King And Hearts~鍵を待つもの~【完結】 作:かすてらホチキス
「ねぇ、さっきからになっていたんだけど」
独り言のように隣にいるであろうクラウドへ一方的に話すヒカリ。
ソラ、ドナルド、グーフィそれからピーターパンはハートレスと交戦中だった。
「あの影、すごく邪魔な気がするんですけど」
あきらかにハートレスではない真っ黒い人影が交戦中の四人の中に紛れ込んでいた。
ハートレスと間違われてたまに叩かれるがそれでも攻撃の意思を見せず、気を取り直して歌を歌っているような仕草をしている。
楽しそうに歩き回る自由な人影にヒカリは参戦するか消えるかすこしばかりは空気読んでほしいと思った。
「あれはリクの力で実体化したソラの影だ、得意そうに披露していたからな」
「あれ、リクの仕業なのね」
「ヒカリは驚かないんだな」
「ソラでさえ魔法が使えたのよ。今さらリクが使えた所で驚くことはないわ」
うんうんと首を縦に振って納得するヒカリ。
クラウドは内心、闇の力を使うことにではなく、そこで納得していいのかと思いつつ自分も似たような境遇なのであえて何も言い返せない。
「ヒカリは……その、リクと戦ったことがあるのか?」
「島を出てからなら一回かな、私はあの時は諸事情で魔法は披露できなかったけど。リクはソラみたいに今の私のことは覚えてないよ」
本人は軽く言い放つがヒカリ以外に言わせればそれってあまりにもかわいそうな設定と思わざるを得なかった。
さらにリクは多くの人が驚くであろう彼女の真骨頂である魔法も知らないときた。身近な存在にその力が知られていないなんて少しもったいないなとさえ思う。
船の一番下の部屋から梯子を上がるとティンカーベルの言っていた台所だ。
「あ、ココよピーターパン!」
ティンカーベルは天井の隅の一点へピーターパンを誘導し皆に視線を向けさせる。
ヒカリが金網をすり抜けるとウェンディが気づいてくれた。ヒカリはカイリのそばへ寄り添って改めて見上げるが全く反応がなかった。
「いなくなっちゃってごめんね、今ソラが下にいるんだよ」
カイリの周りを必死に飛び回ってみるが一向に反応がない。ヒカリ自身でさえ妖精姿に変わったこと自体でワクワクしていたのだこの姿を見たカイリもさぞ驚いてくれただろう。
ソラとの再会と妖精姿の私。
どっちが一番驚いてくれたんだろう。
そういえばこの姿だと言葉が伝わらないんだっけ。
思いが伝わらない今の自分にヒカリの妖精の羽がしゅんとした。
カイリのそばにいるヒカリに気が付いて近づくとウェンディは金網からピーターパンを見つけた。
「ピーターパンなの?」
「ウェンディ!」
ピーターパンの声でウェンディの部屋を見張っていたスミ―が気付いた。
「ピーターパンだ! 声が聞こえました」
「カイリをソラに近づけけさせるな」
ドアの向こう側でリクの声も聞こえた。
「リクがいる、隠れなきゃ」
ヒカリはさっきまで哀愁に浸っていた気分がぶっ飛んだ。床下の金網から階下へ飛び近くにいたソラのフードへお邪魔する。
「うわっキーティンク?」
目の前を横切る妖精にソラは眩しくて目がチカチカした。いつもソラのフードの中にいるジミニークリケットがヒカリの輝きに驚く。
「おおっと! 眩しいお嬢さん、びっくりさせないでくれよ」
「ごめんなさい、つい勢いで」
「ううむ、美しいお声だが、やはり私にも何を言っているのかさっぱり」
小さい良心にも妖精の言語は理解不能のようだった。
ウェンディが階下のピーターパンに急いで言う。
「急いで、海賊たちが部屋の外に!」
「何だって! すぐそこに行くから、待ってて!」
ピーターパンがあたりを見渡す中ソラがウェンディに声をかけた。
「ウェンディ?」
「誰?」
「そこにもう一人女の子がいない?」
「え? ええ……ずっと眠ってるみたいだけど」
ソラがウェンディの視線の金網からかろうじて見える足を見つけた。
「カイリ! カイリ!」
必死に声をかけるソラに後ろにいるヒカリは胸が締め付けられる。
すると、
カイリの手が金網の下に落ちる。
そして――指が動いた!
「あっ」
ソラの声に被るように後ろでヒカリが驚く。
「う、動いた!」
あんなにヒカリが飛び回っても反応しなかったカイリが!
いてもたってもいられず危険だろうとカイリの所へ飛び上がって寄り添おうと思ったが時すでに遅くカイリの体が引きずられ、見えなくなった。
きっとリクか海賊の仕業だ。
そのあとウェンディの小さな悲鳴が聞こえ上の部屋が静かになった、
「ウェンディ! ソラ上だ!」
ピーターパンがカイリ達のいた部屋の横にぽっかりと穴が開いた金網を見つけ出した。
ソラ達はその穴から上の回へ。
ヒカリはソラのフードから飛び出し金網をすり抜け、さっきまでカイリの居た場所へ降り立つ。
そしてぺたりと床に足をつく。
「ごめんねカイリ……」
さっきのカイリを見てすごく苦しくなった。
ここに囚われる前、私が最初にカイリを見つけたのに知らないうちにまた消えてしまった。
あの時、きっと私よりもソラに会いたかっただろうに――。
「?」
ヒカリの目の前。
灰色の粉がわずかに見えた。
「もしかして、さっきのはクラウド?」
姿の見えないクラウドにヒカリが問う。
すると即答で帰ってきた。
「ちがう」
ヒカリの目の前から声が聞こえた。
目をパチパチさせると良くも悪くも俄然そんな気がしてきた。
「やっぱりさっきのクラウドの仕業ね!」
「だから、違うと言ってるだろう」
クラウドの慌てるような声が聞こえると、もはやほぼ正解だろう。
そう思うとちょっとだけ気分が軽くなった。
「やさしいねクラウド」
ヒカリがにっこりする。
「勝手にしろ」
投げ槍にクラウドが言い見えない妖精はソラ達を目指して飛び上がった。