King And Hearts~鍵を待つもの~【完結】   作:かすてらホチキス

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~メダルとマフと託された武器~

 

 ヒカリがアクセサリーショップに入ると奥のテーブルのあるソファに座る三人を見つけた。

 シドとマフが奥に座りその対面にクラウドがいるのだが、その彼に二人は詰め寄っていた。

「いったい何が起こっているの?」

「あ、ヒカリさん。エアリスさんとどこで会ったのかって聞いていたんです」

「あ、それ私も聞きたい」

 ヒカリはクラウドの横に座る。

「仕事でハートレス対峙をしていて2番街の公園で出会ったと言った」

 クラウドがかいつまんで話す。

「なるほどな、前にエアリスが話していた大きな剣を持った金髪の天使ってのはお前のことか」

「なんで天使?」

 シドの言葉にヒカリが首をかしげる。

「空から落ちてきたそうだ」

「あれは……屋根から足を滑らせて落ちたところを助けてくれたからだ」

「それをちゃんと言ってよ!」

「……」

 ヒカリの言葉にクラウドは押し黙った。

「それなら天使を助けたエアリスは女神様ね」

「なんだかロマンチックですね~」

「そういうヒカリはミッキーとはどうやって出会ったんだ?」

 ヒカリとマフがそういってニコニコしている横でクラウドが話題を変えた。

「私はそんなにロマンチックじゃないよ、むしろ逆かな」

「逆とはどういうことですか?」

「三番街で瀕死だったところを助けてもらったの」

 この言葉でここにいるヒカリ以外の顔色が大きく変わった。そしてヒカリへ身を乗り出す。

「あの、魔法無しでもお強いヒカリさんが瀕死?」

「嬢ちゃんが瀕死なんて見たことないんだが」

「ヒカリをそこまでさせるなんてどんなハートレスだ?」

「あなたたち何を想像しているのやら……いつから私はそんな無敵キャラになったのかしら?」

 腕を組んであきれるヒカリに三人はソファに座りなおす。

「そ、そうだったな~ここに来る前は普通の嬢ちゃんだったからな?」

「でも、私が出会う前の普通のヒカリさんは想像できないです」

「俺もそれは想像できない」

 思い思い深く反省する三人にヒカリは肩を落として話し始めた。

「あの時の瀕死の私は、原因はハートレスじゃないよ。普通に体の調子が悪かったの」

 三人はさらに驚く。

「い、今は大丈夫なのですか⁉」

 マフが飛び上がりそうなくらいテーブルを乗り出して顔をのぞかせる。

「ん~そういえばあれほど具合が悪くなることはないわ。不思議よね~」

「な、ならよかったです」

 マフがすとんとソファに座りなおす。

「そういえばロックセプターってこの街で初めて見つけたんだよね」

「それも不思議だな、ここは故郷を追い出された俺たちが作った場所だからな」

「どういうことシド?」

「この土地は新しいから伝説の宝があるなどの言い伝えがないというところか」

「ま、そういうことだな」

 クラウドの考察にシドが答える。

「そうしたらなんで魔法も使えない頃の私がこれを見つけたのかな?」

 そう言ってロックセプターを取り出す。

「誰かがヒカリに見つけてほしくて落としていったか、そもそも誰かの忘れ物か――みたいな所か?」

「わ、忘れ物……だったら、ごめんなさい」

 シドの発言になんだかそんな気がして申し訳なく思うヒカリ。それを見たシドは面白そうに悪びれた顔をした。

「な~んてな、冗談だ。そもそも前、落とした時に相棒と嬢ちゃん以外持てなかっただろう?」

「そうですよ。私もハンマーを打ち付けようとしたらヒカリさんのところに帰ってしまいました」

「あ、そうだったね」

 シドとマフの言葉でヒカリはほっとした。

 初めて念じただけで出てくる不思議な武器を手にした時は誰かの所有物とはまったく思わなかった。

 だって、私となぜかミッキー以外使えないし、体の一部と言うべきかもしれない。

 ほっとするヒカリの隣でクラウドは静かに口を開いた。

「それを考えると、ヒカリがロックセプターを手に入れたときに病弱体質が緩和されたということになのか」

「あと、魔法も使えるようになったわ」

「それならば……憶測だが銀のメダルはヒカリだけが見つけだしている」

