King And Hearts~鍵を待つもの~【完結】   作:かすてらホチキス

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~出会った時~

 

 あまりに衝撃的な状況はいきなり解除された。

 やっと抱きしめられていた腕がとかれたのでヒカリはほっとする。それでも体がだるいのでヒカリはベッドに寝転がっている状態だった。

「私は、全く記憶にない事でしたので――ぶっちゃけ、いつなら話してくれる?」

 単刀直入、単純明快にことを明らかにしたい気持ちでいるのだが、ミッキーは首を振った。

「今日とか明日では、無理だね」

 いつになく落ち込んだ表情のミッキー。

 そんなに悪い事ばかりだったのかな?

 それとも何か選択に悩んでいるのかな?

「長引くと気になるなぁ~」

 ヒカリは不満そうに言ったが、よくも悪くもなんだか今すぐに答えは欲しくないような気分だ。

「すまない、今は謝ることしか言えない」

「ううん、ありがとう。それで、何か手がかりは解ったの?」

「……」

 ヒカリの質問に無言のミッキー。

 それが自分にとって良い運命か悪い前兆か、暗黙の雲に覆われた占い結果のように渋るミッキーにヒカリはため息をついた。

 先ほど、彼があんなに取り乱していたんだ。ここは私が折れるしかない。

「わかったわよ。コロシアムの試合が近いからそれが終わったら聞かせて」

「うん、必ず」

「そのかわり私のお願いは全力で支援してよね!」

「もちろん、喜んで!」

 ちょっと誇張して言ってみたけど、ミッキーの返答が変に気合い入っているような気がする。

「あとは、私が眠れるまでココで何か話をして」

「いきなりだなぁ~」

「今一番聞きたいことが聞けないままなんて眠れないに決まってるでしょ」

「その言い分はごもっとも。そうだなぁ~」

 ミッキーはしばらく考え込む。

「ヒカリがコロシアムの試合中に観客席に居なかったのは――」

「それは前に聞いた、召還の三つのワールドの話でしょ?」

 即答で却下。

「レオンとユフィが前回の試合中に君の事話していたとか」

「それはユフィが話してくれた。私の事王子様って言ってた事よね」

 またもや却下。

「ヒカリがトラヴァースでさらわれた時にマフがグミシップに無理矢理突っ込んできて」

「その一部始終は前にマフから聞いた。色々迷惑かけてしまいましたってミッキーに言ってちょうだいって頼まれたよ」

 とにかく却下。

「う~~ん」

 頭を抱えるミッキーにヒカリは容赦ない。

「う~ん。あ、そうだ。僕が何かのきっかけで突然倒れた時があったよね」

「うん。私が呪いを解く方法を探しに一人で別のワールドに言った時の事ね。結局、原因も何も解らなかったけどあれから大丈夫?」

 ヒカリは寝転がったまま天井を眺めている。

 厳しい却下の言葉が無いのでミッキーは安心して話を続ける。

「あの時から、僕の体に何か異変が起こっていると思えてしょうがないんだ」

「それはさっきの『私とのお話』ではわからなかったんだ。もしかして、まだ苦しい?」

 ヒカリが遠慮がちに聞くとミッキーは首を横に振って微笑んだ。

「大丈夫、苦しくないよ。むしろあの後から何も無くて逆に不安になっているだけなのかも」

「じゃあその異変って何?」

「なんと言うか――何か今まであった重りが消えたような」

「おもり?」

「逆に体がすぅと軽くなったというか……」

「?」

「とにかく、悪い気はしていなかったから、僕は今まで気づかなかったんだ」

「あの時ね、私がミッキーの横であたふたしていた時にプルートがいたの。そんでミッキーのほっぺをペロってなめたら……直ったみたい」

 今更だけどあの時も不思議な光景だったなぁ。

「プルートが闇の力を打ち消したってことかい?」

「うん、きっと間違いないよ。ミッキーが私と始めて出会った時、私もとても苦しかった。その時にもプルートがいたよね?」

「ああ、あの時は驚いたよ、お城に居たはずのプルートが突然トラヴァースタウンにやってきて、引っ張られるまま沢山のハートレスを一掃して見てみれば君が倒れていたからね」

「そんでその後、ミッキーが声をかけてくれた時。私、意識がなくなっちゃってその直前にペロって」

「うーん。よく覚えていないけど。プルートは一度なつくと誰でもなめてくるから」

 ミッキーは机のイスに座って窓の外を眺めている。ヒカリはベッドの上でごろんと転がって同じく窓を眺める。

 遠くでも見えるトラヴァースの夜の明かりは明日がやって来るために、しだいに所どころ明かりが消えていく。

「今思えば、私の中の闇の魔法が発動しても、おかしくない状況だったと思うんだ」

「でも、君は魔法をまだ覚えていなかった」

「ミッキーとマーリン様に出会うまで使えるなんて思ってもいなかったから」

 知らない場所に迷い込み、一国の王様に助けられ、おまけに自分は魔法が使えるなんて――なんというかおとぎ話の世界に放り込まれた気分。

 望んではいなかった。だけど拒んではいなかった。むしろ、どんと来い!自分の今のおかれた状況に、結構楽しんで生活している事は確かだ。

 でも、正直に言うと望む望まないで言えば後者。

私は自分ではきっと島を離れようとは思わなかった。今もそれは変わらない。魔法の力も、正直使っていてちょっと恐い。

 

「私って、臆病なのかな」

「ヒカリが、臆病?」

 不思議そうにミッキーが聞き返す。思わず声に出していたようだ。

「あ、ゴメン魔法の事。何にもわからないのに使えるなんてさ、もうちょっと控えめにしなきゃかなって思ってみたり?」

 

「魔法を使わないヒカリなんて、なんか――らしくないよ?」

 

 真顔で言ってるよこの人!

