King And Hearts~鍵を待つもの~【完結】   作:かすてらホチキス

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~失われた武器たち〜

 

 妖精クラウドの助けによって牢屋から脱出できたのだが、外に出た所で大きな二足歩行の野獣と目が会ってしまい今に至る。

 

 あまりにも落差のある脱出の難易度の展開だ。

 

 ヒカリよりも一回り大きな体格の獣に睨まれ緊張が走る。最近は大きなハートレスに出くわすことも多くなったが、あっちは虚無に満ちた眼でまだかわいげがある。こっちの眼力の迫力はハートレスとは断然違う。

 しかも檻の外に放たれた野獣!

 ヒカリは牢屋にもう一度戻ることを考えた。

 しかし、次の野獣の行動で驚いた。

 野獣は別の道へ振り向きそのまま通り過ぎた。

 まるでそこに人が居なかったように――。

 

 もしかしたら食事の後でおなかがいっぱいだったのだろうか野生の獣は満腹になると襲わない理論を思い出してみる。

 それにしても興味を示さないどころかそこに人がいないように見事な無視であった。

 ハートレスならいつもだったらヒカリを発見すれば群がってくるものだ。

 いつもの対処だと戦闘になるのだがなんだか様子が違う。

(あれは、何かを探してるのかしら?)

 ヒカリは牢屋に戻る理由もなかったので野獣の行先を追うことにした。

 

 岩だらけの離れに作られていた牢屋から進むと岩場が開けた場所に出る。

 ヒカリはその風景に驚いた。

 水辺に浮遊する岩が何個も見えるのだが、それよりも迫力なのが、はるか向こうに見える建物――そびえ立つ城だった。

「ここがホロウバスティオン」

 水面に映る城も幻想的だ。

 いいや、あれは映るのではなくて本当に逆さに建っているのだろうか?

 しかも今ヒカリが立っているのは、水の上!

 溺れないどころか中に入ることすらできない不思議な水面だ。

 浮遊する岩に落ちない水面。よく見るとハートレスのマークが見えるお城を見上げヒカリはワクワクする気持ちと相まって背筋を伸ばした。

(それに今更だけどここ、すっご~い所!)

 そう言い切れるのは外見だけではない。今では風向きの変化のように魔法の力を感じることができるヒカリは魔力のあふれるこの世界に興味と好奇心が湧き上がる。

(なんか、この感じ……なにか思い出しそうな)

 ヒカリは腕を組んで首をひねるが思い出せない。

 そうしていると後ろから声が聞こえた。

「俺、ここ知ってる」

「!」

 振り返るとそこには、ソラがいた。

「わ~びっくりした!」

 ヒカリが思わず飛び退くとソラはそこにヒカリがいるのもお構いなし。

「え、ええっ?」

 ヒカリはソラをのぞき込むが全くの無視だ。それよりも隣のドナルドとグーフィもヒカリを全く無視し続けている。

 さっきの野獣といい、目の前のソラ達といい――なにか自分の様子がおかしいことに気が付く。

(も、もしかして私。ステルス魔法かかってる⁉)

 よく見ると自分の影がないことに今さら気が付いた。これではっきり分かった。これがクラウドの妖精の粉の効果だろう。

 空を飛ぶよりもこれはこれで便利だ。

(でも、これっていつ解けるのかしら?)

 あまりにも自分を無視し続ける皆さんにヒカリは一抹の不安を覚えた。

 見えないどころか声すら聞こえないし、完全な透明人間どころか幽霊のような気分で不安を覚えるのだが――これはこれで便利なのでしばらくソラ達と行動を共にすることに決めた。

 幸いハートレスも今の所いないようなので後をついていく。

 浮遊する岩の頂上付近に到達すると、向こう側の広い浮島に先ほどの野獣が見えた。

 しかも誰かと何か話している。

 

 近づくとリクだった。

 野獣に斬りつけた所だったので何を話していたのかわからない。

 ソラが飛び出してリクと野獣の間に割って入る。

「やめろ、リク!」

「ソラ、遅かったな。待ってたんだ、おまえを」

「リク……」

(リク?)

 ヒカリとソラの声がかぶる。

「ソラ、俺たちはいつも何かを取り合っていた」

(まぁ、私も一緒にいたけどね~)

 ヒカリがソラとリクの間で横やりを入れてみるが完全に無視される。

「でも、もう終わりにしようぜ」

「何が言いたいんだ、リク」

(何考えてんのよリク?)

 またソラとヒカリの声が被った。

 リクはソラに向かって右手を差し出す。するとソラの持つキーブレードがカタカタと震えリクへ引っ張られるように光って消えた。

 その光はリクの手の中に現れて――右手には先ほどソラの握られていたキーブードが現れたのだ。

「あっ!」

「ウソ⁉」

「ええっ?」

(なんで⁉)

 ソラ、ドナルド、グーフィ。聞こえないだろうがヒカリ。それぞれの声がリクに向けられた。

「マレフィセントの言ったとおりだ――」

(マレフィセントの言った通り?)

 リクの手の中のキーブレードを見ながら思わず聞き返す。のぞき込むヒカリには目もくれずリクはソラに向き直る。

「おまえにカイリを救うことはできない。秘密の扉を開き、世界を変えることができる本当の勇者だけが、キーブレードを使いこなせる」

(秘密の扉……本当の勇者)

 ヒカリは扉と勇者になぜか納得ができない。

「俺は今までそのキーブレードで戦ってきたんだ!」

 あまりの衝撃に苛立ちさえみられるソラにリクはキーブレードを掲げながら言う。

「俺に合うまでの暇つぶしだったのさ」

(会うまでの暇つぶし……?)

