King And Hearts~鍵を待つもの~【完結】   作:かすてらホチキス

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~海底バトル~

「広いぃ~」

 もしかしたら難破船の中にはお宝が⁉

 人魚の姿なら息継ぎとか心配しないで楽だね♪

 などと胸をときめかすヒカリ。

 しかし、どうにも泳ぎが不慣れで船の内部にもたどり着く事が出来ないでいる。

「もしかしたら泳ぎが遅くてヒカリ、置いてかれたのかもよ?」

 フランダーがヒカリの声を聞きつけてズバリ言い当てる。

(もし私が本当の人魚だったら)

「そうかもしれない……」

 あえて最初の考察は抜きにしてつぶやくヒカリ。

「冗談だって~僕だったらヒカリは一緒に居ると楽しそうだから仲間ならそんなことはしないと思うよ」

「ふふっありがとフランダー」

 何かといつも言われるキーワード。

 いろんな人に『ヒカリと一緒に居ると楽しそう』と言われるのだが、この言葉に今は救われた。

 でも、もしも置いてかれたと思ったら、ソレでも私は一人じゃないって思っている。

 勝手な解釈だとは思うけど、あの時の私は『待っている』って言ったんだ。仲間の事を、親友の事を、幼なじみの事を信じていたい。

 きれいごと何て言われるのかもしれない。でも、だからこそ私は私の思っている事を信じていたい。

 私がそう思っているんだから、ぜったいにそうなんだ。今はまだ覆せない現実(こたえ)でも、未来(あした)はきっと変えられる!

 真実を知らない限りわたしはまだ諦めたりはしない。真実を知っても私は諦めたりはしない。

 私が私で答えを出すまでは。

「キャァー!」

 はっと我に帰ったヒカリ。

 難破船の裏からアリエルの悲鳴が聞こえた。

「アリエル~~!」

 フランダーが駆けつける……が、すぐに逃げだして来た。しかも駆けつけたはずのフランダーの方がアリエルより逃げるのが早い。

「何やってんのフランダー、アリエルは?」

「アリエルは無事だけど、とにかくみんな逃げて」

「いったいどうしたの?」

 ヒカリが合流したアリエルに聞いた。

「まさかとは思うけど、あれがヒカリの仲間?」

 あれと言われたものを見る。

「間違いなく違うわ」

『あれ』を見たヒカリの表情が一気に変わった。

 その表情は不安の入り交じる、それでも状況を覆す可能性を秘めた不敵な笑み。

「ここでハートレスか、この移動ハンデで勝てるかなぁ?」

 ヒカリがそうつぶやきながら両腕を胸の前に突き出すと何かが現れた。

「どうやらあれはお友達じゃないみたいよ」

 フランダーに続き、避難したアリエルが不安そうに――いや、今はなんだか楽しそうにヒカリの持っている杖を眺めている。

「アリエル! よかった無事のようでなにより」

 次いで駆け付けたセバスチャンはアリエルが無事で胸を撫で下ろす。

「姫様、早くこんな危険な場所から――」

「ヒカリそれはなに?」

「――って無視ですか」

 少し緊張気味なヒカリは、これから始まるショータイムを待ち望むかのようなアリエルの表情を見て不敵な笑みを三人に見せて言った。

「これはねみんなを『あれ』から守る物だよ」

 ハートレスが居る以上。これ以上の説明は今出来ない。ゆっくりとゆれる髪と不慣れな赤い尾。泳ぎは最悪だけど逃げるなんて眼中に無いヒカリには関係ない。いつもの調子でバトンの要領で一回転させてみるとロックセプターの重みが普段よりも軽く感じられた。しかし、降り回す勢いが普段と違ってゆっくりだ。移動も武器もとても動きがとりにくい状況である。

「ま、初めてなんて、ダメで結構よね!」

 弱みを払拭するように叫ぶヒカリに、他の三人は訳が分からなかった。

(すぐに克服、いいや、攻略してやる!)

 ヒカリは短く息を吐いて呪文を唱えた

「まずは小手調べの、バースト!」

 最近覚えたショットとは違う、ヒカリが始めに覚えた魔法。

 光の球を目の前にフルスイング!

「バースト!」

 放った光は次第に大きくなりクラゲのハートレスを呑み込んだ!

 すると――。

(ドォン☆)

 なんだかコミカルな爆発音が聞こえたと思うと。

「なっ⁉」

「まぁ!」

「これはまた……」

「うっそ~」

 ヒカリ、アリエル、セバスチャン、フランダーがそれぞれの表情で驚愕した。

 クラゲが分裂した!

