King And Hearts~鍵を待つもの~【完結】   作:かすてらホチキス

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~大切な人~

 クラウドが甲板から船内を見渡すと海賊船は宇宙空間を航行中。

 甲板では海賊たちがせわしなくしているのが見える。どうやら前方に見える宇宙船に横付けするように突入していたからだ。

 そのまま宇宙船に体当たりして最寄りの星に進んでいく。そして宇宙船もろとも最寄りの星の海へ降り立ったのだ。

 そこまでして捕らえた船はどんなものか、よく見ているとクラウドには見覚えがあった。

それは最近。グミシップを設計するにあたり先日シドに見せてもらった船だ。

「あれは、ソラ達のグミシップか」

 はどなくしてドナルドとグーフィが現れたので間違いない。二人はフック船長の船に連行されると下の床がパカリと割れて船の下へ落ちていった。

 その後ソラがグミシップから最後に連行される。

「まずい、ソラ達がつかまった事を知らせないと」

 ヒカリのいる部屋へ戻ろうとしたところ――。

 誰かの声に呼び止められた。

「お前から来てくれるとは思わなかったよ」

「⁉」

「また会えてよかった」

 ソラが声の主を見て答えたので、クラウドに向けた言葉ではなかった。

「ドナルドとグーフィはどうしたんだ?」

「まだそんなことを言っているのか。そんなに仲間が大切か?」

 会話が続く中クラウドはソラに声をかけた少年を見る。

(あれがリクか、それと……!)

「お前が探しているのはあの二人か? それとも」

「カイリ‼」

「見ろ、お前が遊んでいる間に俺はカイリを見つけたぞ」

 リクの横に体を横たえている少女がいるのが見えた。クラウドはリクがこちらを見ていないことを確認して少女に近づく。

 目が明いているようだが体は糸の切れた人形のように動かない。眠っているのだろうか。

「これは、まずい展開だな」

 ここにヒカリが来てしまえば偵察どころではない。もう少し会話を聞いていよう。

「おっと、俺の船で勝手な行動はつつしんでくれ」

 そう言って左手に仕込まれているカギ爪でソラの行く手を遮った人物。フック船長だ。

 海賊たちに囲まれ身動きが取れないソラ。その後、さっきの二人のように真っ逆さまに落ちていった。

 クラウドはソラと共に床の下へ滑り込んだ。

 

 

 リクがウェンディのいる部屋へカイリを預けた後。

「ここで話をしている暇なんてないわ、キーティンクもついてきて」

「え……でもカイリが!」

「あなたはここにいたらまずい! なんていうか、目立つわ!」

「うっ……わかった」

ティンカーベルの案内でヒカリは金網からウェンディの閉じ込められている部屋を出た。

 

「遅かったじゃないかティンカーベル」

「紹介するわ。彼が私と一緒にウェンディを助けに来たピーターパンよ」

 ティンカーベルがさっきのウェンディみたいに得意そうに紹介した。ウエンディと言い、ティンカーベルといい、なんだか似た者同士だ。

 ヒカリがよく見ると、ピーターパンの横にいる三人組はヒカリは見慣れているのであえて無視した。

 今のヒカリはキーティンクなのだ。初対面のようにあまりかかわらないことにする。

 ティンクに紹介されたピーターパンは緑の服の少年だった。ソラと同じくらいかもしれないが、雰囲気がスマートなガキ大将みたいだ。

「この子は、ティンクの知り合い?」

 ピーターパンがティンカーベルに聞いた。

「違うわ」

「珍しいな、知らない妖精なんだね」

「私は、キーティンクとでも呼んで」

「キーティンクだね、よろしく」

 ヒカリが挨拶するとピーターパンは普通に会話が成り立った。しかも名前もばっちり伝わっている。

「な、なんで言葉わかるの?」

「それは、彼が特別なのよ!」

 驚くヒカリにふふんと鼻息を鳴らすティンカーベル。その姿はとてもご機嫌だった。

 そのご機嫌な気分から思い出してティンクは本題へと話が入った。

「そうだった、見つけたわ、ピーター。台所から上に入った部屋にウェンディがいる!」

「そうか、そこにウェンディがいるんだな」

「あと、もう一人女の子も」

「なんだってもう一人女の子?」

「カイリだ!」

 ソラのその言葉にあえて見なかったヒカリは思わずため息を漏らした。

(もうあの状態のカイリを見つけちゃったか)

 見つけたのはうれしいけど、あの状態でだと悲しいような気がしてならない。

「ピーター! 本当に助けに行くの? あちこち抜け道を使わないといけなくて、すごく大変よ! さっさと逃げましょうよ」

 腕を組んで憤慨するティンク。

「何言ってるんだい、ウェンディは大切な人なんだから」

(そういえばさっきリクもカイリのこと大切な人って言ってたな)