 ソラの表情を眺めながらさらに何か言葉に引っかかるヒカリ。

「ソラ、おまえの出番はもうない。このおもちゃで勇者ごっこがお似合いだ」

 そう言ってソラへ投げたのは――。

いつぞやの『木刀』だ。

 

(あ~~~!)

 

 ヒカリは考えることをやめてソラへ投げられたそれを見ておおいに叫んだ。

 当然、声は誰も聞こえない。

 ソラは両手を地面につけがっくりとうなだれる。その隣でヒカリはソラのように両手を地面につけてしばらくその木刀を眺めた。

(うん……間違いない、私の木刀!)

 リクが立ち去るのもお構いなしだ。

 そのリクを見てソラの横のドナルドが言った。

「グーフィ、行こう」

「そりゃ鍵を持ってるのはリクだけど――でも」

「王様の命令だろ!」

(!)

 王様のワードに思わずヒカリは顔を上げた。

 ソラはうなだれたままだった。

「ソラごめん!」

 ドナルドがそう言い残し二人はリクの元へ駆け出していった。

ヒカリはソラを見る。

顔は相変わらず見えない。

 手負いの野獣がソラの横を通るとすぐにひざを折ってしまった。先ほどのダメージが大きかったのだろう。

 ソラはすぐに野獣を支えた。

 顔を見せたソラ。悔しさの顔から心配の顔にすぐに変わっていた。ヒカリは思わずホッとする。

「動いちゃだめだ、そんなケガで――」

「おまえは、何のためにここに来た」

 息も絶え絶えの野獣はそれでも声をふり絞る。

「私は戦うために来た」

 そう言うと立ち上がり城へとまた歩み出る。

「たった一人でもできることはある、私はそのために来たのだ」

 野獣の歩みを見たソラは決意したようにうなずき宣言する。

「俺は、カイリに……たいせつな人に――会いに来たんだ!」

 そう言うとさっきまで近くに転がっていた木刀を探した。

 木刀は地面にはなかった。

 かわりに目の前で木刀を差し出され驚く。

「あなたのお探しのものはこれかしら、ソラ?」

 見上げると見知った人物がそこにいた。

「ヒカリ⁉……なんで?」

 さっきまでの決意のこもったまなざしが一瞬で緊張が途切れたように子犬のような目に変わる。

 その表情を見た彼女は困ったように笑い、ソラに木刀を再度差し出して問う。

「この木刀、誰の?」

「えっ……俺の、持ってたのじゃないかな。えっと、見たことあるからきっとリクの作ったのだ」

「ふ~ん」

 感慨深げに微笑しヒカリはそれをソラに渡した。

「それ、持っていくんなら、私も行くよ」

「え、なんで?」

 訳の分からない表情のソラにヒカリはいつもの不敵な表情をソラに向ける。

「せっかく経験値貯めたのに捕られるの見てられないし! 自分の武器持ってるくせに不公平よね、取り返しに行こう!」

「……見てたのか」

 ヒカリはソラのつぶやきを聞かなかったように野獣に走って向かい――怖いのだろうか後ろからこっそりケアルの魔法をかけてあげた。

 いきなりの魔法で驚いたのであろう野獣の咆哮に飛び上がるヒカリを見てソラは思わず噴き出した。

 

「ヒカリって、一緒にいると楽しいな」

 

 ソラが微笑して思わずつぶやいた。

 なんだかもやもやしたものが一瞬なくなったような気がしてさっきまでの決意も相まってソラは走り出した。

 

 

 マレフィセントが両手を上げて唱えるように叫んだ。

「さぁ、プリンセスたちよ。鍵穴を呼び出しておくれ!」

 薄暗い部屋で七人のプリンセス達から赤い光線が現れ、部屋の中央にいるカイリの前で一つになる。それが部屋の奥に続き、闇のゲートが現れた。

 

 

 城を真正面に臨む魔法のトロッコに乗る三人は、城の外観を決意のこもった表情で眺めていた。

 そのうちの一人が突如。後ろから倒れた。

「ヒカリ⁉」

 ソラが気が付き驚いた。

 その横で野獣、ビーストがヒカリを支えた。

「ううっ……今の、何?」

「どうした? 攻撃は何も見えなかったが」

 ビーストがヒカリを自分の巨体の小脇に寄せながら見晴らしの良いトロッコの周辺を眺める。

「体を、見えない壁に全身を打ち付けた、ような」

「壁?」

 ソラも注意深げに周囲を確認する。

 

 ほどなくトロッコが目的地に着くと、ヒカリは一歩踏み出した。

 さっきまでの衝撃は嘘のようだ。

「もう大丈夫、念のため魔法で……⁉」

「どうした?」

 ビーストが振り返りソラはヒカリを見て驚いた。

「ヒカリ、これは?」

 ヒカリはいつものようにロックセプターを出したはずだった。さっきまでビーストを魔法で回復させていた時は普通に出てきていた。

(だったら、さっきの衝撃から?)

「なに……これ」

 ヒカリの目に見えるのは両手につながれた鎖と手首の輪。

『金色の手錠』がはめられていた。

 

 

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