King And Hearts~鍵を待つもの~【完結】 作:かすてらホチキス
コロシアムのエントリーを済ませたソラ、ドナルド、グーフィ。もう何回か優勝をしてきているので出番があるのはもう少し先だった。
そんなわけなのでただいま出演者席でのんびりと試合を眺めている。
「コロシアムでの試合もう結構出てるよね。アッヒョ! ヘラクレスにもこの前ほめてもらったしね」
「それに今回は大きな大会なんだってな! レオンもクラウドも出るみたいだし」
「グワ、はじまるぞ!」
晴れ渡る空の下。
石造りの壇上。
そこには二人が立っている。
「あれって……」
「ユフィとヒカリ‼」
思わず三人の声が被った
☆
「さて、ここまで叩くだけで勝ち進んできましたけど、そろそろ大変ですよユフィ?」
ヒカリの見つめる先には大きな丸い巨体と青い空飛ぶ箒。ラージボディ二体とブルーノクターン三体のチーム名『スノーマンズ』
「ま、何とかなるでしょ」
「えええ~」
楽観的なユフィにヒカリの声は始まりの合図で消えてしまった。
ユフィの手裏剣三連続は青いほうきを狙っていた。しかし丸い巨体がそれを阻む。それを見たユフィが。
「なんか無理、ヒカリは大きいの何とかして!」
「え~」
そう言いつつもヒカリは大した不満もなく、しょうがないな~とつぶやくとラージボディへ狙いをつける。
ヒカリの杖。ロックセプターはいつもの形でなかった。六角形の形が六芒星になった星の形をしている。ヒカリはお祈りのように両手で垂直に掲げ、やがて杖を突き出した。
「ウィッシュスター!」
唱えると六個の大小さまざまな星がヒカリの周りに輝き現れた。
一つずつ星が様々な緩急の速度で流れていく。それぞれの軌跡に合わせてその場で星を操るように杖を振るヒカリ。
うまく星を捕まえて成功すると勢いが増しダメージが大きい。逆に軌跡に追いつかず杖を振るタイミングを間違うと輝く星はよろよろと当たった。
たまにヒカリの周りで一回転する星は杖の中に宿り大きな力となって相手へと繰り出された。
見た感じ踊っているようにしか見えないが、他のハートレスの攻撃を避けながらなのでうまく当てにくい。
「あ~狙いつけずらい!」
「ねぇさっきからその攻撃なんかしょぼくない?」
「ユフィには言われたくない!」
「なによ。私には秘密兵器があるんですからね!」
☆
「アッヒョ、なんか苦戦してるね」
「また変な魔法使ってる」
「どっちも飛び道具使ってて、なんかこう!一気に接近して戦えないのかな?」
三人も思わず身を乗り出して彼女たちを応援していた。
☆
ユフィがあちこちにいたブルーノクターンを退治したところ。ヒカリは三度目のウィッシュスターの挑戦をしていた。
1投目ラージボディのタックルを避けて成功。
2投目その背後に星をたたきつけて成功。
3投目攻撃に注意しながら成功。
4投目体当たりを仕掛けてくるが成功。
5投目狙いを変更して前方へ振り下ろし成功。
6投目攻撃をかわし成功。
「よし、成功した!」
ここでセプターが輝いた。
「いでよビックスター!」
ヒカリが大きく円を描くと頭上から特大の六芒星の隕石! 空中で砕け星の形の雨あられが降ってきた。さすがに頑丈なハートレスも量に押しつぶされる。
ヒカリの攻撃がフィニッシュとなり、盤上の相手はすっかり消えていた。
ヒカリ&ユフィ勝利。
「ところでヒカリ、あれって魔法?」
「え、違うよセプターの通常攻撃だよ」
☆
次も連戦の二人は観客席には行かずそのまま隣の部屋で待機をしていた。
大きな大会なだけあって結構な待ち時間である。
ユフィは退屈そうに試合を眺め早く終わらないかなーとぶつぶつ言っていた。
「次は何にしようかな♪」
「楽しそうだねヒカリ」
セプターのロケットを吟味するヒカリにユフィではない誰かが声をかけた。
「あ、ミッキー」
ミッキーという単語に暇な空気をまとっていたユフィは思考が停止した。
(ヒカリ、今なんて言った⁉)
出場すれば優勝候補のその名を知らない人はもはやこの試合にはいないであろう。
その彼が初出場のしかも二人組での出場の少女に声をかけているのである。
レオンと一緒に試合はしたことがある、二人がかりだったのに負けた。しかも負けた後からなんか女の子から人気がある。
そのミッキーがすぐ近くに!
