King And Hearts~鍵を待つもの~【完結】 作:かすてらホチキス
~引っ越し~
新たな船『コスモ・ステラ』に乗り。マフの帰還とシドへの船の機能の報告もかねてトラヴァースタウンへやってきたヒカリ達。
マフは一旦合成ショップにモーグリ達にただいまと伝えた後、三人はシドのいる工場にやってきた。
「シド〜ただいま☆」
ヒカリはキメ顔で挨拶をした。なんてことはないいつも普通に挨拶するだけなのが飽きただけだ。
「嬢ちゃんと旦那、それとマフ。よく来たな!」
ヒカリの顔を見たとたんシドは作業の手を止め、何食わぬ顔でやってきた。
その動きと言ったらなんだか不自然だ。
「おかげさまで新しい船はとても助かったよ」
「ほーんと一時はどうなる事かと思っちゃった〜」
「私が届けにいった時。それはもう、とてもいいタイミングだったそうです」
「そうか。そりゃあよかった。エンジニア冥利に尽きるってこった!」
そう言うシドは何かいつもよりもそわそわしている。
「で、だな。早速だが……俺の自慢のアレの成果、聞きてぇな〜」
ニヤケ顔であさっての方を向いているシドに三人は『ずっとそれを待ってたんだ〜』としみじみ思った。
☆
小さくなる機能は結構使えるけど、いったいどんな仕組みで乗組員も小さくなっちゃうんだかありえないわ!
ワープ機能がとても役に立ったけど、まさかソラ達の船にはつけていないでしょうね⁉
(下手したらミッキー見つかるよ)
充実した機能にいろいろと好評、不評、疑問と焦り(?)を見せつつ報告をした後。できる限り回収したバラバラになったおもちゃのカレイドスターを元の姿に戻し、船に載せていたいろいろなモノはマフとシドの技術と知識と協力の下、無事取り出すことができた。
ヒカリの部屋にあった枕元の二冊のノートは見つけ次第、本人が取り出す事に。ちなみに新しい船になった時点では三冊目になっていた。
「よかったーどっこも変になってないみたいー♪」
ホラホラ見てみて♪とばかりに救出したノートの表紙を三人へ見せると――見せられた3人は思わず目を伏せた(汗)
「な、なによ。この反応……私、なんかマズイ事した?」
変なものでもあった?と表紙を見つめるヒカリ。
「いや見たら殺されるってマフからの伝言が……」
シドがマフを指差して言った。
「わ、私はただ、以前ミッキーさんがこれを抱えて倒れていた所を見ただけで……」
マフがミッキーを見て言った。
「僕は始めのページに書いてあった魔法の文章を読んで半日眠らされただけだって言ったんだけど」
最後にミッキーが大げさだなぁとばかりにシドとマフを見たが、どうやらヒカリの方に顔を向けられないようだ。
「べつに呪いの言葉とか書いていないわよ?」
「そうかい。でも、言い方によっては呪文集だけどな〜がはは」
あまり冗談には聞こえないジョークだった。
「むぅ……これは私の思い出の一つなの、それに、船があるだけでそれ以外は何もないなんて旅、現実的には無理でしょ?」
「だからって物が多すぎるのも考え物だけどな? 選別も良いが旅にはあまり効率的じゃねぇ」
「それも……そうだけど」
「ま、大方の大事なものは救出できたんだし、後は新しくそろえた方が良いじゃないか?」
「ミッキーは、それでもいい?」
ヒカリはミッキーに向かって振り返る。
長い間ミッキーはこの船と一緒に旅をしていた。
ヒカリよりも思い出がいっぱいのはずだ。
口を尖らせているヒカリに彼は少し迷うようにうなって――。
「僕は、手放してもかまわないよ」
ミッキーはいつもの口調で言った。落ち着いた彼の表情は今のヒカリのような未練など全くない。
ヒカリはふに落ちずにさらに口を尖らせてみるがミッキーは困ったように肩をすくめただけだった。
「船の管理者が言うのなら私は従うしか無いわ」
少しすねるような口ぶりのヒカリにミッキーは何も言わなかったが、ヒカリには彼の考えはもう解っていた。きっと思い出以前に時間の効率的な面を優先しただけの事だろう。
