King And Hearts~鍵を待つもの~【完結】   作:かすてらホチキス

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~今とあの時~

 

 連戦に連戦を重ねたヒカリ&ユフィ。

 お次はソラ、ドナルド、グーフィ!

「あれ?クッキーでる杖じゃないの?」

「さすがにもう遊びは終わり!」

 ソラの落胆した様子にヒカリは残念でしたとばかりに自身の武器を構える。

 ヒカリの武器はいつものロックセプターだった。

 開始の合図とともにユフィはドナルドへ、グーフィがドナルドのフォローに入るヒカリはソラへ向かった。

(さぁ、思い出せソラ!)

 そう願いを込めて一撃を打ち込む!

 と、フェイントをかませ、ソラの打ち込みをかわし背後をとる。

 大ダメージには至らないがいつもの通常三連コンボはきれいに決まった。

 綺麗な連撃にソラは飛ばされ、ばたりと倒れた。

 ちょうどユフィが側転してヒカリの後ろに降り立ち二人はいつのまに決めていたのか、派手なポーズをする。

「降参するなら今のうちだよ♪」

 ヒカリとユフィが肩を合わせて楽しそうに高らかに宣言した。

 観客席からは歓声が上がる!

「はーい、こっちこっち!」

 ユフィはすぐにドナルドめがけて手裏剣を投げて離脱。ヒカリはドナルドとグーフィをユフィに任せソラを見ている。

「フェイントかよ~そんなの前は使わなかったじゃん!」

「ふふん、私も日々成長しているのです!」

 顔だけ上げるソラ。記憶が戻って少し混乱しているのか、結構効いたらしい。

「ん、でもなんでさ、ねぇちゃんのこと今まで思い出せなかったのかな?」

「ま、もう慣れたけどね」

 通常会話のように答えるヒカリにソラはまじかよとちょっと落胆する。

「……なんかごめん」

 顔を伏せている弟にヒカリは少しこそばゆくなった。

「べ、べつにいいよ。私もソラも元気でいるなら」

「そっか、ならいいのか」

ゴロンと仰向けになるソラ。

ようし! と一言気合を入れ飛び起きた。

「それじゃ今までの成果見せてもらわないとな!」

「のぞむところっ!」

 ソラは魔法を繰り出す。少し威力が強いのでファイラだ。ヒカリは微笑しながら自身の武器で払った。かすめた熱気が杖に帯びた冷気で中和される。

「ふん、効くまでもないわ!」

 いつもより2割増しで不敵な笑みをたたえるヒカリにしまったと言わんばかりにたじろぐソラ。

「あ、そういえばねぇちゃんはとんでもない魔法使うんだった……!」

「そうよ、何か見たいのある? 腕によりをかけて披露するわよ!」

「何も見たくないよ! こうなったら技で……」

 ソラの体が輝きだし、一瞬で見えなくなる。ヒカリはバリアを張り巡らせ通らなかった。その後ヒカリに向かってきたグーフィのトルネード攻撃もろとも跳ね返りソラは巻き込まれた。

「なんだよその魔法~魔法攻撃以外も跳ね返すのかよ!」

 悔しそうにぼやく。

「どんな技も潜在能力なのよ。微量でも魔法の力が働いているのはわからないの?」

「ううっ、なんかすごく専門家っぽくなってる」

「日々成長ですよ!」

 不動なまでに完璧にダメージが通らない。ユフィといいヒカリといいさっきまで見せていたバトルは本当に遊びだったようだ。

「そんじゃこっちからしかけるよ!」

 遊びは終わりと言わんばかりに振り上げる杖にソラは大声で止めた。

「ちょっとまった!」

「何よ?」

 

「この前も聞くの忘れてたけど、なんで姉ちゃんはここにいるんだ?」

「ずいぶん昔みたいに言ってるみたいだけど、あのころとは状況が違ったの。あとここにいるのはユフィにお願いされただけ」

「カイリとリクのことは?」

「知ってる、むしろリクは少しだけど会ったじゃないクジラのおなかの中で」

「あ、そうだった。あとさ、俺だけ姉ちゃんの記憶が戻ってるの?」

「それは聞くまでもないわ。だって……」

「だって?」

 

「ソラはまた忘れるから」

 

 泣きそうな顔でヒカリは渾身の一撃を放った。

『エアロバスター!』

 盤上の端から端へ風が吹き荒れ四方からやってきた風の刃は合体し盤上の三人が吹き飛ばされた。

 風に飛ばされ合流した竜巻で三人が動かないことを確認し、ヒカリは優しくロックセプターをソラへこつんと傾けた。

「島に戻るまで、私はこのままでいいの」

 こんな得体の知らない力の私。

 闇の魔法を使う別の私。

 私が島にいた記憶を持たないソラとリク。ちゃんと島に戻って今まで通り生活できるのかはわからない。何が正解で何が間違いなのか正直、今もわからない。でも私はなにもかも解決することができたら島に戻りたい。

