King And Hearts~鍵を待つもの~【完結】 作:かすてらホチキス
「過保護な魔女はよくここに来る事を許してくれたね?」
魔女とは当然、マレフィセントの事だ。
ヒカリが少し上手くなった背面宙返りをリクへご披露して言った。
リクは一瞬ヒカリを睨み言葉を返した。
「そっちこそ子連れじゃないのか」
間違いなくマフの事だろう。
「あらリク、可愛い女の子に合いたかったの?」
ヒカリはニヤリとリクに返した。
「そういえばもう一人過保護なヤツが居たな。さっさと帰れよ」
「そうね~ちょーっと過保護ね。じゃあさしずめ只今の私は家出中って所かしら」
「……」
余裕なヒカリの態度にリクが黙った。
(私の仲間に大しての侮辱は褒め言葉と受け取っておくことにしました)
勝ち誇ったような余裕ある態度でリクを見下ろすヒカリの雰囲気にリクはなんだか過保護な魔女にも見えてくる。
リクは不愉快そうにヒカリを見返し、何か思いついたようにすぐさま余裕ある表情に戻り言った。
「大体今のお前の格好はなんだ金魚のオバケか?」
「あ、話変えたしかも酷い。せめて『おめでタイ』とか言ってよ。もしくは『どんとコイ』で」
「タイはともかくコイは池に居る。しかもおまけに海藻みたいな髪……珊瑚とか引っかかるぞ?」
「ううっ珊瑚じゃないけど引っかかったのは否定しません。リクが羨ましいですよ~サラサラしてるストレートヘア」
「これは生まれつきだ、いいだろ?」
すました顔でニヒルに笑うリクに、うわぁ開き直った~と、たじろぐヒカリ。こうなってしまったら負けじと畳みかける。
「そうねー女の子かと思っちゃった」
「残念だったな、お前よりも綺麗な男で」
「私は容姿で勝つ気はないわ。男勝りと言われるのが私のチャームポイントの一つなのです!」
「誰が言ったんだよ?」
「それは……」
ソラとリクだよ――なんて、今の私の口からは言えない。
思わずリクを見上げたヒカリは言葉を失った。押し黙って何も言い返さないヒカリにリクはハッと我にかえった。
「何を言っているんだ、俺はお前と居るとなんか調子が狂う」
「わたしも、多分同じ気持ち」
ヒカリはゆっくりと後方宙返りをする。視界が逆転して逆さまになった世界を仰ぎ見る。
リクが一瞬だけ見たのは今にも泣きそうになるヒカリの顔。彼女のいつもと違う姿になぜだか少し赤くなって視線を外した。
「……何があったのかは聞かない」
「そう、じゃぁ私もリクがここにいる理由は聞かないわ」
「なんだ、結構あっさりなんだな?」
「べつに~? ここに来た理由はとくに無い。ただ面白そうだったから。そんな理由でもいいんじゃない」
「そう、思っていればいい」
「うん、そうすることにします」
二人ともそんな理由ではない事はとうに分かりきっている。しかし、これ以上は考えたりはしないと二人は今誓ったのだ。
そう言う事で、ヒカリは今の情報を話す事に。
「ここ、ソラ達はまだ来てないみたいよ。人魚のお姫様が目珍しそうに私を眺めていたから」
「それで一人だけハートレスと戦ってお姫様達はどうしたんだよ?」
「一応安全な所に行ったと思うわ。少なくともさっきのあの数よりはね」
「追わないのか?」
「まずはリクと話が終わってからね、一応だけど仲間がここに来てくれると思って待っていたから」
「残念だったな、アイツらはもうココにきてどこかに行った」
「え、ウソ⁉」
「考えてみろ、さっきまであれが沢山居たんだ」
「そっかミッキーだったら残さず倒してるわね。でもどこに行ったんだろう?」
「海の魔女がこの向こうに居る」
「もしかして、私が捕まったと思って……」
「結構急いでいたみたいだからな、ハートレスもそのせいでここに沢山やって来た」
「そう、こうしちゃ居られないわね。リクこそお姫様、今回はさらわないの?」
「俺だって好きでさらっていない……けど、何にせよ、コレだけははっきりと言わせてもらう」
「なにさ、リク?」
「お前にくっついてるそこの貝、そっちのが大きくてなんとも残念だ」
「貝?」
ヒカリはリクの言っている言葉が分からない。
「ま、男勝りだからな『無くても』いいのか」
「なに、ナニ、何。どう言う事?」
ぐるぐる自分にくっ付いている貝を探す。まだ髪に引っかかっているものがあるのか?
「言っていいのか?」
「もうっ、だから……もったいつけなくて言いなさいよ、言わないとわからないじゃない!」
本気でわからないヒカリの表情にリクはニヒルな笑みを見せながらこう言った。
「お前の胸ツルペタだよな」
「……」
ヒカリは一瞬で理解できず。自分の胸についている貝殻で出来たブラを見つめ、初めて気が付いた。
「なっ、ななっ⁉」
貝の方が……大きい。
あまりの現状にみるみる真っ赤になっていく顔。さらにリクが絶妙なタイミングでヒカリに付け加えた。
「ああ、その貝。黒いコンブに隠れるには丁度良いか……くくっ」
「なな、ぬなぁにいって……」
黒い昆布とは言わずもがな、ヒカリの髪の事だ。
「言いたい事ははっきり言ったから。じゃぁな」
わなわなと震えるヒカリと対照的に笑いをこらえるリクが黒い扉を開け、消えて行った。
おそらく消えたその後は――。
間違いなく大爆笑だろう。
「リクの……リクのぉ~~」
(ぷっつん)
ヒカリの頭の中から何かが切れた音がした。
「ばかぁーーーーー」
海中を揺るがすほど響き渡る叫び声で、近くで昼寝をしていたサメが飛び起きた。
あえての補足。普段は男の子と間違われるのでそんなに体のコンプレックスは無い。しかーし、皮肉が前提で言っているのが分かるのでいつも以上に気持ちの波がゆさぶられた結果です。
時と場による衝動ってありますよね?