King And Hearts~鍵を待つもの~【完結】   作:かすてらホチキス

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~変身の後~

「ただいまー」

 いつものようにヒカリはトラヴァースタウンからの散歩(もとい修行も含む)から帰ってきてミッキーの部屋に来た。

 前のミッキーの部屋は食材やグミが沢山の棚に陳列されていたが今回はその棚が本と不思議なアイテムに変わっただけでほぼ、前の部屋そのものだ。

「早かったね。マーリン様のところには行かなかったのかい?」

「えーと……ここに来たらすぐに向かわないといけないの?」

「新しい魔法が沢山できたから一応はレッスンしておさらいしないと、いつ使うかわからないだろ?」

「それはそうだけど、明日行くってことで」

 実際使える魔法って整理しないといきなりでは使えない。それが独学で編み出した魔法でさえも心の整理もとい、詠唱や魔法陣の発動など準備がないとすぐにはできないからだ。

「自分で作ったから、すぐには忘れないよ!」

「魔法のことに関して僕は何も指導はできないよ、僕も一応、魔法はまだ修行の身だからね」

「そうなんだ〜なんか意外だな。ミッキーが修行中て言うのも」

「どんなに修行を積んでも、強い敵に立ち向かう時はいつも気を引き締めなくてはと心がけているよ」

「それは同感だけどね」

 でも、いつも私と比べてレベルいくつなのかよくわからないミッキーが……なんか意外だ。

「僕が思うに、魔法の事に関しては、ヒカリはいいお手本になっているよ。属性の根源を見極め、一瞬で魔法陣を描き出し、最高の言葉を放つ――。独学という才能をのぞいても、君への魔法の興味の深さは僕には感心するところだから」

「えへへ……」

 なんだか照れくさくなってミッキーの部屋をぐるりと見渡す。そして、枕元の近くにある写真立てを見た。

「ねぇ、今まで気になっていたけど〜なんで王妃様の写真は人の姿じゃないの?」

「魔法と言えば王妃のホーリーもなかなかの物だけど――ん?」

 いきなりの質問に目を丸くするミッキー。

「ミッキー言ったよね。秘密はナシだって……だから聞きたいなぁ〜ってさ」

 ミッキーの表情は驚いた顔のままだ。

 この質問に触れるとこうなると、おおよそ予想はついていた。だけど今回ばかりは、秘密を話すと誓ったからには――ミッキーの口から直接聞きたい。

 ミッキーは王妃様と幸せそうに写る自分の写真をヒカリに渡す。

「コレが本来の僕の姿なんだけどね」

 写真に語るように目を伏せミッキーは言った。

「じゃぁなんで今は違う姿なの?」

「身を隠すため。それだけじゃダメかい?」

 それでもヒカリは好奇心のまま、容赦無くミッキーに問いかけた。

「それだけじゃ理由は足りてないよ。何で変わらないといけなかったの? どうやって変わったの?」

「断言はできないけどおそらく魔法でだろうね。ヒカリも変身魔法は遣っているよね?」

「むぅ~とけた所、見た事無いのに~」

「とても強力な魔法なんだ」

 わからないから聞く子供のように純粋な質問に、対するミッキーは青年の外見よりも大人らしい雰囲気を漂わせている。

「なんか、ミッキーが経験豊富な魔法使いのおじいさんみたいな事言ってるよ〜」

「…誰だい? それ(汗)」

 硬い表情が崩れたミッキー。そのおかげで場の雰囲気が和らいだ。

「マーリン様、この前の魔法の試験の時。ドッペルゲンガーに私、消されそうになったの」

「それは危ない。とても、強力な魔法だね」

 ミッキーがやっと笑った。

 やっぱ、こういう事は気になったらあれこれ話し合うもモノだよね。それでも先ほどの質問の答えになんだかしっくりこないヒカリ。

「じゃぁ、う〜ん。誰がかけたの? ミッキーは魔法修行中でしょ?」

 さっきこぼした褒め言葉を利用していくヒカリ。ミッキーは苦笑い。

「実は――良く覚えていないんだ」

「えぇっ⁉」

 意外な発見だった。むしろあまり有力な発見ではない。

「キミもどうやって自分がいきなり魔法を使えたのか解らないだろ?」

「それは、一時の感情でドッカーン! みたいにくるのだけど。正直に言えば、解らない、かも?」

「僕は気がついたらこの姿になっていたんだ」

「何でさ? だってさっき身を隠すためって言ってたじゃん!」

「それが、姿が変わってから考えた理由、もとい言い訳……になるのかな?」

「言い訳ねぇ~」

 なんだか、もうどうでも良くなってきた。いやいや、折角ココまで話の流れが来たんだから!