 

 それまでは知らない女の子でいいの。

 

「ヒカリやったね! って何泣いてるの?」

「ううん、目にゴミが入っちゃって」

「ああ、さっきの風か、砂埃すごかったよ」

「砂は呼んでないけどね」

「ま、結果オーライ、せーの!」

 ユフィの掛け声でヒカリは輝く魔法を空に放ちユフィが手裏剣でその魔法を割った。

 魔法がはじけ花火のようにきらきらとした粉が舞い降りる。その下でユフィとヒカリが勝利のポーズを決めた。

 

 

 決めポーズの二人を ミッキーとクラウド、レオンが観客席で見ている。

「彼女たちのことちゃんと本気で戦いなよ?」

 王子様口調で言う王様はいつもの調子の彼そのものだ。

「それは俺が負けるとでも言いたいのか?」

「俺たちだろ? しかも、ユフィは俺には勝てない。秘策があるとすればヒカリの魔法に頼ることになるが」

 ツンケンしてるように聞こえるのは次のヒカリたちの試合相手がクラウド&レオンだからだ。

 それでも ミッキーは苦笑しながらちょっと違うんだけどねと言いたそうに付け加えた。

「君たち、戦いの弱点より、女の子の強さを感じたことはないだろ? それも気をつけることだね」

 訳が分からないとばかりに目の前の青年を見る。

そしてレオンは驚く。よく見たらソラくらいの少年だと思っていた彼はいつもより大人びている。それにたった今気が付いた。

 そんな目の前にいるミッキーはちょっと考えて「ああ、そうだ」と手を打って自分を指刺した。

「ちなみに、みんなには内緒だけど、『本当』の僕は女の子だよ?」

「なっ……貴様、今、なんと⁉」

 動揺するレオン。

「何故そこで言うんだ ミッキー」

 怪訝な顔のクラウド。

 二人の表情を見て可愛くウインクする王子様は実にチャーミング。

「何事も気をつけなきゃいけないってことだよ魅力ある女の子には特にね」

 ミッキーは「次僕の番だから」と言って控室に向かった。

「クラウド! 貴様は知っていたのか⁉」

「まぁな、最後に戦う相手がアイツとは限らないがな」

「まて、一体どういうことだ? 出来ればちゃんと教えてくれないか?」

「……アイツは偽物で本物はすぐそばにいるってところだ。本物はきっと最後に出てくる」

「なるほど、わからん」

 気になる案件だったが試合中の雑念は持ち込むのはきっぱりとあきらめ。これ以上の詮索は無意味だと悟った。その分、試合後にちゃんと本人かクラウドのどちらかに聞こうと心に留めたレオンだった。

 

 

 連戦もここでしばらくないので知り合いだからとソラドナルドグーフィを医務室へ運ぶユフィとヒカリ。

「ところでなんでケアル使わなかったの?」

 医務室に運んだところで目覚めたソラにヒカリが聞いた。一応ちゃんと自分のことを忘れているかチェックも兼ねている。

「使ったよ! グーフィにだけど……」

「そっかさっき一緒に攻撃してきたのはそういうことだったのね」

 それでグーフィが加勢してきたのか。

 バリアで一緒に飛ばされたけど。

「もっと強力なケアルにしないとな~」

「ソラ、一応言っておくけどケアルの上位版はケアルラだよ」

「ヒカリは知ってるの?」

「知ってるというか、参考書を読んだだけだけど」

「使えるの?」

「使えない」

「?」

 首を傾けるソラ。

「ヒカリ、回復魔法はないの?」

「前に使ったじゃんオーシャンケアル」

「あ、エーテルも飲んだように回復するやつ」

「全快するからプチエリクサーと言ってほしいな」

「その魔法は俺も使えるかな?」

「たぶん、無理」

「?」

 さらに難しい顔になるソラ。その後難しい顔をして頭をかきむしる。

「なんなんだよヒカリって~すごい魔法ばかりなのに教えられないのかよ~」

「うーん……さぁね? 無意識に使うから教えられる魔法は何もないわ」

「なんだよケチ!」

「ケチではないよ!無理なものは無理!」

「ヒカリって魔法の天才というよりかは天性の才能ってかんじだよね」

「あ、ドナルドもういいの?」

 ソラとの会話は無意味だと感じヒカリはドナルドに振った。

「もう大丈夫。グーフィはまだみたいだけど」

「そっか」

「マーリン様と会ってからヒカリのこと聞いたんだ。いちおう僕が兄弟子になるのかな」

 少しすました顔のドナルド。ヒカリは察して立ち上がり、姿勢を正してお辞儀をする。

「そっか、あらためましてドナルドよろしくね。教わるというか私は勝手に魔法作ってるから厳密には違うけど」

「まぁね、負けた後にこう挨拶されるのもちょっと僕の面目ないけど」

 思わずヒカリはソラと顔を見合わせた。いつもはやれ「目上の存在はもっと敬え」とか「苦しゅうない近こう寄れ」みたいにうるさいくらいにわめくはずなのだが、試合に負けた後だったからか、しょんぼりしている。