「た、大切な人ですって⁉ 私にはそんなの言ってくれないのに!」

 ティンクの叫びにヒカリは考え事の海から浮上した。

 しゅんとするヒカリ。

 ティンクみたいにやきもちを焼くことができない自分は、いったいどんな顔をすればいいのだろう。

 そんな妖精との会話は聞こえないが一部始終を眺めているギャラリーはなんとなく伝わったようだ。

「さては、ヤキモチやいているな」

「うるっさい!」

 ドナルドに笑われてティンクはくちばしを蹴り上げた。小さな妖精の攻撃にドナルドが驚いて飛び上がる。

「もう~~知らない! 勝手に行って!」

 そう言ってティンクはどこかへ行ってしまった。

「お、おい! 扉を開けてくれよ!」

 ティンカーベルはピーターパンの言葉なんてもう聞こえないようだ。

 金色の輝きがどこか彼方へ飛び去ってしまった。

「ゴホン」

 今までそれを眺めていたソラが咳払いするとピーターパンが向き合った。

「僕はピーターパン」

 そういってソラに右手を差し出す。

 初対面なのか、あらためて挨拶をするようだ。

「俺、ソラ」

 ソラがその手を握ろうとしたら、ピーターパンに手を引っ込められた。その代わりその手を後ろにいるヒカリへ差し出した。

「ティンクがすねちゃったから君に頼むとするよ。キーティンク」

「ま、まぁ……お困りなら私でよければ力になるわ」

 ヒカリはピーターパンの手に乗ってお辞儀をした。それを見てにっこりと笑うピーターパン。

「なるほど、さっきの妖精がすねるわけだ」

 ドナルドがピーターパンに聞こえるように言った。その言葉でピーターパンはくるりとドナルドたちに向き直る。

「一緒に行くのはウエンディを助けるまでだ」

 妖精との同盟成立後、ピーターパンは威厳を保つようにソラ達に向き直った。

 ヒカリはさっそく裏手に回ってドアの鍵を開けようとしたが――。

「ピーターパン! さっきティンクが開けてくれたみたいだよ!」

「そ、そうかい! 助かった、君のおかげだ」

 ヒカリは何もしていないが、ピーターパンはソラ達に聞こえるようにキーティンクへお礼を言ってドアを開けた。

 そして得意そうな顔でソラ達にドアの外へ行くようにうながす。

「出られた! 待ってろカイリ!」

 そんな顔を気にもとめずソラが飛び出す。

「すごいねキーティンク」

 その後ろでグーフィがヒカリにひらひらと手を振ってお礼を言う。

「なんかその妖精。別のこと言ってなかった?」

 ドナルドがいぶかし気にピーターパンを眺めて外へ出る。

 ヒカリもドアの外へ出ると早速ソラ達はハートレスと戦闘中だ。

 今回、自分はスケールが小さいので戦闘はしないことにしている。そもそも船に乗ってホロウバスティオンまで到達するのが目的だ。厄介な仕事はソラ達に任せよう。

「カイリとリクのこと、俺が言うまでもなかったな」

 ヒカリは後ろからのいきなりの声にびっくりした。目の前に現れていないがクラウドの声だ。

「もしかしてクラウドがカギ開けてくれたの?」

「いいや、ティンカーベルだ」

「だとおもった~」

 嬉しそうにヒカリが笑う。いろいろ言ってはいるがティンカーベルはピーターパンが大好きなんだ。

「俺は船内に落ちていくソラを見つけたから一緒に同行していただけだ」

「ということは、クラウドは私よりも一足先にソラとカイリの感動の再開を見たわけか」

「あまりいい様子ではなかったな」

「そうよね」

 カイリの間にはリクがいるのだ。しかもあっち側の味方。さらに言えばカイリは心がない状態だ。いまのヒカリでさえ解決策は見つからない。

「さっきから何をもう一人と話してるのかな?」

 その声に二人は飛び上がって驚いた。

 飛び上がったのはヒカリだけしか見えないが。

「名乗らなくていいよ、男の子の妖精みたいだから何も言わなかっただけ」

 興味ないのはそこなのか。

 ヒカリがツッコもうとしたが、クラウドからは何も返答が無かったのでヒカリも何も言わないことにする。

「ティンクとあの三人には見えなくても、この僕は騙せないよ?」

 彼はそう言ってヒカリへウインクする。

 さらに驚いたのがこの後だった。

 彼は妖精みたいに、空中を浮遊していた。

 思わずヒカリは見えないがクラウドと驚く。

 

 子供のようなのに大人顔負け。だけど興味がないとそれだけ。

 ピーターパンは不思議な少年だった。

 

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