King And Hearts~鍵を待つもの~【完結】 作:かすてらホチキス
構える二人。
「それじゃぁ」
「これで……」
「最後よ!」
「最後だ!」
二人の声が重なると青白い輝きと金色の軌跡が幾重にも重なるように交わる!
しだいにおされ、最後はコンボ数の多いミッキーが圧倒し、対するヒカリが全ての技を防ぎ切れなかった。
「悔しいけれど……私はまだ王子様には勝てないようね」
ヒカリは満足そうに微笑み膝を折ってパタリと倒れた。砂埃が舞いしっかりと掴んでいたロックブレードが同時にカランと転がり消失する。
ミッキーは自身の武器を誠意を込めてヒカリへ掲げる。
『ミッキーの勝利!』
歓声に応えるミッキー。しばらく観客席に綺麗にお辞儀をして倒れたままのヒカリへ歩み寄る。
倒れている彼女を覗き込むミッキー。
ヒカリは満足そうに微笑んだまま目を閉じていたが、ちょうどミッキーが覗き込み影になったところでパチリと目を開けてウインクした。
ミッキーはヒカリに小さくこう言った。
「リカバリーブレード。これが正解なんて今の今まで思いつかなかったよ、やっぱり君は凄いよ」
なんと最後は癒しのブレードで盛大に倒され『死んだふり』を披露するヒカリであった。
ミッキーの持つロックブレードは実はツインズロックというロックセプターのコピー。
ヒカリが戦闘不能になると効果が消えてしまいミッキーのいつもの輝くキーブレードへ戻ってしまう恐れがあったのでミッキーはヒカリに勝って欲しいと思っていたのだった。
しかし、彼女の答えは違った。
『あえて派手な攻撃を受けて倒れる』
これを可能にしたのは当たると癒しの効果がある武器での攻撃だった。
「これで僕の役目は終わったのかな?」
ヒカリは満足そうに目を閉じたまま微笑んでいる。察するにこう思っているようだ。
(次の試合も出たかったらそのままでどうぞ?あ、そのMPで戦えればの話だけど?)
セプターはキーブレードよりかなりMPを消費する。ツインズロックも同様だ。
さっきまでの攻撃を比較すると実はヒカリの方がまだMPは残っているようだ。
この勝利の方程式を作らなかった場合、回復魔法もしくは得意の魔法を繰り出していたとしたらヒカリが勝っていたはずだ。
HPよりもMPが多い魔法使いはもしかしたら状況次第で勝利が逆転するのかもしれない。脅威を見せつけられた素晴らしい試合だった。
ミッキーはそんな驚異の魔法使いをお姫様抱っこ。観客席で黄色い悲鳴が起こる。
その悲鳴に紛れミッキーの声が聞こえた。
「君の勝ちだ。僕はもう降板するとしようかな」
「ふふっ」
楽しそうなヒカリの声が一瞬だけ聞こえた。
☆
コロシアムで一番高い場所で優勝トロフィーを掲げるミッキー。もちろんさっき彼女をお姫様抱っこし負けを認めたミッキーではない。
(負けたのにトロフィーもらうのもなんだか変な気分ね~)
勝った当人はもちろんさっさと降板している。観客席でこちらを見上げているであろう。
トロフィーの底を除くと、いつものように張り付いている銀のチョコボメダルが見つかった。
「これで四個目だ!」
これにはとても喜んだ。
高台から降段するとソラ達が駆け寄ってきた。
「優勝おめでとう!」
何か決勝の感想をいろいろ言いたそうだったが声をそろえてこう言ってくれた。
「ありがとう!」
ミッキーはチョコボメダルをソラに見せる。
「僕が出ていなかったトーナメント戦があったみたいだけどソラ達のトロフィーにも同様にこのメダルはあったかい?」
「グワ? トロフィーの中にこんなものがあったのか」
ドナルドが自分たちのトロフィーを取り出す。
「そういえば僕たちのトロフィーも同じ形だったはずだよ~」
グーフィがミッキーのトロフィーと自分たちのトロフィーを見比べる。
「ちょっと待って……あ、これだ!」
ソラがその底をのぞき込み手を突っ込むと銀のメダルが見つかった。
「そのメダルを譲ってくれないかな。もちろんなにかと交換するよ?」
「グワワ……どうするソラ? 僕たちにはこれがどういうものか全くわからないし」
「困っているなら僕はあげてもいいよ~」
「そうだな、俺たちが持ってても使い道もないし、はい!」
「そ、そんなにあっさりでいいのかい?」
困惑するミッキーにソラは満面の笑みでこう言った。
「いいっていいって、優勝のお祝いだ!」
「じゃあ、ありがたく。そうだ、お礼にさっきの技を教えようか? 最後に光線が出る――」
「ええっ⁉」
「ヒカリからさっき聞いたんだ。ソラは光線を放ちたいって言っていたから、よければね?」
「や、やった~~!」
ソラがこの上なく喜んでいる。ミッキーは背後の物陰に隠れているであろうもう一人の相棒に背中で親指を立てた。もちろん自分ではないミッキーが教えるのだ。
(やれやれ、マフのためだ何とかしよう)