 ヒカリは話題を変えた。

「んで、マーリン様は私の事なんて言ってた?」

「ソラと違って前から持って生まれた魔法の才能なんじゃないかってさ」

「持って生まれた……か。でも私、故郷にいたとき魔法は使えなかったよ」

「何か大きなきっかけがあったんじゃないかって」

「ヒカリはどこで初めて魔法使ったの?」

 興味深げにソラが聞いた。

「故郷からトラヴァースタウンに飛ばされた時期。ほんとに最近だよ、ちょうどソラと同じ」

 ドナルドはソラとヒカリを交互に見る。

 そして吹き出しながら笑った。

「グワッ違いが大きすぎるね!」

「俺とヒカリを比較するのがおかしいと思うんだけど!」

 ソラが不満そうに叫ぶ。

「そうよね~私は思い付きで魔法できちゃうもん」

「それ! なんかうらやましい~もしかして空とか飛べる?」

 ずばりとソラが目を輝かせて言う。ヒカリはドナルドとおもわず目を合わせてしまった。

「いくら思い付きでも、魔法って便利に作れるものじゃないよ?」

「これだから知らない人は――」

 ヒカリとドナルドがため息をつく。

「なんだよ~二人とも夢がないなぁ~目から光線とかもいいよな!」

 突拍子もないことを思いつき目を輝かせる。

「ソラのことはもうどうでもいいよ」

「たぶんこんなだから魔法も扱えきれないのかも」

 大きな夢を持ってもいいじゃないか~とか言っているがこれ以上はソラがうるさいのでとりあえず通路に向かう二人。

「ほかにマーリン様は何か言ってた?」

「僕とソラの魔法とは全く違う力を感じるとは言ってたね」

「ドナルドはどう思うの? 魔導士様として私は」

「う~ん」

 しばらく渋い顔をしてヒカリを見つめる。

 多分、今ヒカリの潜在能力を透視している。

「初めて会った時と比べてかなり上達してるね。こんなに能力が伸びるなんてまるで……」

「まるで?」

 そこでドナルドはぐるぐると目を意図的に回しながらうんうんとうなる。

 何かいい言葉を探しているようだ。

「いいや、考えすぎかな」

「聞きたい! なんでも! 悪口でもいいから!」

「ヒカリ~! 試合始まるよ!」

「あ、うん」

 通路の向こうからユフィの声が聞こえた。振り返るヒカリにドナルドが口を開けた。

「修行してた時のだけど、僕たちの探してる王様を見てるようだ」

「!」

 悪いことを言われると思っていたからだろうか。ヒカリは思わず驚いた。

「ほんとは言うのはいけないんだけど。妹弟子だしヒカリなら話すよ。僕とグーフィ―が探している王様は僕の使うのとはちょっと違うけどすごい魔法を使えるんだ。それに王様は僕の親友だから似ていると思うと、ちょっと恥ずかしいな。ごめん、変な気はないんだけど」

「ううん、そっか王様すごい人なんだね。私も兄弟子様と打ち解けた気がするから……こそばゆいな」

 なんだかいつも以上にドナルドと近くなった気がして、とてもうれしくなるヒカリ。

「ヒカリのそばにいる人がとてもすごい人なんじゃないのかな? マスターやミッキーとか」

「……うん、そうかもね!」

 嬉しそうに手を振るヒカリにドナルドは精一杯笑顔を見せ見送った。

 

 飛び跳ねるように走り去るヒカリに本当のことを言えなかったドナルド。

(悪口と言えるのだろうか――ヒカリが実は普通の人ではない力があるなんて言ったら)

 

 マーリン様が言っていた。

 例えば星一つをも飲み込む力があるのなら。

 例えば一人だけ特別な力に目覚めその力をふるうのはその人は星か、それ以上の者ではないのかと。

 

 話しているだけなら普通の女の子なのにいざ対峙してみると何か大きな力を秘めている。

 マーリン様も言っていた。

 ちゃんと魔法の知識を身に着けようとしている彼女は『いまのところ危険ではない』と。

 

(ヒカリはいったい何者なんだろう)

 

 不安がないとは言えない。

 しかし傍に居る人がちゃんと見守っていればきっと悪いことにはならないはずだ。

 

(王様、僕は間違っていませんよね?)

 

 彼女の去っていった場所を眺めながらどこかにいる親友を少し頼りたくなるドナルドだった。

 

 

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