ユフィは目の前の試合がすぐ終わらないでと願い
耳をダンボのように大きくして隣の会話を聞いていた。
「次はこっちとこっちどっちがいいと思う?」
「そうだな、こっちは僕は見たことないな」
「わっかりました! それではリクエストにお答えしますよ!」
「うん、楽しみにしてる」
それだけ言って会話はなくなった。どうやら観客席へ帰っていったようだ。
(出番はまだ先だっていうのにわざわざヒカリに会いに来たの?)
ユフィ、気になりすぎてすぐヒカリへ尋問。
「ちょ、ちょっと! 王子様となに話しちゃってたの楽しそうっだったね?」
「うん、ほんと。私よりも」
「と、ところでさ、ヒカリってミッキーと、し、初対面で随分と仲良いね」
「あ、言ってなかったか。私と彼は一緒に旅してる仲だよ?」
「え? 旅って……いままで一緒にいたってこと? うっそ~その割に一緒にいたの見たことないんだけど」
「基本はね、別行動なの。ユフィの近くにもいるでしょう?」
「あ、なるほど」
少し放心しているユフィに不思議そうな顔のヒカリ。
「大丈夫? 有名人にでも会ったような顔してるけど?」
「だ、だってさ、ここでは一応HEROって言葉があるんだよ! それに一番近いのがアイツでさ。な、なんて言うか緊張するじゃない!」
「そ、そうなんだ~」
あたふたするユフィの一面が初めて見れてそれはそれで新鮮なんだけど、ここまできてソラ以外の知人にHEROと言われたことがなかったのでなんだか複雑な気分だ。
これで有名人が私でした~なんてバレたらどうしような発言だけど、一緒にいるけど別行動なのって言葉はあながち間違いではない。
そう思いつつもリクエストにお答えするべく次の試合に向かうヒカリであった。
☆
次の相手はアーマー系の胴体と腕それから足の代わりのソルジャー。チーム名『ポーンアーマー』
「ここは歩兵から倒していわよ、ヒカリ?」
振り返るユフィはヒカリのロックセプターを見て唖然としている。
「なにそれ?」
「名前のことを言えばクレイジーティータイム」
さっきの星の杖もインパクトがあったがこっちはなんか前衛的だ。丸いわっかの部分が緑のリースのようになっていてティーカップとトランプとクッキーとドギツイ色のきのこがあふれんばかりに緑の部分が見えないくらいちりばめられている杖。
「でりゃ!」
ヒカリがソルジャーをたたくと見た目に反してティーカップがカチャンと鳴るような優雅な音が聞こえた。
そして、そのリースの真ん中にぶら下がっているロケットがなにやらスロットのようにぐるぐる回っている。
しばらくしてスロットが止まった。
『ダイヤの3』
わっかの中からマニーが出てきた。
「なにこれ」
「おこづかいかな?」
その後もソルジャーを叩きまくるヒカリ。
『クラブの7』
ティーカップが七個発射された。
物理攻撃のようだ。
『ハートの2』
クッキーが二枚飛び出した。
ユフィの口に収まった。
『ダイヤのJ』
1100マニー飛び出した。
ユフィのマニー袋に収まった。
「後出てないのなに?」
「なんかやりづらい! あとユフィだけずるい!」
ヒカリは真面目に敵を倒しているのにユフィは後方支援なもんで後ろから何かワクワクして見てるだけだ。
「次は大きなのだしてほしいなスペードのエースとかジョーカーはないの?」
「それよりアーマーの胴体が本格的に本気出してきてるんですけど!」
「もぅしょうがないなぁちょっと本気出しちゃおっかな~」
ユフィは大きな手裏剣を出した。体当たりが迫る中一撃をお見舞いするヒカリ。
スロットもぐるぐる回りだす。
右腕がヒカリの背後にいるがお見通し、ユフィが投げた一撃で消えてなくなった。
スロットはまだ止まってない。
胴体の砲撃がやってくる。ヒカリがこれを回避したところでスロットが止まった。
『スペードのK』
「出たよユフィ! スペードのKだけど」
杖の中から現れたのは、十三枚のトランプの切っ先がアーマーへと鋭く舞う!
