よく知っていらっしゃいますね~」

みんながみんな四六時中踊っているとは限らないけど。

 その間、ヒカリとアリエルが右も左もわからないくらいぐるぐる回って泳いでいるうちに目的地に着いた。

「着いたわ、ここよ。ふふ、ヒカリには特別に見せてあげるわね」

 そう言ってアリエルは少し大きめの岩をどかした。岩の陰には小さな空洞があった。

「入っていいわ」

 

 

 空洞に入るヒカリ。薄暗いが天上に丸い穴があるおかげで全ての場所が光に照らされてはっきりとわかる。そこには沢山の漂流物がびっしりと並んでいた。地上で例えて言えば博物館の天井までそびえる棚に置かれたアンティークコレクションのようだ。

 

「うわぁ~これ全部二人で集めたの?」

「そうだよ~すっごいだろ!」

「ずっと前から少しずつね……見つけたらすぐに持って来たわ」

「アリエルのさっきのダンスは綺麗な人形の入った箱を見て知ったんだ~ほら、これだよ」

 フランダーがクルクルと綺麗な箱のある周りを旋回しながらヒカリに促す。ヒカリがその箱を開けると音楽が洞窟いっぱいに響く。

「へぇ~~オルゴール。ちゃんと聞こえる~」

「おるごぉる……この箱の名前はオルゴールって言うのね!」

 アリエルが嬉しそうに名前を何度か連呼した。

 即席の歌が出来上がるぐらいに。そんな歌を聴きながらヒカリはフランダーに聞いてみる。

「地上の事、本当に好きなんだね……ちょっと重症なぐらい」

「まったくだよ~僕だってトリトン王に見つからないようにとかいろいろと危険なんだから」

「でも、まぁ~歌声は聞いててとても気持ちがいいわ」

「うん、僕もそれは同感」

 アリエルの歌はとても不思議な歌詞だったが、歌声は申し分ない。オルゴールのようにクルクルと踊る人魚は音の出る箱の中の人形よりもとても素敵だった。

「それにしてもこの場所、なんだか居心地がいいわね~」

 ヒカリがゆっくりと天を眺めていると太陽の光が丸く抜ける岩場からちょうどヒカリの場所へ差し込んできた。ゆらゆらと揺れる光に地上の二人の事を思い出す。

(ミッキーとマフ。きっと心配しているだろうな)

 私ならこうして無事なんだけど、今の状況ではどうにも伝える手段が無い。

 この前ミッキーは私を探す時にキーブレードを使って探していたみたいだけど、ヒカリが同様にロックセプターで試してみたが無理だった。

 キーブレードは近くの錠に引かれるとマフは言っていた。だから星の鍵穴を見つける事が出来るのだと。

 キーブレードが方位磁針なら、ロックセプターはどうやら星の鍵穴と同じ物にあたるらしい。

(ミッキーが来るまでおとなしく待っているしかないかな)

 とは思っていても、黙って待っているなんて私の性分ではない。

(私、島を出る前は待っていられるって思っていたけどな~)

 それもこれも、好奇心と言う魅力的な理由があるせいだ。

 知らなかった事を知って行くって、ちょっと恐い所があるけど、案外ちょっとでも体験してしまうと、なんだこんなものかって軽い気持ちで踏み込める事がある。

 私にも出来るんだって思い込む事が始めの一歩なんじゃないのかな?

 でも、逆に考えると、私が島から出ようなんて思わなかったのは外の世界の事まったく知らなかったってことなのかな?

 私が怖いものがあるからだけじゃくって知る事をしなかったんだとしたら?

 それとも魅力的な事が見つけられなかったから?

 あるいは……無意識に怖がっていた。

(そう言えば、私が海底へ引き込まれたのって何だったんだろう?)

 考え出すと謎な事ばかりだ。とにかく何か行動しなければ――。

「ところでさ、フランダーは私が落ちてくる時に他に誰か、何か居なかった?」

「誰もいなかったよ、保証する。サメに会わないようにいつもちゃんと警戒しているからね」

「じゃぁさ、もう一度見に行ってもいい? 仲間が待っているかもしれないの」

「大変! きっと探しているわね。ごめんなさい勝手に連れ出しちゃって」

「そうなんだけど……どこから落ちてきたのか分からない以上、初めのアリエルたちが見つけてくれた所で待つしか無いかも」

「わかったわ、でも、流れが速いからあの子を呼びましょう」

「あの子?」

 

 

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