「あ~~倒したと思ったのに」

 フランダーが落胆する。

 ヒカリの最大にして最強の通常魔法『バースト』

 初めて覚えたのにもかかわらず未だその驚異は衰える事が無い。

 むしろ、周りの人にも失明と言う(身を持っての)悪影響を及ぼす危険魔法なので仲間と戦うことが増えた今ではあまり使う機会が減った魔法なのだが……。

「いつもならコレで一撃必殺なんだけど~あ、もしかして踏み込みが甘い?」

(しょうがないか、足無いんだもんね)

 さっきのは踏み込むと言うか身体をひねるってい感じだ。

「ヒカリ、踏みこみってなに? 私にも出来る?」

 アリエルがなんだか危機感を忘れて楽しそうにヒカリに質問する。残念ながらこの状況はアリエルの質問に付き合える状況じゃないので――。

「皆さん。ココまで来たら私だけで十分です。ありがとうね☆」

突然ヒカリが明るく言った。

 彼女は一体何を言っているのだろう?

 まるでこれから私が囮になって突っ込むみたいな言い回しで――。

「と、いうことなので、乱暴だけど許してね!」

 アリエルはヒカリの言葉が理解できなかった。

 後ろから振り返るヒカリは、今から戦いに立ち向かおうとするとても強気な笑顔。

 無造作に揺らめく茶色い髪から覗いたキラキラと煌めくブルーの瞳はなんというか海の中では例えようも無い明るく透き通った場所の色をしていた。

 見とれていたアリエルは軽く空中で円を描き新たな呪文を放ったヒカリに気づかなかった。

「我が身盾となり弾き守れ!『リフレクボール、および、エアロエスケイプ』」

 二重魔法を唱えたヒカリ。

 前回二重召還を成し遂げた事のあるヒカリは魔法の二重、三重(今のところ最大3回)を同時に使う事が出来ていた。

「なんだこれ?」

「ヒカリ一体何を?」

「変な泡の中に入ってしまった!」

 アリエル、フランダー、セバスチャンの三人の周りを丸い球体が覆った。

「これね~バリアとカウンターの二重構造って言えばいいのかな?」

「で、つまりはどう言う事かね?」

「身をもって知るべし……ってなわけで~」

 ヒカリが勢いを付けてさっきのポーズをする。

「あらためまして道案内ありがとう☆あとは私だけに任せて無事に逃げきってちょうだい!」

 ヒカリ、フルスイング!

(ガキィン☆)

 攻撃を受けた球体は弾かれたように綺麗に真っ直ぐ移動した。障害物に触れると勢いを増して跳ね返って行く。

 中の三人はバリアに守られているため目を回す事はない。その球体がピンボールのように飛び跳ねながら元来た道へと消えて行くのを見守った。

「よし、海流の場所に行けば後は安全ね。さて、この後はどうしたものか」

 ヒカリが残りのギャラリーに振り返る。

「今日はなんだか絶好調に魔法が使える気がするわ!」

 なんたってヒカリ以外に見方は居ないのだ。それに、今の戦闘はどこにも迷惑はかけない。

「ここの流れならバーストとバリアの次に覚えた魔法か」

 それは、氷の魔法。半眼で微笑み沢山のハートレスを見据えるヒカリ。さいわいさっきのアリエルたちの入ったピンボール攻撃でヒカリの周囲にはハートレスがいない。

 ヒカリが再度集中すると青白い魔法陣が浮かび上がった。冷気をまとって紡がれる新しい魔法。多くの言葉から選び採る最高の言葉。

(氷、渦――凍結!)

 それが魔法発動の鍵となる!

「水中に花咲くは迫り来る氷結の終焉。ブリニクル・ケイオス」

 輝く白い光が海底の竜巻に変わり触れたものを一瞬にして凍らせる。竜巻の後は白い氷の道となって氷のオブジェとなったハートレス達を飾った。

 分裂してひしめき合っていたハートレスすべてが凍り漬けとなったのは数秒たらずで

 この場にはヒカリ以外動くものは居ない。

 やがてハートレスが黒い影にかわり大量のハートが空へ還って行く。その光景をヒカリはぼんやりと眺めていた。

(残ったのは私だけ……か)

 黒い影がゆらゆらと舞い上がって行き消え行くのを見ていると自分の魔法に少し身震いする。

思った通りの――いいや、『思った以上』の望んだ力。

 この力の根源について私は知らない。

 この力、使い続けていいものなのだろうか?

 それとも――。

「どうやったらそんな恐ろしい魔法をおぼえるんだ?」

「⁉」

 ヒカリの後ろから声が聞こえてはじかれたように振り返る。

ヒカリの後ろには――リクがいた。

 

 

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