相棒は頭をかき上げて渋々うなずいた。
「優勝者にはヘラクレスへの挑戦権があるのだろう?」
レオンが嬉しそうなソラを眺めながらミッキーに聞いた。今気が付いたがクラウドも隣にいる。
「うん、準備が整い次第試合になるよ」
「ヒカリとユフィとの試合本当にすごかったね。魔法でドカンって」
ドナルドがあまりの惨状をレオンとクラウドへ呼び起こす。
「この二人が何もできないなんて、アッヒョ……」
グーフィのその後に続くはずだった慰めはなにも思いつかなかった。
「ところでユフィは?」
ミッキーはごまかすようにソラに聞いた。
「ヒカリを探しているよ医務室見たら居なかったってさ」
「あ、そうなんだ……」
あとで変身解除して誤っておかないとな。
「とにかく反則じみた攻撃だったよな~ヒカリ。結局このメンバーの中では一番ミッキーが強かったけどな!」
最後のソラの言葉で実は本人が目の前に居るのだと知るクラウドとレオンはとても複雑そうな表情をしていた。
「あれは……作戦負けだ」
「まったく今さらどうこう言っても、興味ないね」
二人の表情が苦くなるのを見てミッキーの中の彼女は人知れずいたずらな笑顔になった。
☆
ユフィを迎えに行ったヒカリは彼女を発見するとすぐに詰め寄られた。
そして感無量になった彼女に抱きしめられた。
「あ~もう! すごいカッコよかった~~!」
「か、カッコよかった?」
「うん……すっごく!」
いつもはツンツンしている口調なのに今はそれと違って熱意のこもった叫びに思わずドキッとする。抱きしめられたユフィに腕を回していいのかすごく躊躇した。
とりあえずもう一度聞いてみるヒカリ。
「わ、わたしの事。カッコよかった?」
「……ちがうの、ミッキーの奴」
「あっ、ああ~そっちね……」
思わず胸をなでおろす。なんだ、向こうの人物のことか。しかし、代役を立てたとはいえ、あっちもじつのところは自分なので複雑な気分だ。
「でもね、あの最後の技の、一瞬だけ!」
そう言ってユフィはヒカリから離れ、ありったけの悔しさをぶちまけていく。あまりにもさっきの言葉がドキドキしたのでヒカリはユフィの嘆きをすべて聞き流した。要約すると、あの技を近くで見たかったことと自分が加勢していたら勝てたかもしれないという事らしい。
(でも、その時はプランBのユフィを叩いて私も自滅の予定だったけどね)
これはユフィには秘密だ。
☆
ラグナロクの指南書をソラに渡したところで最後の試合の準備が整ったようだ。
「さて、行ってくるよ」
ミッキーはコロシアムの控室に向かった。
控室から闘技場までの通路に彼女がいた。
「ヘラクレスには僕が挑めばいいのかな?」
ミッキーがその彼女に問う。
「それ、本気で言ってるの王子様?」
不敵な笑みでヒカリがミッキーに問う。
「僕は、王様だけで十分だよ……」
「あんまり変わんないと思うけど?」
「大違いさ。注目を浴びるのはもう僕はごめんだ」
「はいはい、それでは交代ですね!」
そう言って彼女。、ヒカリの体が輝き目の前の人物に代わる。
「行ってきます。王様!」
「行ってらっしゃい。王子様!」
穏やかな笑顔の王子様が元気よく走り出して行った。同様の笑顔の王様は眩しそうに彼の後姿を見送った。
この後の展開をだれが予想できたであろうか?
壇上にいたのはヘラクレスではなかった。
「!」
開始と共に切先が目の前にやってくる!
ありったけの最善を尽くして回避したのに体が思うように動かない。
あまりにも圧倒的な力に絶望のマーチが脳裏で奏でられる。(あの有名なコーラス付きで)
この瞬間ミッキーは戦意を失いかけた。
でも、まだ体は動くのだ。
すぐに離脱し出来るだけ遠くに逃げる。
開始直後だっていうのにあまりのあっけない決着に今更、体が震えてくる。
ここで考えるのは勝利ではなく、どうやって相手の技を食い止めるか。それだけに全てを集中させる。
これだけ聞くと敗北のように聞こえるがそうではない。
次、やったらどうやって挑もうかの粘りだ。
まだできうる限りの技は出せる!
ここで選択を誤るわけにはいかない!
「面白いことをするな」
後ろから声が聞こえた。
あまりの鮮明な声にゾクリとする。
「しかし面白いことをするならもう少しだけ楽しませてくれ」
「……っ!」
気がつくと重力が逆転し、天を仰ぎ見ている自分がいた。
何をしたかといえば――。
なにか衝撃波に打たれた、だけ?
体が浮き上がったように自由がなくなり今はもう体が思うように動けない。
必死に抵抗するが何かにつかまった体に回避も何もできない。ロックブレードをふるう力さえ抵抗できないありさまに悔しくて奥歯をかみしめる。
今まで味わったことのない焦りと緊張が彼の表情を険しくさせた。
「終わりにしよう」
銀髪の男が自身の刀身よりも長い武器を構えた
「‼」
声にならない叫びをあげて意識が途切れた。