「例外だけど宝物庫ってのがあるけどその時の私はすでに宝物庫の中に入っていたみたい」

 隣に座るクラウドは手を組み静かに瞑想する。

 三人はクラウドをのぞき込む。

「もしかして、メダルの場所が見当ついたのか?」

「いいや……もう少し情報が欲しい」

「初めは船の格納庫だったわ、シドが取り付けたハートレスの腕に挟まっていたの」

「あー俺が悪かったって前に言ったろ」

 シドの嫌な思い出を思い起こさせたヒカリは更に続ける。

「次は二回目のオリンポスコロシアムでの優勝トロフィーだよ。ハートレスが持ち出そうとして奪い返した時に見つけたの」

「ハートレスが持ち出そうとしていたのか」

「考えてみたら不思議ね。あのメダルが欲しかったのかしら……マフはどう思う?」

「強いハートレスは輝く合成アイテムを落とすことがあります。それを考えれば、トロフィーもしくはメダルに惹かれるものがあったのかもしれません」

「次に見つけたメダルはアグラバーの宝物庫ね」

「あの場所は魔法のじゅうたんさんとさらに奥の広間にはジーニーさんのランプも置いてあった場所だと聞きました」

「不思議アイテムだらけの宝物庫か!ロマンがあっていいねぇ~」

「一番無難な場所だな」

「なんでシドとクラウドが楽しそうなのよ」

 ヒカリが釘をさすように問うとシドが身を乗り出した。

「そりゃぁ、男のロマンあふれる場所だからに決まってるだろ!」

「そう言われれば……できれば私も見てみたかった、覚えてないんだもん」

「あの時のヒカリさんは大変でしたからね」

「マフは見たんでしょ? 何か面白そうなのはあった?」

「ぜんぶきらきらしていて力のあふれる場所だったので目移りしてしまいました!」

「そうだろうな~そうだろうとも!」

 そう叫ぶシドのテンションが変だ。

 クラウドは無言だが何回か頷いている。

「でも、沢山あると何か怖いので手は触れませんでした!」

「たぶん、それが一番正しい判断です」

 拾える宝は残さず持っていきそうな隣の二人を横目で見てヒカリはマフを褒め称えた。

 余談だが、宝物庫の宝を持ち去ろうとすると魔法の洞窟は砂になって崩壊するので悪しからず。

「あとはご存じの通り、最近もらったトロフィーとソラ達からもらったトロフィーで銀が揃いました」

「これらの共通点は何だ?」

 気を取り直してクラウドがヒカリに問う。

「うーむ、何かハートレスからの獲得とか、手に入れにくいところの収集品、あとは貴金属の中?」

「前にも聞いたが、マフの関係者が隠したんじゃねぇのか?」

「残念ながら私はさっぱり覚えていません。メダルは見つかるのに師匠の手がかりなしです!」

 シドの質問に師匠のことを思い出しているのか頬を膨らませて憤慨するマフ。

「そもそも、メダルを作った意味。それとマフの記憶に関しては全く手がかりがないから、別の切り口からも探さないとな」

「まったくもぅバカ師匠め」

 クラウドの切り返しにマフは小さく師匠に悪態をついた。

 そこまで嫌う師匠とは思春期真っただ中の父親を想像させる。見た目がシドみたいなお師匠だったら面白いなぁとヒカリは思った。

「あ、そうだった! あらためまして、銀のメダル五個。ほんっと~~に、ありがとうございます!」

 ぴょんとソファから飛び出してぺこりと頭を深々と下げるマフ。長耳帽子が後を追うように飛び上がりふんわりとお辞儀とともに落ちた。

「こちらこそ喜んでくれてこっちもうれしい!」

 ヒカリも立ち上がり丁寧にお辞儀を返す。

「あとは金のメダルで私の記憶が思い出すはずです」

「そうよね、金のほうが重要なのよね!」

 悔しそうなヒカリにマフは両手をぶんぶん降る。

「ヒカリさん集まっただけでもすごいんです。ましてや金ですから、そんじょそこらでは見つかりませんよ」

「そうなのよね、金だもんねぇ~アグラバーみたいな宝物庫においてある可能性もあるかも?」

「実は私も一応それを考えましたが、私が見落とすことがないはずです」

「それってマフにはメダルは何か不思議な力とかが見えるの?」

「魔法みたいに力が見えるわけではないですが、自分の扱っているモノへの鑑別みたいに感じることはできます。たとえて言うなら素材に使えそうとか、装飾に使えそうとかですね」

