King And Hearts~鍵を待つもの~【完結】 作:かすてらホチキス
ヒカリがソラ達よりも一歩先に船長室へ行くと、ソファには人形のようなカイリが横になっている。
リクはさっきまで船内をさまよっていたソラの影に闇の力を注いでいた。
クラウドの言ったとおりリクは闇の力を使っていた。さっきまではそう言われた時は納得できた。
でも、自分の目で彼を見ると。なんだか無性に腹が立った。
ヒカリの表情を間近で見るクラウドは無言だったが何か言いたそうなためらいの声が聞こえた。
「クラウドごめん。私、これからどうにかなるからさ、あとは何とかお願い」
よくわからない発現をするヒカリにクラウドは数秒立って理解した。
「あれになるのか」
「うん」
たぶんきっと神妙な面持ちである彼の顔を今の自分が見えないのは内心、少しだけほっとしている。
「師匠との修行でなんとかなったんだろう?」
「うん、戻り方なら多分なんとかなる」
「俺は止めない」
もうこの答えを決めていたかのようにクラウドは即答だった。
「やっぱりこの光景見てたらさ、私もう黙っていられないや」
苦い顔で笑うヒカリに隣でため息が聞こえた。
クラウドのため息はこの行動への落胆ではなく、この変えようがない状況への不満なのだと。ヒカリはなんとなく理解ができた。
☆
「なんだ?」
ソラの影が一瞬輝いたと思ったら、リクの目の前を金色の輝きが横切る。
リクが振り返ると驚いた。
金色の粉を振り撒く輝く妖精。それが一瞬まぶしく輝いたのだ。
瞬きの間に現れたのは、真っ赤なリボンと長い髪の少女。
「やっぱり戦わせる気ね?」
肩にかかる髪の束を後ろに流しながらヒカリはリクへ声をかけた。
「まさか妖精の姿で潜入していたとはな」
一瞬驚いたリクはそう言ってまた影に向かって集中する。
「……リクと言ったわね」
何か違和感を感じ顔を上げる。そこにいるのは彼女ただ一人。
彼女の視線と目が合う。
「なっ⁉」
リクはゾクリとした。
(さっきまでの雰囲気が一変している?)
この緊張するほどの何か。
これはいったい何だ?
視線が、瞳が、合う。
数メートル越しの彼女。
ソラと似た瞳の色なのに強い何かを宿した瞳。
怒り、悲しみ、湧き上がる何かの力。
それだけははっきりとわかった。
ヒカリは静かに言い放つ
「その『影』をソラに差し向ける気ね?」
声色は同じだが、いつものはきはきとしたものではない。それよりも今の彼女はそれを実行したらただでは済まさないとばかりの気迫に満ちている。
気圧されそうな視線にはっと気を取り直すリクは当初の目的であるソラの影に力を注ぎ終わる。
「おまえには関係ない。これは俺とソラとカイリの問題だ」
ヒカリを気にしながらもリクはソファに眠るカイリを抱き上げた。
「そこまで言うならこの『影』と遊んでいたらどうだ?」
彼女は落胆するように息を漏らす。
その瞬間、ソラ達が船長室の扉を開いた所だった。
「リク! カイリ!――と、ヒカリ?」
ソラは訳が分からない。
さらにピーターパンがもっとこの状況を難解にする発言をした。
「キーティンク。キミ、女の子の姿になれるのか」
「グワッ⁉ それってさっきの妖精が……」
「アッヒョ! キーティンクがヒカリだってこと?」
ピーターパンの言葉にドナルドとグーフィが驚いた。ティンカーベルはヒカリの周りを飛び回って驚いていたがヒカリの表情を見てさらに驚きピーターパンの元へ戻った。
ソラを見て焦るリク。
リクとカイリを引き留めようとするソラ。
リクをにらんでご立腹のヒカリ。
ソラとリクとヒカリを交互に見守るドナルドとグーフィ。
ヒカリに驚愕するピーターパン、ティンカーベル。
皆が硬直状態の中ここで先手を打ったのはリクだった。
リクはカイリを抱きかかえて後ろへ下がると真っ黒いもやの中に姿を消した。
「待てよリク!」
ソラが追いかけようと手を伸ばすと目の前にいる影のソラが立ちはだかった!
「ごめんソラ」
ソラの耳元でヒカリの声が聞こえたが――。
「え?」
ソラがヒカリに振り返るとヒカリの姿はなく黒いもやが一瞬見えた。
「ヒカリが……」
「リクみたいに消えちゃった!」
グーフィとドナルドが交互に言葉を放つと、唖然としている三人に向かって影のソラがキーブレードを振り上げた。
あまりの衝撃に動きが鈍ったソラを助けたのはピーターパン。影の攻撃を滑り降りるように受け流す!
「なんだかいろいろ起こっているけど、こいつを倒そう!」
三人と妖精の一匹は気を取り直して戦闘態勢に入った。
ピーターパンは船長室をぐるりと確認をする。
黒い粉の妖精の姿はここには見えなかった。