「じゃぁ、いつ変わっちゃったの?」

「えーと、ヒカリの知る所で言えば、君のいた星が消えるほんの少し前の話だね」

「それって全然最近じゃない⁉」

「僕だっていきなりだったし始めは驚いたさ、目線も違うし動きも変わってくるし。なにより服が一番困って」

「服……って、変わってしまった時にはいったいどうしたのよ⁉」

 まさか全裸?

「グーフィの服を拝借したんだ。さすがに寸法は合わなかったけど」

「……なるほど」

 なんだか安堵するヒカリ。

「あとは、これもちゃんと言っておかないといけないね」

 いきなりミッキーはまっすぐヒカリに向き直る。

「なにさ、改まって……隠し事は無しでしょ?」

 発言をためらうミッキーに促すヒカリ。

「うん、そうだった……ね」

 向き直ったは良いものの、目線をそらすミッキーにヒカリは待ちきれなくなって答えを探す。

「王妃様に見つかったけど実はミッキーだと気づいてくれなくてショック! だとか?」

「そんなことは……! ない、と思いたいなぁ」

「実はお洋服拝借する時、服はあっても下着が無かったとか?」

「いいや、さすがに自前のでなんとかしたさ」

「実はミッキーの本当の体は別のところにあって、幽体離脱して別の人に乗り移ってしまった!……って?」

「……」

「あれっ?」

 ミッキーの表情は驚いた顔のまま凍り付いていた。

「どうして……そこで何も、言わないのかな?」

 とにかく明るく振る舞うヒカリ。

 この沈黙は、なんだか逆に不安になってくる。

 

「……はは、はははっ……あははっ」

「あ、えっ……ミッキー?」

 今度は肩をふるわせて笑い出すミッキー。訳の分からないヒカリは恐怖でいっぱいだ。

「ど、どうしよう〜〜ミッキーが壊れたぁ〜」

 例えるのなら高らかに笑うライバルに驚愕する少女漫画さながらの劇画表情のヒカリ。

「ふふっ、ごめんごめん。あまりにも……その例えがしっくり来ててさ。そっか、ゆうたい……はは」

 まだ笑うかこの青年は。半分あきれるヒカリ。

「あの〜私一人置いてけぼりで不愉快なんですけど、ちゃんときちんと簡潔に答えてください~」

「あ〜もうちょっと待って。今落ち着くから……」

「もう! 気になる〜」

「ふふっ……ええとね、何から話せば良いのか」

「とにかくその間の笑いを引っ込めないと……私がどうにかするわよ(怒)」

 あきれるを通り越して不愉快に達したヒカリ。

「わ、わかった……ええと」

 我慢の限界のヒカリに後ろから背後を攻撃させられそうな直前、息せき切って言い出した第一声は。

「結論からいえば今の体は本来の『ミッキー』じゃないんだ」

「じゃぁ誰なの? 今のミッキーは?」

 不機嫌に間髪入れるヒカリの言葉に背筋をピンと正すミッキー。

「それがわからない、だけどわかったことが一つあるんだ」

「何が?」

 ミッキーはそこで一瞬ためらったが、ヒカリのまっすぐな顔を見て決心したのかゆっくりと目を閉じて静かに言った。

 

「今の、僕の体は……から来た」

「⁉」

ヒカリの表情が、騒がしかった空気が、一瞬にして水を打ったように静まり返った。

 

「……も、もう一度、言って。お願い」

 さっきまで力のこもったヒカリの声が、今は言葉を忘れたようにかすれている。

 ピンと背筋をまっすぐにしているミッキーの顔をおそるおそる見上げるヒカリ。

 彼女の怒らせていた肩はいつの間にかどこかへ消えていた。

 まっすぐ彼方を見つめるミッキーに言葉を選ぶように、遠慮がちにヒカリが聞いた。

「ねぇ、もう一回だけ言って。ちゃんと聞きたい」

ミッキーはヒカリに向き直り、戸惑う彼女に今度はまっすぐに言った。

 

「僕の体は闇の世界から来たんだ」

 

 

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