King And Hearts~鍵を待つもの~【完結】   作:かすてらホチキス

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~人魚のお姫様~

 ヒミツの場所の扉を締めてアリエルとフランダーはきょろきょろとあたりを見渡した。

「今ならきっとあそこの道を泳いでいるはずね」

「あ、居たよあっちだ!」

「ええと……まって~!」

 手をバタバタと動かしてもまったく進まないヒカリ。

「あ、そうだったわね」

 結局アリエルに片手を引いてもらってなんとか移動。

「こうやって誰かの手をひっぱって泳ぐなんて初めてだわ」

「ううっ面目ない」

(これじゃ泳げない私とあまり変わんないや)

 なんだか情けなくなってきたヒカリだった。

「ヒカリ、空間を勢いよく蹴るように尾ひれを動かすの」

「う、うん」

「ヒカリを見てると足ってものは結構泳ぎが大変なのかもしれないわね」

「えっ、なんでいきなり足?」

(私、今は人間じゃないよ?)

「尾ひれみたいなのが小さくてしかも二本に分かれているなんて泳ぐのが大変よ」

「そ、そうだね~」

「ねぇ、ヒカリは人間が足をどうやって動かして移動していたのか見た事あるの?」

「う、うん……まぁ、ちょっとだけならね」

「すごいわ! どうやっていたの?」

「えーとこの手が足だとすると、こう交互に」

「ウォッホン。アリエルこの者はどこのどなたなのですか?」

 ヒカリの後ろから声が聞こえた。

「セバスチャン⁉ えーと、この子はヒカリ。遠くからやって来たみたいなの」

 アリエルがヒカリの手を引いて宙返りした。

 手を引かれたヒカリもそれに続く。

 ヒカリの背後にいたのは赤い甲羅とハサミを持つエビ(だよね?)だった。

「ヒカリ、こちらはセバスチャン。宮廷の作曲家で私のお目付役よ」

「宮廷の作曲家? アリエルのお目付役?」

 なんだか難しい肩書きがある赤いザリガニだ。

「いかにも、トリトン王が統治しておりますこの海底の国こちらにおります姫様のお目付役をしております」

 難しい言葉を並べるセバスチャンをよそにヒカリが結論を見つけた。

「つまり、アリエルはここのお姫様なのね。すごい! 知らなかったとはいえご無礼な事を……」

 ヒカリがうやうやしく宮廷風の挨拶をしてみせる。ヒカリのこの態度にセバスチャンは気を良くしたようだ。

「いやいや、そうかしこまらずとも……偉大な王の末娘である姫様であろう人でもこうして明るく元気な性格になられ私めは――」

 そんな社交辞令を披露している間にさっきまでイルカを探していたフランダーがやってきてアリエルとヒカリに耳うちした。

(そろそろこっちに来るよ)

「セバスチャン、ヒカリは今ね、一緒にいた仲間を探している所なの!」

 アリエルがすこし大げさに言いながらヒカリに目配せする。その先に勢いよく移動する魚影がこちらにやってくるのを見つけた。

 ヒカリはその意味を察してキラリと不敵な笑みを一瞬だけ見せてセバスチャンに向き直って言った。

「そ、そうなんです~こんな綺麗なところ初めてで、見入っていたら仲間とはぐれてしまいまして」

 にっこり笑顔のヒカリはいつもの「不敵な~」よりも爽やかキラキラ営業スマイルだ。

「なんと! お仲間と別々に……しかし、この場所が素晴らしいとは! この景色は私の誇りです。そしてその景色は――」

「さぁ、捕まって!」

 セバスチャンの背後に居たフランダーがイルカに始めに捕まる。

「いくわよ、ヒカリ!」

 楽しそうにアリエルがヒカリの手をつかんでイルカに捕まった。

「ではこうしましょう! 宮殿にてお待ちいただき練習中の歓迎の曲をーー」

「あ、いいですね~」

 ヒカリはセバスチャンの対応に夢中で――。

「え、ちょっ、タイミングが、うぉわぁぁっ~⁉」

 あまりの早さに絶叫した。

 

 

「着いた。ココがヒカリを見つけた難破船のある海底だよ」

「気を付けてね、時々だけどサメが居るかもしれないから」

「気を、付けるまえに……まず、一息つきたいんだけど」

 いきなりの最速アトラクションに思いもよらず絶叫したヒカリはのどがカラカラーーいや、海の中で乾く事なんて無いので、泡がブクブクと口から絶えず出まくっている。

 海底で息を切らすなんてなんだか不思議だ。

「まったく、そのとおりです!」

「そうそう~やっぱり事前にイルカさんは速いんだよ~とか言ってくれないと……って、あれ?」

 第三者の声が聞こえる。

 しかもさっきまで聞き覚えがある。

「セバスチャン⁉ せっかく撒いたのになんでここにいるの!?」

「まいたって……お行儀が悪い言葉を言ってはいけませんぞアリエル」

「それよりセバスチャン。どうやって私たちをココまで追って来たの?」

「イルカさんすっごく早かったのに(まだブクブク)」

 セバスチャンに驚きを越えたある意味での尊敬の視線を向ける三人。その視線に気圧されるようなセバスチャンはちらりとヒカリを見て言った。

「スミマセンが……この娘さんの髪にハサミが絡まってしまいまして」

 しばし沈黙。

「あ、絶叫してて気づかなかったけど、なんだか髪が引っ張られる感じがしていたわね~」

 息を整えたヒカリがなるほどそうだったと、納得した。

「……なんだかごめんなさい」

 そして、ヒカリが皆にとりあえず謝った。

 せっかくの計画を台無しにしたのは自分のボサボサ髪だなんて。

「ま、着いてきてしまったからにはしょうがないでしょう。お供いたします」

 気まずい空気の中、セバスチャンがこの場の雰囲気に折れた。

「ありがとうセバスチャン!」

 アリエルがほっとしてお礼を言う。

「ま、いつもの事ですからね。くれぐれもトリトン王には内緒ですぞ」

「王様、恐いもんね~」

 フランダーが軽く慰めた。

「さて、セバスチャンにお許しをもらった事だし、ヒカリの仲間を捜しましょう!」

 今のところ危険がないようなのでそれぞれ手分けして探すことになりとりあえずは散り散りになる。

 アリエルが難破船の所まで泳いで行くと、フワフワと揺らいでいるクラゲが現れた。

「あら見かけないクラゲね。ヒカリの仲間かしら?」

 

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