King And Hearts~鍵を待つもの~【完結】   作:かすてらホチキス

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 今回はコロシアム3の後日談。本編では主人公さんが思い出したくないと言って割愛した気になる話の全貌です。
 16章のネタバレになるので入れるか迷ったので17章短編と表記。
 アナザー話は飛ばし読みしてる人用に書いていたりもします。


17章ShortTrip ハロウィンタウン
Another17~Deus Ex Machina~


Another17~Deus Ex Machina~

 

 ピコン☆(あの効果音)

 ミッキーがパーティから外れた……バックヤードの持ち物はヒカリへ全て移動された。

クラウドが仲間に加わった!

 

 その直後、色々と思うところがあったのでヒカリはコロシアム入り口前の広間に腰掛けた。

「目覚めた今、思ったよりも大きな外傷はないみたいだけど、決着ついた時どうなっていたか怖いけど聞きたいわ」

 

「体のどこかを貫いたように見えたんだが……」

「ひっ……!」

 想像が今は痛くない体を貫く。

「俺が見たのは変身がちょうど解けた後だった。だが、セフィロスは確かに言った。髪の毛を持っていくと」

「え?」

 ヒカリは一気に血の気が無くなった。

 

 か、かみの、け?

 

 恐る恐るヒカリはロックセプターにりんごのロケットをつけて頭上に振り上げた。

 いつもの変身モーションを割愛してミッキーへと姿が変わる。

 クラウドはこの魔法はユニークかつ初めてなので少し驚くが、この状況では感想も驚きも本人には言えやしない。

 さらに言うと別のことに驚く。

 ミッキーは長い髪を赤いリボンで低い位置でまとめているのだが、変身すると――それはひらりと落ちた。

 そこにいるのはソラのような髪型となった少年。

 その少年はいつも冷静である姿しか見たことがなかったのだが今は違った。

 

「か、髪が切られた~~‼」

 

 絶叫するミッキー。

 いつもとは違った表情と今まで見たことのない焦った声で思わず驚いた。

「しかし、変身が解けたら元に戻るのか」

「そんなの私もしらない!」

 思わずミッキー口調を忘れている男装ヒカリ。

「ま、まぁ……セフィロス相手に髪だけで済んだのならいいかと思うのだが」

「そんなことないだろ!」

 涙を浮かべ叫ぶミッキーにクラウドはどきりとする。これは、いわゆる地雷を踏んでしまったようだ。

 眼光鋭く睨まれるのは試合中ではよくあるが今の状況では勝手が違う。悔しさのあまりハンカチを噛みちぎらんばかりの乙女といったところか。

 今の彼はミッキーなのだが――中身は紛れもなく乙女だった。

 クラウドに言わせればいつもの雰囲気から一変して取り乱すミッキーを見られるのはかなりレアなのだが、この事態を自分一人でどう対処したらいいのか考えを巡らせる。

 

「お、男なら泣くな……」

「僕は男じゃない!」

 速攻で返された。

「そ、そうだった……。なんか、すまない」

 我ながら上手い言葉が見つからないことに自分の語彙力を悔やんだ。

「僕は、男の子のふりをしてるだけ、中身は乙女なんだからね!」

 こじらせすぎてふてくされている。

(俺一人では無理だ。誰か助けてくれ)

こんな時に相棒はなんでいなくなってしまったのか心底後悔しているクラウドだった。

「し、しかし、なぜ髪を持っていったのか」

「そんなの僕もわかんないよ! あいつ、あんなに長いくせに……ぇ、長いから?」

「……」

 ここでクラウドは目の前の彼に変身した彼女と同じ答えを思い浮かんでしまった。

 

(長髪のヒーローへの挑発)

 

「ちょうは――」

「分かったから皆までいうな」

 クラウドの言葉をミッキーは低い声で遮った。

「この話……もう、やめておくか」

「そうだね~」

 そう言ってあまりにも悲しみが深いのでミッキーからヒカリへ戻る。

 ヒカリの変身が解ける間「ああ〜〜」と嘆いでいるため低い声から高い声へしだいに変わっていく声色が妙に面白かった事を、クラウドは今の彼女に言う勇気が出なかった。

「ううっ……それとも、嫉妬かしら?」

「ま、まさか、あのセフィロスが?」

「考えてみれば、最後のひと泡吹かせてやろうかと思って出したサイクロンテンペストブレードで何か言ってたみたいなんだけど」

「ああ、あれはよかった。魔法で対抗できるなんて盲点だった」

「あれね、物理攻撃ありきの魔法なのよ? 風と雷と近くのガレキと……あの時は魔法の勢いで、私のリボン取れたんだよね」

 そう言ってさっきまで掴んだままだった赤いリボンを頭へ結び直す。

「もしかしたらあの演出じみたようにほどけた時か」

「実は私もあの時は本当にいい感じに映えたと思ったのよね」

 

(アレのせいなのか……?)