「アグラバーのキラキラした宝にはあった?」

「金の延べ棒やナゲットと呼ばれるアイテムもありましたが、私の作るアイテムには不向きでしたね」

「つまり俺でいうグミブロックみたいなものか、あれは普段宇宙にしかないからな」

「なるほど、目利きの専門家じゃないとわからないものもあるのか」

「それと、メダルはすべてヒカリさんが見つけています」

「ヒカリでないと見つけられない理由がどこかにあるのか?」

 クラウドの質問にマフはヒカリを見つめる。

「偶然とはいえ、手に入れているのはヒカリさんが一番確率が高いのです」

「そ、そういわれれば~そうね。でも、金のメダルよ? 高価だと思って誰かが持ち出して実は売ってしまったと言う可能性は?」

「その誰かさんが居たとしたら、まずはここに売りに来るはずだ。マフだってそれを見越してここに拠点を置いているわけだしな」

「そ、そうよね」

「さらに言えば、帰る場所が消えた者たちの町に知らないモノなんてほとんど無いんだぜ。いろんな世界のいろんな人々が集まるからな」

「そ、そうなんだ」

 そういえばエアリスもさっき魔法アイテム鑑定してくれたなぁとふと思った。レオンとユフィも何か特技があるのだろうか。

「俺だってこんな珍しい生き物のメダル見るまではどんな代物なのかわからなかった。価値がなきゃ拾わないし旅人ってのはそもそもお荷物は極力持ち合わせない」

「そんなもんなの?」

「どんなに高価だって言い張っても世界を見渡せばごくありふれたものだったりもするからな、誰かが必要だと知っていれば別だけどな」

「なるほど。浜辺でキラキラしてる透明な石も実は砕けたラムネ瓶やワインボトルだったりするものね。貝殻もきれいだけど沢山あるとみんなが全員拾うわけでもないし」

「ああ、嬢ちゃんは海の出身か。なるほど、的を得ているかもな」

「海でよく拾い物してたからね。たとえば秘密の漂着ポイントがあるのよ!」

「ポイントを重点に置くのもいいが、世の中には木を見て森を見ずという言葉がある。探しているのは私物でも忘れ物でも無い。誰かが隠した宝だ。一部だけに囚われず全体に広く見て行かなければ広範囲のものは見つけられないんだぜ」

 なんでシドと話すときはこんなに例え話に花が咲くのだろうか。ヒカリはいろんなたとえ話が披露出来てなんだが楽しくなっていた。

「そうなのよね、とにかく情報が無いと闇雲に探すのは非効率なのよね!」

「旅してる連中に聞き込みをしているが、何せ数が居ないんだな、だからどうしても情報が少ない」

「目的もなしに旅なんかする奴はそうそういない。ソラや俺たちが特殊すぎるんだ」

 クラウドが言った言葉にヒカリはなるほどねぇーとさらにうなずく。

「旅人に詳しい人とかいない?」

「この街自体、外部からの住人で作ったから商人がいないわけではないが……ハートレスが邪魔するもんで船を作る俺が一番旅人に会う確率が高いんだがなぁ~冒険者では無いから貴金属の情報はさっぱりだな」

「シドはグミの話しかしないから聞かないだけじゃ無いの?」

「初めて嬢ちゃんが見つけたのはグミの格納庫なんだろ。一応その中になかったか聞いているんだぜ」

「あ、そうだった。じゃあ、金属探知機みたいな装置があれば良いけどマフは作れないの?」

「あのメダルには魔法の力のような特別な何かが感じられないので残念ですがお役には立てません」

 マフが申し訳なさそうに頭を下げる。

「う~ん、やっぱり私が見つけ出さなきゃいけないのね」

「一番見つけてるのは嬢ちゃんなんだ、そういうこったな~」

「また新しい世界に行ってみるしか無いのかな?」

「で、だな……船が欲しいんだろ?」

「あっ、そうです。お願いします!」

 思い出したようにヒカリは立ち上がりシドに頭を下げる。

「残念だが今すぐは無理だ」

「え?」

 シドにしてはなぜか渋っている。そんなに難しい問題があるのだろうか。もしかしたらパーツや部品が足りないとかなのか。そしたらどうやって調達しに行こうか?

そういえば前に珍しい部品が欲しいとか言っていたけどそれと何かたくさんのグミパーツを交換してしまったとか?