「結構強いわね手裏剣みたい!」
「見てないでちゃんと攻撃してくださいユフィさん!」
☆
「なんだか楽しそうだね」
「これも魔法じゃないっていうの?」
「クッキー食べたいな」
グーフィ、ドナルド、ソラが試合を楽しそうに眺める。
観客席は彼女たちの活躍で次第に賑わっていた。
☆
左腕も倒し終わり、残りは胴体だけ。
体当たりをかわすたびに攻撃をこころみるが失敗をする。数回攻撃を叩き込みやっとスロットが回った。
「ところで少し攻撃かすったからハートのKとか出してくれない?」
「私はユフィ専属の手品師ですか!」
「魔法使いやめて手品師に転職すれば?」
「言われてみればどっちもマジシャンですけど!」
この会話は周りの観客にもウケた。
脳内フルスロットルなボケに不本意ながらも体も軽快になる。
そんな中、スロットは止まった。
『ハートのQ』
「やった~回復ほぼマックス!」
ユフィが杖の中を覗きこもうとしたら――。
「私に逆らう者の首をおはね‼」
はるか時空にご健在であろう女王の怒声が飛び出した! それは衝撃波となり前方にいる障害物を貫いた。
さっきまで覗いていたユフィは何か本能的に間一髪でそれをよけている。
ビリビリと杖を伝う衝撃波。風にあおられる傘のように振りほどかれないようにヒカリは夢中でそれを抑えた。
さっきまでの楽しそうな雰囲気から一変。
その数秒の衝撃と言ったら盤上がひっくり返るような思いだ。
「おはねっ!おはねっおはね……」
やまびこがこだまする。
直撃したハートレスは衝撃波の威力で主砲を貫いてやまびこのあたりでガランっと動かなくなった。
「ハートの、クイーンは、攻撃特化……」
あまりの衝撃に持つ手が少し震えているヒカリ。
鳩が豆鉄砲食らったような顔と言っていい。
むしろハートなんだから鳩が出てきてくれたほうがまだかわいらしい。
「クレイジーね……」
あきれがちにユフィが片手を挙げた。
気をとりなおしてヒカリはユフィに手を合わせる。
ヒカリ&ユフィ勝利。
勝利のポーズはハイタッチ!
振り返ったユフィが言った。
「あ、でも面白いからあと一戦だけそれ使ってよ、マニー稼ぎたいな」
「さすがにこれ以上、上位戦ではいや!」
ふんと鼻息荒くすねる後ろ姿のヒカリにユフィはご 機嫌を取ろうと小走りに寄り添た。ヒカリはそんなユフィを引きはがすように盤上から走り去る。
観客たちはそんなコミカルな彼女たちに声援を送る。
気を張っていた初めは気が付かなかったが勝利の後、緊張が解かれたこの瞬間がとても心地よいと思った。
まだ連戦だ。ハイタッチしてもおさまらない腕のしびれを払うことに専念するヒカリだった。