「今まで使わないで生きてきた私を何だと思っているのよ?」

「う~ん。なにか気迫のある女の子?」

 気迫って――女の子って言ってるわりに魅力が無いのにもほどがある。

「使えなくても、魔法を使える予兆はしていたはずだよ? ロックセプターという杖を手にしてから」

「あ、そっか。叩いた時に可愛いく光るわね、でもまさかあれが魔法の力だったなんて」

「魔法は魔法に関わる特別なモノを使う事で目に見える力が発動するものなんだ。あとは知識と実践次第で誰にでも使えるものだからね」

「なんだかとても簡単そうに言うわね」

「普段は目に見えないだけで、実は案外いろんな状況次第で魔法のきっかけになるんだよ」

 普段は目に見えない不思議な力。何かのきっかけなんて言われても、そう簡単にはいかないよ。

「闇の魔法も――きっかけ次第だったんだよね」

「おそらくはね」

 再び考える二人。ヒカリは別の事がよぎった。

 

「……ってか、プルートはどこよ⁉」

 

 ガバッと飛び起きるヒカリにミッキーがびっくりする。さっきまでゴロゴロと寝ていたので、もう体力の方は回復してきた。

「それは僕も解らない。ドナルドとグーフィと一緒についてきてしまったみたいだから」

「プルートって、ただの犬、だよね?」

「お城にいる僕の、しゃべれないけど頼もしい親友の一人だよ」

「と、するとプルートも何かのきっかけで魔法が使えるようになったのかな?」

「こればかりは本人が出てきて、マーリン様に聞いてみないと何とも言えないけどね」

「それは、とても困難ね」

 神出鬼没な上に行動が解らないなんて厄介だ。

「そういえばプルートには僕が城を出る直前、唯一確実に知る情報を手紙に書いて託したんだ」

「神出鬼没なプルートがよく渡してくれたわね」

「いざという時には、とても賢い子だよ」

「内容は?」

「お師匠様から昔から聞かされていた情報さ。世界を救うための唯一の『鍵』キーブレードを持つ少年と同行してこの世界を救ってほしいってね」

ヒカリはうさんくさそうな表情に変わる。

「それって、ソラのこと? ちゃんと代わりになってる~?」

「それは、ヒカリも見ての通りだろ?」

「まぁ、悪くはないわね」

「良い仲間だって素直に認めないんだね?」

「だって、連携がなってないんだもの。ちゃんと周りを見てほしいわね」

(連携とかヒカリ自身が言って良いものか)

「手厳しいな~」

「じゃぁミッキーだったらどう思うの?」

「僕は二人とは長い事一緒にいるけど。まぁ、きっと僕もソラみたいになるだろうな」

「一緒に戦いたいって思う?」

「今は、ヒカリがいるから僕はそれでいいよ」

「……なんか照れるな」

「なんにせよ、仲間と一緒に戦えるのはとても心強いよ」

「ねぇ……わたし足手まといじゃなかった?」

「ううん、城を飛び出した時、僕は何も解らないまま手がかりを探していたんだ。ヒカリと出会う前まではね」

「それって私の所に何か手がかり落ちてたの?」

「君と出会う直前、僕は無意識にキーブレードを手にしてハートレスと戦っていたんだ」

「それってほんとに私と出会った時なの?」

「僕はそう思っているよ。あの時、姿が変わってしまい本来あったはずのキーブレードが使えなくなっていたんだ。そのときの僕は本当に弱かった。だから、使いこなせるまで君に頼ってしまっていた所があった」

「私、初めて出会った時は弱かったよ?」

 頼ったのは私の方なんだけど?

 むしろ見事な動きに圧倒されていたし。

(あれ? ミッキー、今なんって言った?)

「ミッキーあの頃キーブレード使いこなしてなかったの⁉」

「何だろうね? マフに言わせれば僕のキーブレードは不完全な武器だって言うけど。手になじまないところからしてやっぱり僕のものじゃないみたいだ。この体の持ち主の物なのかな?」

 それもこれもヒカリの知らない新しい発見だ。やっぱり、さっきまで何があったのか早く聞きたい。

 

「なんか、知りたい事と知らない事がごちゃまぜ」

 

ばふっと音を立ててふたたびベッドに倒れ込む。

(なんか、何から頭に詰め込んでいけば良いのか)

 

「それに、あの時は突然倒れた時、もう僕は終わりかと思ったんだ」

「私も、ミッキーと初めて出会ったとき、助けてくれなかったらおしまいだったと思うよ……」

 あの時の状況と言ったら、今でも考えるだけで恐い。レベル1で武器なし、大多数を相手なんてどこの無謀な挑戦ですか。

 

 二人はぼんやりと天井を眺め無言でいた。

 

「私もプルートみたいな魔法、覚えたいな――」

 

「ん? 何か言ったかい?」

「……」

しばらく答えを待っているとスースーと寝息が聞こえた。

 

「僕も君の力になれる方法を探してみるよ」

そう言ってミッキーはヒカリを起こさないようにゆっくりと立ち上がり部屋のドアを閉めた。

 

 

 

King And Hearts ~鍵を待つもの~ 4へ続く

 

 

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