 

「俺のスペシャルな設計図がまだ完成してねぇのさ!」

 シドが立ち上がり一人で熱く叫ぶ。

 他の三人は目が点になる。

 なんだ、ただの情熱の入れどころがから回ってるだけみたいだ。

 それならば――。

「じゃあ、あえてここで言うわ。私からのオーダーは三つよ。カレイドスターよりコンパクトに、コスモステラみたいな機能がある、それでいて攻撃よりも防御重視。これでお願い!」

 ズバリ言うヒカリにシドは数秒考え込み閃いたようだった。

「よし来た。メダルの話はここで終わりだ!明日か明後日出直してきてくれ!」

 立ち上がったシドはそのままアクセサリーショップを出て行った。

「……ねぇ。それなら、さっきまでなんで船以外の話していたのかな?」

「さぁな」

「きっとヒカリさんとお話がしたかったんですよ」

「そう?」

「おそらく最後のたとえ話が出てきたところだな」

 ヒカリもあそこらへんが一番楽しかったので確かに合点がいった。

 

 

「ずいぶん遅くなっちゃったね。マフのお家は三番街だったよね、部屋まで送るよ」

 ヒカリがマフに言うとマフはクラウドの前へ歩み寄り、そして彼を見上げてこう言った。

「クラウドさん。そ、その……」

「どうしたのマフ?」

 久々にもじもじするマフが見れた。

 初めて会ったミッキーの時のような態度だ。

「えっと……」

「ん?」

 ヒカリがかがんでマフに耳を向ける。

 マフはその耳元で話してくれた。

(クラウドさん私の知ってる黄色い大きな鳥に似てるんです。あのメダルの――)

 ヒカリは想像して思わず吹き出す。

 その行為を眺めているだけのクラウドは訳が分からない。ただ、かわいいのだけは分かった。

「クラウドちょっとしゃがんで」

 ヒカリの言った通りかがむ。

「よっと」

 ヒカリがクラウドの背中の剣を外す。

「?」

 訳が分からないクラウドにヒカリがマフに促した。

「はいどうぞ」

「え、ええといいですか?」

「?」

 かがんだクラウドの目の前にマフが来た。

 まだクラウドはよくわからない。

「クラウドさん、お、お願いがあるのです」

 いつもより小さい声でマフがクラウドに言った。

 

「おんぶ、してもらって……いいですか?」

 そう言って真っ赤な顔の少女が、思わず顔を隠す仕草と言ったら――愛らしくて、こっちもなぜか赤くなってきてしまう。

「……いい、よ」

 ぎこちなくそう言ったクラウドが背中を見せる。

 その広い肩幅を見ると、マフはとてもうれしそうにぴょんと飛び乗った。

 クラウドが立ち上がるとマフがうれしさのあまり「きゃははっ♪」と声を上げるくらいだ。

クラウドの剣、バスターソードを軽々と持ったヒカリはマフ以上に楽しそうに始終笑顔のままクラウドの横を歩く。

「よーし、このまま道草しよう~三番街の扉は無視して二番街から帰るわよ!」

 そう言って二番街の扉を勢いよく開け放ち右手で担いでいる剣を振り回す!

 ヒカリの背丈と同じぐらいか、それ以上のバスターソードを振り回す彼女にクラウドは驚いたが、すぐに納得する。手を放してもバトンのように回転するので魔法で少し重力操作して重量を軽減させていると見た。

「しんがりはお任せください!」

 おぶった少女から聞こえた言葉にさらに驚きながらもクラウドは二番街の扉を開けた。

 

 

 二番街の公園でハートレスを各個撃破して行くヒカリと背中におぶったマフ。ヒカリは楽しそうにバスターソードでソニックレイヴを繰り出し、グラビディアソードなる技を繰り出した。

 重力の魔法を乱れ打ちし、大きな剣が生きてるように飛び回る。

 マフはクラウドの背中にいながらもハンマーで魔法を放ち、たまに空中の敵を薙ぎ払う。

 背後でハイテンションな少女にクラウドは振り回されそうになったくらいだ。

 彼女たちの活躍により、武器の無いクラウドは加勢する手間がまったくなかった。

「出撃~!」

「とまれ~!」

「えらいえらい~」

 自分の髪をわしわしとなでるマフに、いつもの落ち着いた丁寧な口調の少女が豹変している姿は見たことがない。まるで遊園地のアトラクションに乗っているようないつにもなく楽しそうだったので、自分が振り回されようが悪い気はしなかった。