 二人の心の中は同じ事を考えていた。

 

 それが仮に答えだったとするとしても、本人に聞くのは勇気がいる。仮にも最強の剣士が自分よりもカッコよく見えた相手への嫉妬で髪の毛を持って行くなんて――逆にこわい。

 

「か、仮に、髪の毛が切られただけで持ち去られなかったとしたら元に戻すことはできるのか?」

「元の長髪に戻せるかって? すぐならたぶん戻るはずよ。まぁ、切られてすぐにだけど。しばらくしたら体のオーラ的なものがなくなるから離れてしまったらムリ」

 我ながら魔法のことに関してヒカリは本当に人一倍立派に評論家になったものだ。

 

(じゃあ、やっぱり?)

 二人の心の中はまたもや同じ事を考えていた。

 

 敗者のくせに私よりかっこいい様子だったのだから切ってやったと主張する最強の剣士を想像してしまった二人。

 言わずとも確信に近くなってきた。

 

「理由はどうであれ、もう考えるのは無駄よね。戻らないものはしょうがないもの」

 ヒカリの言葉で詮索は打ち切りとなった。

「あ〜〜まだムカつく〜〜」

 せっかく先ほど相棒が消えた事実から機嫌が良くなったはずなのに今度はセフィロスと来たもんだ。

「いろいろ大人気だな」

「何さ! もうファンサービスはしないわよ! オフではサイン会はやらないわ!」

 そんな冗談は言っていないがノリノリではあったらしい。

「あいつが出ていったんだ。し、しばらくは、試合は出ないんだろ?」

 クラウドは怒れるヒカリへ恐る恐るご機嫌伺いしながら聞いてみると、当の本人はあまりのいつもと違う彼の振る舞いに苦笑し観念して機嫌を直した。

 

「そうね、しばらくは長髪のヒーロー様は休業の予定ですよ。もちろん私もね!」

 明るい方向へ空気が変わったことを確認してクラウドは改めていつもの冷静な口調に戻った。

 

「そうか、ならばここはもう用済みだな」

「そうね、王子様も敗北、私の相棒も勝手に出ていっちゃったし」

 周りを見渡すヒカリ。歩く銀髪の厄災が来たのでヘラクレスへの挑戦権の試合は中止になったし、その前に優勝トロフィーも一応もらっている。コロシアムには忘れ物もない。

 

「ヒカリ、あいつの挑発に乗る覚悟はできているのか?」

「悔しいと思ったけど諦めるわ」

「……?」

 

「もう一度言うわ、諦めるわ」

 真顔のヒカリを見て何言ってるのかわからないと言いたそうな変な顔になるクラウド。

 

「一応理由を聞きたい」

 

「魔法が強くてもたくさん打てなきゃ意味が無いもの」

「ヒカリで戦ったらどうだったと思う?」

「変身しないままなら、もう一度チャンスがあればとは思ってしまった。でも、今すぐリトライしても結果はきっと同じ。だったら、今はもっと良い選択があるはず。だからいいや」

「さっきまでの様子だと、悔しかっただろ?」

「髪に未練はある、挑発も買いたい。でも、私は敗北を認める。私の全ては出し切ってそして負けたのだから。だから、今はもっと別のことをする」

 

「俺は二人のヒカリに敗北した、そんな俺がセフィロスに挑んでも、ということ、なんだな」

「クラウドが一番悔しいのは私もわかるよ」

「……」

「私よりも悔しいのは見ててわかるもん」

「買いかぶりすぎだ」

「ずっと追いかけているんでしょ? だったら私よりも悔しいよ」

「そうなのかもな」

「うん、それじゃ早めにここからトラヴァースタウンまで連れてってくれないかな? 私船持ってないからシドのところでお願いして新しい船を……」

 

「一人なら俺の後ろに乗れる」

「えっ?」

 何を言っているのか少し混乱する。

 クラウドが何かを取り出すと目の前が輝き、そこには大きなバイクのような乗り物が現れた。

 

 そしてまたがり手を差し伸ばす。

 

「俺も、今は別のことをしよう。探すものがあるのだろう? 二人ならきっと早い」

 不敵にクールに爽やかに微笑むクラウドさんにヒカリは動揺し少しドキッとした。

 

「お、お言葉に甘えさせていただきます」

 

 ヒカリは、なんとかそれだけはちゃんと言えた。

 

 

 





【Deus Ex Machina】(デウス エクス マキナ)舞台でよく使う名称らしいけど。
簡単に言えばいきなりの大いなるものの介入。それは自然災害だったり、神の下した天罰だったり。今まで積み上げてきた物語に対しての終幕。あるいは終末。彼の出現にうってつけかな。

「ここまで来たならもう終わりね」と彼女は笑って言う。
それに納得できない彼は彼女の事を知ろうと歩み寄るのでした。
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