King And Hearts~鍵を待つもの~【完結】 作:かすてらホチキス
半壊したコロシアムで変身が解けたヒカリを助けたのはクラウドだった。唯一の協力者のレオンは状況の改善に尽力してもらっている。
コロシアム中は大騒ぎだ
無理もない。招かれざる客が来たのだから。
セフィロス。
たしかコロシアムの予選前でクラウドに聞いた特徴から見るにまちがいない。
でも、もう思い出したくない。
あんな歩く天変地異よくも挑もうと思ったなぁ。
意識がはっきりしてくるとヒカリは違和感を覚えた。いつもこんな危険な状況だったら目覚めた視界から飛び出してくるはずなのに――。
彼はそばにいなかった。
☆
半壊したコロシアムの廊下でヘラクレスが挨拶するが――。
「ごめんなさい! 急いで行かなくちゃ!」
彼女は血相を変えてひたすら全力で走る。
重い扉を開け、郊外へ向かう途中見慣れた金髪の人物がいたが、全速力ですれ違う。
クラウドは、すれ違いざまヒカリの腕を掴んだが、すぐ振り解かれた。
しかしクラウドはヒカリのもう片方の腕も掴んでいた。
「はなしてっ!」
「落ち着け」
「至って冷静よ! 怖いぐらいに……いつか、こんなことがあるかもって思ってたわけだし! でも、なんで今なのか分からないのよ!」
どうしてこうなってしまったのだろう。
いいや、会ったときからずっと思っていたのかもしれない。覚悟してなかったわけじゃない。
バラのロケットを眺めるヒカリ。
そこには白い色。
そばにいれば赤くなる。このロケットの効果は探し人がどこにいるのか星全体まで及ぶ。
ミッキーが、居なくなるなんて――。
「これを、あいつが、お前に」
そう言ってクラウドは手紙をヒカリに渡した。
ヒカリはそれを見てすぐに理解した。
これは、紛れもなくミッキーのよく使う便箋。
開くと便箋はびっしりとした文字の羅列。
さらに総数三枚だ。
「もぅ~ながいっ!」
項垂れるヒカリ。
「冷静と言ったよな? 黙って読めないのか」
「あーわかりましたよ! 読んでる最中にずっと遠くまで出て行く魂胆ね……」
「その心配はない、もうとっくにここから出て行ってる」
「なんでわかるのよ。いつ出て行ったの?」
「ヒカリをここに運んですぐだ。変身が解ける直前、つまり決着がついてすぐあいつが闘技場でヒカリを助け出したんだ。変身が解けたときのカモフラージュだろう」
「なるほど、ね……」
ちゃんと代役を果たして出て行ったと――。
「それでなんでクラウドさんがこの手紙持ってるのかしら?」
「あいつは俺が引き留めようとしたが無理だったからな」
「え? 人の行動に全く興味のないクラウドさんが引き止めてくれたんだ」
あまりにもそちらの方が興味深い。
「仲間から遠ざかるのは見ていて少し腹が立つ」
「もしかして、同族嫌悪?」
「ぐっ……その手紙に全てが書かれていると言っていた。読んでいいと言われたが、俺は興味ないね」
(気になるくせに読まないのか。やはり同族嫌悪よね? 似てるとあえて見ないっていうのは)
そんなの今さら突っ込んでもしょうがないけど。
とにかくこれ以上の詮索は時間の無駄な気がしてヒカリは目の前の便箋に戻る。
「はぁ……今からミッキーを探すのが無駄なのはわかったわ、それじゃこの手紙。声に出して読んであげる」
「俺は興味ないと言ったはずだが」
「これから作戦立てるための内部確認です!質問は読み終わってから聞きます」
ピシャリと言い、誰もいない広場で大きな声でゆっくりと音読を始めた。
☆
途中ヒカリの声でハートレスが数匹現れたがクラウドが全て片付けてくれた。ヒカリも舞いかかる火の粉を払うくらいはした。
「闇の世界か……」
「つまりは、お前には行けない場所だ。ついてくると悪いことが起こると」
「ここまで言われたらそうみたいね」
手紙を丁寧に便箋に戻すヒカリ。
読んでいる最中、もう憤りもなくなった。
「やけに物分かりがいいな、どうした?」
「あら、危険だと言われてむざむざ入って行く私だと思ったの?」
「ついさっき行っただろ? セフィロスに負けに」
「……それはそれ。しかも王子様のほうね」
「今更否定することもないだろう」
「せっかく私が直々に出場したのに戦い方みなかったの? ここでの私は二人いるの」
口を尖らせて不満をのべるヒカリ。
クラウドは妙な線引きだなと思ったが口にしなかった。(元は男装になったのはあなたのせいです)
「それで、この手紙で観念したとか言うのなら見当違い。そもそも、闇の世界に好きで行く人なんていないはずよ。特にも私のような何かの力の塊みたいな人はね」
「会いたい奴が行く場所なのに怖いのか?」
「なによ、そこまで言われたら、うーん、そんな怖いってわけではない。でも、私が行くと、きっと良くないことが起こる気がする。だからミッキーは私を置いて行ったのね」
「それはヒカリが持ってる力がそうさせているのか?」
「確信は持てないけど、きっとそう」
「……」
「あら、あらら? いつもより口数が多いと思ったのにだんまり?」
少しからかってみたがクラウドは何か考え込んだまま何も言わなくなった。
せっかく尋ねたのに返答がないと面白くない。
「むぅ。確信はないんだけどね、私の力が光寄りでハートレスを沢山呼んでしまう体質なのよ。あと、星の鍵穴とかもなんとなく見つけちゃうし、さらに言えば二重人格っていうかもう一人が知らないうちに出てきてしまうと一人で何かやらかすし、とにかく私一人だと大変なの!」
「俺がヒカリと一緒に行く」
「ん、なに?」
「あいつは俺の好きにしていいと言った。だから手紙も預かった。面倒ならトラヴァースのシドに置いていこうと思ったが、気が変わった」
「そ、それは……いいことだわ」
悪い交渉ではない。でもなにか混乱してる。クラウドさんが仲間? これから一緒にいるんだって。一緒にいつもみたいに旅を――。
「ん? ちょっと待って、えっええ~~⁉」
天地がひっくり返りそうな感じで驚くヒカリ。
「……そんなに嫌ならすぐにシドの場所に連れて行く」
さっきクラウドはボソリと言ってた時は耳が赤くなってたが、今度はその耳のまま、すごく不機嫌になった。
「い、いいえ! 歓迎しますとも! さぁ行こう、今行こう、すぐに行こう‼」
かくして、相棒のステータスが一夜にして全く逆転したようなキャラクターが仲間になりました。
島を出て、ここまでびっくりしたことは今まであっただろうか?