 クラウドは何もできずにしばらくヒカリの様子をうかがっていたがそのうち後ろの少女はいつの間にか静かになっていた。

 最後のハートレスを倒したヒカリが返ってくると後ろの少女をのぞき込む。

「あ、マフ寝ちゃったのか」

「お、俺はどうしたらいい?」

「まぁ三番街に帰るまではこのままでいいんじゃない?ハートレスもいないし」

「そうか」

 さっきまで背中がバタバタしていたせいかやっと落ち着いてくれたので少し安堵するクラウド。それを察してかヒカリがマフを眺めてくすくす笑う。

「マフがね、耳元で言ったの。クラウドのことチョコボに似てるってさ。あのメダルに描いてる鳥」

「……」

「背の高いお兄さんにおんぶしてもらいたいのかなって思ってたけど、とても意外でさ~」

「結果は同じだけどな」

「そうね」

 二番街の噴水を眺めるヒカリ。

「そうそう、ここ。私が目が覚めた所。水の中で落ちたのかと思っちゃって」

「その時のヒカリは武器は何も身に着けていなかったのだな」

 その言葉にヒカリはムッとした。

「言い方あれだけど、まぁ武器はなかった。そう思ってた」

「そう思ってた?」

「実は、木刀を持ってたはずなんだ」

「はず?」

「なんていうか成り行きかな、ソラが持ってて、私のだったからひったくったの」

「ひったくった、のか」

「とーぜんよ、私物だもん」

「……」

「でも、違った。代わりに見つけたのがロックセプター」

「木刀はあったのか?」

「なかった、そもそもソラに出会ったのかも曖昧。もしかしたら夢だったのかも」

 ヒカリはおもむろにバスターソードを横に置いてロックセプターを出現させる。杖には無数の鍵が鍵束のように連なり金属音を奏でる。

「もしかしたらこれは私じゃない人のモノなのかって思ってさ」

「どうしてそう思った」

「ここ、鍵穴があったところなんだって、最近ソラが閉めちゃったみたいだけどそこから来たってことは……」

 クラウドが以前バイクでやってきた時はここが出口だったと聞いた。今回は鍵穴が閉じられていたので世界の扉というグミシップが止まっている場所へ降りたのだった。

 もしかしたらクラウドみたいに船以外で渡ってきている人がいるのなら……と思った。

「ヒカリの武器でいいんじゃないのか」

「ん?」

「それは、もしかしたら誰かがヒカリに託したのかもしれない」

 クラウドがセプターの鍵束をそっと撫でた。

 楽器のように無数の音が聞こえた。

「そう、かな?」

「ヒカリが手にしてから鍵が増えてるんだろ、こうやって使いこなしているのなら武器も本望だろう」

「私が鍵穴閉めてないし、勝手に増えちゃってるだけだよ?」

「それなら、どちらかの手に渡るだけだろう?」

「そ、それは、そうかもしれないけど?」

 ヒカリはなんだが複雑そうな表情でクラウドを見つめる。ふとクラウドが目をそらして言った。

「その、俺のバスターソードも似たようなものだ」

「へ……?」

 クラウドはヒカリの足元にあるバスターソードを片手で軽々と持ち上げた。

「これは、成り行きで託されたようなものだ」

「そう、なの?」

「成り行きとはいえ、俺が持っていてはいけない、なんて思ったことはあまりない。本当の持ち主が現れたのなら返せば良いだけだ。何にせよ俺はコイツで助かっているから間違いではなかったとは思う」

「そっか、このでっかい珍しいのは別の人も使っていたわけか」

 ヒカリが改めてバスターソードを眺める。手を出してきたのでクラウドはヒカリにそれを渡した。

 よいしょと言って魔法の効果で軽々持ち上げたヒカリ。どうやら魔法の呪文がこれのようだ。

 あまりの似合わない掛け声と見た目のギャップに笑いそうになった。そのギャップに満ちた武器を肩に担ぐヒカリがスタスタと歩く。

「船は時間の問題ね、あと一つここでやらないといけないことがあるわ!」

そう言ってクラウドへ振り返った不敵な笑顔の彼女は――その瞬間だけ、なぜか不思議とバスターソードが似合っていた。

 

 

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