その考えにヒカリは同意しかねているだけだ。
「あとの整理は俺に任せろ。それに、集めたグミは俺が買い取ってやらぁ」
「助かるよシド」
「これが生業だからな、助かるどころかこれがなければ俺がとても困る」
「実はそれが狙いねシド?」
これ見よがしに釘を差すヒカリ。彼女はまだ不機嫌そうにしかし今度は悪びれたような顔に変わる。
「ふふ……そういうこった」
シドもヒカリのような表情に変わった。
今の二人の背景には『沢山のマニーの雨』がお似合いだ。
「二人共……何も悪いことはしていないだろ?」
黒い雰囲気のヒカリとシドにミッキーはなんだかこの二人のノリについていけない。
「一つ聞くけど。シドはグミの買い取りはおろか、船まで作って私たちギブアンドテイクになるの?」
いいタイミングでシドがヒカリのノリに同調したせいか、すっかり機嫌を直したヒカリがシドに聞いた。
「心配しなさんな、むしろ感謝しているくらいだ、こんなに大量のグミをかき集めてくるなんざ俺一人ではできない代物だからな」
「そう? 私はこのパーツおいしそうな素材にしか見えないけど」
「ちょいとそれは俺に言わせれば宝の持ち腐れだぜ?マニーを価値のない何かの固まりだと言っているのと同じ事だ」
「そこまで言うのなら、シドにはそうなのね。船作ってもらっちゃったからお礼がしたかったんだけど?」
「うーむ……ちょいとわがまま言うのなら珍しいレアパーツが入手できれば今後、ありがたいな」
「そっか、グミがシドには価値のある貴重なものなのね」
「ま、そういうこった」
「おーい、ヒカリ〜差し入れだよ〜」
「あ、ユフィだ」
聞き覚えのある声にさらりと言うヒカリ。
「なにが『あ、ユフィだ』なのよ! こっちについたなら顔くらい見せてよね!」
「いやぁ、色々大変だったからさ~ところでどうしてここに居るってわかったの?」
「マフから、聞いてな」
この質問はすねてるユフィからレオンとエアリスが引き継いだ。
「マフが一人で助けに行ったの、私一人で見送ってたの。二人とも、無事でよかった」
「ほ~んと、いい具合に外出中にひと騒動起こすんだから〜ユフィちゃんがせっかくヒカリに借りを作るチャンスだったのに〜」
「へー残念だったわね〜」
「何その態度、あたしがピンチの時は駆けつけてくれないくせに!」
「なにおぅ……ユフィは助けてもらうくらいのピンチってあるの?」
「当然!」
「どうせ、あの事だろう?」
「うんうん、あの事まだすねてるのね」
レオンとエアリスはあきれ顔。対するユフィは頬を膨らませる。
「もう~エアリスは協力しないんでしょ?だったら何も言わないでよ!」
「だって緊張するんだもの……」
ヒカリは何食わぬ顔でしれっと聞き流しているのをミッキーが不思議そうに見つめていた。
三人のうちで話される内容はなんだかあまり突っ込まない事にしておいて――。
なんだかんだともめ事はうやむやになり、三人は差し入れを持ってきてくれたのでみんなで夕食をとることに。
それをすませた頃にはトラヴァースタウンは夕闇から一番星が輝いていた。
「ヒカリ、あの『約束』わかってるわよね?」
「ユフィとの約束? あぁ、わかってますって〜」
「もぅー忘れちゃだめだかんね! あの男をぎゃふんと言わせるのよ。じゃぁね!」
「それじゃ、私たちは帰るね」
「困った時はお互い様だ、何かあったら力になる」
そう言ってユフィ、エアリス、最後にレオンが帰って行った。
「俺は明日にでもグミの整理を始めるから、残ったグミはそこらへんにでもおいてくれ。じゃぁ後はお二人さんでよろしく頼むぜ」
残ったシドはグミシップのガレージを閉めてレオン達と同様に三番街へ帰っていった。
「ところでヒカリ。さっきのユフィとの約束って何だい?」
「……それがね」
ヒカリが口ごもりながら話し出した。